遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第90話:アナザー・ミッション

地球に迫る隕石型モンスター「悪星神」。衝突まで残り7ヵ月。人類とモンスターワールドを犠牲にせず隕石に対抗する方法を探すため、遊次たち6人は外界との交わりを持たない砂漠国家「ネフカ王国」に足を踏み入れた。

 

遊次たちが出会った少女「トト」は、ネフカ王国の禁忌を知ったことで暴君「アスラナク」から命を狙われていた。だが異邦人である遊次たちが禁忌を知れば、トト以上に自分たちが危険因子と見なされ、結果的に彼女を守ることに繋がる。自らもギルドや遊次たちと共に戦う決意を固めたトトは、遊次たち6人とダビデへ、この国の禁忌を明かす。

 

その正体は、王宮の地下に眠るという『モンスターを現実に召喚する扉』だった。ネフカ王国は1000年以上前からその扉でモンスターを召喚し、他国の侵略を退けていたのだ。しかし、それ以外の情報は未だ謎に包まれている。真実は、トトの父が遺した古文書と、この国が有する膨大な書物の中にあると考えられる。

 

モンスターを現実に召喚し制御することが可能ならば、地球に迫る悪星神を討てるかもしれない。遊次たちは、この国にこそ世界を救う方法があると確信する。しかしそれを知るためには、やはりネフカ王国の協力が不可欠だ。トトを救うためにも、アスラナクとの謁見、あるいはアスラナクの打倒を目指すほかない。

 

作戦会議を行うべく部屋を出ようとした遊次たちだったが、突如として背後からアリシアに呼び止められる。そして彼女は表情を変えることなく、淡々とした口調で告げた。

 

「2年前、オスカー氏に衛星情報やパラドックス・ブリッジの情報を流したのは…私だ」

 

「……えぇ!?」

遊次はあんぐりと口を開けた。隣では灯やイーサン、怜央も揃って目を見開いている。彼らの視線が突き刺さる中、アリシアはきつく唇を噛み締め、体の脇で握られた両拳を微かに震わせていた。

 

そんな彼女の姿を見据えながら、オスカーは表情一つ変えずに静かな声を返す。

 

「おおかた予想はついていた。あのような真似は政府内部の人間以外には不可能だ。そしてその動機がある者は、貴様以外にいまい」

 

「そ、そうなんですか…?その、動機って?」

沈黙するアリシアの横顔に、灯がおずおずと問いかける。アリシアは伏せていた顔をゆっくりと上げ、真剣な眼差しで口を開いた。

 

「私は幼い頃、ヴラッドウッドの屋敷によく出入りしていた。忙しい両親に代わり、ヘックス殿が私によくしてくれたからだ。彼はよく、モンスターが暮らす幻想の世界の話をしてくれた。彼はまるでその異世界のことを、本当に見てきたかのように、リアルに、鮮明に語った。私はそんな異世界に憧れた。私のデッキのモンスター達が、もし本当に暮らしていたなら…想像するだけで胸が躍った」

 

かつてヘックス・ヴラッドウッドの病室で、彼女自身の口から語られた記憶。遊次たちが息を呑んで耳を傾ける中、アリシアは言葉を紡ぎ続ける。

 

「2年前、大統領に召集された私は、その異世界が実在することを知った。色々な感情が、一瞬にして湧き上がった。だが素直に喜ぶことはできなかった。大統領が語ったのは、その異世界を滅ぼす計画だったからだ」

 

パラドックス・ブリッジを用いたモンスターワールド侵攻計画。それは隕石の飛来という危機に対し、政府が下した非情な決断だった。アリシアは目を細め、絞り出すように低い声で言う。

 

「閣下の計画は世界を救うためのものだ。だが、他に何か手立てはないのかと思わざるを得なかった。モンスターは、生きているのだ。幼い頃から共に戦ってきた、私のモンスター達も…」

 

「だから、オスカーに情報を渡したのか」

遊次の言葉にアリシアは深く、一度だけ頷いた。

 

「私も…どうすればいいかわからなかった。何もしなければ人類は滅びる。それでも…どうしても、モンスターを見殺しにはできなかった。その時、私は思い出した。政府との会議で、デュエルやモンスターについて熱を持って語る、オスカー氏…貴方の姿を」

 

アリシアはオスカーを凝視したまま、言葉を絞り出す。

 

「政府の計画を知れば、貴方もきっとモンスターワールドを守ろうとするはずだと思った。貴方なら、私の知らないモンスターワールドの情報を知っているのではないか。何か別の道を見つけるのではないかと。貴方に情報を送ったのは、ほとんど縋るようなものだった。だがその結果…貴方は人類を犠牲にする道を選んだ」

 

アリシアの顔がぐしゃりと歪む。胸の内にある複雑な感情を、どう整理していいのか分からないといった様子で、次々に言葉がこぼれ落ちていく。

 

「もし神楽君たちがいなければ、多くの人々が犠牲になっていた。私は…愚かだった。本当に…!」

 

限界まで握りしめた拳が、血の気を失って白くなっている。その様子をじっと見ていた遊次が、落ち着いた声で返した。

 

「アンタがオスカーに情報を渡さなきゃ、モンスターはみんな傷ついて、最悪、死んじまってたかもしれない。それに…俺達はここにいなかった」

 

「…だが、私の罪が消えるわけではない」

アリシアがすぐさま否定する。その様子に、怜央が苛立たしげに割り込んだ。

 

「なんだ?慰めてほしくて俺らを呼び止めたのか」

 

「ち、違う…。そういうわけでは…」

 

「じゃあ終わった事をいつまでもウジウジ悩んでんじゃねえ。テメェが情報漏洩カマしたおかげで、誰も死なずに済んでる。それ以上でも以下でもねえんだよ」

 

あまりにストレートな言い草に、アリシアは言葉を詰まらせる。彼女の悔恨は深い。だがそれを悔いても世界を救うことはできない。

 

「…そうだな」

アリシアもまた、もう後ろを振り返るまいと強く唇を噛みしめる。

 

「ところで、どうやってあんな機密情報を持ち出したんだ?」

イーサンが場の空気を変えるように尋ねる。アリシアは小さく溜息をつき、隠す必要もないと肩をすくめた。

 

「足がつかない特殊なUSBメモリを使った。知り合いに凄腕のハッカーがいてな」

 

「どんな交友関係だ」

 

「いや、何もお友達というわけではないぞ。昔、政府の仕事で関わったことがあったのだ。素性は知らないがな」

 

「でも、よくバレませんでしたね。メールで送ったんですよね?」

灯が腕を組み、不思議そうに首を傾げる。アリシアは視線を少しだけ下げ、思い返すように説明した。

 

