崇道の末裔   作:ちぇりー×ちぇりー

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襲撃

「どうだい虹龍の背中は? 」

 男は術式の持ち主を羨んだ。

 彼は全てを持っていた。

 一般家庭の出でありながら、特異的な力を持ち、最強と肩を並べた。

 だけど、そんなことさえどうでも良い。

 この感覚は彼にしか、かつて最強だった彼にしか味わうことのできない頂の景色だった。

「正直、良さがよく分からないね。」

 銀髪の呪霊は自身の魂の形状を自由に変えられる。

 無論、手を翼に変えることも出来るし、口に(くちばし)を生やすことだって出来る。

 コレは、男からの提案だった。

 術式を使用すれば呪力を消費する。

 その分、男の使う呪霊操術という代物は、呪力消費が極端に少ないソレで、使い勝手が良い。

 彼は昔、俗世に触れて見たいという探究心から、家庭用ゲーム機に触れていたことを思い出した。

 最終決戦の前に、長い塔を登らなければならないが、その道中でマジックポイントを消費してしまうと、ラスボスを倒すのが極端に難しくなってしまう。

 だから彼は、道中で魔法を使わず、仲間の回復は、薬草のみに絞った。

「おんなじだよ。真人。」

「なーにがおんなじなのさ。」

「真人。君はRPGをやるといい。いや、シュミレーションも良いな。対局を見るのに役立つ。」

「そーんなに面白いのかい? ファミコンってやつは? 」

「真人、8ビットの骨董品なんて、今どきゲオにも売ってないよ。」

「さぁ。見えて来たよ。」

 男は目を細め、眉を(しか)めた。

「高専出の呪術師は律儀だね。客人に対する礼儀がなってる。」

「虎杖悠仁ィ。」

 銀髪の呪霊は彼を見るなり、彼に飛びかかった。

「やれやれ。うちの連れは礼儀がなってないな。」

 隣には一級術師、東堂葵の姿もある。

 彼の管轄は京都校のはずだが、そんなことは男にとってはどうでも良いことだった。 

 今は任務で、日車も伏黒も、野薔薇も居ない。

 彼らを保管庫から遠ざけられたのは、この上ない好機だ。

「待っていたぞ。偽夏油。」

「君は呪術師だろう? 恨みだとか仇討ちだとか、そういう類のモノとは無縁の人間だと思っていたんだが。」

 東堂は大きく四股を踏んだ。

「今は呪術師としてではなく、俺の師、九十九由基の恥を濯ぐためにお前と闘う。」

「だからこういう系とはやり合いたくないんだよ。」

 言葉とは裏腹に、男は武器(・・)を構えた。

 游雲 、特級の中で唯一術式を持たない呪具……そのレプリカだ。

<パン>

 人間の視界は左右に大体180度。

 だからこそ、背後からの奇襲に弱い。

 ソレは術師も同じ。

 無論、夏油傑を模した傀儡に乗り移っている男も……だ。

 ここは呪術高専、あらゆるモノが、彼の術式の対象となりうる。

 彼の背後からの攻撃を三節棍で受け止め、呪力操作で、彼の左腕に巻き付ける。

「ユルユル。」

 鬼ノ手が、彼の左腕から離れ、中から小刀が姿を現す。

「くっ。」

 身を捩り、刃を回避する。

 脇腹を擦り、緑の液体が溢れた。

「流石、IQ53万を自称するだけはある。」

 こういうパワー系でありながら頭脳戦もできる相手は手強い。

 小細工は効かないし、パワーで押し切られる可能性だってある。

 掴みどころのない相手。

 ソレは生涯で男が最も苦手とするタイプの相手だった。

 東堂は再び左腕に呪具を装着すると、

<パン>

 だが、男だって知略では負けていない。

 知略こそ、彼の生命線だった。

 (東堂)が次に考えること。

 ソレは呪具(・・)の奪取だろう。

「虎杖ぃ。お前にはもう宿儺はいないだろ? 」

 真人が虎杖に触れようとしている。

 ソレを彼が簡易領域で弾いているのを片目で見た。

 そして男は東堂の心臓を三節棍で突く。

 東堂葵が初めて驚きの表情を作る。

 この三節棍に呪力は宿っていない。

 男は東堂の顔を見るや否や、呪具を使うのをやめようと考えた。

 無論、呪具ほど便利な手数は無い。

 今の、全盛期とは程遠い彼なら尚更だ。

 だが、デメリットもある。

 呪力は探知される。

 そして……

<パン>

 追撃として喰らわせようとした左ストレートが、真人の顔に直撃する。

 当の東堂はというと、虎杖悠仁に反転術式を当てられていた。

 男は驚嘆する。

 ついに彼も、他人に反転術式を使えるようになったからだ。

「コレも宿儺の影響か。」 

「羂索、俺はアンタを親だなんて思っていない。」

「だけど、感謝している。俺を産んでくれたことを。そして、兄貴を作ってくれたことを。」

<パン>

 黒く光る閃光が私の顔を殴った。

 すかさず東堂の蹴りが、男の腹部を抉る。

 血液を固めて、なんとか攻撃を受け流す。

「ヒヒヒッ。」

 真人が虎杖に飛び掛かる。

 術式を使うためだ。

 彼は片手で真人の頭に触れると、簡易領域を彼の術式へと打ち込む。

「ぐがぁぁぁ。」

「何度でも殺す。」

「やりやがったなぁぁぁぁぁ。」

 真人は自分の術式を自壊させ、無為転変によって再生する。

「領域展開ぃ。」

【自閉円頓裹】

「お前をゆっくりいたぶって殺すつもりだったケド。気が変わった。」

「最初からこうしておけばよかったんだよ。」

 男は虎杖悠仁も東堂葵も簡易領域を展開していないことに気がつくと、状況を理解した。

 領域の対策。

「領域展開___」

【五力傾奪】

 男は生得領域が塗り替わる、その一瞬の隙を利用して、彌虚葛籠を張ると、領域から出る。

 思った通りだ。

 あの領域の中では、呪力が使えなくなる縛りな付与されている。

 究極の領域対策。

 簡易領域や、領域展延とは比にならない。

 塗り替える(・・・・・)ことすら許されない絶対領域。

 彼は戦慄した。

 もし自分が領域で戦いを挑もうとしていたら。

 閉じない領域を展開できる自分に奢っていたら。

 さぁ。自分の目的に集中しなくては。

「さぁ、保管庫は目の前だ。」

 男は目をギラつかせ、目の前のお宝に文字通り、喉から手を伸ばした。

「ちょっと待った!! 」

「来栖華か。右腕の調子はどうかな? 」

「今は伏黒よ。婿入りしたからね。」

 彼女が来たということは……

---接続(アダプト)---

 すかさず私は夏油傑に飛び乗った。

「その身体は乙骨先輩のお陰でスッカラカンだ。」

「言われなくても知っている。君は人を苛立たせるのが特異だね。」

 伏黒恵。予定より早いお帰りだ。

「蝦蟇で飛んできた。」

「なるほど、鵺を継承したか。」

「行くぞ華。」

 分かってる。

 分かってるさ。

「私は神にも仏にも愛されていない。」

「だけど。私は彼らに感謝しているんだ。」

「私を愉しませてくれてありがとうってね。」

 

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