崇道の末裔   作:ちぇりー×ちぇりー

10 / 21
 


初陣

 アレから座学とシン・陰流の鍛錬を続けていた僕は、ついに任務に連れて行って貰えることとなった。

 昔と違い、人手不足というわけでは無いのだが、新人教育という名目で、ある人物に呼ばれた。

「櫛羅。どんな女がタイプだぅ。」

 嫌われているとは言われていたが……

 三輪さんは、彼が道場に入って来たことを見るなり、いきなりストレートを喰らわした。

 あと僕は、この方と面識がない。

「東堂さん。ソレやめてください。ホント恥ずかしいので。」

 三輪さんが冷めた目で、東堂さんを見ている。

 陽のモノに急に話を振られたような、気まずい気持ちになる。

 だけど、ここでしどろもどろになってしまうと、空気が悪くなることは火を見るより明らかなので、僕は思い切って答えた。

「胸の大きな女性ぃ。」

 後で考えても正気の沙汰とは思えない。

 三輪さんや、こけしちゃんがいる中で、ソレは無かった。

 三輪さんもこけしちゃんも、アレからしばらく口を聞いてくれなかった。

「つまらん男だ。」

 え? それだけ。

「正直、失望しました。櫛羅くんは違うと思っていたのに。真面目で誠実な子だと思っていたのに、こんなムッツリだったなんて。」

「櫛羅……最悪。」

「まぁまぁ。マジになんなよ三輪。男なんてみんな巨乳好きなんだよ。隠してるだけで。」

「俺はケツ派だぞ日下部。」

「話をややこしく、しないで下さい。」

 そんな中。

「へえ。胸派なの? 良いじゃん。」

 桃色の髪の好青年がそう呟いた。

 見た感じ、陽のモノだけど、嫌な感じがしない。彼からは、何とも言えない安心感を感じる。

「俺は虎杖悠仁。東京高のOBで今も呪術師やってんだ。」

「東堂に呼ばれてやって来てさぁ。ほんで新人教育っつうから飛んできたんだ。」

「よ、よろしくお願いします。」

「うんよろしく。」

「あっ。東堂くん久しぶり。」

 乙骨先生が道場に入ってくる。

「久しぶりだな乙骨。こっちで働いていたのか? 」

「家のこともあるし、五条家や禪院家に近い方が良いかなって。そんなことで転勤届を出してね。つい最近、京都高にやって来たんだ。」

「腕の呪具の調子はどうかな? 」

「ああ、術式もちゃんと()として認識している。防御にも使えるし、菓子を砕いて、ふりかけにも出来る。便利な呪具だ。」

 そう言って東堂さんは、自身の腕をグーパーして見せた。

「何だ、櫛羅、この下が気になるか? 」

「い、いえ。」

 東堂さんは、左腕の下を見せてくれた。

「任務で? ですか? 」

「そうだ。自分で斬り落とした。」

「忘れるな櫛羅。俺たちは呪術師だ。」

「ブラザーも俺も、乙骨もお前も。」

 僕はまだ東堂さんの言葉の意味を理解できなかった。

「はい。」

「良いだろう。いつかお前も、その言葉の意味を理解できる日が来る。」

 東堂さんは再び両腕に赤い鬼の手のようなモノを付けた。

「櫛羅くん。彼らのいうことを聞いて、絶対にハグれたらダメだよ。呪霊の生得領域の中はとても危険なんだ。」

「分かりました先生。」

 虎杖さんがみんなに手を振る。

「ほんじゃ行こうぜ東堂。早く行かないと、高田ちゃんが声当ててるロボットアニメ見れなくなるだろ? 」

「望むところだブラザー!! 」

  

 

          * * *

 

 

 

 僕たちは、窓の人の車に乗せられる。

 車は山を南に下り、下京区辺りで左折してから、東山へと向かった。

 トンネルの前で、僕たちは車から降ろされる。

「ここら一帯、墓地だったみたいなんだけど、気味悪がって誰も近づかないらしくてさぁ。死者の思念もあって、元々呪霊が生まれやすい場所ではあったらしいんだけど、そこにブログの都市伝説みたいなのが重なって、やべー呪霊が生まれたみたいなんだ。YouTuberみたいなのが入って来て被害が拡大したらいけないから、早めに処理してくれって伊地知さんが。」

