崇道の末裔   作:ちぇりー×ちぇりー

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崇道の君

「Aプランは赤血操術を使い、呪術魔法陣で、天竺櫛羅の術式を、遺骸へと移すことだった。」

「だが、私は私自身のことをよく知っている。天元の同化を阻止できなかったのも、人類の進化計画を君、乙骨憂太に邪魔されたのもね。」

「人生とはそう上手くいかないモノなんだよ。君たち『天才』のシナリオはあまりにも良くできすぎている。そうは思わないかな? 」

「だから私には自然とサブプランを組む癖がついた。」

「死滅回游にて、天元型の昇華と吉野順平型の進化。プレイヤーに、受肉タイプと覚醒タイプの二種類を用意したのもそのためだ。」

「そして、今、この呪力の塊は、そう。天竺櫛羅。君の術式も刻まれているんだよ。」

「帷の膜に重ねるように別の結界を? 」

 乙骨先生が驚嘆する。

「コレが私の究極の一だよ。」

「儀式は完了した。ご苦労だったね天竺櫛羅。もうじき魂も底をつくだろう。ゆっくりお休み。」

 死に対する恐怖はない。

 このような状態になっても、まだ自分は、何者にも、なれなかった自分に悔いている。

「櫛羅くぅぅぅん!! 」

 乙骨先生が息を切らしてこちらに走ってくる。

 先生が手をかざそうとして、ソレをこけしちゃんが遮った。

「憂太は、あの悪いやつを倒しに行って。私の方が傷を治すのに、呪力消費が少ない。」

「頼んだよこけしちゃん。」

 こけしちゃんが僕の身体に手を当ててくれる。

 こけしちゃんの両手が光り、僕は血を吐いた。

「無駄だよ逆月小芥子。彼はもう魂の残量が残り少ない。反転術式で身体を直したところで、魂が回復するわけではないからね。」

「君のその行為は、魂が肉体を引っ張る行為を阻害することになる。逆に彼を苦しめることになるんじゃないかな。」

「うるさい。」

「……もういいんだ。こけしちゃん。大丈夫だから。」

「お前もうるさい。」

「僕たちは、みんなで呪術師なんだ。」

「じぁあここで死ぬな。お前は、ただ一人の私の同期なんだぞ。」

 崇道が口を開く。

「世を受肉させたのはお前か? 」

 彼は羂索に訊いた。

「そうだよ。大先輩さん。私も君と同じ、人類の昇華を志すモノ。方向性は多少違えども、お互い良いビジネスパートナーになれると思った。だから君を現代に呼んだだよ。」

「お前はなんのために、この呪術法陣を使うつもりだ? 」

「少なくとも、貴族たちが独占していた呪術を一般人にも広めるという崇高な理由では無いかな。私の行動はすべて自身の探究心から来るものだ。どうだい? 研究者みたいでカッコいいだろう。」

「つまらん。だが復活させてくれたことに感謝するぞ羂索よ。この身体、この術式。世は好きにするだけだ。」

「っと。」

 無言で突っ込んてきた虎杖さんを、彼は片手で受け止める。

「わけも分からず突っ込んでくるな。」

「俺、頭わるいから、難しいことは分かんねえけどよ。宿儺を受肉させた羂索がやったことは、多分人々にとって良くないことなんだと思う。俺、沢山の命をうばっちゃったからさ。」

