スーパー地球プロジェクト! 地球大混合事変!!   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 二月に入って初めての仕事に向かう予定のグレン×グレンでっす!

 なんか例年にないレベルの寒さで雪も降るとかで不安ですねー。交通網に悪影響が出ないことを祈りたいですねー。先月の給金で計算間違っていたので、頑張って働きたいので


第二章1 年を取っただけの餓鬼の猛威

【青野レイズ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 複数の平行世界がミックスされた一つの地球という異常事態。

 

 その事態に対応し切れた世界は存在しない。

 

 当然だろう。不意打ちで行われた時点で後手に回る上、世界そのものが混ざり合っているのだ。通信網すら寸断されて当然であり、そもそも対応に回ることこそが困難だろうからな。

 

 そんな非常事態を通り越した異常事態に対し、曲がりなりにも複数の平行世界の者達が連携して、下手人であるクリストフの襲撃を二回も乗り越えたのは異例といってもいいだろう。俺、凄いことになっているな。

 

 で、場所は霞が関。日本の政治的中枢地の一角にある一室で会議が開かれようとしていた。

 

「……失礼する。時間がかかって済まない」

 

 入ってきたのは、眉目秀麗と言っていいだろう男性。

 

 その顔を見た赤龍帝が、思わず立ち上がるほど驚いた。

 

「アジュカ様!? え、なんでここに!?」

 

「久しいな、イッセー君。実は日本の異能組織と提携しての研究を行っていて、たまたま外せない用事できていたのさ。……おかげでこちらでの対応を一任されたがね」

 

 赤龍帝に答えた男は、現魔王アジュカ・ベルゼブブ。

 

 俺達の世界のおける悪魔の長たる魔王。その一角であるベルゼブブを襲名した存在だ。

 

 その場にいる者達は、そのたたずまいからただ者でないことを本能的に察する。

 

 そして彼はあえてそこには触れず、席に座ると息を吐いた。

 

「さて、情勢に関しては俺もある程度は把握している。……信じられないことだが、平行世界の地球を六つほど、混ざり合わせるようにして一つの地球を形成しているようだ」

 

 そう告げたうえで、アジュカ・ベルゼブブ様はその魔力をもって地球の立体映像を映し出す。

 

「いまだ情勢が混乱状態ゆえに、全容は分かっていない。だが幸か不幸か我々悪魔は、異形としての縄張りや他勢力から認められている地区に上級悪魔を派遣し、取引を行っている。その為、何とか俺悪魔達側が関与できる土地に限れば既に確認は済んでいるのが不幸中の幸いだな。禍の団の再活性化に伴い、交換要員を派遣している人間の国家機関とも繋ぎも取れた。……こちら側が主導する形で連携は可能だろう」

 

 そう告げたうえで、アジュカ・ベルゼブブ様は周囲を見渡した。

 

「さて、その点で何か質問はあるだろうか?」

 

「では僭越ながら私めが」

 

 と、いうわけでちょっと聞いてみよう。

 

 凄い気になっていることがある。とっても気になっていることがある。

 

 なので、念の為に聞いておかなければならないだろう。

 

「……神の子を見張る者の代表格みたいなところに私めが座らされているのは何故でしょうか?」

 

 心の底から真顔で尋ねたよ。

 

 いや、なんでこうなっている?

 

 俺はあくまで、堕天使についているエージェントの一人だ。その事実から考えて、ツッコミどころが非常に多いと言ってもいいだろう。

 

 それはまぁ、各勢力から出向した多国籍チームならぬ多勢力チームの一人は、えりすぐりとかそういう人物だろう。

 

 だが社会的立ち位置的に、どう考えてもおかしいとしか言いようがないのですが?

