輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

94 / 100
兄の雁哉君視点です。無惨戦ですが2話決着の予定です。その代わり、一話当たりが非常に長いです。読むのが大変かもしれませんがご容赦ください。


91話 宿命

「無駄な足掻きをするな!! 潔く死ね亡者共!!」

 

 

 

音速を超える無惨の両腕と背中9本の管による薙ぎ払いの嵐により、辺り一帯の無限城の建造物が根こそぎ粉々になっていく。

 

直接攻撃を喰らわなくても、音速以上の薙ぎ払いは絶えずソニックブームを引き起こし、それを受けるだけでこちらの身体は裂傷を負う。

 

人間ならとっくのとうに負傷で死んでるはずだ。俺たちが人間のままであったならだが・・・

 

 

「ぐあああああ!!!」

 

 

また獪岳が攻撃を回避できず負傷した。やはり透き通る世界が見えない者にこの速度の攻撃を捌き続けるのは無理か。

 

俺と白峰は直接攻撃を一切喰らわず回避し続けているので、裂傷程度は鬼の再生力ですぐさま治るが、獪岳は何度も胴を薙ぎ払われ、頭蓋を砕かれるなどしているせいで度々戦線離脱する。

 

 

「おい、雁哉。また獪岳がバラバラになったぞ。俺達二人だけじゃ攻めに転じるのはまず無理だ。誰でもいいからお前の血鬼術で柱を連れてこい。」

 

 

白峰は周囲の悲惨な状況など一切意に介していない。無惨相手でも危なげなく攻撃を躱し続け、ずっと冷静に戦況を見続けている。流石としか言いようがない。

 

 

「そうなると暫くの間お前一人で無惨の足止めをすることになるが平気なのか? いくらお前でも流石に無理だと思うが・・・」

 

「問題ねぇ・・・と言いたいところだが、確かにきついな。もし途中で無惨に逃げられた場合、俺一人じゃ奴を追いかけるのは無理だろう。どうすっかな・・・」

 

 

淡々と俺達二人が攻撃を掻い潜りながら会話を交わしているのを見て、無惨が青筋を浮かべる。

 

 

「珠世の差し金で雑魚鬼になった程度の塵芥共が!! 全く持って腹立たしい!!」

 

「っ!!! 白峰避けろ!!!」

 

「うおっ!!??」

 

 

音速以上の腕と背中の管の攻撃に加え、奴の大腿部からそれ以上の速度で新たな管が打ち出された。

 

俺は回避に全神経を注ぐ。しかしそれでも躱しきれず、目前に音速を遥かに超越した管の先端が迫る。

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 弐ノ型 氷輪回しー

 

 

 

 

 

刹那とも言うべきタイミングで、白峰が俺を庇う。剣と管の衝突により、凄まじい衝撃波と音が響き渡る。

 

 

「っ!? 白峰!?」

 

「勘違いするな!! お前が死んだら俺の功績を産屋敷当主に証言する輩がいなくなるから仕方なく庇ったまでだ!! いちいち動揺するな!!」

 

 

白峰は今の攻防で、無惨の別の管の直撃を受けて脇腹が抉れ飛んでいた。白峰は俺や獪岳ほど稀血の摂取をしていないせいで再生力はそこまで高くない。

 

俺は時間稼ぎのため、無惨にありったけ攻撃を打ち込む。

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾ー

 

 

 

 

 

一薙ぎで周囲一帯を月の呼吸の斬撃で埋め尽くし、無惨の攻撃を相殺する。

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 玖ノ型 降り月・連面ー

 

 

 

 

 

無惨が僅かに動きを止めた瞬間、頭上より浴びせるような斬撃の幕を振り落とす。

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映えー

 

 

 

 

 

 

無惨が俺の攻撃を迎撃してる間に、六尺刀を振り切り、複数の斬撃を床に伝播させ、足元から無惨を切り刻む。

 