「あまり詳しくは言えないが…こっそり小型PCをカフェに置いて公共Wi-Fiに繋いで、捨てアカウントから自動でメールを送ったり…一応、簡単にはバレないようにはしたつもりだ」

 

「でもバレたらどうするんだよ?捕まっちまうんじゃねえのか?」

 

「それは…」

遊次の問いに、アリシアの表情が強張る。口ごもる彼女に、オスカーは鋭い眼差しを向けた。

 

「もし俺達と政府が再び対立した時…貴様はどちらに付く」

 

アリシアの顔が跳ね上がる。見開いた瞳が瞬時にオスカーの真意を測り、警戒の色に染まる。

 

「なぜそんなことを聞く?今は政府とニーズヘッグは目的を同じくしている。対立など…起きるはずないではないか」

そう反論した唇が、かすかに震える。

 

「…もしも、の話だ」

 

オスカーの鋭い眼差しに、アリシアは目を伏せる。政府を裏切ったといえど、それはモンスターワールドを守るためだ。これまで政府に身を捧げてきたこの国への思い、そして大統領への敬意は本物だ。

 

彼女は言葉を失い、静かに押し黙る。その沈黙が長引くにつれ、イーサンを救い出すために神楽遊次が大統領へと直談判した、あの日がゆっくりと記憶の底から浮かび上がってくる。

 

(閣下。もし神楽遊次が勝利した場合、本当に彼らを信じ、世界を背負わせるのですか)

蒼月の問いかけが、脳内で再生される。

 

(…吾輩が信じるのは、吾輩だけだ。

今必要なのは"時間"だよ)

 

あの時の大統領の言葉が、耳の奥に冷たく響く。

オスカーの言う"もしも"が、そう遠くないとしたら。

 

顔を上げ、アリシアは静かに口を開いた。

 

「もし、再び政府がモンスターワールドを脅かすというのなら…私は戦う。たとえ相手が閣下だとしても」

 

その真っ直ぐな視線を受け止め、オスカーはゆっくりと目を閉じる。

 

「そうか」

オスカーは腕を組み、ただ短い言葉だけを返した。

 

凛とした彼女の声は、遊次たちの耳にも確かに届いていた。遊次は歩み寄り、アリシアの肩へそっと手を乗せる。

 

「アリシアさんのこと、正直よくわかってなかった…っていうか今もわかんねーけどさ。アンタの言葉はいつも真っ直ぐだ。だから信じられる」

 

「神楽君…」

 

「アンタの決意は受け取った。一緒に戦おうぜ」

遊次は屈託のない笑みを向け、力強く拳を突き出した。

 

目の前の拳を、アリシアはじっと見つめる。やがて小さく息を吐くと、歩き出しながら背を向けた。

 

「また"絆ごっこ"と揶揄されるのはごめんだ。さあ、作戦会議に向かうぞ」

 

「……なんだよ…」

空を切った拳を見つめ、遊次は露骨に肩を落とす。隣にいた灯が慰めるようにその背中をさすり、遊次も渋々といった様子でアリシアの背を追った。イーサンや怜央もそれに続き、部屋を出ていく。

 

静寂の落ちた室内。残されたオスカーは、ふと天井へと視線を上げる。その瞳は分厚い建材を抜け、遥か遠くの空を見透かしているかのようだった。

 

 

(会社のことは頼んだ。それと"例の件"もな)

 

(…あぁ。"あの男"が動き出す前に、何か掴めるといいけど)

 

オスカーの脳裏にあるのは、弟へ託したある"指令"の行く末だった。

 

 

 

 

 

 

今から約1週間前。ニーズヘッグがNextに敗れた後、ルーカス、美蘭、ジェンの3人はオスカーから指令を受けた。それは「ある男の弱みを握れ」というものだった。

 

そしてオスカーがネフカ王国へと発った日。

 

ニーズヘッグ本社ビル79F。何重ものセキュリティシステムに守られたシークレットルームの長机には、何十枚もの新聞記事や雑誌の切り抜きが散乱している。その紙の山を前にして、美蘭は苛立ちを爆発させるように声を張り上げた。

 

「全っっ然、弱点ないじゃん!お金・女・裏社会との繋がり!この3日間めっちゃ調べたけど、1つも見つかんないよ!!」

 

テーブルに並ぶ見出しは『児童養護施設への長年の寄付』といった美談や、『愛犬との休日の過ごし方』、『行きつけのホットドッグスタンド』の紹介など、スキャンダルとは無縁の他愛ない記事ばかりだった。

 

ルーカスはテーブルに並んだ記事を一瞥する。そこに写っているのは、獅子のたてがみを思わせるオールバックの白髪に、立派な髭を蓄えた筋肉質な男。

大統領、マキシム・ハイドだった。

 

パラドックス・ブリッジを巡る激闘は、Nextの勝利という形で幕を下ろした。ニーズヘッグと政府の計画は瓦解した。そして今ニーズヘッグは、Next・政府と「犠牲なき手段」で悪星神を討つという共通の目的のもと、新たな協力関係を結んでいるはずだった。

 

だが、その数日後。

オスカーは、集まったルーカスたちへ告げた。

 

(ハイドは、犠牲なき未来という無根拠の幻想に、未来を託すような男ではない。モンスターワールド侵攻計画が破綻しても、奴は動じなかった。頭の中にはすでに他の計画があるはずだ。その対抗手段として俺達は、奴を引きずり出す奥の手を持っておかねばならん)

 

 

ルーカスはあの時のオスカーの言葉を思い出し、表情を崩すことなく美蘭へ言葉を返す。

 

「奴は私欲を満たすことなんて考えてない。デュエリアを理想の国にするためには、自分ができる限り長く大統領の座に居座るべきだと、本気で考える男だからね」

 

むすっと唇を尖らせる美蘭の肩から、ひょこっと緑色のトカゲが顔を覗かせた。美蘭はその小さな頭を指先で撫でながら、不満そうに報告する。

 

「ゲー君にカメラ付けて大統領を追いかけてもらったけど…官邸と公邸を行き来したり、たまにお偉いさんとごはん食べたりしてるだけ。真っ白すぎて逆に怪しいっての!」

 

怒気を帯びた美蘭の声が響く。だが、ルーカスは微塵も顔色を変えない。その視線はとうに美蘭から外れ、部屋の奥へと向けられていた。そこには、壁際の椅子に深く腰を下ろす短髪の大男が静かに控えている。

 

「ジェンの方はどうだ」

 

ジェンは、手元の端末から目を離さずに低い声で応じる。

 

