この物語は不死川 小鳥が活躍する『風紀の狂犬』とも似通った世界線でもあります。そこに登場するオリキャラも登場しますが、コトリちゃんとは初見です。
不死川 コトリは自問自答する。
鏡に映る自身をジッと見つめ、ヒナ委員長から教わった風紀委員会のメンバーとしての有り様を。
素行の悪い不良生徒や犯罪者に対しては問題なく対応出来る。
武力行使という形であれば、自分の力は問題なく発揮出来るだろう。
しかし、それだけではいけない。
風紀委員会の務めとは、暴力装置だけではないのだから。
困っている人がいれば親身になって手助けし、正しい方向へと導く。どう導くかまでは、未だによく分からない。『むーっ』と唸りながら、鏡の前で首を捻る。
ヒナ委員長は、困っている人に対しての接し方や言葉使い、立ち振る舞いを丁寧に指導してくれた。しかし、コトリにはそれが上手く出来ない。
他人と接する方法に疎い事は自覚している。それらを学ぶ事が、如何に重要な事かも分かってはいる。
しかし、自然にそう振る舞えないのも分かってはいる。他人との接し方など今更と思う気持ちもあるが、一方でヒナ委員長には役に立ちたいと思っている自分もいる。
コトリは、鏡に映る自分を見つめる。年は1つしか変わらず、身長はヒナ委員長よりも少し小さい。それでも、コトリから見たヒナ委員長の背中は、あまりにも大きかった。
だから、追いつきたい。支えたい。そんな気持ちは強くあるが、長年染み付いてしまった苦手意識がそれを許さない。
だが、徐々にで構わないだろう。何も今日や明日すぐに出来るようになる事ではない。
ならば、目先の目標からコツコツと頑張る事にしようと、コトリは鏡に映る自分自身と向き合うのだった。
学校を終え、風紀委員会としての活動に従事する。今日は自治区の巡回だ。
何もなければそれが1番なのだが、ゲヘナでは平穏という言葉と縁遠い。常に銃声と怒声の喧騒が鳴り止まない、自由と混沌を体現した自治区である。
それがゲヘナだ。
自治区を巡回するコトリは、その喧騒を耳にしながら、1つ、また1つと、自治区の不良生徒や問題行為を取り締まるのを忘れない。
そして、巡回を続けて暫くすると、コトリの耳がある音を拾う。それは、子供の泣き声だった。
その子供の泣き声を聞いたコトリは、そちらの方へ駆けていった。
コトリの耳がある音を拾った位置は、自治区の奥の奥。お世辞にも治安が良いとは決して言い難い。
もしかしたら、何かの事件に巻き込まれているのかもしれないと、コトリは足早にその場所へと向かった。
その場所に着くと、薄暗い路地裏では小さな女の子が蹲って泣いていた。
年は自分よりも若い。黒髪のロングヘアーにすらりとした華奢な体躯。
薄手のワンピースにサンダルと、場違い感が否めない服装をしている。
女の子は、恐怖からか震えながら、座り込んで涙を流していた。
コトリは蹲る少女に視線を合わせるように屈み、話を聞く事にする。
「えっと……こんにちは、お嬢さん。こんな所で何をしているのかな?」
出来るだけ穏やかな口調で話しかけるコトリ。恐怖により、引き攣った顔を浮かべる女の子は、近付いてくるコトリに対して警戒心を露にしていた。しかし、コトリはそれに構う事もなく話を続けた。
何処から来たのか?
「わ゛がん゛な゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」
何故此処にいるのか?
「ま゛よ゛っ゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
住所は覚えているのか?
「わ゛がん゛な゛ぁ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」
聞いてもそんな返答しか返って来ない。まずは此処が危険である事を説明すべきだろうか?
「と……とりあえず、安全な所まで移動しようか。お嬢さんお名前は?」
その問いに答えるかのように、少女はぽそりと口を開いた。
「…………………………レン」
どうやらこの子はレンというらしい。コトリはレンをおんぶして立ち上がり、風紀委員会本部に向かう事にした。
「取り敢えず、此処は危ないから風紀委員会の本部に行くね。そこで、レンちゃんの名前から色々と調べて貰うからねぇ」
コトリにそう言われると、レンは体をびくりと震わせて、じたばたと抵抗し始めた。
「や゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛!! お゛う゛ぢがえ゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ!!」
「だ、大丈夫。怖くないからねぇ。お姉ちゃんみたいな人達がレンちゃんのお家までしっかり送ってあげるからねぇ」
「ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!! ね゛ぇ゛ぢゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!! ごぇ゛ぇ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」
コトリは、レンをあやしながら、彼女の家まで送る為に風紀委員会本部へと戻るのであった。
評価や感想などして頂けると嬉しいです。