脳筋学園カピトリーノ高等学校   作:クロアカ・マキシマ

8 / 8
第8話

ブラックマーケット側に通告したカイザー資産の引き渡しの期日の前日、すなわち開戦日の前日に元カイザー基地に作られたカピトリーノの陣営に着いた。既に基地の周辺にはカピトリーノの機動戦力の大半が集結しており、明日の戦闘に向けての準備が進んでいる。大量に送り込んだ物資はメナに準備させた集積所だけでは足りず、あちこちに一時的な物資集積所が作られており、そこから運び込まれた物資が各部隊に分配されていく。

 

 

 

 

「遅くなり申し訳ありません。皇ユリ、ただいま到着いたしました。」

 

 

基地の中枢にある一室。多少の破壊痕が残るその部屋にカピトリーノ全軍の指揮所が置かれている。挨拶をして中に入るとお姉様をはじめとした上層部が勢ぞろいしていた。普段は自分の要件を優先してなかなか出てこないのに戦いの匂いがすると直ぐにこれだ。

 

 

「おお、よく来たなユリ。お前が来たら明日の作戦について話そうと思っていたところだが、その前にお前からは何かあるか?」

 

お姉様が指さす先を見ると皆が囲っている中央の机には地図が広げられている。

 

「そうですわね。部隊に関しては十分に士気も高いので問題ありません。ただ、前にお伝えした通りアビドスの面々も作戦に協力いただけることになりましたのでその使い方について少々。」

 

「ほう。そいつらは使えるのか?5人しかいないと聞いているが」

 

「確かに少数ですが、彼女たちは精鋭中の精鋭です。補給不足で力を出せなかっただけで単純な火力面に関してはリアよりも勝ります。特に小鳥遊ホシノは戦術兵器と言ってよいほどの強さをもち、ゲヘナの風紀委員長同様に潜在的な脅威そのものです。その力を我々が理解する為にも全力を出させる場が必要です。」

 

「分かった。それも含めて考えよう。」

 

ふう、と息を吐いたお姉様は椅子から立ち上がって部屋を見渡す。

 

 

「では始めようか。」

 

そういってお姉様はその場にいる全員に語りかけた。

 

 

「諸君、聖なるカピトリーノに集いしの諸君。

 

 

諸君らも知っての通り、我らの友邦たるアビドスは危機に瀕している。カイザーと名乗る恐れ知らずの無法な連中によって父祖の土地を奪われ、街は砂に覆われ、生徒が5人になるまで撃ち減らされた。しかし、それでもアビドスは戦い続けた。

 

諸君、私は恥じている。これまでこの悪逆なる侵略者を放置していたことを。危機に陥っていた友邦に手を差し伸ばせずにいたことを。アビドスのたった5人に我らが勇気で劣っていたことを。

彼女らには決して侵略者の手には落ちぬという高潔な魂が確かにある。そして我らにも剣には剣でという誇りがある。然るに、我々はアビドスに築かれたカイザーの要塞を正義の名の下に打ち払った。我々とその友邦を踏みにじろうとした敵を完膚なきまでに叩き潰した。

 

しかし、不遜なるカイザーの連中はブラックマーケットなる無法地帯になおも割拠し、我らと我らの友を今もつけ狙っている。これを取り除くことが出来なければ、我らは枕を高くしては眠れぬ。神をも知らぬあの連中は必ずや再び我々を毒牙に掛けようとするだろう。

 

諸君、これは我らにとっての危機である。我らはなんとしてもカイザーを滅ぼさねばならない。

 

だが、我らは平和を愛する者。戦いで無関係のものを傷つけることは好まない。それ故に我らは公正無私な態度で持ってブラックマーケットに対してカイザーの引渡しのみを求めた。しかし、ブラックマーケットはこれに応じず、あまつさえ兵を集め武器を構えている。そう、我らの寛大なる申し出は卑怯なる敵によって踏みにじられ、我らの高潔な魂は奴らによって汚されようとしている。

 

諸君、ブラックマーケットは我らの敵である。奴らが地上に存在する限り、我らに安寧はない。全力でもって打ち滅ぼさずして我らに未来はない。

 

諸君、戦士諸君、同志諸君、祝福されしカピトリーノは諸君を求める。我らと我らの友のため、カピトリーノは諸君らの献身を欲する。剣でもって、銃でもって、戦車でもって、砲でもって、我らに立ちはだかる敵を一人残らず叩き潰すのだ。」

 

お姉様の最後の言葉が終わった瞬間、部屋が爆発するかのように沸いた。相変わらずのせられやすい連中だ。すっかり正義の戦争へと向かう無謬の戦士のような顔つきになっている。

そして、相変わらずお姉様もお姉様である。自分の行いを棚の奥に放り投げてよくぞここまでのことが言えたものだ。私が必死に止めなかったら、今日の演説の敵のリストにアビドスも載っていたかもしれない。

ただ、戦いが始まれば自分の正当性に疑問を持つのは愚か者のすること。あえて焚きつけられることは戦いに赴くものとしては正しいのかもしれない。

 

そうこうしているうちに、お姉様が作戦と指揮の割り振りを発表し始める。

 

 

 

「執政官にして偉大なる将軍。我が友、大西ナエ!!」

 

「おう!」

 

セミロングの髪を靡かせて大西ナエ、ナエ先輩が前に進み出る。着崩した制服からは健康そうな太ももが覗いており、どことなく武人気質を感じさせる。いつもはお姉様とバチバチにやりあっているが、こういう時には勝利のために協力を惜しまない有能なリーダーになる。

 

「第一、第二隊の指揮を任せる。左翼において敵の攻撃を受け止めてほしい。そして、回り込んで市街の切れ目まで進んだら機を見て中枢への強襲をしてもらいたい。」

 

 

 

 

 

「カピトリーノの番人にして執政官。ユリよ。我が妹よ。親衛隊を預ける。右翼に布陣し、敵を牽制してくれ。機を見て我らが友邦アビドスと共に市街に突入して制圧するように。」

 

 

そして、左翼方面の担当は私になる。市街地の面制圧はなかなか面倒だが、アビドスという戦力が味方に加わったのは大きい。ピンポイントで突破したい場所で頼りにさせてもらおう。

 

 

「猪狩アン!お前には正面の予備部隊を任せる。合図に従って戦車隊と共に衝撃力と機動力でもって戦線中央を突破せよ。」

 

「はい!」

 

次に呼ばれたのはお姉様の自称懐刀、猪狩アンだ。カピトリーノでも屈指の個人戦闘力とバランスを取るための僅かな知能が搭載された戦闘マシーンであり、頭も体も剣闘士に毛が生えたようなやつだ。前線で戦っている分には便利な駒だが、足りない自制心で政治ごっこを始めるのはやめてほしい。

 

それから同盟軍やかき集めたチンピラの配置が指示され、熱が充満した部屋はそのまま宴会に移行することになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ブラックマーケットとアビドスの境界、横に広く展開したカピトリーノに対して、ブラックマーケット側はマーケットガードを中心とした少数の部隊が展開している。ブラックマーケットはやはり決戦ではなく市街地の内部に引き込んでの持久戦に持ち込むつもりのようだ。想定通りではあるが、あまり財布には優しくないので迷惑極まりない。

 

回答期限の12時を両陣営が固唾を飲んで見守るなか、ついにその時間は訪れた。

 

 

「ユリ様、お時間です。」

 

荒事は気が重いけど、これも仕事の一貫。頑張るとしよう。

 

「リア、砲兵隊に始めさせてちょうだい。」

 






評価やお気に入りをお願いします。
感想、ここすきとかもいただけると喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。