「はい。マキシム・ハイドの強制オースデュエル無効の特権解除を試みていますが、やはりそのプロテクトは堅牢です。クロム・ナイトシェイドのように容易くはいかないかと」

 

ルーカスの唇から僅かな息が漏れる。伏し目がちに目を細め、静かに溜息を落とした。

 

「ルーカスちゃんの方は?なんか見つけた?」

美蘭が身を乗り出し、ルーカスの顔を覗き込む。

 

「収穫はない。だけど…種はある」

 

ルーカスは手元のキーを指先で弾いた。短い電子音とともに、部屋の中央に備え付けられた大型スクリーンが発光する。暗い画面が切り替わり、そこに1枚の雑誌記事が鮮明に投影された。

 

「これ…」

スクリーンを見上げた美蘭が目を丸くする。そこに映し出されていたのは、写真すらない文字だけの小さなコラム記事だ。端に印字された日付は、18年も前のものを示している。

 

画面の中央、太字で組まれた見出しが目に飛び込んでくる。

 

『暴走する世論に問う――ヘックス・ヴラッドウッドは本当に「サイバーテロの支援者」だったのか』

 

スクリーンの淡い光が、ルーカスの顔を青白く照らす。彫像のように微動だにしないその横顔は、ひどく冷たい。だが、文字の羅列を捉える瞳の奥には、氷のような静けさとは裏腹に、どす黒い炎が静かにくすぶっている。

 

「20年前、テロ組織への資金援助をしたとして、お祖父様は社長の座を追われ、マスコミも世間も批判一色だった。その2年後、メイン・ストリートジャーナルから出されたこの記事だけが、彼を擁護した。あくまで記者の個人コラムで、社の意見ではない…という建前はあるけどね」

 

美蘭は何も言わず、ただ静かに彼の横顔を見つめている。ジェンもまた、深く口を閉ざしていた。祖父の失脚。そして、それがルーカスの奥底にどれほど強い世間への憎悪を植え付けたのか。その背景を深く知る彼女たちに、沈黙を破る言葉はなかった。

 

「だがこの記者はそれ以降、お祖父様のことには一切触れなくなった。それどころか、直後にメイン・ストリートジャーナルを辞め、今はフリーで三流ゴシップ記事ばかり書いている。まるで"何かがあった"みたいに」

 

「確かに不審な動きではありますが…マキシム・ハイドとどう関係が?」

背後から、ジェンが低く落ち着いた声で疑問を投げかける。

 

「その記者が退職前に調べていたのが…ハイドだ。お祖父様の失墜にハイドが絡んでいると考えていたらしい。デュエリストとモンスターを第一とするお祖父様と、利益主義のハイド…2人は昔から対立していた。お祖父様が退いて最も得をするのは誰か、そう考えたんだろう」

 

当時のハイドはまだ大統領ではなく、ニーズヘッグの役員だった。二人の対立は内部に詳しい者の間では有名だったのだろう。

 

「しかし、記事は出されなかった…と」

呟くように言葉をこぼし、ジェンは険しい顔つきで目を細めた。ルーカスは静かに頷き、口を開いた。

 

「そいつは元々、政府やニーズヘッグを専門として取材していた記者だ。今でも政治を扱うことはあるが、ハイドの意に沿うような内容ばかり書いてる。まるで政府の広報担当だ」

 

言い捨てたルーカスの口元には、冷ややかな嘲りが浮かんでいた。

 

「その記者って誰なの?」

美蘭の問いに、ルーカスはスクリーンから目を離さずに答えた。

 

「名前は伊達ツルギ。現状、ハイドの弱みに繋がるのはそいつしかいない」

 

 

 

 

その翌日。

首都から車で1時間ほど離れた州道沿い。周囲に広がるのは、荒涼とした畑と空き地、そしてなだらかな低い丘だけだ。道端には赤錆の浮いた看板が所在なげに立っている。道路の脇には、文字の半分が黒く死んだネオンサインを掲げるモーテルと、それに隣接する古びたガソリンスタンド。

 

その向かい側には、薄明かりを灯す小さなダイナーがあった。人気のない店内の、通りに面した窓際の席。冷めかけた安いコーヒーを傍らに置き、モーテルの出入り口をじっと見張っている男がいた。

 

無造作に伸びた暗い色の髪には、前髪の一部にだけ白いものが混じっている。無精髭の目立つ顎周りや、眉間と目尻に深く刻まれた皺が、彼が重ねてきた年月と拭いきれない徒労感を物語っていた。よれのある白いシャツに、だらしなく緩められたえんじ色のネクタイ。その上から、長年着古したような茶褐色のトレンチコートを羽織っている。

 

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/BQIOibB

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じっと見張っていたモーテルの入り口に、2人の男女が姿を見せた。男は素早くカメラを掴み、ファインダーを覗き込む。

 

「伊達ツルギだな」

不意に背後から声が降ってきた。だが、男はレンズの先から視線を外さない。振り返ることもせず、ひどく億劫そうに口を動かす。

 

「見てわからないか。仕事中だ」

シャッターボタンに指を掛け、押し込もうとしたその瞬間。横から伸びてきた手が、男からカメラを強引に引き剥がした。

 

苛立ちとともに、鋭く背後を睨みつける。だが、カメラを奪い取った相手の顔を視界に捉えた途端、男は険しかった眉を思いがけず高く跳ね上げた。

 

「…驚いたな。世界一の大企業の副社長様が、こんな田舎まで何の用でしょうか」

 

わざとらしく肩をすくめ、おどけた態度をとるツルギ。その彼を冷え切った眼差しで見下ろしていたのは、ルーカス・ヴラッドウッドだった。

 

「この記事を書いたのはお前だな」

ルーカスは片手で色褪せた雑誌を開き、ツルギの目の前へと突き付ける。

 

「こりゃまた…ずいぶん懐かしい」

突き付けられた紙面から逃げるように視線を外し、ツルギは嘲るように口角を歪めた。

 

「お前は、お祖父様のスキャンダルはハイドが仕組んだものだと考えていた。だが調べる内に奴に目をつけられ、口封じをされた。当時ハイドはニーズヘッグを辞め、政界に身を移した頃だ。自分を嗅ぎ回るお前が邪魔だったんだろう。脅迫か何かをされ、結果、今はハイドの飼い犬記者に成り下がった。違うか?」

 

刃のように鋭い言葉を浴びせられても、ツルギは無言のまま傍らのカップを持ち上げた。冷めたコーヒーをゆっくりと一口啜る。カチャリとソーサーにカップを戻すと、明後日の方向を見たまま言葉を返した。

 

「違うと言えば、この取材は終わりにしてくれるのかな」

 

