世には眼鏡属性というものがあるそうだ。ということで、俺も眼鏡をかけてみることにした。しかし眼鏡属性とは何だろう。太陽光を集めて火でも起こすのだろうか。
翌日、伊達メガネをかけてみた俺の姿の感想を妹に求めた。妹は「アホっぽい。つか早く着替えてこいよ兄ちゃん、私まで遅刻しちゃう」と怒っていた。その後、急いで着替えて家を出たのだが、家に財布を忘れてしまったことに学校に着いてから気付いた。残念なことに、俺は昼飯抜きになってしまった。妹に頭を下げ金を借りるというのは、俺のなけなしのプライドが阻んでいたが為にすることは出来なかった。
「おはよう」
「おはよー。なになに?イメチェン?」
「そうだ」
こいつは佐倉、俺の隣の席の女子だ。制服のブレザーを改造したりピアスを着けていたりと、校則を違反しまくっている、かなり可愛いと評判の女子生徒だ。といっても犯罪行為はしていない。強いて言うなら、俺の鞄の中に盗聴器を入れていることが犯罪行為にあたりそうだ。まぁそれでこいつの気が済むのなら、俺としては問題ない。
「似合っているか?」
俺は佐倉に聞いた。自分で言うのも変だが、顔はそこそこ良い方だと思う。本当に変だな。こうなったのも妹の所為だ。何かにつけて「兄ちゃん顔はいいのになぁ」と言うのだから、俺もその気になってしまったではないか。
「んー、そこそこ」
「そりゃよかった」
「阿呆っぽいところが滅茶苦茶似合ってる。眼鏡かけただけなのに、人はこんなに阿呆面になるんだなぁ、て驚きを受けたよ」
「そんなにか?」
「そりゃもう」
俺は窓に映る自分を見つめた。窓には、丸眼鏡をかけた男が映っていた。その男は、何とも気の抜ける間抜け面を惜しげもなく晒していた。うむ、たしかに阿呆だ。
「しかし、眼鏡というのは違和感が凄いな。こんなところに物があっては集中出来ん」
俺は、眼鏡を外し机の上に置いた。
眼鏡を外した俺を見て、佐倉が一言言った。
「眼鏡かけててもかけてなくても、阿呆面なことに変わりないね」
「失礼なやつだな」
「ごめんごめん。親しき仲にも礼儀は必要なのに、少し無礼が過ぎたよ」
「まぁ、俺は器にヒビが入っていると医者に言われた男だからな。そんな些細なことは気にせんよ」
俺はそう言いつつも、少し気になったから再び窓に映る自分を見た。そこには、なんと驚いたことに、先程のとは微妙に違う阿呆が口をポカンと開けていたのだった。
「阿呆はどこにでもいるのだな」
「眼鏡で賢くなれたら苦労はないよ」