俺と無惨の攻防により、周囲は更に瓦礫が散乱し、視界が遮られる。

 

 

 

「白峰!! まだ時間が必要か!?」

 

「ちっ・・・こんなことならもっと早く鬼になっておけば良かったぜ・・・」

 

「まったく・・・お前が色町に繰り出せなくなるからと鬼化を渋るからこんなことになるんだ。完全に自業自得だな。」

 

「ああ? 女を抱けなくなるなんて俺に取っちゃ死活問題だししょうがねえだろ。結果的に前日までには鬼化できたんだから文句言われたくねぇな。」

 

「その結果大して稀血を摂取できなかったんじゃないのか・・・」

 

 

白峰は俺との会話中、ずっと脇腹を押さえていた。少しずつ再生しているが、完治には程遠い。

 

俺や獪岳は早めに鬼になったため、不死川さんの稀血の摂取が充分に進み、今では上弦並みの再生速度がある。

 

しかし、白峰が鬼になったのはつい昨日のことだ。稀血一口で酔いつぶれたせいで、大して鬼としての機能が向上しなかった。

 

逆に雑魚鬼同然の身体能力で無惨の攻撃を掻い潜っているのだから、こいつの技量の高さには驚嘆するしかない。

 

 

「ちっ・・・せめて柱一人だけでも増援にくればな・・・」

 

「あのな・・・それが叶わないから今こんなことになって・・・っ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

ー雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・神速ー

 

 

 

 

 

 

俺と白峰が言い合っていると、突如落雷のような轟音が聞こえ、無惨が鮮血を飛ばしていた。

 

 

「遅れてすみません!! 先日鳴柱になったばかりの我妻善逸です!!!」

 

 

気が付けば、善逸が俺達の横を通り過ぎるように駆け抜けていた。こいつ無惨に気づかれず斬りつけた上に一瞬で何十メートル移動したんだ?

 

 

「善逸、よくここがわかったな?」

 

「はい! ここが一番やばそうな音がしたんで、一直線に向かいました!! 本当は嫌だったけど!!!」

 

「は?」

 

「ひいっ!! 何でもありません!! 聞かなかったことにしてください!!」

 

 

俺が善逸の最後の言葉に引っかかり疑問の声を上げると、善逸はすぐに発言を訂正する。今もべそをかいているし一体こいつは何をしにここまで来たんだ?

 

 

「そっ、それよりも獪岳はどうなったんですか!? 確か雁哉さんと一緒に無限城へと落ちていきましたよね!? 今どこにいるんですか!?」

 

「ああ、獪岳か・・・残念ながらあいつは・・・」

 

「っ!! そんな・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

ー雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟ー

 

 

 

 

 

 

 

瓦礫が収まり視界が晴れた瞬間、無惨が腕を振り抜こうとしていた。

 

しかし、それより僅かに早く、辺り一帯に黒い雷が迸る。無惨は一度動きを止め、その隙に俺たちの前方に血まみれの男が着地する。

 

 

「るっせえわカス・・・ちゃんと生きてるわ・・・雁哉も俺を死んだことにしてんじゃねぇ・・・!」

 

「なんだ生きてたのか獪岳。てっきり力尽きて死んだと思ったんだが・・・」

 

「ざけんな!! お前の冗談、真顔だから滅茶苦茶むかつくんだよ!!」

 

「よし、その調子ならあと数度はバラバラにされても余裕そうだな。この調子で頼むぞ。」

 

「はあ!? 言っとくが、いくら治るからってバラバラにされんのかなり痛ぇんだぞ!? お前ら人使い荒すぎんだろ!?」

 

 

獪岳が異議を唱えた瞬間、再び周囲が暴風で吹き荒れる。俺と善逸は回避し、白峰は攻撃を捌いて無事だったが、再び獪岳は管の一撃を受けて胴体が泣き別れになる。

 

 