 

「……まぁ正論だね。俺もこの場所に座っていいのかとは思っているよ」

 

 そう同意を示すのは曹操だ。

 

 国際テロ組織のかつてのトップともいえた奴が、その国際テロ組織が関わっていることが確定している未曽有の事態の対策会議じみたところに集まっている。これは流石にツッコミ案件だろうさ。

 

 そしてそんなところに、俺も含めて座っている。

 

 ちなみに他に座って言える俺達側は赤龍帝に天使イリナとデュリオ、そして赤龍帝と同じグレモリー眷属の姫島朱乃様だ。もちろんヘラクレス達はいないし、グレモリー眷属も人数は絞っている。

 

 姫島朱乃様は、赤龍帝の主であり恋人でもあるリアス・グレモリー嬢の眷属として最古参かつ、側近といえる立場の女王(クイーン)。彼女自身が現在の神の子を見張る者で副総督を務められておられるバラキエル様の娘であるからこその席といえる。

 

 つまるところ、現在対応できるメンバーから代表者レベルが集まっているようなものだ。

 

 そこに俺がいるのは明らかに場違いなんだが。

 

 そう思っていると、アジュカ・ベルゼブブ様は小さく笑いながら一枚の書状を取り出した。

 

「その件だが、神の子を見張る者のシェムハザ総督から書状を預かっており、略式の任命をここでしよう。……エージェント青野レイズは、これより所属を神器対応部門から神の子を見張る者首脳部直轄に配置換えを行う……とのことだ。それに伴い権限も、一般エージェントから遥かに高まるので、名代としては十分だろう」

 

 ……え~……。

 

 思わず天を仰ぎたくなるが、そこは我慢。

 

 辞令が来た以上は仕方ない。異議申し立てはまぁ、ここですることでもないしな。

 

「承知いたしました。自分は十分です」

 

 そう答えてから着席し、俺は一呼吸を入れて心構えを切り替える。

 

 ……さて、ここからがややこしい会議の時間だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Other】

 

 

 

 

 

 

 

 

 青野レイズが着席して少し、躊躇いがちに片手を上げる者がいた。

 

「……あ~。ちょっといいッスか? ……俺、ここにいていいんですかね?」

 

 そう聞いてきたのは暁古城。第四真祖の吸血鬼。

 

 様々な事件に巻き込まれた来た結果、彼は絃神市国という国家の長として第四真祖の名を使っている。

 

 だがこれは便宜上と言ってもいい。国政の類などは基本的に委ねているし、資源やインフレの関係上日本国の中にある便宜上の特別自治区と言ってもいい程度。顔を正式に明かしているわけでもなく、ようは象徴性君主として名前を使っているだけと言ってもいい。

 

 その土地である人工島である絃神市も行方知れずであり、そもそもこの事態に関われる立場であるという意識が古城にはない。

 

 それに対し、やれやれと言わんばかりにため息をつく者がいる。

 

「……まったく。少しは状況と自分という存在を考えた方がいい」

 

 そう答えた男はスターダスト。

 

 シャイ達のいる世界の出身である、戦争をなくした当代のヒーローの一人と言ってもいい。同時に本名と素顔を唯一公表。世界的ロックスターとして慈善団体への多額の寄付など、間接的に救った人の数ならヒーローで最も多いと称される人物だ。

 

 その彼は、古城に態度に若干の不機嫌さをにじませながらサングラス越しに視線を向ける。

 

「曲がりなりにも世界大戦規模の事態を、その第四真祖の名で止めたということぐらいは聞いている。それだけのことをしている時点で世界的な影響力は無視できないんだ。これだけの事態に何もしないなんて言うんじゃないだろうね」

 

「……そこまでは言わねえけどよ」

 

 正論は正論なので古城が言い返せないでいるが、そこで意識を切り替えるようにポンと陶器の茶碗が置かれる音がする。

 

「まぁその辺でいいだろう。聞けば彼はあくまで高校生で、トラブルの方が襲い掛かってきた結果とも聞いている。それより、他の情勢について確認をしてからの方がいいはずだ」

 

