崇道の末裔   作:ちぇりー×ちぇりー

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崇道の末裔

 虎杖さんと手を合わせて、赤鱗躍動を発動させる。

 彼の呪術が伝わり、僕の身体能力が著しく向上する。

「羂索がやられたか。」

 跳躍し、彼へと斬りかかる。

「ギンッ。」

 崇道の虹龍の皮膚が、僕の月輪を弾き返す。

 仕返しにとばかりに、彼の右腕が飛んでくる。

 彼に触れられたら終わり。

【シン・影流簡易領域】

 彼の無為転変を薄める。

 変異しかけた左肩を、猫己が『回帰』させる。

「汝の攻撃では、世に傷をつけることすら出来ん。」

「なんの。摩虎羅の法陣が無いお前なんてチョチョイのちょいだよ。」

「減らず口を。」

 真希さんが僕に何かを放り投げる。

「貸してやるよ。私のお気に入りだ。」

「大事に使えよ。私の妹の形見なんだから。」

 今なら見える、奴の魂の輪郭が。

 降り注ぐ火の矢を、月輪で捌き切ってから再び飛び上がる。

 崇道は、手元に薙刀を出現させると、僕を再び地面へと叩きつけようとしてくる。

 僕はソレを釈魂刀で薙刀ごと一刀両断した。

 僕は気を抜かない。

 奴の気配が五つに増えたことを肌身で感じ取ったからだ。

 そのうちの一体の影と僕の影が重なり、身体を拘束される。

「パンッ。」

 拍手の音と共に、刀を振り下ろす。

 影の術式を使ってきた崇道の後ろに東堂さんが回り込んでいたのが見えたからだ。

「パンッ。」

 次の拍手と共に、東堂さんと虎杖さんが入れ替わり、氷の術式を構えている崇道を殴り飛ばした。

 黒い閃光が、崇道の魂をとらえて、四散させる。

 崇道の呪力バリアーが弱まり、領域に付与された術式が彼の身体を蝕み始める。

「チッ。」

 彼は天逆鉾を構築すると、領域の外を目指した。

 彼らは別々の方向へと逃げ、阿吽万象・慙沙亜羅(アウンバンショウ・サンサアラ)を内側から破壊した。

 脳の中で何かがショートし、魂の輪郭が見えなくなる。

 猫己も同じ感覚に襲われたようで、頭痛がするのか、頭を抱えた。 

 そこに、玉藻前がやってくる。

 僕はソレを月輪で弾き返した。

「猫己に触れるな!! 」

「そこにいる猫己はお主の知っておる女ではないぞ。」

「なんせ、お前が惚れてあったのは、このワシだったんじゃからな。」

「櫛羅…… 今まで隠していてゴメン。だけど、こうしなければ…… 」

「何謝ってんだよ。」

 そうだ。謝るのは僕の方じゃないか。

 彼女は自身の術式で何度もやり直したのだ。この世界を。

 自分だけが、ことの行末を知っていた孤独なこの世界で。

 そんな彼女のことも知らず、僕は目の前のアバズレに恋をする人生を繰り返していた。

 彼女の正体に気がつくことができず。

「ゴメン、猫己。もう一度チャンスが欲しい。」

「お主、バカか? 」

 彼女は今、僕の式神であり、崇道の式神でもある。

 調伏した式神を拘束し、その術式を受ける。

「なるほど、玉藻前を束縛することで、自ら殺生石の贄となる。か。」

「だが、魂の残量は世の方が上。先に倒れるのはお主の方だぞ。」

「櫛羅。私、まだ術式が。」

「猫己。安心して。僕は死なないよ。」

 領域でだいぶ削り、虎杖さんたちの戦闘による消耗もある。

 ここまでして、だいぶ彼の魂を削った……と思う。底は既に見えている。

 釈魂刀を真希さんに手渡す。

「ありがとうございました。とても暖かい呪具です。」

「やはりお前には合わなかったか? 」

「今は見えないんです。魂が。」

 僕は玉藻前との縛りを利用して、呪力を底上げする。

「バカめ。自分から死期を早めるような真似を。」

 心なしか、いつもより多くの呪力が自分に宿る。

「なぁ。どうした? 櫛羅よ。そんなに拳から血管を浮かび上がらせて。」

「のぉ。今からでもやり直さんか? ワシとお主で。」

「今更止められないよ。契約は受理された。」

 逃げる彼女を追い、逃げた先で、穴にスッポリハマり、尻尾をフリフリと震わせる彼女を月輪で斬り裂く。

 そこに雷が落ちてくるので、月輪で斬り裂き、薄める。

 振り返ると、崇道が背中に雷太鼓を背負っている。

「式神ごと焼くなんて、あんまりじゃない? 」

「俺の枷になる式神などいらん。ソレより、なぜ生かした?」

「そうでもしないと、お前を殺せないだろう? 」

 雷を避けながら、血の気が引いていく彼へと距離を詰める。

 そして、彼へと赤黒い閃光を叩き込んだ。

 彼の鋼の皮膚が砕ける。

 割れた皮膚に月輪を叩き込む。

「屠れ月輪。」

 僕の言葉に答えたのか、呪具は青白く光ると、彼の皮膚を内側から破壊する。

 彼は即座に反転術式を使い、身体を再生させるも、以前のような虹龍の皮膚はもうない。 

 彼は自身の呪力を使い、僕の攻撃を防ぐようになった。

 だが、その攻撃も、僕の呪具の前では無意味だが。

 逃げる彼を呪力を燃やして追う。

 心臓が悲鳴をあげて、口と鼻から鮮血が拭き出した。

 ソレでも僕は辞めない。

 何者かになりたかっただとか、猫己への贖罪の気持ちだとか、そんなことさえもどうでも良かった。

 僕が彼を追い詰める理由はただ一つ。

 僕が呪術師だからだ。

 呪術師の家系に生まれた時点で、崇道家の人間として生まれて来た時点で、僕の運命・使命は決まっていた。

 だからこそ、僕の全力を持って彼を葬り去る。

 逃げる彼の背中を何度も何度も斬り裂いた。

 彼は僕を払い除けると、両手で印を組む。

【極ノ番・屍怨(シオン)

 彼は自身の呪力を両手の上にまとめ上げ、僕たちに向けてぶつかるつもりだ。

 まだ彼には、あれだけの呪力が残っていた。

 僕にはもう無い。

 虎杖さんが、領域の構えをとる。

「虎杖さん。僕に任せてください。いや、賭けください。貴方の呪力を。」

 術式が回復する。

 ソレと同時に、僕は龍脈へとアクセスした。

「こんなの柄じゃ無いこと、分かってるんです。」

「なんで僕がこの術式を持って生まれて来たかずっと考えていた。」

「けど、やっと分かったんだ。」

 術師となったみんなから呪力を分けてもらう。

 快く呪力を譲ってくれる人も、戸惑う人も、協力的で無い人も……

 様々な思念が僕の中に流れ込んでくる。

 僕は、乙骨先生や、虎杖さんみたいにオンリーワンにはなれないけど……

「みんなの力を束ねることは出来る。ソレが僕の力の本質だ。」【極ノ番・紫苑(シオン)

「耐え忍ぶこと。ソレが汝の答えか。」

「だが、信者を募り、考えを共にするモノと朝廷から逃げたところで何になった?」

「世は賊として追補使が派遣され、懸賞金をかけられ、多くの血が流れた。それだけだ。」

「窓たちは、お前の活躍を見ている。そして恐れるだろう。お前が次の私になることを……な。」

 彼はボロボロと崩れ去ると、顔のその一片が無くなるまで、静かで不敵な笑みを崩さなかった。

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