「ぐあああああ!!!」

 

「はあ・・・獪岳。何回攻撃喰らってるんだ。いくら鬼だからって油断しすぎなんじゃないのか?」

 

「てってめえら!! マジでざけんなよ!!??」

 

 

白峰の冷静な呟きにキレる獪岳。俺達よりも遥か後方に吹き飛ばされるのが目の端に映った。

 

 

「お前達鬼狩り共の戯言も聞き飽きた!! いい加減死ぬがいい!!!」

 

 

再び無惨の周囲一帯を薙ぎ払う攻撃が始まった。俺たちは必死に攻撃を避け捌く。周囲の瓦礫が飛び散る中、俺の耳に着けているインカムより通信が入り、俺は笑みを浮かべる。

 

 

「なんだ無惨。お前の配下である猗窩座と童磨が死んで随分と焦っているようだな? これでお前は孤立無援だ。」

 

 

無惨の眉が一瞬痙攣する。俺は回避をしながら続ける。

 

 

「それに比べてこちらの主戦力は誰一人欠けていない。もうじきお前を殺しに柱が総出で結集するだろう。もういい加減諦めたらどうだ?」

 

「黙れ。産屋敷家の鬼狩り風情が。主戦力が誰一人欠けていないだと? 

 馬鹿を言え。柱は既に鳴女が4人葬った。猗窩座も負けはしたが、柱を五人戦闘不能にしている。そして童磨の活躍はそもそも初めから期待していない。

 更にはお前らの末端の鬼狩り共も、既に過半数が私の強化した雑魚鬼に殺されているではないか。

 私と鳴女さえいれば、鬼殺隊の壊滅など今夜中にでも終わるだろう。

 この無限城にお前たちが囚われている限り、私が殺されることはない。なぜなら日の光はこの場所には一切届かないのだから。

 お前たちの敗北は既に決定している。諦めて死への秒読みを始めるのは貴様らの方だ、鬼狩り共!!!」

 

 

無惨の反論に俺意外の全員が動揺する。既に柱と隊員の過半数を失った事実に驚いたからだろう。しかし、それでも俺は笑みを消さない。

 

 

「それでも問題ない。余裕でお前を殺せる。それを今から証明してやるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月ー

 

 

 

 

 

 

 

俺は六尺刀を全力で振り切り、辺り一帯に月の呼吸の斬撃を豪雨のように打ち付ける。周囲に一層瓦礫が舞い、無惨の視界が閉ざされる。

 

 

「無駄なことを!!」

 

 

無惨は一瞬で周囲の瓦礫を薙ぎ払い、視界を確保する。しかし、その僅かな時間で両側より二つの影が迫る。

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 壱ノ型 薄氷斬りー

 

 

ー雷の呼吸 肆ノ型 遠雷ー

 

 

 

 

 

 

二人の日輪刀は鬼の握力で既に赫刀を発現している。無惨は不意の水平斬りを受け、一瞬体が硬直する。

 

 

「獪岳!! 畳みかけろ!!」

 

「るっせえ!! わかってんだよ!!」

 

 

 

ー雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷ー

 

 

ー氷の呼吸 弐ノ型 氷輪回しー

 

 

 

無惨とのゼロ距離を保ちながら、二人は連撃を浴びせる。

 

 

 

ー氷の呼吸 参ノ型 氷瀑・砕氷落としー

 

 

ー雷の呼吸 弐ノ型 稲魂ー

 

 

 

攻撃を回避しながら多数の斬撃を浴びせつつ、二人は退避し距離を取る。

 

 

「鬱陶しい!!!」

 

 

無惨は離れていく二人の背に両腕を打ち付けようとするが、

 

 

 

 

ー雷の呼吸 漆ノ型 火雷神(ほのいかずちのかみ)

 

 

 

 

黄色い閃光が通り過ぎ、その後音を置き去りにして衝撃波が地を走る。

 