 そう話を進めるのは、中野高等学園のコウチョウ。

 

 日本の諜報員の代表格でもあり、この場においてもその威厳と纏う雰囲気でほぼ全員から一目置かれることにも成功している。

 

「とりあえず、合衆国の方はある程度収まりができつつあるとは聞いているよ?」

 

「……元々CIAには異形方面担当の部署があり、こちらと連携取って主導権を握れたのが大きい。もっとも、それだけでは到底不可能だったがね」

 

 アジュカはそう告げるが、事実その通りだろう。

 

 奇跡的な幸運だった。禍の団の対応において、彼らが裏ルートで流通された悪魔に由来するアイテムの対応もあり、情報交換の為に上級悪魔がCIAに派遣されていたのだ。

 

 そこからアジュカ達魔王を経由する形で事態に対応。ある程度の対応力を獲得した段階で、更に一手が発生する。

 

「まさか一つの平行世界だけとはいえ、アメリカ合衆国の大統領が日本……それも、世界的ヒーローの実家に常連客として来ていたとはね。俺達四大魔王もフットワークは比較的軽い方だが、流石のサーゼクスもそこまで頻繁にはできないだろう」

 

「いや、本当に同感です。あの人達、どうやってスケジュール調整してるんだろうか。……結構前から、店主(母さん)がいなくても自分達で準備してコーヒー淹れて代金払って帰ってるし。……中二病、仕事している時は見せてないっぽいんだけど」

 

「……もうそれ、喫茶店じゃなくて現役中二病罹患者専用の有料サロンになってないか?」

 

 レイズが思わず真顔で呟くようなことを、若干すすけた顔で告げた観束総二は、その上でちょっと苦笑している。

 

「でもまぁ、うちの常連さんってその気になると世界中で何時起きるか分からない事態を世界に生中継とかできる人達だから。だいぶ楽になると思いますよ?」

 

「そうだな。幸か不幸かノリがセラフォルー達に近いところもあるし、一線をきちんと引けば連携に苦労はしないだろう。最低限世界の危機に連携を取り合えるのは良い事だ」

 

 アジュカが頷くと、その上でため息をつくのは一人の女性。

 

「ですが同時に、この日本を含めて大半の国家が平行世界が混ざり合ってしまっています。その所為で内政面や軍事面でどうしても歪みが生じておりますし、国内活動すらままならない国家がほぼ全てとなるでしょう」

 

 それを告げるのは、日本の超能力者を管理する組織たるB.A.B.E.Lの現局長。柏木朧。

 

 彼女の発言は、B.A.B.E.Lが日本内閣に属する機関であることに由来する厳然たる事実。

 

 実際問題、国家が国家として機能する為には政府機関がきちんと機能していることが必須。そしてそれはすなわち、繋がりを持った状態で活動できる状態であることが重要といえる。

 

 クリストフもそこは警戒していたのか、政府機関などがすべて一つの同じ世界で統一されないように動いている節がある。少なくとも日本及び合衆国に関してはその通りであり、他国に関してもそうなっている可能性が大とみなされている。

 

 ゆえに対策は必須であり、クリストフ幹部クラスであると目されるユーグリッド・ルキフグス及び、クリストフ最高幹部を自称したドグラ・マグラによる二度の襲撃を退けた者達に注目されることは当然だろう。

 

 その上で、事態は非常に不可思議な点も多い。

 

「逆に疑問点が多いのは、異形関連の方だろうね。……大半の勢力と連絡そのものは取れていると聞くが?」

 

 コウチョウが訪ねると、アジュカ・ベルゼブブもまたそれに頷く。

 