言葉の終わりと同時、ルーカスの拳が激しくテーブルを叩きつける。ガシャンとカップが跳ね上がり、耳障りな音が鳴った。

 

「言いたくなければ、無理やり聞き出すまでだ。僕は強制オースデュエルが使える。お前が知っている全てを、洗いざらい吐いてもらう」

 

ツルギは、ふっと短く息を吐き出した。

ゆっくりと顔を上げ、ルーカスを真っ直ぐに見据える。その瞳は、先程までの気だるげな様子を微塵も残さない、射抜くような鋭さを放っていた。

 

「それは…俺に勝ったら、の話だろ?」

 

 

 

 

人気のない夜の州道。車通りはとうに途絶え、荒涼とした空き地から吹き下ろす風が冷え切ったアスファルトを撫でていく。

その殺風景な路上で、ルーカスとツルギは静かに対峙する。ジリジリと鈍い音を立てる赤いネオンの光が、暗闇に沈む二人の輪郭を断続的に照らし出す。

 

「僕から提示する契約は、僕の質問に必ず真実を答えることだ」

 

「いいだろう。ならば俺からは、俺に関してのあらゆる情報へのアクセスを禁止させてもらう。それと、君が来た目的も話してもらおうか」

 

(…モンスターワールドや隕石のことを、よりにもよって三流ゴシップ記者に知られるわけにはいかないな)

ルーカスは忌々しそうに視線を宙へ逃がした。じとっとした重い眼差しが、何もない夜の暗がりを睨みつける。

 

これ以上の問答は不要だった。ルーカスは一切の言葉を断ち切り、無言のまま左腕にデュエルディスクを構える。それを契約への同意と見なし、ツルギもまた自身のデュエルディスクを腕に装着する。

 

「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」

 

プレイヤー1:ルーカス・ヴラッドウッド

条件①:伊達ツルギはルーカス・ヴラッドウッドの質問に必ず真実を答えること

 

プレイヤー2:伊達ツルギ

条件①:ルーカス・ヴラッドウッドに対し、伊達ツルギに関するあらゆる情報へのアクセスを禁ずる

条件②:ルーカス・ヴラッドウッドは、伊達ツルギに接触した目的を偽りなく答えること

 

詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。

 

両者が指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。

 

「契約内容を承認します。デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」

 

「デュエル!」

宣言と共に、ルーカスのデュエルディスクのランプが点灯する。

 

「僕のターン。手札からヘヴンアイズ・アコライトを召喚」

 

 

■天界眼の灯火手(ヘヴンアイズ・アコライト)

 ペンデュラム

 レベル2/光/天使/攻400 守1000 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分メインフェイズに発動できる。

 手札の「ヘヴンアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。

 ②:このカードをリリースして発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」カード1枚を手札に加える。

 

 

現れたのは、銀髪をなびかせた聖女だ。その瞳は淡い白みがかった水色をしており、右手で黄金のランタンを掲げている。白き装束に紅の外套を纏い、その頭上には精巧な金のサークレットを着けている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/aYwhBwP

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「ヘヴンアイズ・アコライトの効果発動。召喚時の効果により、EXデッキの表側にヘヴンアイズ・プロフェットを置く」

 

「僕はヘヴンアイズ・ゲートキーパーとヘヴンアイズ・アポロジストをPゾーンにセッティング」

 

ルーカスの頭上に、白みがかった水色の瞳を持つ、重厚な白銀の甲冑を纏った老騎士と、深く被ったフードの下、青い単眼を持つ白い仮面を被ったモンスターが浮かび上がる。

 

ゲートキーパー:ttps://imgur.com/a/b69Nibb

アポロジスト:ttps://imgur.com/a/7X4p3WD

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「アポロジストのP効果発動。自身を破壊し、デッキからヘヴンアイズをPゾーンにセットする」

 

 

■天界眼の信仰者(ヘヴンアイズ・アポロジスト)

 ペンデュラム

 レベル2/光/天使/攻0 守0 スケール9

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:Pゾーンのこのカードを破壊して発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pカード1枚を自分のPゾーンに置く。

 【モンスター効果】

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「ヘヴンアイズ」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターは、自分のEXデッキ(表側)の「ヘヴンアイズ・アポロジスト」の数によって以下の効果を得る。

 ●1体以上:このカードの攻撃力は、自分のEXデッキ(表側)の「ヘヴンアイズ・アポロジスト」の数×500アップする。

 ●2体以上:このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 ●3体:このカードは相手のモンスター効果を受けない。

 

 

「僕はデッキからヘヴンアイズ・ヘラルドをPゾーンにセットする」

 

 

■天界眼の祝告使(ヘヴンアイズ・ヘラルド)

 ペンデュラム

 レベル3/光/天使/攻900 守1300 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:手札のPモンスター1体を相手に見せて発動できる。

 そのカードをEXデッキに表側で加え、そのカードとはカード名が異なる「ヘヴンアイズ」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 ②:EXモンスターゾーンのPモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをメインモンスターゾーンに移動する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 ①:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻し、

 自分のPゾーンの「ヘヴンアイズ」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに特殊召喚する。

 ②:自分のフィールドの「ヘヴンアイズ」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊し、デッキからレベル5以上の「ヘヴンアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

頭上のアポロジストは祈りを捧げるように両手を握ると、その姿は光に包まれ消えていく。そして代わりに白みがかった水色の瞳を持つ、白銀の髪の魔道士が現れる。白の法衣に赤の装飾を纏い、胸元には蒼い石の首飾りを下げている。その手には、青い光を放つ宝珠を冠した銀の杖を携えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mCnG2uS

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「手札から永続魔法『ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート』を発動」

 

 

■天界眼の真珠門(ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート)

 永続魔法

 このカード名の②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

 自分の「ヘヴンアイズ」モンスターは相手の効果の対象にならない。

 ②:自分のEXデッキ(表側)のPモンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを特殊召喚する。

 ③:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

ルーカスの眼前に、光を裂いて真珠の門が姿を現した。円環の意匠を帯びたその巨大な白き門は、天国への入り口を思わせる神々しさを放っている。

 

「セレスティアルゲートの効果発動。EXデッキの表側のヘヴンアイズ・プロフェットをデッキに戻し、カードを2枚ドローする」

 

「ヘヴンアイズ・ヘラルドのP効果発動。手札のヘヴンアイズ1体をEXデッキに表側で加え、その後名前の異なるヘヴンアイズを1枚デッキから手札に加える。手札のヘヴンアイズ・ヴァーチュスをEXデッキに加え、ヘヴンアイズ・ドミニオンズをデッキから手札に加える」

 

