「なるほど。世の術式に割り込んだか。」
「ソレで、この、みずぽらしい生得領域で何が出来る? 」
できた。僕にも、僕たちにも虎杖さんと同じことが。
「赤の他人と、生得領域を共有して、領域展開をするなんて。」
乙骨先生が唖然としている。
「この領域なら、貴方を止められるわ崇道の君。そのために、何度も繰り返してきたから。自身の術式で。」
猫己が、急にコチラを見たので、僕は慌てて顔を背けた。
「櫛羅。君の術式で、龍脈に、私の力を流して。」
彼女が手を差し出してくる。
【無為転生】
そうしているうちに、崇道の君は、自身に宿る呪霊の力を使い、龍脈を通じて、人々を呪霊へと転生させる術を発動させる。
猫己が、僕の手を無理矢理握ると、龍脈へと僕の力を流し込む。
【阿吽転生】
僕に彼女の心が流れ込んでくる。
そして、僕の心が彼女へと……
「何を恥ずかしがってるの? 」
彼女は僕の心の障壁をぶち破って無理矢理入ってくる。
「何百、何千と繰り返してきて、ようやく分かったんだ私。」
「もう知ってるよ。君の心の奥深く。」
僕は彼女の手を握り返した。
「やっと握り返してきてくれた。」
もうこれ以上彼女に恥をかかせることなんて出来ない。
だから。
彼女の心。
不安。慈愛。使命感。親愛。悔恨。そして確固たる意思、その全てを、龍脈へと流し込む。
「____どこまでも世の邪魔をしてくるのだな。」
「私たちは貴方の子孫として、貴方の思惑を止める必要があった。」
「止める? 」
「大和国の民全てを呪術師にすることがか? 」
僕と猫己が彼の儀式に割り込んだことで、日本全国の一般人たちは呪術師へと昇華した。
「少し遅れただけだ。いずれ彼らは天元や両面宿儺と同じ存在になる。」
「私たちは進化しなきゃ行けない。だけどね。呪霊化は人類には早すぎたの。」
「私たちには、呪力という可能性の塊と向き合う時間が必要なの。」
「同じことだ。」
崇道の君は冷たい視線で、僕たちを見下した。
「ならば、今から彼らを殺せば良い。呪力を使わずに。」
「そんなことは僕たちがさせない。」
「……今回の櫛羅はアタリかも。」
「聞こえてるよ。猫己。」
【殺生破戒無慙】
領域内での攻撃は必中。
玉藻前の術式が、崇道の魂を抉る。
「人の身体とは、なんとも不便なものだな。」
彼の頭の法陣が回る。
「渾っ!! 」
【邪去侮の梯子】
僕は伏黒さんたちの背中に手を置き、彼らの術式を拡張した。
目を見開き、全力で彼らに呪力を注ぐ。
生得術式にアクセスし、回路を最適化する。
彼らの意思が自身に流れ込み。
また自分自身も励まさせる。
法陣は処理が終わる寸前で停止し、崇道の君から外れる。
「返してもらうぞ。俺の式神。」
伏黒さんの頭の上に法陣が浮かび上がる。
光輪を持った二人の術師は、飛び上がり、崇道の君の頭上で光柱を広げた。
「未だ虎杖!! 」
伏黒さんが叫ぶ。
乙骨先生が呪力を宿した石を投げる。
「いけ!! ブラザー。」
「パンッッッ。」
「ガッ!! 」
崇道の君の頬が鈍い音を立てる。
「お前の魂……掴んだ。」
僕は、彼らが崇道の君と戦っているのを横目に走り出し、羂索の元へと向かった。
「やはり、私に立ちはだかるのは、君だったか。乙骨憂太。」
「この数十年で、私は数えきれないことを学んだ。」
「自身が六眼に固執しすぎていたこと。」
「呪力を持たないモノの存在。」
「有り余る呪力を持ったモノの存在。」
「そして、
黒く光る三節棍を刀で受けとめ、赤い稲妻で弾き返す先生。
彼には何も言われなかったが、僕は赤黒く光った月輪を彼の懐へと叩き込む。
「君は素晴らしい。術師としてだけでは無い。五条悟にはない才能が。」
紅い筒が頭上から降ってくる。
足で弾き返す。
月輪を振り下ろす。
三節棍で防がれる。
羂索が左腕を隠していることを僕は知っている。
あえて、そこへと視線は向けない。
両腕を回転させ、彼の左ストレートを絡めとる。
黒い炎を呪具で掻き消し、彼の魂を削る。削る削る。
そのまま地面に放り投げる。
羂索は地面に亀裂を作りながら着地すると、反動で飛び上がる。
再び降ってくる三節棍を右肩で受ける。
呪力でガードし、左に回転すると、月輪をムチのように使い、彼の縫い目の部分を狙った。
夏油の頭の部分が回転し、本体が顕になる。
何かが僕を踏み台にして本体へと自身の術式を叩き込んだ。
「サンサーラ!! 」
「グハッ。」
猫己だ。
「もう、いったいなぁ。」
僕は頭に出来たコブをさすった。
「ドンマイ。」
羂索は頭を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。
「無駄だよ。コンテニュー。私が一番得意なことでね。」
「はガッ。」
夏油は羂索の首根っこを掴んだ。
「なるほど。私は
「だが、利用されていたのは私の方だったみたいだよ五条悟。」
「令和は平安以来の魔境だった…… 」
そこで、乙骨先生が彼の脳天へと刀を突き刺した。
「ありがとう夏油さん。」
「リカちゃん。彼の死体を頼む。もう誰にも冒涜されないように。」
彼の式神は、袈裟の男を両腕で抱き上げる。
「僕は夏油さんを弔いに行く。あとは頼んだよ櫛羅くん。」
向こうではまだ、僕の先祖が暴れていた。
「君はもう一人前だ。いつまでも君の手を握ってられない。」
「そうしなければ、君は飛べないから。」
「……分かりました。」
「行こう猫己。」
今度は僕が彼女の手を引く。
が、彼女の方が早くて、僕が彼女に引っ張られた。
「呪術に関したら、私の方がお姉さんだからね。」
彼女に合わしていた、それだけだ。
だが、ソレも余計な、お世話だったらしい。
驚く彼女を横目に、崇道の君へと疾走した。