輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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炭治郎君視点です。原作で猗窩座に自然の摂理について言い返す場面は、筆者が鬼滅で一番感動したポイントかもしれません。赤ん坊から大人になるまで育ててくれた両親には本当に感謝です。


88話 自然の摂理

俺は無限城に落とされてもなお、猗窩座との攻防を続けていた。

 

四半刻打ち合い、俺の息が切れ始め防戦一方になってきたところで、突如として猗窩座が攻撃をやめて距離を取った。

 

 

 

「・・・まさか童磨がやられるとはな・・・」

 

「っ!!」

 

 

猗窩座の呟きに俺の肩は跳ねる。上弦の弐がやられたその事実に俺は驚く。

 

 

「自死を選んだ訳ではないようだが・・・そうか。まさかあいつまでもが鬼狩りにやられるとは・・・」

 

 

猗窩座から僅かに哀愁のような感情の匂いがした。やがて猗窩座は肩を震わせ笑う。

 

 

「ふっ、我ながら呆れる。少し前まで奴のことを心底嫌悪していたにも関わらず、先に死なれてそれを物悲しく思うとは・・・

 あのお方の言う通り、俺はどうやら可笑しくなってしまったらしいな・・・」

 

「・・・?」

 

「すまない、お前には一切関係のない話だった。仕切り直すとしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・羅針・改 明鏡止水ー

 

 

 

 

 

 

 

 

すると猗窩座の足元に、水鏡を彷彿とさせるような青い紋様が浮かび上がる。あたりが静寂で包まれる。

 

俺は呼吸を整え、集中する。俺と猗窩座、どちらかが動くかに見えたが、僅かに速くカナヲが側面より斬りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

ー花の呼吸 肆ノ型 紅花衣ー

 

 

 

 

 

 

猗窩座は上下に捻るように行き交う斬撃を一瞥し、片手の甲だけでそれを捌き、カナヲに一撃入れる。

 

 

「がっ!!!」

 

「小娘。下がれと言ったはずだ。多少目が良いようだが、それでもお前の技量では俺には届かん。」

 

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 烈日紅鏡ー

 

 

 

 

 

 

俺は猗窩座に左右交互の斬撃で斬りかかるが、無駄を全て削ぎ落したかのような動きで猗窩座は斬撃を捌く。

 

 

「やはり今となっては俺の相手が務まる柱は限られてくるな。炭治郎、お前もその一人だ。」

 

 

猗窩座から凄まじい高速の拳打が打ち込まれるが、俺は透き通る世界に加え、嗅覚による動作予知の感覚を最大限開いてこれを躱す。

 

 

「素晴らしい! 見事だ!!」

 

 

来た!! 猗窩座に隙ができるこの瞬間に俺は全神経を集中させ、頸を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 火車ー

 

 

 

 

 

俺は猗窩座の突きを避け、背後へと飛ぶ。斬撃が頸に入るかと思ったその瞬間、再び猗窩座から鬼気が消え去る。

 

 

 

 

 

ー破壊殺 冠先割ー

 

 

 

 

 

「くっ!!!」

 

 

猗窩座の背面への蹴り上げにより俺の斬撃は相殺される。そのまま後方に着地するも、猗窩座は目の前まで迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・鬼芯八重芯ー

 

 

 

ーヒノカミ神楽 灼骨炎陽ー

 

 

 

 

 

 

 

 

猗窩座の左右交互に放つ拳打を、俺は弧を描くような斬撃で迎撃する。しかし、威力を殺しきれず、遥か後方まで地を滑りそのまま下がってしまう。

 

 

「いい動きだ。よくここまで鍛錬したものだ。俺の一瞬の隙を突いての正確な斬撃、見事だった。どうも俺はそのような技量を見せられてしまうと心を乱してしまうらしい。そういう性分なのかもしれんな。」

 

 

猗窩座は感心したようにそう呟く。俺は再度構える。技を受けた衝撃で今だに腕がしびれている。

 

 

「以前戦った行冥や杏寿郎もかなりの使い手だったが、お前も奴らと遜色ない強さだ。いや、俺の攻撃を受けてもなお、反応できている点においては奴ら以上の技量だ。

 俺は純粋に嬉しい・・・心が躍る・・・!!」

 

 

猗窩座と戦って気づいたことがある。猗窩座は本来は強者との戦いを楽しむ性格の持ち主なのだろう。俺との攻防で度々感心しているような様子が見て取れる。

 

その度に血鬼術による最適化された予備動作無しの状態が解除されるので、思いの他付け入る隙は多い。

 

しかし、こちらが回避を優先し動作が一つでも増えてしまうと、その僅かな時間で猗窩座は再び集中を取り戻すため、中々頸を斬ることができない。

 

 

俺と猗窩座の攻防の間に、カナヲは戦線に復帰し、俺の背後に戻り構える。猗窩座はその様子を見て一転、不機嫌そうな態度に変わる。

 

 

「いい加減にしろ。お前では俺に傷一つ付けられはしない。今まで殺してきた柱よりはずっと強いが、それでもやはり女の剣士。炭治郎に比べれば圧倒的弱者に過ぎない。帰れ。」

 