盤面の展開を、ツルギはただ静かに見つめていた。ニーズヘッグの副社長が自らデッキを晒す機会など、そうあるものではない。手口を値踏みするかのように、その視線は盤面の動きを一つ残らず鋭く追う。

 

「永続魔法『ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート』の更なる効果を発動。EXデッキの表側のヘヴンアイズを1体特殊召喚できる。現れよ、ヘヴンアイズ・アポロジスト」

 

真珠の扉が開くと、光の中から青い単眼を持つ白い仮面を被ったモンスターがフィールドへと現れる。

 

「ヘヴンアイズ・ヘラルドのP効果発動。EXモンスターゾーンのアポロジストを、メインモンスターゾーンに移す」

 

「Pスケールは1~9。よってレベル2~8のモンスターが同時に召喚可能」

ルーカスがゆっくりと左手を天へと掲げる。すると彼の頭上に巨大な振り子の幻影が現れ、重々しく弧を描いて揺れ始めた。

 

「天上の聖なる魂達よ、揺れ動く源流によりこの現し世に帰還せよ」

 

「ペンデュラム召喚!現れよ、我がモンスター達!」

響き渡る口上と共に、頭上の空間から2つの眩い光の筋が放たれ、フィールドへと力強く降り注いだ。

 

「手札から、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ!」

 

 

■天界眼の勧告者(ヘヴンアイズ・ドミニオンズ)

 ペンデュラム

 レベル7/光/天使/攻2400 守2700 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:もう片方のPゾーンに「ヘヴンアイズ」Pカードが存在する場合に発動できる。

 Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚された場合に発動できる。

 相手フィールドの全ての表側カードの効果を、ターン終了時まで無効にする。

 ②:相手がモンスター効果を発動した場合、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 その効果を無効にして破壊する。

 

 

1体目は、水色に光る瞳を持つ、翼の先端を赤く染めた上級天使。金色の冠と白い仮面、金装飾を施した白い法衣に赤い帯を垂らし、その手には、巨大な紅玉を冠した金色の長杖を携えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/O2IHFKC

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「EXデッキから、ヘヴンアイズ・ヴァーチュス!」

 

■天界眼の力翼霊(ヘヴンアイズ・ヴァーチュス)

 ペンデュラム

 レベル6/光/天使/攻2200 守2100 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が「ヘヴンアイズ」モンスターをP召喚した場合に発動できる。

 相手の魔法・罠カードを全て破壊する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体を特殊召喚し、デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。

 ②:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

2体目は、白と紅に彩られた巨大な翼を広げた、鳥人の上級天使。白銀の羽毛に包まれたその顔には、鋭い嘴と、冷徹に光る水色の瞳が備わっている。白き衣に黄金の装飾を纏い、足には鋭利な金の鉤爪を備えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/AfY9rth

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「ヘヴンアイズ・ヴァーチュスが特殊召喚した時、効果発動。デッキからヘヴンアイズ1体を特殊召喚し、デッキからヘヴンアイズを1枚、EXデッキに表側で加える。ヘヴンアイズ・カントルを特殊召喚し、ヘヴンアイズ・エクスシーアをEXデッキに加える」

 

■天界眼の賛歌師(ヘヴンアイズ・カントル)

 ペンデュラム

 レベル3/光/天使/攻500 守1500 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 ①:自分の「ヘヴンアイズ」モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合に発動できる。

 その攻撃モンスターは、もう1度だけ続けてモンスターに攻撃できる。

 ②:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターはこのターン、守備表示モンスターを攻撃した場合、

 その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分の手札に加える。

 ②:このカードがフィールドから離れた場合に発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。

 

 

頭上に浮かび上がった巨大な石の光輪から、清浄な光が溢れ出す。その輝きの中心から、純白の法衣を纏った女が姿を現した。銀髪を飾る朱の紐と鮮やかな腰帯が白に映え、真っ直ぐに前を見つめる青い瞳が、戦場に凛とした静寂をもたらした。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/9c9FlAm

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フィールドに並び立つ5体の天使。その威容を見据え、ツルギは面白がるように口角を上げた。

 

「荘厳だな。だが、これで終わるわけじゃないだろう」

 

「当然だ」

ルーカスはデュエルディスクに並んだ4枚のカードを一息に掴み取る。そのままEXデッキの上へ、表側にして力強く叩きつけた。

 

「アコライト、ヴァーチュス、ドミニオンズ、カントルの4体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

4体の天使が眩い光となって弾ける。連動して地面に巨大なサーキットが展開された。4つの回路が火を灯すように赤く染まり上がり、その中央から天を貫く光の柱が立ち昇る。

 

「天界を統べる聖竜よ、救済の煌めきを放ち、輪廻の扉を開け」

 

ルーカスが口上を唱えると、まばゆい輝きが周囲を埋め尽くす中、光の奥から巨大な竜のシルエットが現れる。

 

「リンク召喚!光臨せよ、リンク4!

ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン!」

 

 

■天界眼の久遠竜(ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン)

 リンク/ペンデュラム

 リンク4/光/幻竜/攻3000 スケール9

 【リンクマーカー:左/左下/右下/右】

 EXデッキから特殊召喚されたモンスターを含む光属性モンスター4体

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドのモンスターを対象とする相手の効果が発動した時、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。その効果を無効にし除外する。

 ②:自分・相手ターンに発動できる。このカードのL素材となるモンスターをフィールドから墓地へ送り、PゾーンのこのカードをL召喚扱いで特殊召喚する。

 【モンスター効果】

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードの攻撃力は、自分のEXデッキの表側のカードの数×200アップする。

 ②:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。

 自分のEXデッキ(表側)のPモンスターを可能な限り特殊召喚する。

 ③:相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に、EXデッキ(表側)のカード1枚をデッキに戻して発動できる。それを無効にし、破壊する。

 

 

天を裂く光の奔流を突き破り、白銀の鱗を纏う巨大な竜がその全貌を晒した。鮮血のような紅を宿した何重もの翼を広げ、首元には白き布を纏う。白く鋭利な装飾羽が並ぶ頭部からは、青い眼光が鋭く放たれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/K66hvXU

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そのモンスターの神々しさに、ツルギは思わず目を奪われた。はっとしてソリッドヴィジョンの盤面情報に目を移すと、さらにツルギは驚きに目を見開く。

 

「リンク・ペンデュラムモンスターだと…!?」

その前代未聞のカードは、まさに世界のデュエル事業を統べるニーズヘッグの副社長に相応しいものだった。

 

「ヘヴンアイズ・カントルがフィールドを離れた場合、効果発動。デッキからヘヴンアイズを1体、EXデッキに表側で加える」

 