無惨は右脇から左肩口までを切り裂かれ、血しぶきをあげてから動きを止める。まるで攻撃を受けるまで反応できなかったとでも言うかのように。

 

 

「よくやった善逸!! 後は任せろ!!!」

 

 

すると間髪入れず、獪岳が無惨へと向き直り、上段に構え、黒い雷を刀身に纏わせる。

 

 

「俺のありったけの血を込めた一撃だ!! 喰らいやがれ!!!」

 

 

 

 

 

ー雷の呼吸 捌ノ型 爆砕・双龍破ー

 

 

 

 

獪岳が全力で振り切ると、黒い雷が青銅色へと変わり、眩い光を発しながら無惨へと電雷の奔流となって押し寄せる。

 

無惨は腕を振り抜き打ち払うも、触れた雷が腕を罅割り焼き砕きながら無惨本体へと伝播していく。

 

無惨は顔を歪め、自身のもう一方の腕で、罅割れる腕の付け根を切断する。切除した腕はそのまま黒い炭のようになり粉々に砕けて朽ちていった。

 

 

「どうだ無惨!! 俺の血鬼術は極めればお前の細胞だって破壊できる!! 次は腕だけじゃ済まないぜ!!!」

 

 

無惨は眉を寄せる。そして瞬時に腕を再生させ、その手の指を獪岳に向ける。

 

 

「ごふっ!!!」

 

「お前は何度も私の攻撃を喰らったな? その度に私の血を大量に流し込んでやった。それだけの血がお前の細胞に入り込めば、私の意思一つで簡単に細胞を壊せるのだ。例え、珠世由来の鬼だったとしてもな。」

 

 

突如、獪岳は血を吐き、その場で膝を着く。みるみる全身の肌に赤黒い血管が浮かび上がり、あちこちから血が噴きだし始めた。まるで、鬼が無惨の呪いを受けて殺される時のように。

 

 

 

 

ー雷の呼吸 漆ノ型 火雷神・六連ー

 

 

 

 

再び善逸が音を置き去りにしながら無惨を斬りつける。無惨は背中と大腿部から管を打ち出し、音速の斬撃を迎撃する。

 

 

「ぐっ!!!」

 

 

善逸は無惨の攻撃を僅かに受けてしまい、攻撃を中断し獪岳を抱きかかえて距離を取る。

 

 

「二人ともすぐに人間化薬を打て!! 無惨の血のせいでそのままだと死ぬぞ!!!」

 

「ざ、ざけんな雁哉!! がふっ!! そんなもん打ったら俺は鬼の身体じゃなくなるんだぞ!! こんな中途半端なまま離脱できるか!!!」

 

「馬鹿野郎!! 死にたいのか!? お前いつも生きてさえいればいつか勝てるって口癖のように言っただろうが!! 命を最優先にしろ!!!」

 

「獪岳!! 雁哉さんの言う通りだ!! 俺が安全なところまで運んでやるから・・・!!」

 

「糞っ!! 畜生っ!!! 俺はまだ何も成せていない!! このままじゃ悲鳴嶼さんに合わせる顔がない・・・!! 最後まで戦わせてくれよ!!!」

 

 

獪岳はクシャクシャに顔を歪めて泣き喚きながら、善逸に運ばれて遠くへと離れていく。

 

あいつが鬼になってまで力を欲した理由は聞いてる。

 

昔、自分のせいで悲鳴嶼さんが匿っていた孤児たちが全員鬼に殺されて、その清算がしたかったのだと。挽回のチャンスが欲しかったのだと。

 

あいつが鬼になる決断をあっさり下せたのは、その過去の出来事がずっと楔となって胸の内に残っていたからだろう。

 

俺はそんなあいつの心の傷を利用して都合よく戦力として使った。それ故に俺は獪岳に思うところがない訳じゃない。

 

 