「と、とりあえず帳を降ろさないと。」

「良いよ。俺やるから。」

 虎杖さんが手印を組むと、辺りが黒いレースのようなモノに包まれる。

「すまんなブラザー。俺は結界術が苦手で。」

「気にすんなよ東堂。コレも多分アイツ(・・・)の影響なんだ。

「うわっ。生得領域だ。」

「うわっ。一際不気味なのにあたっちゃったな。櫛羅くん大丈夫? 」

 トンネルの壁一体に、無数の目が映し出される。

「目を合わせるなよ櫛羅。呪霊は弱い獲物から狙う。」

「本人の前で言わないで下さいよ。」

「と言っても、向こうから来てくれないと、どうにもならないだよあー。このトンネルも無限に続くだろうし。俺、集団恐怖症だからさ。」

 そう言って虎杖さんは、壁の目たちと目を合わせている。

 えっ。あっ。

 僕は気がつくと、真っ暗な世界の中で一人佇んでいた。

 ソレから目が一つ……二つ……

「ふぃ。」

 血の気が引いていくのが分かる。

 上下左右あらゆる方向から目が出現し、獲物を見るような目でコチラを睨むと、ケラケラと嘲笑し始めた。

 コワイ

 サムイ

 だけど。

 僕も呪術師何だ。

 僕は『彼女』に魂を差し出し、対価として呪力を貰おうとする。

「領域展開。」

【五力傾奪】

 黒の心象世界は消え去り、地面から拳が生える。

 生得領域は徐々に塗り替えられていき、ボクシングリングが生成された。

 虎杖さん。東堂さん……そして呪霊。多腕の落武者のような風貌で、六本の腕には全て刀が握られている。

「ケケ? 」

「捉えた。」

 虎杖さんが、呪霊へと飛びかかる。

 彼が殴りかかると、呪霊の上に表示されている数字が『拾』から『玖』へと変わった。

 僕も参加しようと、呪力を練ろうとする。

 が、うまく生成できない。

「櫛羅。身体は常に鍛えておけ。呪詛師の術式によって呪力を剥奪されたり、一般人を巻き込まないために、呪力を制限しなければならない局面は必ずやってくる。」

「分かりました。」

 虎杖さんは、両手を顔の前で構えると、六本の刀から繰り出される斬撃を華麗に避け、ストレートで確実に数字を減らしていく。

 そこに東堂さんも加わり、呪霊の肩を両手でチョップした。

「東堂チョップ!! 」

「きえぇぇぇぇぇ。」

「東堂っ!! 」

「おう。ブラザー!! 」

 虎杖さんは、彼の肩に手をかけると、飛び上がり、足で呪霊の首をガッチリ掴むと、そのまま前に倒れ込むように倒立すると、呪霊を頭からリングの床にぶつける。

 東堂さんは、倒れた呪霊の胸ぐらを掴むと、ロープへと投げる。

 呪霊の数字が、『壱』に変わる。

 呪霊の投げた刀が、東堂さんの左頬を擦り、彼の頭の上の数字も『玖』に変わった。

 東堂さんは、虎杖さんの手を取ると、呪霊へ向けて思いっきり投げつけた。

 虎杖さんは、飛びながら、空中で一回転し、渾身の右ストレートを呪霊へとお見舞いする。

「ギエェェェェ。」

 呪霊の頭の上の数字が『零』に変わり、呪霊は虚空へと吸い込まれていく。

 ソレと同時に、リングも、巨大な腕も消滅し、僕たちは何の変哲もないトンネルの中で立っていた。

 

 

「本当にご迷惑をおかけしました。」

「良いって。あのまま生得領域の中を歩き続けるのも良くなかったし。」

「櫛羅。今日学んだことは? 何だ? 」

「人の忠告はしっかり聞くことですか? 」

「違う。」

 東堂さんは、僕の肩をパンパンと叩いた。

「身体を鍛えろ。巨乳の女にモテないぞ。」

「分かりました。」

「おっ、東堂。もうすぐ17時半だぜ。」

「何っ!! 」

「おい櫛羅。お前の寮にもテレビはあるだろ。」

「そりゃありますけど。」

「このままじゃ間に合わん。お前の部屋借りるぞ。」

「えっ。マジすか? 」

 部屋は適度に掃除しているけど。

「何もないですよ。」

「新田さん。コンビニ寄って。ジュースとポテチ買うから。」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。