脳筋学園カピトリーノ高等学校 作:クロアカ・マキシマ
野蛮人集団のアビドスに追い詰められた私だったが、何故だか彼女たちが急に態度を改めたことで事態は急速に鎮静化した。何はともあれ誤解は解けたようだが、異様に意気消沈しているのは何故だろうか。とりあえず、メナとリアを叩き起こして後始末をさせようか。
何はともあれ、アビドスと無事に防衛協定が結べたのでこれ以上は無いだろう。
カイザーがアビドスから巻き上げた土地をアビドス側に戻すことと、これまで連邦法の規定を超えてカイザーに払い過ぎた過払金分をアビドス側に支払うことの二つの条件で良いというのだから太っ腹だ。なお、破壊されたカイザーPMCの基地の跡地はカピトリーノに貸し出してもらえるようで、今後はこちらの基地として活用していくつもりだ。
軍事的な備えとしてはそれで十分だが、搦手の対策も考えなくては。今のアビドスを乗っとるならば強引に生徒を10人程転校させ、生徒会選挙からの他校への併合への承認を行うといった原始的なスキームでも乗っ取ることが出来てしまう。そこまで考えて、そこまでしてアビドスというめんどくさい地域を支配する学園が見当たらないことに思い至った。まあ、そのうちメナでも送り込んでがっちり規定を固めさせようか。
さらにカイザーとの戦闘に彼女たちも加わってくれるようで、これが1番大きいかもしれない。補給と回復を適切に与えながら先生に指揮させればピンポイントで戦線を破壊して回るような運用も可能かな。とりあえず操作の簡単な装甲車を使ってもらうことにした。
「本当に土地をアビドスのものにして良いのですか?」
一通り交渉が終わったところで十六夜ノノミが尋ねてくる。
「構いませんわ。元よりアビドスのものを不法に占拠しているというのが本校の見解です。それに、カイザーの持つ資産からするとほんの一部ですので、気にされることではありませんわ。さらに、放っておくと今度はカピトリーノの生徒が買い占めを行いかねません。余計に付け入る隙を与えない為にも道理に従って置くのが良いのです。」
「そっ、そんな生徒が...」
絶句されるが、うちにはそういう連中がわんさかいるのだ。頭が痛い...
「はい。残念ながら火事や災害の隙に買い叩いたりする悪質なものがおります。それを防ぐためにこちらで抑えていると、横領しているといって攻撃してきますので早めに正当性のある所有者に渡してしまった方が楽なのですわ。それに、お姉様がその方に山ほど借金していたりするので排除するのも難しいという訳でして...」
「苦労しているのね...」
まあ、お姉様も「借金を返せなくなるぞ」という脅しを日常的に使うのであちらもある意味被害者なのでどっちもどっちと言ったところかもしれない。
「それにこちらこそ良いのですか?過払金のみならずこれまでの返済分全てにしてもよろしいですわよ。もしくは、敵の撃破数に応じて報酬を追加でお支払いするということも可能ですが。」
そう、こういうときお姉様なら絶対に返済していない分まで返したと主張して奪っていくはずなのだ。過剰な利息分で良いというのは妙なところで倫理観があるというかなんというか。それでも借金はほぼ0になるのでカイザーは意外ときっちり搾り取っていたのだろう。そのあたりの設定を行った優秀な人材ならぜひとも配下に欲しいけど無理だろうなぁ。
「借金したのは本当だし、土地も戻ってくるなら十分です。」
「そうそう、借りたものを返さないのは私たちらしくないしね。」
……….。
「やはり、カイザーの資産や本社機能はブラックマーケットの奥深くに入り込んでいるようです。息の根を止めるには各地の拠点を抑えるよりもブラックマーケットにある本体への攻撃が有効そうです。」
お姉様の基地攻撃から判明したカイザーコーポレーションに関する報告をメナからうけつつ、本国から送られてきた予算周りの案件を片付ける。確かにカイザーは面倒な相手だが、胡散臭い部活からの予算申請もまた面倒なのだ。
「それでお姉様はなんと?」
「はい。ブラックマーケット側に全資産の引き渡しを要求し、応じなければ攻撃するご意向です。猶予期間は1ヶ月にするそうですので、ユリ様にはアビドスの掃討と建設部を用いて補給路の補強を行ってほしいとのことです。」
「おおっ!カエ様はブラックマーケットを完全にぶっ潰すつもりですね。腕が鳴ります!!」
リアが言う通りメナが告げるお姉様の行動は完全に開戦を前提とした動きだった。もう少し吞みやすい条件にして部隊の損耗を抑えてほしいのだけれどなぁ。それにしても、1ヶ月とは中途半端な長さのような気もする。血気にまみれたお姉様らしくないというか...
「分かったわ。それでその1ヶ月の猶予期間というのはどこからきたのか分かるかしら?お姉様なら明日攻め込む位のことは言いかねないような気がするわ。」
「いえ、それについては何も仰っておられませんでした。確かにあの方でしたら即日攻撃されてもおかしくありませんね。」
お姉様も東方に来て野蛮人の血が薄くなったのだろうか。それはそれで残念な気がするのはなぜだろう。
「ブラックマーケットにいる一般人の避難なんて考えそうに無いし、いつもの気まぐれのような気もしてきたわ。まあ、とりあえず指示通り後ろを固めておくのがよさそうね。
リア!貴方は戦車と歩兵の半分をいくつかの任務部隊に分けて自治区外延部の掃討を行いなさい!狩りだした連中は壁に出来そうなのだけ基地に送って残りは適当に処分すること。
メナは建設部と共にカイザー基地に行って物資の集積所の拡張を頼むわ。それから歩兵の残りで街道の強化と監視体制の構築も行って頂戴。」
「「了解しました!!」」
カイザーの基地への襲撃から3週間。
当然のようにブラックマーケットとの交渉は難航していた。
それもそのはず、カピトリーノ側はカイザーグループの所有する全ての資産の引渡しを要求しており、それは土地や建物、武器に留まらず債権や人員までも含まれる。カイザーと関わりの深い企業が多く存在するブラックマーケットには受け入れ難い内容だ。
それに加えて、カイザー基地の襲撃の際にカイザーの連中を持て余して“処分“した影響もあるかもしれない。
しかし、どちらもただ座して待っていた訳ではない。
ブラックマーケット側は武器を蓄え、要所要所には砦が築かれつつある。さらにブラックマーケット内に拠点を構える武装集団を引き込んで戦力を増している。
一方のカピトリーノ側にも続々と援軍が到着していた。最も大きいのが自治区の西側での反乱を鎮圧していたもう一人の執政官大西ナエの到着だ。迅速に反乱を鎮圧し、最低限の兵力を抑えに残して強行軍でやってきている。お姉様はこれを待っていたらしい。さらに支配下や同盟関係にある自治区からの援軍が次々到着し、アビドス郊外に築かれた陣営は続々とその規模が拡大していた。
衝突の瞬間は確実に近づいていた。
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