爆発の影響で、周囲の建物のガラスが割れ、炎が燃え広がる。そんな炎に包まれた街中で、瓦礫の山が崩れると共に、ヒナが姿を現した。
至近距離からの、そして、シオンが用意した特製の爆発物は、如何に頑強なヒナといえど無傷では済まず、服は所々が破れ、露出した肌からは火傷と裂傷が散見される。
寧ろ、それだけで済んだだけでも、ヒナという人物が、如何に規格外の存在かが知らしめるには十分なものだった。
そして何より、瓦礫の山から引き上げた彼女の右手には、大破したシオンが握られていた。
「なぜ……妾を助けた? 空崎 ヒナ」
シオンの疑問に、ヒナは淡々とした口調で言葉を返す。
「別に、たいした理由じゃないわ。貴女が自爆してまで私を足止めする理由……それが知りたかっただけ」
ヒナの言葉に、シオンは『そうか……』と呟くと静かに目を閉じる。そんなシオンにヒナは静かに問い掛けた。
「ねぇ……教えてもらえるかしら? 貴女の目的は何? 何故コトリを狙っているの?」
そんなヒナの疑問に対し、シオンはゆっくりと口を開くのだった。
「……求められたから応えたのみじゃ。不死川 コトリとの戦場を求められ、それに応じた」
「自治区を無差別に攻撃した理由は?」
「風紀委員会の戦力を分散させる為じゃ」
「コトリを……どうするつもりなの?」
そんなヒナの問い掛けに対し、シオンは『ふふ……』と小さく笑みを浮かべると、静かに口を開いた。
「……分かりきった事を聞くでない。『アレ』は化物じゃ。そして、『アレ』を求めた彼奴もまた、同じくな」
シオンの言葉にヒナは眉を顰める。そして、そんなヒナに対し、シオンは静かに言葉を紡ぐのだった。
「空崎 ヒナよ……お主は言うのじゃろう。『奴は化物ではない』と……なんと、なんと残酷な言葉じゃ」
「何が言いたいの?」
ヒナは訝しむように問い掛ける。そんなヒナにシオンは静かに言葉を告げるのだった。
「如何にうわべの言葉を飾ろうと本質は変わらぬ。人の思いは、人の認識とはそういうものじゃ。お主一人が否定しようと、彼奴の『本質』は変わらぬ」
そう言って、一呼吸おき、そして告げるのだった。
「彼奴は、『化物』じゃよ。彼奴と共鳴した……種島 ヒノエもまたな」
「……種島 ヒノエ」
シオンと共に百鬼夜行において危険人物として挙げられた人物だ。
その本質は『戦狂い』であり、あの『災厄の狐』と称される狐坂 ワカモと比肩しうる程の危険人物だ。
「妾は応えただけじゃ。望むものを全て、全てじゃ……お主を此処にとどめる時間も十分に稼いだ。この後の事など、どうとでもするが良い」
そう言って、シオンは笑みを浮かべる。役目を終えた人形。しかし最後に紡いだ言葉は、ヒナを驚愕させた。
そして、慌ててその場から走り去るヒナを横目に、シオンは力なく笑う。
「ふふ……種島 ヒノエと不死川 コトリが邂逅する『戦場』は、きっと妾の予想を遥かに超える事になるじゃろうな……」
そんな呟きと共に、シオンの意識は途絶えるのであった。
おまけ
シオンにとって、ヒナの足止めが成功した事で役目は果たした。
後の事は全てヒノエに任せている。なお、この後、シオンは駆け付けたゲヘナの風紀委員会に身柄を拘束されるが……
感想ありがとうございます。
凄く励みになっています。