何が起こった?
巡回中、ゲヘナの自治区の至る所で爆発が起き、その対処に出向いた風紀委員会の生徒達からの連絡が途絶えた。
最初は一部の問題児達による暴動と考えたが、規模があまりにも大きすぎる。小規模な小競り合いの後、少し遅れて爆発と共に黒煙が立ち上る。
まるで、戦闘になった後、敵対する者達を巻き込む形で『自爆』しているような、そんな印象を受けた。
「ヒナ委員長、私達はどうすれば……」
「そうね……今は状況確認が先決。本部に戻って情報を集めるわよ」
そう言って、動揺する部下達に指示を送り、ヒナは本部へ帰還しようとした。
しかし、彼女達の行く手を阻むように、複数の絡繰人形が姿を現した。
「っ……!?」
人形達がヒナを視界に捉え、一斉に銃口を向ける。
「ヒナ委員長っ!!」
そんな部下達の叫び声。それと同時に、複数の銃火器からヒナ目掛けて銃弾が放たれる。
豪雨の様に降り注ぐ銃弾は、しかしヒナの身体を傷付ける事は無かった。
腰の付け根から生えた翼が広げられ、銃弾の雨からヒナを守る様にヒナの身体を包み込んだのだ。
そして、銃弾が止むと同時に所持していたMGを人形達に向けて構え、引き金を引いた。銃口から放たれた銃弾が絡繰人形達を襲い、数体纏めて貫き爆散させる。他の生徒や市民を襲った時のように蜘蛛の形態になる暇もなく、人形達は沈黙したのだった。
「大丈夫?」
「は……はいっ!!」
ヒナの問い掛けに風紀委員会の生徒達が頷く。そんな彼女達の様子を確認しつつ、ヒナは周囲を警戒しながら絡繰人形の残骸へと近付く。
動く様子はない。完全に沈黙したようだ。絡繰の知識に乏しいヒナだが、それが精巧に造られた物という事は理解出来る。
細部にまで拘った造形。それでいて、内部の構造も様々な機能を施されており、まるで生きているかのような、そんな錯覚すら感じてしまう。
装甲となる部分は、鋼鉄の鉄板を加工して造られており、ある程度のダメージを受ければ、内部の機構が露出し、自爆するという仕組みのようだ。
「厄介な物を送り込んで来たわね」
そう呟きつつヒナは人形の残骸を見下ろす。こんな代物を量産して送り込むなど正気の沙汰とは思えない。
いや、それ以前に、この様な代物をゲヘナに投入して、一体何の意味があるのだろうか?
ヒナは暫し考え込む。しかし、答えは出ない。
(……考えても仕方がないわね)
そんな思考に区切りを付けながら、ヒナは風紀委員会の生徒達へと向き直る。
「風紀委員会全員にこれの情報を共有する事。それと、行動する時は複数で行動する事。単独行動は厳禁よ」
「はいっ!!」
そんなヒナの言葉に風紀委員会の生徒達は頷く。それを確認し、ヒナは再び歩き出したのだった。
「ほぉ、少し見ただけでそこまで見抜くか」
ヒナ達が絡繰人形の残骸から情報を収集している最中、シオンは面白そうな表情を浮かべながら呟いた。
「流石は空崎 ヒナといった所か」
小手調べとして近くにいた絡繰人形達をけしかけたが、一瞬で無力化され、あまつさえ情報すらも引き出されてしまう。
「これは……妾も本気を出すかの。ふふ、負けると分かっていてなお本気で挑むとは。あぁ、愉快じゃな」
そんな独り言を呟きつつ、シオンは笑みを浮かべる。そして……。
「さぁ、見遣れ。見遣れ。見遣れ……これなるは裏切りの物語。空崎 ヒナよ。お主は同胞を撃てるかえ?」
舞うように袖を振るい。そこから無数の小型の蜘蛛の絡繰達が這い出てくる。
まるで意思を持ったかのように動き出す絡繰達。それらに指示を出すように、シオンは嗤うのだった。
「いざ見遣れ……『絡繰演舞 離間ノ章』」
無数の蜘蛛達が風紀委員会の生徒達の背後へと忍び寄る。そして、彼女達に気付かれないように服の中へと侵入し、そして……。
「…………ぇ?」
風紀委員会の生徒達の手に握られていた銃口が一斉にヒナへと向けられ、その引き金が引かれる。そして、無数の銃弾がヒナの身体を穿つのだった。
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