脳筋学園カピトリーノ高等学校 作:クロアカ・マキシマ
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煙が晴れるとともに戦闘再開かと思ったが一向に敵からの攻撃が始まらない。それどころか攻撃に移ろうという意思すら感じられない。恐る恐るハッチを半分開けて周囲を見渡すと、そこには絶対にありえない人物が存在していた。
「アコ、これは一体どういう状況?」
その少女はボリュームのある長い銀髪に後頭部の4本角、骨ばった翼になによりゲヘナの風紀委員会の制服を着用している。そう、まぎれもなく風紀委員長空崎ヒナ、その人がなぜか私の戦車の前に仁王立ちになっていた。隣には頭のおかしい服装をした水色の髪をもつ少女、こちらは風紀委員会の行政官天雨アコだろう。そして、見渡すと風紀委員が何人か倒れ伏している。
「えっ、ヒナ委員長。そっその私にも。突然突っ込んできて」
完全にやってしまった。
まさかアビドスを襲撃していたのがゲヘナの風紀委員会だったとは。これまでアビドスを襲撃してきたのが野良のチンピラと聞いていたせいで先入観を持っていたけど、砲撃まで行っていた組織がタダのチンピラなはずはなかった。カイザーとどのように繋がっていたのかは定かではないけど、キヴォトスでも最強と名高い空崎ヒナを投入してきたということはゲヘナ側でも相当に本気なのだろう。お姉様が危惧した通り、弱ったアビドスへと手を出していたということ。
そんな私に畳みかけるように後続を指揮しているメナからゲヘナの大部隊を発見したとの報が入る。間違いなくゲヘナはアビドスを支配下に置くために動いている。
「いっ いえ、他校に逃げ込んだ校則違反者の確保であって」
身体がいう事を聞かない。目の前で行われている会話すら頭に入ってこない。
こちらの地理的な距離による動き出しの遅さを使って先に実力行使した相手だ。完全に読み切られているといってもいい。ではお姉様率いる本隊にどう対応するつもりなのか。それを考えたときに私の背中に冷たいものが流れる。アビドスを取ったとてカイザーの基地を取り返されたら状況は5分のまま。それを避けるために、基地にはここ以上に戦力を配置しているはず。でもカイザー単体にそこまでの武力を用意できるわけはない。ではそんな戦力はどこから。決まっている。トリニティだ。
ゲヘナとトリニティが結ぶというエデン条約はそもそもカピトリーノに対する対抗軸としての側面がある。間違いなく第一の仮想敵に勢力を拡大しているカピトリーノが入っている。しかし、それぞれの学園には反対派も多く、カピトリーノの諜報員がそれを煽っている事もあって中々まとまらないはずだった。
「便利屋68のこと?それは勝手にこの規模の兵力を動かす理由にはならない。」
しかし、ここでその有効性を確かめるチャンスが現れた。そう、中央の混乱に付け込んでカピトリーノがアビドスに勢力を拡大しようとしているのだ。これを共同で叩きのめしたとあれば反対派も収まるだろう。いや、中央の混乱もこちらを釣りだす罠だったのかもしれない。なにしろ、カピトリーノの勢力拡大を良く思わずエデン条約を推進したのが連邦生徒会長なのだ。あの曲者が一芝居うったとしても何の不思議もない。
ここで本隊まで殲滅されるような事があればカピトリーノは機動戦力の大半を失うことになる。他の戦線の動ける部隊にもすぐに引きはがせるような部隊はない。力の源泉が経たれてしまったら完全に終わりだ。その状態で3大校に抗う術はない。
ここまで一瞬で詰まされるとは。いっそ清々しいほどの負けだ。この絵図面を描いたのは連邦生徒会長かそれとも桐藤ナギサか、もしくは昼行燈の羽沼マコトか。いずれにしろ全く持って尻尾をつかませない見事な手腕だ。
後から考えると、撤退の命令を発するのを忘れて考えに没頭していた私は冷静なつもりで完全にパニックに陥っていたのだろう。
「委員長、全て説明いたします。」
「いやもういい。ところで、あなたは一体?」
気が付いたときには絶望が目の前にあった。
「初めまして、ゲヘナ風紀委員会の皆様。私、カピトリーノ高等学校にて
「ゲヘナ学園、風紀委員長の空崎ヒナよ。」
頑張れ皇ユリ、ここで稼ぐ一分一秒には千金の価値がある。なぜだか知らないが銃弾ではなく対話から入ってきた空崎ヒナを前に私は必死に平静を装っていた。
すでに後続の部隊には私を残して撤退するように伝えており、戦車も1台を残して引き上げ始めた。ゲヘナが歩兵と迫撃砲のみしか持ってきていない以上、この空崎ヒナを釘付けにできれば戦車の撃破は困難に違いない。
「早速だけど皇ユリ、
しかし、空崎ヒナは追及の手を緩めることはなさそうだ。カエルを睨む蛇のごとき眼光が私の足を棒に変える。
どうする。どう返せばより時間を稼げる。
その時だった。
「うへへー、こいつはまたすっごいことになってるね。」
「ホシノ先輩、いままでどこに」
「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててねぇ。」
「昼寝って....」
ピンク髪の少女が、小鳥遊ホシノがその場に姿を現した。
そこからはオーラを纏ったチビ2人がその場を仕切りだした。
なんとゲヘナ風紀委員は校則違反者を捕らえるためにアビドスまでやってきたらしく、空崎ヒナはそれを止めに来たらしい。校則違反者のために迫撃砲と連隊規模の部隊を動員?それも他校の自治区で?意味が分からない。一番分からないのがそれを風紀委員長が止めたことだ。そのまま侵攻していればアビドスを支配下に置けたのに?
どうやら風紀委員会は引き上げ、後日謝罪することでことが収まった。なんとも後味の悪い終わり方なような。あれで風紀委員からの支持が維持されるというのは不思議だ。あるいは、そんなものを必要としないほどに空崎ヒナが強いのか。
ともあれ危機は回避された。そして、私には散らばった部隊の混乱を抑えるという面倒だけが残るのだった。
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「初めまして、ゲヘナ風紀委員会の皆様。私、カピトリーノ高等学校にて
風紀委員会との戦いに突如現れた戦車部隊。戦闘を強引に終わらせた戦車から出てきたその人はとても戦場とは思えないほどに優雅で、それでいて言いようのない圧を押し付けるように挨拶した。
ひっくり返った車の陰に隠れる私達とは対照的に、あの空崎ヒナを前にして少しも怯える様子もないその姿は、先日の覆面水着団とはまた違う方向でのアウトローを体現していた。
「あれこそ真のアウトローよ。私も戦車で戦場に突撃してみたいわ。ところでカピトリーノって聞かない名前ね。」
自然と出てきたその言葉に対するムツキとカヨコの言葉は意外なものだった。
「えっ、アルちゃんもしかして知らないの。」
「社長、カピトリーノはやばいよ。関わり合いにならないうちに逃げた方がいい。アウトローというより蛮族みたいな連中だよ。噂だけど捕えた生徒を戦わせて見せ物にしているらしいし。」
それにしても、あんな優雅な振る舞いをする蛮族がいるというのかしら。私の疑いはさらなるムツキの一言によって打ち砕かれた。
「そうだよアルちゃん。最近では他の自治区を支配下に置いて勢力を広げてるって話だし、きっとアビドスが弱ったところを食い潰すつもりだよ。」
「えっ、ええっ」
「社長、それに、あれは現
「良かったねアルちゃん。まさに血も涙もない悪党だね。私たちも仲間に入れてもらう?」
「もうっ。とっ とりあえず事務所に戻るわよ。」
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