「我々悪魔や堕天使は冥界、天使達は天界、大半の神話体系もまたそれぞれの世界を持っているのだが、逆に耳を疑ったほどに和平を結べた勢力全てと連絡が繋がっている。この所為で返って地球とのずれが混乱を生んでおり、魔王のリーダー各であるサーゼクス・ルシファーや外交担当のセラフォルー・レヴィアタンが過労死寸前で忙しいことも俺が派遣された理由だ。軍事担当のファルビウム・アスモデウスも既にいくつか発生している小規模な揉め事から、対抗戦術の構築が必須としてこれまた忙しい。……身もふたもないことを言うと、技術担当の俺は当分そちらの仕事に回れないことでお鉢が回ってきた節がある」

 

「……あのファルビウム・アスモデウスが多忙を極めるとはね」

 

「……どういうことだい?」

 

 曹操がアジュカの言葉に戦慄を覚えていると、スターダストがそこに切り込む。

 

 まだ腹の内も分かってない相手の動向もあっての意見だが、曹操は苦笑していた。

 

「彼は悪魔でも指折りの怠け者でね。基本的な仕事をほぼ全てこなせる眷属を集めることに全力を出し、その後は最低限の仕事を責任を負う程度にとどめているのさ。有能な怠け者は司令官にせよとは言うが、その典型例だね」

 

「確か「夏休みの宿題を初日に全部終わらせるタイプ」って言われたっけ……」

 

 兵藤一誠がそれに続くが、この説明に誰もが若干緊張していく。

 

「そんな人が忙しくするほどの事態か……やばいなホント」

 

「……冗談きついぜ。どんな事態だよマジで……っ」

 

 そう呟いた観束総二と暁古城は、天を仰いで己の不幸を嘆いている。

 

「「そんな会議になんで俺が……」」

 

 その嘆きに、スターダストはため息をついた。

 

「情けないことを言わないでくれ。そもそも、そんなことを言える立場かい?」

 

 切れ味鋭めの言葉だが、スターダストとしては実際に若干の苛立ちも混じっている。

 

「片や世界大戦級の事態を止める為とはいえ、自身の肩書を使って一つの都市を丸ごと独立させた男。片や数多の平行世界を侵略する連中を相手に、真っ向から戦って首魁を打倒した男。それだけの力をそれだけ振るっておいて、今更こういった事態に何もしないなんて道理があるか」

 

 視線にも口調にも棘をあえて隠さず、スターダストは言い切っている。

 

「前もって言っておくが、僕は力を持っているのに何もしない奴が嫌いでね。それだけの力があれば、救える命も多いだろうに」

 

「……逆だろ逆」

 

 その言葉に、暁古城は真っ向から見据えるとはっきり言う。

 

「俺や観束みたいなガキが、力を持ってるからって勝手な判断で動く方がやばいだろうが。っていうか、俺はともかく観束はただの高校生だろ、オッサン」

 

 それは、暁古城の基本思想。

 

 第四真祖、焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)。その力を持っていることをきちんと意識している、彼なりの一つの結論だった。

 

 彼の戦いは一つとして、自身の野心や世界を塗り替えようとする思想に基づいたものではない。むしろそういった目的で自分の大切な物や日常を壊そうとしてくる者達に対する戦いを繰り広げており、第四真祖として絃神市国なんてものを設立させたこと自体、必要に迫られた最終手段。

 

 自他を問わずそういった肩書や潜在能力ばかりで見たりしない彼は、一国の姫君や王家の隠し子に対しても一人の少女として自然と見るスタンスを持っている。

 

「……高校生だろうが何だろうが、それだけの力を持っている時点で()()()なんて言うべきじゃないだろうけどね。まぁ、人間を遥かに超えた存在がたくさんいる世界だとそうもいかないだろうけど」

 

 だがスターダストにとっても己の持論は一つの哲学だ。

 

 曲がりなりにも何年もヒーローを続け、多くの慈善事業に出資してきた彼には彼なりの人生哲学という物がある。

 

 ある意味でヒーローとして、己の力に最も真摯に向き合っている存在といえる彼にとっては、力を持っていることに対する責任という物は重い。

 

「力あるから使わなきゃならないってわけじゃねえだろ。あえて使わないようにするって言ってんだよ」

 