「獪岳!! お前が必死に戦ったことは俺が悲鳴嶼さんに伝えておく!! だから心配するな!!! 今は生き残ることだけ考えろ!!!」

 

 

俺はそう叫んだ。獪岳の耳に俺の言葉が届いていればいいのだが・・・

 

 

「産屋敷家の鬼狩り。お前は今夜殺す。お前が奴の戦いの生き証人になることはない。」

 

 

無惨は俺に攻撃を打ち込みながらそう言い放つ。俺は回避しながら奥歯を噛み締める。

 

 

「それはこちらの台詞だ。言ったはずだぞ、無惨。お前は今夜俺たちが必ず殺すと。死ぬのは貴様の方だ・・・!!」

 

「面白い!! やれるものならやってみろ!!!」

 

 

無惨の腕の薙ぎ払い、背中の管の攻撃、大腿部からの管の打ち出し。それらが延々と続く。攻撃は今までと同じだが、俺と白峰だけでは回避し捌き続けるだけで精一杯だ。

 

だがそれでも時間稼ぎくらいはできる。そう思い耐え続けるが、やがてその均衡も崩れ去る。

 

 

 

 

 

ガヒュッ!!

 

 

 

 

「っ!!??」

 

 

俺と白峰は無惨の腕の薙ぎ払いを確かに躱したはずだった。それなのにどういう訳か背後に引き寄せられ、俺は背中を、白峰は脇腹を根こそぎ抉り取られる。

 

俺は上弦並みの再生力で傷を再生させ、距離を取るが、白峰は腹部を押さえ、その場で膝を着いてしまう。

 

 

「白峰!!!」

 

 

無惨は白峰に向き直り、ありったけ攻撃を浴びせる。白峰は腹部を押さえながら床を転がり、絶えず氷の呼吸の型を打ち出して攻撃をはじきながら距離を取ろうとする。

 

 

「ふっ・・・無様だな。芋虫のように転げまわるのが精いっぱいとは・・・」

 

 

 

 

ガヒュッ!!

 

 

 

「がっ!!??」

 

「白峰!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾ー

 

 

 

 

 

 

 

俺は血鬼術を発動させ、白峰の傍に瞬時に移動し、すかさず月の呼吸の薙ぎ払いを放つ。そして無惨の攻撃を月の呼吸の連続技で何とか相殺し続ける。

 

白峰を一瞬一瞥したが、腹部に加え、さっきの一撃で左腕を抉り取られていた。

 

無惨の新たな攻撃の正体は、腕についた口の吸息によるものだ。透き通る世界で何とか視認できた。

 

奴の腕についた口が凄まじい吸引力で周囲を吸い寄せるせいで、局所的にあり得ないほどの減圧効果が起こっている。それに巻き込まれると、肉体が根こそぎ抉り取られるのだろう。

 

腕と管の攻撃だけでも手一杯なのに、まさかこんな奥の手を隠していたとは。

 

いや、そもそも無惨は今まで一度も血鬼術を使用していない。恐らくあの吸息攻撃も奥の手ですらないのだろう。本当に底が見えない恐ろしい化け物だ。

 

俺は全力で月の呼吸の型を放ち続けるが、度々攻撃を打ち漏らし、直撃は回避できるものの衝撃波を浴びる。しかし一瞬でも怯めば即座に俺は瞬殺されるだろう。

 

 

「ごふっ・・・雁哉。済まない、しくじった。」

 

「喋らなくていい!! 傷を治すことだけに集中しろ!!!」

 

「いや、それも難しい。どうやら無惨の直接攻撃を受けた腹部に関しては、奴の血のせいでうまく再生できないみたいだ。」

 

「っ!!」

 

「人間化薬を打ってもいいが、恐らく人間に戻るまでの間は高熱が出て動けなくなるだろう。まあ、どのみち肺胞が壊死している俺は人間に戻っても戦えないだろうが・・・」

 

「なら離脱しろ!!」

 

