風紀の狂犬ちゃん   作:モノクロさん

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無事にコミケの原稿とグッズを印刷所に提出できました!!
後は印刷所からの指示を待つだけです!!


着物姿の令嬢

ーゲヘナー

 ある日を境に、ゲヘナでまことしやかな噂が流れ始める。

 

 着物姿の令嬢が大量の銃火器を取り引きしていると。

 

 一般的なお店から盗品や非公式の品まで全て、ありとあらゆるルートで取り引きしていると。

 

 羽振りが良く、多少値をふっかけても、必ず買い取ってくれると。

 

 そして……とあるゲヘナ生徒はこう語る『アレは悪魔だ』と。

 

 

 

 

 

 ゲヘナ自治区でも治安が悪く、不良生徒達の巣窟と化した廃墟。

 

 そこに、その場には似つかわしくない身綺麗な着物に身を包んだ令嬢がいた。

 

 長く、艶のある黒髪に、薄く化粧を施した顔。豊満な胸と、女性らしい曲線美が着物に包まれながらも目立つ彼女は『羽振りが良い』という評判通り、大量の銃火器を取り引きしていた。

 

「ふむ……では、これにて取り引きは成立という事でよいのじゃな?」

 

 そう言って、彼女はにっこりと微笑む。

 

「えぇ、はい……そうですが……」

 

 そんな彼女の様子に、取り引き相手である不良生徒は戸惑いの色を隠せない。そんな様子に彼女は『はて?』と首を傾げながら、言葉を続ける。

 

「何か問題でもあるかえ? この取り引きはそちらから持ちかけたものじゃが、もしや何か不満でも?」

 

「い、いえ……その」

 

 そんな彼女の問い掛けに不良生徒は言葉を詰まらせる。そして、彼女はそんな不良生徒に対して『あぁ』と呟くと。

 

「もしや、この取り引きが何か『非合法』なものであると疑っておるのか?」

 

 そう言って彼女は微笑む。その微笑みに不良生徒は何も言えず黙り込むしかない。

 

 そんな様子に彼女は妖艶に笑うと、手に入れた銃を指先で撫で、そして不良生徒に向かってこう呟いた。

 

「安心せい、この取り引きは『合法』じゃよ。妾が望み、そして主らがそれに応えてくれた。それだけの事なのじゃからな」

 

 その笑みに、不良生徒は何も言えず。ただ彼女の言葉に従うしかなかった。

 

「さて……では、妾はそろそろお暇するとしようかの」

 

 そんな不良生徒の様子を尻目に彼女はそう呟くと『あぁ』と呟きつつ、振り返り際に口角を吊り上げて笑うのであった。

 

「以前、妾との取り引きで不敬を働くものがおってな。其方の良い値で対応したと言うのに欲をかいた結果、取り引きの最中、妾に銃を向けたのじゃよ」

 

「は、はぁ……」

 

 そんな彼女の呟きに不良生徒は首を傾げる。一体彼女は何を話し始めるのか?

 

 しかし、そんな疑問を他所に彼女は続ける。

 

「あぁ、あれは傑作じゃった。妾が一人と侮り、数だけ揃えただけの烏合の衆が、妾に銃を向けるのじゃからな」

 

 彼女はそう言って笑う。しかし、その笑みは何処か狂気じみており、不良生徒は冷や汗を流し始める。

 

 そんな様子に気付いたのか気付いてないのか。いや、恐らく気付いた上で彼女の口は止まらないだろう。

 

「故に『不敬』の代償は払ってもらった。外にいた連中みたくな」

 

「っ……!?」

 

 彼女のその言葉に不良生徒達がビクリと身体を震わせる。

 

 そんな彼女達の反応に『おや?』と首を傾げるも、すぐに得心したように頷くと。

 

「あぁ、安心せい。別に妾は其方等をどうこうするつもりはないのでな」

 

 そう言って、彼女は不良生徒に向かって微笑む。しかし、その微笑みは何処か不気味で……そして、彼女の言葉に嘘はないと感じさせたのだった。

 

 そんな彼女に不良生徒が何も言えず黙り込む中。彼女は『さて』と言いながら手を叩いた。

 

「ゆくぞ、ヒノエ」

 

「畏まりました主人殿」

 

 そんな彼女の呼び掛けに、建物の外から一人の少女が姿を現す。茶色みかかったポニーテールが特徴的な山伏姿の……ヒノエと呼ばれた少女は、取り引きされた銃火器を回収し、身綺麗な着物に身を包んだ令嬢……シオンに恭しく頭を垂れた。

 

「では、妾達はこれにて失礼するぞ」

 

 そう言ってシオンは歩き出す。その後ろに付き従うようにヒノエも歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 建物の外に出れば、シオンの言う通り、多くの不良生徒達がいた。

 

 しかし、彼女達の頭上には本来存在するはずのヘイローがない。

 

 そう、皆が皆、意識を刈り取られ、地面に倒れていたのだ。

 

「ヒノエ、摘み食いも程々にな」

 

「失礼しました。主人殿」

 

「否、妾は構わぬがな。この様な稚魚相手に、其方の牙は勿体ない」

 

 そんなシオンの言葉にヒノエは小さく笑う。

 

「主人殿にそう言って頂けるのなら光栄じゃな」

 

「うむ……では帰るぞ、妾達の『屋敷』へな」

 

「はっ!」

 

 そうして、彼女達は取り引きを無事に済ませ、ゲヘナに設けた拠点へと帰還する。

 

 大量の銃火器。大量の爆発物。そして、ヒノエの主人と称されるシオンの寝室には、大量の絡繰人形が鎮座していた。

 

「さて……そろそろ『種』を蒔こうかの」

 

 そんなシオンの言葉にヒノエは恭しく頭を下げると、その背後にいた絡繰人形達も一斉に頭を下げたのだった。

 

「『絡繰演舞 戯ノ章』」

 

 艶やかな声量と共に、絡繰人形達が一斉に動き出す。まるで意思をもった生き物のように……否、まるで生き物そのもののように。

 

 舞台は整えた。後は観客達が彼女達の舞台に心奪われるのを待つだけだ。

 

「さぁ……見遣れ、見遣れ、見遣れ。是なるは一国を揺るがす人形達の戯れである。妾達の『戯』に心奪われるが良い」




キャラクター紹介
・百鬼夜行『絡繰演舞』所属
松永 シオン
着物姿の令嬢。『絡繰演舞』の部長であり、後述するヒノエの主人。

種島 ヒノエ
山伏姿の少女。百鬼夜行の外に出る際はシオンが用意した服を見に纏い、放浪している。

二人とも、かなりヤバい。

感想ありがとうございます。
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