「物は言いようだね。一見すると一理はあるか」

 

 視線が真っ向からぶつかり合うが、それに対して青野レイズは話を逸らすことを考える。

 

「……ちなみに、観束としてはどういう意見だ? なんだかんだで世界的影響力がある以上、一応聞いておかないと困るわけだが」

 

 その言葉に、観束総二は視線をそっと逸らした。

 

「……いやその、俺は基本的にツインテールを守るついでに世界を守ってるようなもんだから……困るぞ?」

 

 五秒ぐらい沈黙が響いた。

 

 ツインテールを守るついでに世界を救う。当人が本気で言っているし、何人かは既に聞いている。

 

 聞いているが、この状況下でそれを言っている辺り感じられる本気度が違う。

 

 その微妙な沈黙に対し、青野レイズはあえて軽い咳払いをしてから話を切り替える。

 

「増えた権限に慣れるのも兼ねて話を戻しますが、まぁそれに関しては一つの判断としてどちらも正論だと具申します。世の中、やりたいこととやるべきことは一致しませんし、そこに自分にできるかどうかを混ぜると更にややこしくなりますからね。あまりにろくでもない方向性でもない限り、お互いにある程度は妥協してもらいたいというのが正直な感想です」

 

「確かにその通り。……それに、今最優先にするべきことについてはこの場の全員が共通しているだろうしね」

 

 青野レイズに頷いたコウチョウは、その上でモニターに情報を出す。

 

 そこに映し出されるは、彼らが敵対しているドグラ・マグラによるいくつものテロ活動だ。

 

 女子高生が急に光り出したと思った瞬間、周囲を巻き込んで大爆発を起こす事例。

 

 大御所のバラエティ番組で司会をしていた男性と女性が、急に石のようになって砕け散る映像。

 

 更には日本の都市区画で、古いSF映画にでも出そうな四つ足の大型ドローンに攻撃を受ける映像。

 

「クリストフの二大中核組織が片割れを名乗っている組織「ドグラ・マグラ」は、世界中の政治、軍事、経済、メディアの分野の要で手の者を入り込んでしまっている、遺伝子操作を受けた新人類を称する組織だ」

 

 そう説明するコウチョウに、曹操が片手を軽く上げて質問の意を示す。

 

「世界を裏で支配しているにしては、今見せられた活動の必要性が見られないのは何故だろうか? 新技術の実験や暗殺にしても、もっとスマートにやる余地は多そうだけどね」

 

「いい質問だ、曹操君。これは私見ではあるが、彼らは優秀になりすぎたがゆえに想像力が乏しくなっているのだろう。その為にあえて混沌を創り出して旧人類たる我々を刺激し、新たに搾取する新技術を創り出そうとしている……というのが、私達が調べ上げ想定された内情であり……それはほぼ証明された」

 

 そう答えたコウチョウは、映像を切り替える。

 

 それは中野高校の監視システムからコピーした、彼らが戦っている映像。

 

 一時的にとはいえ動きが止まった対峙ののち、青野レイズ達が戦い始めたのがドグラ・マグラ首領その人。

 

「彼が野原君やそちらの兵藤君をスカウトする為に、文字通り心の内を見せつけたことでその根幹も見えた。ドグラ・マグラという組織はドグラ・マグラが"すごい未来"を見る為だけに作られた実験動物の群れ。その活動は全てが彼の持論である「締め上げることで未来を絞り出す」という一点に集約されているのだろう」

 

「……中年に見えて中身は質の悪い子供だな。相当いい歳だろうに」

 

「……しかも、それを実行できるだけの能力があるのが危険ですね」

 

 彼を直接見ていない、スターダストと柏木朧が明らかに表情を険しくする。

 

 その当然の反応に、唯一表情を変えていないアジュカ・ベルゼブブは曹操をちらりと見る。

 