「ふっ・・・俺が離脱したらお前一人で無惨と戦うことになるぞ。はっきり言って無謀だな。

 あー・・・こんなことになるなら一度くらい花魁の一人でも抱いておけばよかった。つまんない人生だったな・・・」

 

「ふざけるな!! 俺は絶対に諦めない!! 瞳が・・・俺の帰りを待っているんだ!! 約束したんだ!! 絶対また会いに戻るって・・・!!」

 

「なんだ・・・お前にも女いたのか・・・ご愁傷様・・・」

 

「諦めないって言ってるだろうが!!!」

 

 

俺は徐々に無惨の攻撃に圧され、負傷するペースも上がっていく。このまま打ち合っても、結果は火を見るよりも明らかだった。

 

 

「終わりだな。産屋敷家の鬼狩りよ。身の程も知らず、私と戦う決断をした時点でこうなることは決まっていたのだ。

 自身の宿命を呪い、後悔したままあの世へ逝け!!!」

 

 

無惨の攻撃が更に苛烈なものになる。俺の月の呼吸の連発でも防げなくなってきた。俺は歯ぎしりしながら諦めることができず、打ち合い続ける。

 

 

 

(これが俺の宿命だっていうのか・・・)

 

 

 

風圧で俺の脇腹が抉れる。

 

 

 

(先祖の使命を肩代わりしたにも関わらず、その役目も果たせず殺されるのか・・・)

 

 

 

俺の片目に瓦礫が打ち付けられ眼球が潰れる。

 

 

 

(瞳と再会することもできず、こんなところで死ぬのか・・・)

 

 

 

大腿部が衝撃波ではじけ飛び、膝を着く。

 

 

 

(ここまでか・・・)

 

 

 

俺は観念した。自身の力不足を痛感した。短慮を後悔した。せめてもう少し時間が稼げれば・・・

 

俺は力なく目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベベンッ!!

 

 

 

 

 

「っ!!??」

 

 

突如、琵琶の音と共に、俺の周囲に十数名の隊士が出現し、無惨の攻撃を弾き、相殺する。

 

 

無惨は目を見開き、呆然としながらその光景を眺めている。やがてふるふると全身を震わせて、怒りの表情を露わにし怒号を上げる。

 

 

「何をしている鳴女!!! これは一体どういうことだ!!??」

 

 

すると無限城全体に聞き覚えの声が響き渡る。

 

 

「何をしているかだって? この女を操ってるんだよ。視覚もとうの昔に乗っ取り済みだ。お前が雁哉達に手間取ってる間にこいつの支配権は俺が手にした。」

 

 

愈史郎の声だった。やがて城全体が揺れ始めた。

 

 

「今からお前を地上に叩き出す。夜明けまでもう半刻だ。日の光に怯えながら最期まで鬼狩り達と戯れるんだな。珠世様もお前の醜態を眺めることができてさぞやお喜びになるだろう。」

 

 

愈史郎の声はそこで終わり、突如として、床がせり上がる。その場にいる全員は上昇し続け、やがて天井を突き破り俺たちは地上へと押し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙の上がる市街地の中心で俺は立ち上がる。周囲には柱達が結集しており、無惨を取り囲むように待機していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




原作の愈史郎もMVPでしたね。彼の力がなければ柱達は全員死んでいたでしょう(主に毒で)。さて次回で無惨戦決着です。無惨って腕振り回してるだけなので、描写がつまらないんですよね・・・。なので要点だけ抑えてサクサク書いて終わらせました。それでも生に執着した最強生物なのでしぶといですが・・・笑

完結後読みたい話はありますか?

  • 恋愛もの
  • バトルもの
  • クラフトもの
  • オリ主の深堀エピソード
  • 原作キャラの深堀エピソード
  • 現代キャラの描写
  • 大正キャラの描写
  • 別の鬼滅二次小説を書いてほしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。