脳筋学園カピトリーノ高等学校 作:クロアカ・マキシマ
「初めまして先生。先ほどは車上から失礼いたしました。カピトリーノ高等学校2年生の皇ユリと申します。よろしくお願いいたしますわ。」
「私は連邦捜査部シャーレの先生。よろしくね。」
ゲヘナの風紀委員会が引き上げた後、私たちは一旦アビドス高校に向かった。そこで私たちはアビドスに来た謎の大人、先生に挨拶していた。彼はあまり詳しいことは明かさなかったが、断片から推測するに連邦生徒会からなにかの権限を渡されてアビドス防衛に携わっているらしい。あの小鳥遊ホシノをはじめ、アビドスの生徒たちから不思議と受け入れられているようでなんとも不気味な存在だ。
だが、カピトリーノの名前を聞いて嫌悪感を表していないところを見るに、連邦生徒会からそこまでの情報を渡されていないらしい。さしずめ求心力を保つために形だけ送り込んだといったところか。迷惑な話だがあまり反発するのも連邦生徒会に目をつけられかねない。
ふと視線を机の上に向けると、そこには連邦生徒会からの補給物資のリストが置いてある。やはり、七神リンの名前があるところから見るに、行政官の仕込みだったようだ。
「ところで、ユリちゃん達はどうしてアビドスに?助けてくれたのは嬉しいんだけど、随分とたくさん引き連れてどうしたの?」
そう話す小鳥遊ホシノの目線の先、アビドスの校庭には戦車の他に大量の重機と歩兵を乗せたトラックが校庭とその外にまで広がっていた。柔らかい声に反して、そこには確かに詰問の意志が込められていた。
しまった。状況が落ち着いたら説明しようとしていたのを忘れていた。
ここからどう説明しようかと頭を回していると奥空アヤネが慌てた様子で駆け込んできた。
「皆さん大変です。アビドス砂漠で大規模な戦闘が起きているみたいです!!!」
「「「ええっ!?」」」
「あっ!?」
思わず間抜けな声が出てしまった。生徒会室のモニターに映し出されたのはまさしくカピトリーノの部隊。お姉様率いる本隊がカイザーの基地を攻め始めたのだ。そういえばゲヘナとの騒動の後始末にかまけてアビドスの面々に説明するのを失念していた。
よく見ると榴弾砲での準備砲撃が主で他の部隊は包囲して待機している。珍しく正面から突撃しないところを見ると、お姉様は徹底的に叩き潰すつもりらしい。
「どっ、どう言うことですか?これはカピトリーノ高校の戦車ですよね。」
私の反応は完全に事情を知っている人の反応だったのもあって、アビドスと先生の視線が一斉に私に集中する。アビドスにとって不利益になるようなことはしていないはずだが、誤解を招くと大変なことになる。言葉を選ばなくては。
「ええ、間違いありませんわ。あの部隊はお姉様、
私の一言でアビドスの面々に緊張が走る。何人かは銃に片手を掛けそうになっているほどだ。
「どういうつもり。それにあの基地は一体?なんであんなもんがここにあるのよ!」
食ってかかってきたのは黒見セリカ。他の生徒も剣呑な表情でこちらを見つめる。
ん、あれ?ここの面々はもしやカイザーの基地であることを知らないのか。自分の自治区に基地が作られていながら存在を知らないなんてことがあるのだろうか。すっかり準戦争状態にあると考えて先手を打った認識だったが、もしや「敵」の存在を認識していないのか?