「人間とは本当に、良くも悪くも可能性の塊だ。そう思わないかね、曹操」

 

「ええ全く。ドグラ・マグラは間違いなく、人間の可能性を英雄派(俺達)とは異なる形で突き詰めている存在ですね」

 

 曹操の微笑を軽く受け流しながら、アジュカは小さく映像を操作する。

 

「個人的にも非常に興味深いが、残念なことに奴らはあまりに混沌を起こしすぎている。俺も一応魔王をやっているのでね。禍の団とつるむだけのことはある彼らには壊滅していただきたいところだ」

 

 そう語るアジュカが映し出したのは、禍の団によってもたらされたテロの映像だ。

 

 紫の空の元、100mを超える体高の巨大な化け物が闊歩している。

 

 落とし穴や拘束といった妨害を意にも介さず、街を破壊していくその魔獣達は間違いなく大いなる脅威だ。

 

「こういったことを起こしている組織が俺達の敵である禍の団(カオス・ブリゲート)。そちらの曹操がこちら側の勢力に飼い殺しの憂き目に遭い、初期に主導していた初代魔王の末裔達もその殆どが滅んだ。……それを掌握してドグラ・マグラと並び立つ組織にしてしまった今の禍の団の盟主もまた、ドグラ・マグラのような能力だけが成長した子供のような手合いなのだろう。……しかも、非常に厄介なことを既にしているようでね」

 

 そう告げたうえで、アジュカは映し出された立体映像を操作した。

 

「俺達の要望で直接会議に出席はさせなかったが、その辺りの情報は彼に語ってもらった方がいいだろう。……申し訳ありませんが、そろそろ参加してもらいましょうか……天帝殿」

 

 その言葉に合わせて映し出されたのは、一人の恰幅のいい男性。

 

 脂肪は少なく、鍛えられたと言ってもいい筋肉質。映像越しに見える服装はアロハシャツで、サングラスをつけている。

 

 微妙に胡散臭い格好だが、同時にオフの日の国家元首のような印象も受ける。

 

 そんな男は、にやにやと笑いながら曹操の方を見た。

 

『お仕事ご苦労さん、曹操! 今の禍の団の幹部がそっちに行ったって聞いたが、ちょっと前まで仕切ってたお前さんとしてはどんな気分だ?』

 

「自分で挑むように命じておきながら、つくづく酷い神だ」

 

 苦笑まじりでそれを流し、曹操は肩をすくめながら周囲を見渡すと視線で映像の男性を指し示す。

 

「あちら、中国神話体系を統括する須弥山の長である、帝釈天殿だ。またの名をインドラ神といえば、海外の方にも分かり易いかな?」

 

『HAHAHA! たまたま日本の柴又に行ってたら巻き込まれて大変だったぜ! ま、一応俺が曹操の保護観察官ってところだな!』

 

 そう軽く言う帝釈天に、多くの者達は一種の畏怖を持ちながらも警戒心を併せ持ってしまう。

 

 仏教圏においては現世利益系の神の筆頭格が一つである帝釈天。中国における儒教及び道教の最高神である天帝。インド神話における太陽神にして雷神インドラ。

 

 その存在は、日本人の大半にとってある種畏敬の念を抱くべき信仰対象といえる。

 

 だが同時に、雰囲気がもう胡散臭い。なんならこんな会議にこんな格好で出ている点が、ありがたみを大きく削っている。

 

 だがそれを知ってか知らずか、帝釈天は面白そうな表情を浮かべながらも肩をすくめる。

 

『そんでもってだ、今回の事態、まだまだやばいところが隠れてるわけでな? その辺りの説明をさせてもらいに来たってわけだよ』

 

 ……その言葉に、彼らは誰もが押し黙る。

 

 状況は、今分かっている範囲では全く足りない。

 

 それほどまでに、クリストフは脅威なのだ。

 




 さて、第二章は戦闘をなるべく中心にしない方向で行きたいと思っております!
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