「さらにヘヴンアイズ・エターナルドラゴンの効果発動。特殊召喚した時、EXデッキの表側から可能な限りモンスターを特殊召喚する。現れよ、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ、ヘヴンアイズ・エクスシーア!」

 

金色の冠を戴く上級天使と、白銀の重装甲を纏った翼の騎士がエターナルドラゴンの足元へ降り立つ。

 

「チェーン1のヘヴンアイズ・カントルの効果により、デッキからヘヴンアイズ・アポロジストをEXデッキに加える」

 

「さらにヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。EXデッキから特殊召喚した時、デッキから2枚のヘヴンアイズをEXデッキに表側で置く。ヘヴンアイズ・アポロジストとヘヴンアイズ・プロフェットをEXデッキに加える。ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンは、EXデッキの表側のカードの数×200攻撃力がアップする」

 

ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK4200

 

「ヘヴンアイズ・アポロジストの効果発動。1ターンに1度、ヘヴンアイズに効果を付与することができる。エターナルドラゴンに効果を付与」

アポロジストはエターナルドラゴンの前で膝をつき、深く頭を垂れた。するとエターナルドラゴンに、青い光が降り注ぐ。

 

「アポロジストによって与えられた効果は、EXデッキの表側のアポロジストの枚数によって増加する。現在、EXデッキのアポロジストの枚数は2枚。よってエターナルドラゴンの攻撃力はアポロジストの枚数×500アップし、さらに相手の魔法・罠カードの効果を受けない」

 

ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5200

 

「仕上げだ。ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。EXデッキの表側のカードを1枚デッキに戻し、フィールドのカードを1枚破壊できる。ヘヴンアイズ・アポロジストを破壊」

 

傍らに膝をつき、恭しく頭を垂れるアポロジスト。エクスシーアはその無防備な首筋へと、一切の躊躇なく剣を振り下ろした。音もなく切り裂かれたアポロジストの体は、無数の光の粒子へと変わり、静かに天へと昇っていく。

 

「これでEXデッキのアポロジストの枚数は3枚。よってエターナルドラゴンの攻撃力はさらに500上昇し、さらに相手モンスターの効果を受けなくなる。つまり…完全耐性の完成だ」

 

-------------------------------------------------

【ルーカス】

LP8000 手札:2

 

①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5700

②ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700

③ヘヴンアイズ・エクスシーア DEF2400

 

永続魔法:セレスティアルゲート

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、アコライト、ヴァーチュス、カントル

 

 

【ツルギ】

LP8000 手札:5

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「僕はこれでターンエンド。説明するのも面倒だ。いかに追い詰められているか、自分で確かめるといい」

 

ルーカスはひどく冷めた声で言い放つ。ツルギは無言で目を細め、ソリッドヴィジョンが弾き出す膨大なステータス情報に視線を走らせる。

 

(エターナルドラゴンは完全耐性を持ち、召喚・特殊召喚を1度無効にする。ドミニオンズは相手モンスターの効果を1度無効、エクスシーアに関しては、2回破壊効果を使えるらしい。さらに天界眼モンスターはPカードによって効果で破壊されず、永続魔法によって対象にならない…)

 

ただ眺めるだけでも頭を抱えたくなるような鉄壁の盤面。だがツルギの口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「ニーズヘッグの副社長がここまで全力で相手してくれるなんて、デュエリスト冥利に尽きるな。だが…」

ツルギの表情には気だるげな様子はとうに消え失せ、その瞳はルーカスを真っ直ぐに鋭く射抜いていた。

 

「俺はそこらの記者とは違う。特ダネはいつも、デュエルで勝ち取って来たからな」

ツルギはデッキトップへと指を掛ける。

 

「俺のターン…ドロー!」

弧を描くように引き抜いたカードへ、ツルギは鋭い視線を落とす。

 

(いいカードを引いた)

指先に握られたその一枚は、永続魔法『ネガティブ・フィルム』。ツルギの口角が、ゆっくりと不敵に吊り上がった。

 

「永続魔法『ラティチュード・フィルム』を発動。このカードが存在する限り、『念写』モンスターは相手の効果で破壊されない」

 

■ラティチュード・フィルム

 永続魔法

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの「念写」モンスターは相手の効果で破壊されない。

 ②:自分フィールドの「念写トークン」は1度のバトルフェイズ中に2回まで攻撃できる。

 ③:自分の「念写トークン」がフィールドを離れた場合、自分の墓地の「念写」モンスター1体を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 

このカードが通れば、エクスシーアの破壊効果や、ドミニオンズの無効・破壊効果が力を失ってしまう。ルーカスの選択肢は一つだった。

 

「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。EXデッキの表側カードを1枚デッキに戻し、フィールドのカード1枚を破壊する。その永続魔法を破壊だ」

エクスシーアが素早く剣を振るうと、永続魔法は真っ二つに切り裂かれ破壊される。

 

しかしこれは、エクスシーアの効果を早くも1つ消費させるためのツルギの戦略であることは明らかだった。

 

「手札より『念写犬 フォーカスパニエル』を召喚!」

 

■念写犬 フォーカスパニエル

 効果モンスター

 レベル2/光/機械/攻撃力500 守備力900

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、手札の「念写」モンスター1体を相手に見せて発動できる。

 そのモンスターと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 ②:自分フィールドの「念写トークン」1体をリリースして発動できる。

 このカードを墓地から特殊召喚する。

 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊する。

 

 

現れたのは、カメラの特徴を持つ機械の犬のモンスターだ。茶色と白色の金属装甲が全身を覆い、首や脚の関節には真鍮色の歯車やシリンダーが組み込まれている。顔の中央には巨大なカメラレンズが備わり、重なり合う絞り羽の奥から鋭い光を放つ。長く垂れ下がった耳は幾重もの金属パネルで形作られ、胸部にはストロボを思わせる円形の発光部が輝いている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/HExA48B

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「フォーカスパニエルの効果発動!召喚・特殊召喚時、手札の『念写』モンスター1体を相手に見せ、その攻守・属性・種族と同じ念写トークンを1体特殊召喚する」

 

ツルギが表へ向けたのは「念写蛙 マクローク」というモンスター。

 

フォーカスパニエルがツルギの方へと振り向く。顔の中央に備わるシャッターが、パシャリと小気味良い音を立てて閉じた。直後、機械の顎が開き、そこから1枚の写真が吐き出される。地面に落ちた写真から眩い光が放たれ、ツルギが提示したカードと瓜二つの姿が実体化した。

 

