ーこれから貴女には、私と同じ風紀委員として活動して貰うわ。悪い事をしている人達を取り締まるの。それが貴女の役割。分からない事があったら私に聞いて。1つずつ、しっかり教えるからー
風紀委員会。ゲヘナ学園の風紀を取り締まる組織。
ゲヘナ学園は『自由』と『混沌』を校風としているのに、変な事を言うものだなと、私は首を傾げて見せた。
そもそも、私のような存在が、誰かを取り締まるだなんて、出来る訳がない。
私なんかにそんな資格がある筈がない。私は、誰かを傷付ける事しか出来ないのだから。
そんな私に人を取り締まるだなんて……馬鹿馬鹿しいにも程があるだろうに。
それでも彼女は、私の目を真っ直ぐに見つめて話を続けた。
ーコトリ、貴女はこれから沢山の事を学ぶの。少しずつでも良い。貴女が1日でも早く、1人前になれるように私も手伝うから。だから、宜しくねー
そう言って、彼女は私の頭を撫でてくれた。
あぁ、温かい手の温もりだ。心地良くて思わず目を細めてしまう。誰かに頭を撫でられたのはいつ以来だろう。それすら思い出せないくらい、誰かとこうして接した事が、私には無かったのだ。
私は貴女の言っている意味を理解できない。それでも、貴女の背中を追い続ければ、いつかは分かる日が来るのかな。
貴女が見ている世界を、私も見られるようになるのかな。
貴女の手を掴んだ時、私は信じてみようと思ったんだ。
私と同じように背格好は小さくとも、見つめるその背中は私よりも遥かに大きくて、とても頼もしく見えた。
私は貴女の背中をずっと追い続けてみようと思う。
この『風紀委員』という役割が、私にどんな変化をもたらすのかは想像出来ないけど、きっと悪い事じゃない筈なんだ。
貴女と共にいれば、何かが変わるかもしれない。あの日、あの時、あの場所で。貴女に出会えた事が私の運命だったなら。この『風紀委員』という役割が運命の歯車を回す鍵ならば、私はその役目を全うしてみせよう。
多くの事を学ぶ為に、私は貴女の背中を追う事にした。
化物と恐れられた私を受け入れてくれた貴女の……ヒナ委員長の背中を、私は……。
ですが、そう……ヒナ委員長は1つ、大事な事を忘れていた。
私は……私こと不死川 コトリは、まだゲヘナ学園の生徒ではない事に。
私……まだ中等部なんだよなぁ……。
どうしようこれ。言った方が良いのかな?
でも、今更『実は、私まだ中等部なんです』とか言うのは気まずいなぁ……。
う~んと唸りながら私が悩んでいると、ヒナ委員長が私に話し掛けて来た。
「どうしたのコトリ? 悩み事?」
「……えっ!? あ、いや……」
「何かあるなら私に言ってね。出来る限りの事はするから」
そう言ってヒナ委員長は、ニッコリと微笑んでくれた。あぁ……その笑顔が私の心をポカポカさせてくれるんですよねぇ。
……きっと、多分、大丈夫だろう。話の腰を折るのもヒナ委員長に失礼だ。
それに、ゲヘナに入学すれば何の問題もないのです。
残念な事に、私には角もなければ尻尾もないけど、真っ黒な羽をもってます。トリニティの正義実現委員会と言われたら何も言えませんが、雰囲気的にはゲヘナでので……うん、きっと大丈夫。
私はゲヘナで、ヒナ委員長と共に『風紀委員』として、このゲヘナ学園をより良い環境にしていくんだ。
結局私が中等部だとヒナ委員長に気付かれて、色々と大変でしたが、それ以外は万事問題なくというやつです。
そう、この物語は、ゲヘナ学園を支配していた雷帝が失脚し、ヒナ委員長がまだ1年生だった頃の物語である。
※不死川 コトリはまだ中等部であり、ゲヘナ学園の生徒ではない。それでも、ヒナ委員長から風紀委員会に入るよう言われた為、その言葉に従い、風紀委員会に所属する事となったコトリである。
尚、この世界線のコトリはゲヘナ学園の2年生になっても、体躯は当時に近い背格好であり、ヒナ委員長とあまり変わらない背丈なのでした。
神秘の暴走も少なくはあるが、元作である『風紀の狂犬』と比べると、暴走する可能性は限りなくゼロに近い。
此処は、そんな世界線なのである。
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