「行くぞ。ブラザー。」

 東堂さんは、崇道と入れ替わると、羂索の左頬を殴った。

「あポけ。」

「やはり君の流れは読めないな東堂葵。」

「ソレが俺、東堂葵という人間だ。」

 ダブルバイセップス。

 そこへ真希さんが、上から、月輪を胸の前で構えながら急降下。

 羂索は避けざるおえない。

「乙骨!! 」

「パンッ。」

 東堂さんが、両手を叩くとともに、彼と先生が入れ替わる。

「任せてよ 。」

 先生は刀で羂索を斬り裂いた。

「刀を握るのは久しぶりかい? 感が鈍っているよ。」

 羂索は三節棍で刀を受け止める。

「リカっ!! 」

 先生の式神? は、崇道によって吹き飛ばされた。

「ガコン。」

 頭の法陣が回る音。

【無為転変】

 虎杖さんに触れるも、それは呪力ガードによって弾かれてしまう。

「この術式はちゃんと機能しているのか? 」

「彼が特別なだけだよ。身体の中に別の魂を抱えていた。だから魂の扱いが上手なんだ。」

「ソレより、こっちを相手してくれないかな。僕は君を受肉させるために、術式を二つも封じられているんだ。せめてその主を殺してくれれば、助かるんだけど。」

 崇道がこちらを見た。

「お前は世が家に残してきた妻の子供の子孫だな。」

「悪いけど、両親からは何も教えられていないんだ。」

「そうか……なら、世の式神だけは返してもらうぞ。」

【【シン・影流簡易領域】】

「師範……三輪さん。」

 その時、猫己に貰った鈴がチリンと鳴った。

「猫己……なんでここへ? 」

---猫己? はてだれのことかのぉ? アレはワシの半身じゃ。天竺家の分家はのぉ。代々娘の魂がワシの半身に喰われるんじゃ---

---お前たち本家の人間に一矢報いてやるためにな。監視してたんじゃ---

「猫己ぉ。」

「だから言ったじゃろ櫛ちゃん。女は怖いって。でも良かった。」

「こうやって娘のフリをしてやれば、顔を赤らめて、なんでも言うこときいてくれるからのぉ。それはそれで良かったけど。悪く思わないでね。私はちゃんと忠告したよ。君を傷つけないために……ね。」

 彼女は崇道の元へと歩いていく。

「ご主人様ぁ。お帰りなさいませ。」

「化け狐め。」

「照れてるのかなぁ? でも貴方様は私を欲してくれたでしょ。『俺の式神』って。」

「私の計画にお前の術式が必要なだけだ。」

 僕の身体から玉藻前が消えていくのが分かる。

 全て猫己の身体へと……

 彼女は、彼の首に後ろから手を回すと

【回帰】

 と一言だけ囁いた。

「グアアぁ。」

 崇道の身体が蠢き、僕は彼の身体に何が起こっているのかが分からなかった。

 あっという間に、彼は人間としての姿を取り戻し、人間(・・)として現代に復活する。

 玉藻前は、彼から離れると、僕の元へとやって来る。

 僕を庇おうとする師範たちを押し除けて、彼女は、僕の心臓へと手を当てた。

____身体の軋むような痛みが消える。

「ごめんね。櫛羅(・・)。君を救うには、この時間軸で、崇道を人間に戻すしか無かった。」

「魂の回帰……その術式欲しいィ!! 」

「ほう。自身の術式が、我が式神から、魂を守っていたか。」

「そうだよ。私の生得術式が、宿主の危機に対して強制発動するモノじゃなかったから、私の魂はとっくに、そこアバズレに食われていた。」

 崇道は両腕を呪術法陣へと置いた。

「ステージから遠ざかってしまったが、人間の身体でもできないことはない。」

「全国の民を、生きたまま呪霊にする計画はな。」

 羂索が声を荒げて辺りを見渡した。

「扉田。なぜ裏切った。」

 呪詛師は頭を掻きながら岩陰から出てきた。

「俺に猫己を連れて来いって言ったのは、お前だろ。」

「お前、知っていたな。」

「俺は人間の術師への昇華には賛成だが、呪霊化なんて聞いてない。」

「だから高専側につくことにしたのよ。いわゆる逆スパイってやつ。」

 崇道が両腕を挙げるとともに、猫己が僕の手を握った。

「さぁ。櫛羅。崇道を、あの術式を止めるよ。」

「止めるって? 」

「簡単なこと。玉藻前の生得術式に、君の術式と私の術式を合わせるの。」

 そんなことが?

「大丈夫。私は何度も何度も繰り返してきたの。もう失敗しないから。だから信じて櫛!! 」

「「領域展開。」」

 

 

 

【【阿吽万象・慙沙亜羅(アウンバンショウ・サンサアラ)】】

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