青緑と鮮やかな緑色の金属装甲を持つ、丸みを帯びた機械の蛙のモンスターだ。胴体の中央には巨大なカメラレンズが埋め込まれ、重なり合う緑色の絞り羽の奥から光を放つ。頭頂部にはダイヤルや金属のリングが並び、本来の目の位置には二つの小型レンズが突き出ている。細い前脚の指先は吸盤のように円形に発光し、跳躍力を備えた後脚の関節にはスプリングが組み込まれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/eTuX2EH

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「永続魔法『ネガティブ・フィルム』を発動」

 

■ネガティブ・フィルム

 永続魔法

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの「念写」モンスターは戦闘で破壊されない。

 ②:自分フィールドの「念写トークン」1体をリリースして発動できる。

 相手フィールドのモンスター1体を選び、墓地へ送る。

 

 

「ネガティブ・フィルムの効果発動。念写トークン1体をリリースすることで、相手フィールドのモンスターを1体"選んで"墓地へ送る。さあ、どうする?」

 

対象を取らず、破壊も介さない墓地送り。盤面の強固な耐性をすり抜けるその一手に、ルーカスは苛立たしげに小さく舌打ちを漏らす。即座にデュエルディスクのEXデッキからカードを1枚引き抜くと、手元のデッキへと戻した。

 

「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。その永続魔法を破壊する」

エクスシーアが鋭く剣を振り抜く。放たれた一撃が永続魔法を破壊し、その効果は失われた。しかし代償としてこれでエクスシーアに備わっていた2度の破壊効果はすべて費やされたことになる。

 

「君のEXデッキの表側カードは4枚。その内3枚はエターナルドラゴンに完全耐性を与えるアポロジスト。つまりエターナルドラゴンとドミニオンズ、両方の効果を使えばエターナルドラゴンのモンスター耐性は失われる」

ルーカスの圧倒的な制圧盤面をフルパワーに使う場合、エターナルドラゴンの完全耐性は失われる。ツルギは冷静にそれを見抜き、ルーカスへと突き付けた。

 

「その通りだ。素晴らしい」

ルーカスは顔を一切動かさず、手元だけで拍手をしてみせた。光の灯らない虚ろな瞳のまま鳴らされる、空虚な音が響く。

 

「…つくづく思っていたが、君たち兄弟には社交性というものがない。とりわけ君にはね。手腕は認めるが、それじゃあお祖父さんのようにはなれないよ」

 

「そうか。有意義なアドバイスをどうも、"一流"ゴシップライターさん」

ルーカスは気だるげに手札へ視線を落としたまま、冷たく低い声で返す。ツルギは軽く肩をすくめ、手札から1枚のカードを引き抜いた。

 

「自分フィールドに念写モンスターがいる時、このモンスターは手札から特殊召喚できる。来い、『念写蛙 マクローク』」

 

 

■念写蛙 マクローク

 効果モンスター

 レベル4/光/機械/攻撃力1600 守備力1200

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「念写」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②:自分の墓地の「フィルム」永続魔法カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに置く。

 ③:デッキから「念写」モンスター1体を墓地に送って発動できる。

 そのモンスターと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

現れたのは先ほどのトークンと同じ見た目をした機械の蛙型モンスターだ。

 

「マクロークの効果発動。1ターンに1度、自分の墓地の『フィルム』永続魔法カードをフィールドに置くことができる。対象は『ラティチュード・フィルム』」

 

この効果をドミニオンズで止めることができるが、そうなれば残りのエターナルドラゴンの召喚無効効果を使う際、モンスター効果耐性が失われる。この効果にそれほどまでの価値はないと考え、ルーカスは効果使用を見送った。

 

「このカードが存在する限り、俺の念写モンスターは効果で破壊されない。さらにマクロークのもう1つの効果を発動。デッキから念写モンスター1体を墓地に送ることで、そのモンスターと同じステータスの念写トークンを特殊召喚できる。墓地に送るのは『念写烏 モノクロウ』」

 

墓地へ送ったカードを、ツルギは表に向けて提示する。マクロークが振り返り、顔の中央にあるシャッターを切った。開かれた口から長い舌が伸び、1枚の写真が現像されて押し出される。その写真が眩い光を放ち、フィールドに新たなトークンが生み出された。

 

現れたのはカメラの特徴を備えた、カラス型の機械のモンスターだ。全身は黒と銀の重厚な金属装甲で構成され、鋼鉄の刃のような羽を持つ。目の位置には青白く発光するカメラレンズが埋め込まれ、嘴の側面に四角いファインダーのような部品が備わっている。胸部の中央には円形のレンズが組み込まれ、そこから鋭い一条の光を放つ。鋭利な金属の爪を持つ脚部や翼の関節部には、いくつもの歯車やダイヤルが精巧に配置されている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sxLEr4z

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「さらに墓地に送られた『念写烏 モノクロウ』の効果を発動。このカードが念写カードの効果で墓地に送られた場合、特殊召喚できる」

 

■念写烏 モノクロウ

 効果モンスター

 レベル5/光/機械/攻撃力1900 守備力1800

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが「念写」カードによって墓地に送られた場合に発動できる。

 このカードを特殊召喚する。

 ②:自分メインフェイズに発動できる。

 このカードと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 ③:自分フィールドの「念写トークン」1体をリリースし、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その効果を無効にする。

 

 

先ほど生み出されたトークンと全く同じ姿をしたカラス型の機械モンスターが、鋭い羽音を立ててフィールドへ舞い降りる。

 

「『念写烏 モノクロウ』の効果発動。1ターンに1度、このカードとステータスが同じトークンを特殊召喚できる」

 

モノクロウの両目に組み込まれたレンズが鋭く光を放つ。連動して胸部のシャッターが小気味良い音を立てて閉じると、溢れ出した光の中から、自らと寸分違わぬ姿を持つもう1体のトークンが実体化した。

 

-------------------------------------------------

【ルーカス】

LP8000 手札:2

 

①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5300

②ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700

③ヘヴンアイズ・エクスシーア DEF2400

 

永続魔法:セレスティアルゲート

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、ヴァーチュス

 

 

【ツルギ】

LP8000 手札:1

 

①念写犬 フォーカスパニエル ATK500

②念写蛙 マクローク ATK1600

③念写トークン ATK1900

④念写烏 モノクロウ ATK1900

⑤念写トークン ATK1900

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム

--------------------------------------------------

 

手札、墓地、そしてフィールド。あらゆる領域から対象を複写する戦術により、ツルギの盤面は5体のモンスターで埋め尽くされていた。

 

次なる一手が強大なものであることは、対峙するルーカスにも明白だった。だが、彼の場に鎮座するエターナルドラゴンには特殊召喚を無効にする力が残されている。その絶対的な構えが、迫り来る脅威の輪郭を削り落としていた。