あー、分からなくなってきた。
こういうものはメナに投げるに限る。
私は横に控えているメナにすべてをぶん投げる。
「メナ、アビドスの皆さんと先生に説明を」
「分かりました。ではこちらをご覧下さい。」
流石はメナ。私の無茶ぶりにもさっと対応してくれる。早速タブレットを取り出し、机の上に置く。
「これは、アビドスの地図?でしょうか」
「はい、そしてこの赤で示しているところ。具体的には校舎周辺と一部を除き、全ての土地が特定の企業とその傘下の企業によって権利が取得されていました。」
「特定の企業?」
うん、やはりピンと来ていないようだ。よく考えると校舎を襲撃されるほどだ。その後ろでどこまでことが進んでいたかを認識していなかったのは無理もない。
「はい、カイザーコーポレーション。アビドスの襲撃を先導し、高い利率で貸付を行っているあのカイザーグループです。」
「カイザーが。」
「そんな」
「ちょっと待って。自治区の土地は勝手に売れないはずじゃ。」
えっ、土地を買い上げて傘下に組み込むのは良くある話しじゃないのだろうか。経済と軍事で抑え込んで土地を売らせてグレーのままで実効支配に持ち込むのは良くある話だし、カピトリーノにはその手の手段が大好きな連中までいる。
「生徒会、アビドスの生徒会ならば可能です。」
「あんのクソバカ。」
そんな言い争いをしている間にも榴弾を雨あられのように撃ち込まれたカイザーPMCの基地は白煙と黒煙に彩られつつあった。初めのころは内側から打ち返していたもののそれも沈黙、装甲車での包囲網の突破はお姉様に完全に読まれて蜂の巣にされていた。手足をもがれた基地が陥落するのも時間の問題だろう。
「ちょっと待って下さい。それで、そのカイザーとあのものものしい基地がどう関係するんですか?」
映像を確認していた奥空アヤネが議論を基地に引き戻す。
「あの基地はカイザーPMCのもの。つまり、アビドスから接収した土地を支配するための拠点を築きつつある状態です。」
「PMC、民間軍事会社がアビドスに基地を?」
十六夜ノノミと小鳥遊ホシノが顔を見合わせる。
「はい、我々はこれを持ってカイザーコーポレーションがアビドス高等学校へ侵略行為を行っていると判断しました。さらに、アビドス側の戦力が十分でないことから友邦への侵略行為に対し、
淡々とメナは話を続ける。
「それと同時にアビドスへのカイザー側からの強引な攻撃の可能性を考え、我々を派遣して校舎の防衛にあたるように下命されました。現在、校舎付近の陣地化および要塞化に着手しております。アビドスの皆さんには事後報告になってしまったことをお詫びいたします。」
うんうん、冷静に考えると他校の自治区で事前通告無しに戦争を起こしたのか。
・・・・・・この間の建設部より数段やばいことになっている気がする。お姉様の勢いに流されたけど止めないとまずかった。私の頬に冷や汗が流れ落ちる。
「あのーどこから突っ込めばいいのか分からないんだけど、まず排除っていうのはどういうことかな。」
冷え切ったところに先生から質問が入る。
「字義通りに答えていただいて問題ありません。軍事基地や拠点を破壊もしくは占拠してカイザーがアビドスで軍事行動を起こせないようにします。」
視線が厳しくなっている面々を前にしてメナは進める。
「ただ、カイザーはコンビニから軍事、金融まで幅広く事業を展開しています。その全てを一度に攻撃することは現実的ではありません。また、中枢を叩くための情報を集める必要もあります。そのために、まずは手足となる軍事力を潰すために基地の破壊を行ないます。第二段階ではカイザーローンをはじめとした金融機関、すなわちカイザーの血液を止めてしまいます。ブラックマーケット側との交渉次第ですが、追加の兵力の到着を待ってから行動を起こすことになるかと。最後に中枢となる本体を接収する予定です。」
うん、まずいけど改めて聞いてだいぶマシになった事がわかる。元はブラックマーケットの占領が含まれていたのをお姉様を説得して交渉から入ることにしたのだ。広大なブラックマーケット全てを占領するとなったらいくら予算が合っても足りるわけがない。全く蛮族には困ったものだ。
そうこうするうちに、画面の向こうでは総攻撃が始まった。榴弾砲で抑え込まれた上に、大量の爆薬で壁が破壊され、基地はあっという間に制圧されていく。
辛うじて生き残っていたカイザーPMCの兵士らはもはや戦車の良い的でしかない。榴弾ではなく徹甲弾を使っているあたり、完全に狩猟か何かと勘違いしてそうだ。
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主人公は野蛮であることを嘆く蛮族です。