「ところで、君、呪力が…… 」
「僕はカクカクしかじか、コレまで起きたことを全て彼に話した。」
「そのことを、絶対上層部の人たちには話してはいけないよ。」
「ソレと、君の幼馴染の狐狸精猫己ちゃん。呪霊が見えるってことで、しばらく高専で預かることになったから。」
「彼女は呪霊を集めやすい体質なんだ。そういった理由からも、高専で匿うことにした。」
「ここ最近で、呪霊もまた活発化し始めたし。」
「彼女と少し話がしたいです。」
僕がそういうと、乙骨さんは少し考えて、ソレから答えた。
「分かった。取り合ってみるよ。」
* * *
しばらくすると、僕は、高専の地下の独房のような場所に連れてこられた。
乙骨さんは苦虫を噛む。ソレから口を開いた。
「こんなモノ匿うなんて言わないよね。」
「ごめんね櫛羅くん。僕は五条先生みたいな力は無いから。」
「当主って言っても、分家でもない外の人間。今、僕に出来るのはコレが精一杯だった。」
僕が……
「猫己さん。」
僕が檻をガシガシ揺らしながら話しかけると、彼女はこちらに気がついたようで、こちらにゆっくり歩いて来た。
「ごめんね猫己さん。僕のせいで、こんなことになっちゃって。強くなって必ず助けに来るから。それまで待ってて。」
彼女は何か言いたげだった。
「猫己さん。呪霊が見えていたんだね。」
「ごめん櫛ちゃん。櫛ちゃんにもちゃんと話しておくべきだった。だけど……… 」
「僕は大丈夫。大丈夫だから。」
僕は彼女をなんて励ませば良いのか分からなかった。
だけど、彼女を安心させる精一杯の言葉を捻り出さなきゃ。
「僕に任せて。」
ありきたりな言葉だけど、彼女は少しホッとしたようで、ふらりと倒れそうになる。
「危ない!! 」
僕の腕が檻の中へと入った。
激しい雷と共に、僕の右腕が焼ける。
だけど、彼女を上手く支えて見せた。
やればできるじゃないか櫛羅。
彼女は、僕の手を額に当てると、フラフラと元の場所へと帰っていった。
「手を出して。」
乙骨さんにそう言われて、右腕を差し出す。
彼の右掌がピカリと光り、僕の身体の火傷が、みるみるうちに治っていく。
「ありがとうございます。」
「なんてことないよ。こんなことぐらい。」
「んだ〜辛気臭ぇ野郎どもだな。」
「まだ若えんだから、そんな顔すんなよな二人揃ってよ。」
男は僕たちの前に立つと、肩をパンパンと叩いた。
「乙骨、こっちに来てたのか。久しぶりだな。」
「お久しぶりです日下部さん。」
「当主って呼べよ。なぁ
「日下部当主、折り合って頼みがあります。」
「言わなくても分かるよ。」
* * *
「コレはどういう? 」
僕は道場のような場所に連れてこられた。
「ホレ。」
日下部さんは、僕に二対の円盤のようなモノを投げつけて来た。
「チャクラムってんだ。でも、ただのチャクラムじゃねえぜ。」
「鎖で繋いで、真ん中に錘をつけて、鎖鎌としても使えようにした特注品だ。」
「窓の情報によれば、お前、相当器用なようじゃねえか。」
僕は頭が混乱して何を言ったら良いのか分からない。
「あっあの。」
日下部さんは、白線の後ろまで歩いていく。
「白線の後ろまで下がれ、ほんで構えろ。」
僕は言われるがままに、白線の後ろに立った。
乙骨さんが叫んだ。
「日下部さん。流石に無茶だ。」
「そうかな? 俺にはそうは見えないけどな。」
不意に視線から日下部さんが消える。
咄嗟にチャクラムをクロスさせ、日下部さんの竹刀をガッチリ受け止める。
「なぁ天竺って言ったな。」
「はい!! 」
「死にたくねえか? 」
「死にたく…… 」
ついさっきまで自分が殺されかけていたことを改めて実感する。
あの時の楽巌寺さんの顔を思い出して、足がすくんだ。
「死にたくないです!! 」
「合格だ!! 」
彼は、竹刀を引っ込めると、バックステップで後ろに下がった。
彼は肩に竹刀を担ぐ。
「シン・陰流ってのは、死にたくねえ奴のための流派だ。」
「決めた。お前を弟子に取る。」
「なぁ、異論はねえよな乙骨。」
「はい、僕も、任務があるので、いつでも彼を指導できるわけではありませんから」
「日下部さんと違ってね。」
「シー。弟子の前では良いカッコさせてくれよ。」
「っと。手が止まってんな。行くぜ。」
「ちょっと日下部さん!! 櫛羅くんは呪力を使うと!! 」
「聞こえねえぜ。」
日下部さんは、竹刀で納刀のような仕草を見せる。
彼の竹刀に呪力が宿りつつあるのが分かった。
呪力を流せるのは、何も自分の身体だけじゃないんだ。
自分以外の、ソレも非生物に流せるなんて。
僕は自分の両手に握られている、刃たちに、深く念じた。
心の中で、何かがジリジリと削られて、僕の刃にもメラメラと黒い炎が宿る。
「シン・陰流ぅ。」
【抜刀】
刃の速さが急激に加速する。
僕は両手のチャクラムから手を離すと、右手で錘を握った。
呪力を宿していた二対のチャクラムは、支えを失い、風船のように飛んでいく。
日下部さんの竹刀をガッツリ絡みとると、僕は、そのまま竹刀を地面に叩きつけた。
「おおっ。」
取った。
剣士は刀を取ってやれば、なんてことは無いだろう。
「なんてなぁ。」
「よっと。」
彼の竹刀の鍔から先がバキバキと折れる。
チャクラムに叩きつけられた竹刀を、無理矢理引き剥がしたからだ。
【朧月】
竹刀の先の、本来刃がある場所から、刀身の形をした呪力が溢れ出し、僕の腹部を突いた。
「がはっ。」
僕が立ちあがろうと顔を上げると。
「っと。チェックメイトだ。」
日下部さんは、僕の首に、呪力の刃を差し向けていた。
「ちょっとお灸を据えてやるつもりだったのに、ちょっとマジになっちゃったじゃねえか。」
「なぁ乙骨。」
「コイツは、すげえ術師になるぜ。」