崇道の末裔   作:ちぇりー×ちぇりー

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謀計

「みんな揃ったかな? 」

 男は、したり顔で火山の呪霊を見た。

 彼は呪霊としての素質は、真人に劣るが、責任感、思想、使命感、どれをとっても右に出る存在などいない。

 現に彼は特級呪霊たちを、まとめ上げ、今ここに招集している。

「で? 君の身体を取り戻すんだっけ? 羂索? 」

「そうだ。真人と私は、東京高に来てもらう。」

「ワシらはどうすればいい? 」

「君たちは京都高で、ある呪物を盗んできて欲しいんだ。」

「漏瑚・花御・陀艮でね。手筈通り、呪詛師たちに暴れてもらい、高専の守りを薄くする。」

「ある呪物とは? 」

 火山は息を呑んで男の返答を待った。

「___ふふふふふ。」

「フハハハハ。」

「1000よりもっと昔。私の先輩に当たる術師かな? 天皇の側近に謀反をかけた罪で流罪になった術師がいた。」

「厳密には流罪にされる途中で亡くなったんだけどね。」

「その怨念があまりにも強くて、手に負えないモノだから、今は京都高の保管庫で厳重に管理されている。ソレをとってきて欲しいんだよ。」

「ソレがワシらの希望になるのか? 」

「そうだよ漏瑚。第二の宿儺、いや、思想がある分、彼より厄介かもしれない。」

「私と、私たちと志を共にできる人物だ。」

 男は深呼吸した。

「だがね漏瑚。呪詛師に動いてもらうとはいえ、今の私はこんなのだ。別の術式が必要だ。ソレを手に入れるには、君たちの力が必要なんだよ。」

「加茂憲倫の術式、彼は私のとっておきでね。身体は……アレだが、赤血操術は呪霊操術と違って使い勝手が良い。勿論、この身体でも上手く使いこなせるだろう。」

「今の私の呪力では、封印を解くことが出来ない。だが、君たちの力を借りることが出来れば。」

「きな臭くなってきたなぁ。脳みそ。またオレを利用しよってんじゃ無いだろうな? 」

「虎杖悠仁。」

 銀髪の呪霊はその言葉に魂が震えた。

 彼の魂に刻まれた恐怖か、彼ともう一度戦える事へのイェーガーか、或いはその両方か。

「私に協力してくれれば、君が、もう一度、宿敵と対峙できる様にサポートしてやっても良い。」

「良いぜ。良いね!! 乗ってきたよ。その契約乗った。縛りだ。縛りを結べ羂索。」

「そうこなくっちゃな。」

 しめしめ。

 男は、ことが自分の思い通りに進んでいることに、満足感を得た。

 奴が死んでから、五条悟が死んでから自分の計画は面白い様に進んでいる。 

 

          * * *

 

 男は、加茂憲倫の身体を奈良の霊山の奥深くの祠に隠していた。

 奈良は良い。人が滅多に立ち入らないからである。

 人の出入りが少ないということは、人に見つかることが無いことは勿論のこと、人の死体という呪霊を引き付けやすいソレを呪霊から遠ざけられるという利点があった。

「ねぇ。羂索、まだぁ? 」

「見えてきたぞ。過去の私。」

「これが…… 脹相の血が流れているという加茂憲倫の身体ですか? 」

「理解できないね羂索。人に呪霊の子供を産ませるなんてさぁ。ソレに加茂家相伝の術式が脹相に流れていたってことは? 」

「子を成したいと思うのは、人間誰しも同じだ。子供を妊娠したこともある。」

 後ろで火山の呪霊が男の言葉に若干引いている。

夏油(・・)…気持ち……悪い。」

「仲間思いの君に言われると少々傷つくな陀艮。」

「さぁ、こうやって突っ立っている時間も無駄だ。早く術式の回収を済ませてしまおう。」

---接続(アダプト)---

 男は、一度、老人の死体に飛び移り、再び傀儡へと戻った。

「加茂憲倫の身体は要らないの? 」

「老人の身体は堪える。いくら一級術師だって言ってもね。特級術師の全盛期を模倣した、この身体の方が動きやすい。」

「彼の身体は術式の特性上、特異的なモノであったが、ソレよりも私が目を見張ったのは、その身体能力だよ。」

「妖術師タイプの術師でありながら、接近戦でも、あの乙骨憂太と渡り合った。皮肉にも彼の脅威は、特級認定されたその術式よりも、彼自身の恵まれた体格であったと、そう思わないか? 」

「人間らしい貧相な悩みだね。呪詛師もどこまで行っても、何年生きても、所詮は人間♫」

「真人、まだ君は私のことを勘違いしているみたいだ。私は術師としての自分に自負があるが、自分を超人的な人間だったり、選ばれた人間などとは考えていない。」

「いや、その自負があるからこそ、人間を愛し、人間の素晴らしさを称賛している。」

「私が暗躍するたびに、幾度もの特異能力者やら、天与呪縛を持ったイレギュラーやら、六眼保持者が私の前に立ちはだかったが、その中に誰一人として矮小な人間なぞ存在しなかった。」

「真人。君はまだ生まれて、生まれ変わって、まもない。君は矮小な人間としか巡り会えなかった。ソレを人間の全てだと、そう勘違いしていたんだ。」

 銀髪の呪霊は口を(すぼ)めた。

「ああ、年寄り臭いな。また説教かよ。老人の古臭い言葉はもう、うんざりなんだよ。」

「済まない。長く生きているとね。ついつい若者に口を出したくなってしまう。人間のサガだよ。」

「おせっかいなのは、人間も呪霊も同じか。」

「なんじゃと!! 」

 火山の呪霊の頭がプスプスと音を立てる。

「ああ、漏瑚が怒った。」

 呪霊たちがわちゃメチャしている中、男は、計画が成功した自分を想像し、エクスタシーに浸っていた。

 

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