「何度も言ってるでしょ・・・私は帰らない!! 炭治郎を守り支えるのが私の役目だって!!」

 

「笑わせるな。守られているのはお前の方だ。何度俺に吹き飛ばされた? 何度炭治郎に庇われた? 弱者の戯言など、虫唾が走る、反吐が出る。

 俺がその気になればお前などいつでも殺せるのだ。それをしないのは、ひとえに炭治郎との勝負を尊重しているからだ。

 お前が死んで、炭治郎が動揺し、本来の力を発揮できないようになれば、倒したところで何の感慨も湧かない。お前の命はその拘りの上に成り立っているに過ぎない。」

 

「っ!! それでも! 私は炭治郎を守る!! 例えこの身を犠牲にしても・・・!!」

 

「口の減らない小娘だ。やはり手足の一本や二本捥いでおくべきか。それで炭治郎が気を取られなければいいのだが・・・」

 

「カナヲ、ありがとう。気持ちは嬉しいよ。でもここは俺に任せてくれないか? 猗窩座を追い詰めれば必ず隙はできる。その時に改めてカナヲの力を貸してほしい。どうか見守っていてくれ。」

 

「・・・炭治郎・・・」

 

 

心配そうに見つめてくるカナヲの目を見て俺は穏やかにそう言ってなだめる。

 

悔しいが、猗窩座の言う通りだ。カナヲは既にしのぶさん以上の剣士だが、それでも猗窩座を相手にするには力不足と言わざるを得ない。

 

カナヲが合間合間で猗窩座に斬りかかってくれるおかげで、俺の呼吸も続いているのは事実だが、これ以上は負傷しかねない。そうなれば、俺は恐らく平静を保ってはいられなくなるだろう。

 

 

「・・・わかった・・・でも私、炭治郎が危なくなったら身を挺してでも守るから・・・だから・・・」

 

「うん。ありがとう。カナヲの気持ちは本当に嬉しい。俺もそうならないように頑張るよ。」

 

 

カナヲは俺の答えに納得したのか、一度下がり距離を取る。俺は猗窩座に向き直ると、奴は真顔でとんでもないことを言う。

 

 

「漸く悟ったか。自身が弱者であることを。弱者には虫唾が走る。反吐が出る。淘汰されるのは自然の摂理に他ならない。」

 

 

俺は猗窩座の主張に真っ向から反論する。カナヲを侮辱されたようで我慢ならなかったからだ。

 

 

「お前の言っていることは全部間違っている。お前が今そこに居ることがその証明だよ。

 生まれた時は誰もが弱い赤子だ。誰かに助けてもらわなきゃ生きられない。

 お前もそうだよ猗窩座。記憶にはないのかもしれないけれど、赤ん坊の時お前は、誰かに守られ助けられ今生きているんだ。」

 

 

俺の答えに、猗窩座は目を細める。俺は反論を続ける。

 

 

「強い者は弱い者を助け守る・・・! そして弱い者は強くなり、また自分より弱い者を助け守る・・・!! これが自然の摂理だ!!

 猗窩座!! 俺はお前の考え方を許さない!! これ以上お前の好きにはさせない!!!」

 

 

俺はそう啖呵を切る。猗窩座は目を見開き、拳を握りしめる。俺は猗窩座が激昂し、殴りかかってくるかと身構えた。しかし、猗窩座からは穏やかな感情の匂いしかしなかった。

 

 

「・・・そうだな・・・炭治郎。お前の言う通りだ。俺は人間の時の記憶を覚えていない。俺にも赤子の時があったはずだ。母から生まれ、父に守られて育ったのだろう。

 それは否定しようのない事実だ。朧気ながら俺も人間の時に、お前が今言ったことと同じようなことを戦いの師に教えられていた気がする・・・

 もう思い出せない・・・あの人の顔も・・・声も・・・眼差しも・・・俺は何のために腕を磨いてきたのかも・・・」

 

「・・・猗窩座・・・?」

 

 

俺は驚いた。今の猗窩座からは郷愁漂う悲しみの匂いしかしなかったからだ。本当に鬼なのかと疑うほどに・・・

 

猗窩座は暫くの間、目を閉じていたが、やがて俺を見据えて構える。

 

 

「だが、今の俺とお前は敵同士。どういう事情があろうとそれもまた否定しようのない事実だ。俺が死ぬか、お前が死ぬか、決着はそのどちらかしかない。

 なら俺はお前を殺すつもりで全力を尽くす。お前もそうするんだ、炭治郎。お互い後悔のないように・・・」

 

「・・・猗窩座・・・? お前は一体何を考えて・・・」

 

「話が長くなってしまったな。では再開するとしよう。一切手心を加えてやるつもりはない。覚悟するんだな。」

 

「っ!!」

 

 

俺は身構える。猗窩座が何を思い、何を考えたかなんて、今の俺が気にする余裕なんてない。雁哉さんとの約束なんだ。俺が絶対猗窩座を倒すと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は再び猗窩座と激突した。互いに心の内を秘めたまま、死闘は繰り返される。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




本小説だと猗窩座はとても曇りやすいです。黒死牟が先に死んでるので、鍛錬以外に色々考える時間が増えてしまってるのが原因です。

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