風紀の狂犬ちゃん   作:モノクロさん

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各校の要注意人物

 コトリが風紀委員会に所属するようになってから数ヶ月が経過した。

 

 仕事にも大分慣れてきて、他の風紀委員会の生徒と一緒に巡回任務。それが終わった後は執務室でヒナに報告をするのが日課となっていた。

 

「お疲れ様。今日も何事もなく終わったみたいね。ありがとう」

 

「いえ、風紀委員として当然の事をしたまでです」

 

 ヒナ委員長の言葉に、コトリはそう答えると、『ふふっ』と小さく笑うのであった。

 

「少しずつ、貴女も此処に馴染んできたわね」

 

「そうですか?」

 

 コトリがそう聞き返すと、ヒナ委員長は『えぇ』と言って頷く。そして少し間を置いてから言葉を続けるのであった。

 

「最初の頃に比べて、随分と表情が柔らかくなった。コトリにとっては良い傾向だと思うわ」

 

 ヒナの言葉に、コトリは成程と頷く。確かに、仕事には馴れてきた。しかし、それと同時に風紀委員会としての意識も変わってきたような気がする。

 

 この間の辰巳姉妹の件もそうだ。

 

 あれから何度か会う機会があり、その度にレンの面倒を見るようになり、最初の頃と比べて懐かれたと思う。

 

 人助けをしたという意識はないが、自分の行動で誰かが救われたという事実は、コトリに『それも悪くない』という意識を芽生えさせた。

 

 きっとこれが、ヒナの言う良い傾向という事なのだろう。

 

 人助け、それはきっと、誰かを守るという事。コトリにとって、その誰かを頭に思い浮かべた時、真っ先に浮かんだのはヒナだった。『ヒナ委員長を守りたい』。そんな想いが、コトリの心の中で芽生えたのかもしれない。

 

「……ありがとうございます」

 

 そんな想いを胸に抱きながら、コトリは感謝の言葉を口にして微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなある日の事である。

 

 巡回も終わり、いつもの様に報告を終えた後、執務室の掃除を手伝っていると、棚の奥から何かが出てきた。

 

「ヒナ委員長、これは……?」

 

 コトリがそう聞くと、ヒナは『あぁ……』と声を漏らした。そして徐に口を開くのであった。

 

「懐かしいわね。それは、他の学園の……そうね、要注意人物としてリストアップされている生徒の情報よ」

 

 ヒナがそう言うと、コトリは『要注意人物?』と首を傾げる。そして、その資料に目を通しながら生徒と学園の名前を記憶する。

 

「昔、情報部に在籍していた時に調べたものよ。今はもう、風紀委員会に在籍しているからそこまで必要なものでもないけど」

 

「そうなんですか?」

 

 コトリがそう聞くと、ヒナは『えぇ』と頷いた。そしてそのまま言葉を続けるのである。

 

「勿論、必要とまではいかないけど、それでも情報は武器になる。風紀委員として、他の学園の情報を把握しておくのは悪い事ではないわ」

 

「成程……」

 

 確かにそうだとコトリも思う。情報とは時に金よりも価値があるものだ。それは何処であろうと変わらないだろう。

 

「貴女も、他の学園の事は知っておいて損はないわ。風紀委員会で行動する時や……そうね、何か困った事が起きた時に役に立つかもしれないわ」

 

 ヒナ委員長の言葉にコトリは大きく頷くのであった。その後、掃除を終えたコトリは、ヒナ委員長に『ご苦労様』と声を掛けられてから執務室を後にし、その資料に記載されていた内容を思い出しながら廊下を歩く。

 

「他の学園の事は知っておいて損はない……か」

 

 確かにそうかもしれない。今はまだゲヘナの自治区で活動しているだけだが、その内、他の学園で活動する事も考えられる。その時、事前情報があるかないかでは、大きな違いとなるだろう。

 

 特に来年にもなれば、コトリはゲヘナ学園に入学し、正式に風紀委員会に所属する権利が与えられるのだ。今の内に、他の学園の情報を頭に入れておいて損はないだろう。

 

 きっとそれが、自分の為……ひいてはヒナの為にもなるかもしれない。

 

「うん、頑張ろう」

 

 ならば善は急げだ。

 

 資料の中で最も記載が多かったのはアビドス高等学校の生徒だった。

 

 名前は確か小鳥遊 ホシノ。

 

 ヒナと同じく一年生だが、要注意人物の中でもかなり上位に食い込む程の情報量だ。

 

 生徒会に所属しているとあるが、もしかしたら万魔殿のマコトみたく、ヒナにあたりが強い人物なのかもしれない。

 

 これは、コトリにとって要注意人物の中でも特に危険な部類だ。

 

「……対策を考えておかなきゃ」

 

 ホシノなる人物がヒナにとって脅威となるならば、対策を取らなくてはならない。しかし、資料から得られた情報だけでは対策を講じる事は難しい。やはり実際に会ってみないと分からない事もあるだろう。

 

「……………」

 

 実際に会えば良いじゃないか。ふと、そんな言葉がコトリの頭の中に浮かんだ。確かにその通りだと納得する。

 

 こうして、風紀委員会の仕事を手伝っている身ではあるが、実際の所、コトリはまだ風紀委員会に正式に所属しているわけではない。

 

 つまり、何かあったとしても、風紀委員会には、ひいては、ヒナに迷惑がかかる事はないだろう。そうと決まれば、早速行動あるのみだ。

 

 コトリはポケットから携帯を取り出してヒナにメールを送る事にした。内容は『少しの間、暇を頂きます』という簡素なものだ。

 

 メールを送ってから数分もしない内にヒナからの返信が届き了承を得ると、コトリは携帯をポケットにしまい、早速アビドス高等学校に向かう事にしたのであった。




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