 

フィールドを見つめ、ツルギはわずかに思考を巡らせる素振りを見せる。やがて決断を下したように、鋭い視線を前へと向けた。

 

「俺は『念写犬 フォーカスパニエル』と『念写蛙 マクローク』、念写トークンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

ツルギの頭上に巨大なサーキットが現れる。指定された3体のモンスターが光の矢となって天空へ射出され、サーキットの回路へと突き刺さった。3つのリンクマーカーが火を灯すように赤く染まり上がり、新たなゲートが開かれる。

 

「瞳が映すは猛き魂。瞬きの間にその姿を焼き付け、己が力へと変えよ」

 

「リンク召喚!現れよ『念写魔獣 アーガス』!」

 

ゲートから飛び出したのは、全身に無数のカメラレンズを備えた漆黒の獣である。太く隆起した黒い体躯には、真鍮色の重厚な装甲が縛り付けるように這い回る。胸部の中央には巨大なメインレンズが据えられ、頭部には両目の代わりに大小様々なレンズが群生している。大きく裂けた顎には鋭利な牙が乱立し、太い腕の先からは凶悪な爪が伸びている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/UdLb08x

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漆黒の巨獣が姿を現した刹那。ソリッドヴィジョンが弾き出すカード情報を捉えたルーカスの瞳が、剣呑に細められた。間髪入れず、腕を鋭く振るう。

 

「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンの効果発動。そのリンク召喚を無効にする」

そこに逡巡は一切なく、問答無用の即断だった。アーガスが孕む絶大な脅威が、ルーカスにわずかな猶予すら与えなかったのだ。

 

エターナルドラゴンが、紅く染まった双翼を大きく広げる。放たれた白銀の閃光が、咆哮を上げる間もなくアーガスの巨体を包み込んだ。圧倒的な光の奔流の中で獣はその輪郭を保つことすら許されず、無数の光の粒子となって空間へ溶け落ちていった。

 

呼び出した切り札を一瞬にして失ったツルギ。しかしその表情には余裕の笑みが浮かんでいた。

 

「そう、君はそうするしかない。それでいい。リンク素材としてフィールドから墓地へ送られたフォーカスパニエルの効果発動。フィールドから墓地へ送られた時、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊できる。対象は永続魔法『セレスティアルゲート』だ」

 

「さらに永続魔法『ラティチュード・フィルム』の効果発動。念写トークンがフィールドを離れた場合に、墓地の念写モンスター1体を手札に加えることができる。俺は墓地の『念写蛙 マクローク』を手札に戻す」

 

フォーカスパニエルの効果は本来、ドミニオンズで無効にすることもできる。しかし同タイミングでチェーン2の永続魔法が発動したことで、効果無効は不可能となっている。

 

「チェーン1のフォーカスパニエルの効果で、セレスティアルゲートは破壊だ」

空中に浮かび上がった半透明のフォーカスパニエルが、ルーカスのフィールドにある永続魔法へ向けてシャッターを切る。開かれた口の舌から現像された1枚の写真が現れると、フォーカスパニエルはそれを牙で乱暴に噛み砕き、引き裂いた。呼応するように、ルーカスの永続魔法もまた音を立てて粉々に砕け散る。

 

これでヘヴンアイズモンスターは対象耐性を失った。制圧効果を次々消費したことも相まって、まるでツルギが盤面をコントロールしているようだった。

 

「続いて『念写烏 モノクロウ』の効果発動。念写トークンを1体リリースすることで、相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にする。対象は…ヘヴンアイズ・ドミニオンズ」

 

ドミニオンズは唯一まだ効果を使用していないモンスターだった。しかしその効果無効をここで発動しても、永続魔法によって念写モンスターは破壊耐性を得ているため、発動の意味を成さない。それどころか、コストとしてEXデッキのアポロジストが減ることで、エターナルドラゴンがモンスター効果耐性を失ってしまう。手出しすることはできなかった。

 

モノクロウの両目に組み込まれたレンズが、対象を射抜くように鋭い閃光を放つ。眩い光を正面から浴びたドミニオンズは、抗う術もなくその場に崩れ落ちて膝をつく。全身を包んでいた荘厳な威光はかき消え、その身に宿っていた力は完全に沈黙した。

 

「ここからが、君の想定外のシナリオだ。速攻魔法発動、『多重露光念写』。墓地の念写Lモンスター1体を対象として、そのリンクマーカーの数だけ、念写トークンをフィールドに特殊召喚できる」

 

■多重露光念写

 速攻魔法

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の墓地の「念写」Lモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターのリンクマーカーの数だけ、自分フィールドに「念写トークン」(機械族・光・星1・攻/守0)を守備表示で特殊召喚する。

 ②:自分フィールドに「念写」Lモンスターが存在する場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。

 自分フィールドに「念写トークン」(機械族・光・星1・攻/守1000)を守備表示で特殊召喚する。

 

 

ストロボのように短い閃光が連続して放たれる。瞬く光の中から、ツルギのフィールドへ新たなトークンが次々と浮かび上がった。実体化したそれらは確たる輪郭を持たず、背後の景色を透かしている。複数の機械のシルエットが幾重にもズレて重なり合い、残像のようにブレながら不規則に明滅していた。

 

フィールドに並んだ3体のトークン。次なる展開を察知し、ルーカスの眼光がさらに鋭く尖る。

 

「仕切り直しといこう。俺は3体の念写トークンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

ツルギの頭上に巨大なサーキットが出現する。不規則に明滅していた3体のトークンがまばゆい光の矢へと変わり、上空の回路へ向けて一直線に射出された。それらが勢いよく突き刺さると、3つのリンクマーカーが炎のように赤く点灯し、虚空に新たなゲートが開かれる。

 

「リンク召喚!再び現れよ、念写魔獣アーガス!」

 

開かれたゲートから、全身に無数のカメラレンズを備えた漆黒の獣が勢いよく飛び出す。胸部の巨大なメインレンズを鈍く光らせ、真鍮色の重厚な装甲を軋ませながら、そのモンスターは鋭い牙を剥き出しにして再びフィールドへ降り立った。

 

「アーガスの効果発動。L召喚成功時、デッキから『フィルム』永続魔法を1枚フィールドに置く。俺はデッキから『リバーサル・フィルム』を場に置く」

 

■リバーサル・フィルム

 永続魔法

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの「フィルム」永続魔法・永続罠カードは、相手の効果で破壊されない。

 ②:自分の墓地の「念写」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを特殊召喚する。

 

「君がアーガスを恐れているのはよくわかる。完全耐性など、このモンスターの前では無意味だからな」

無数のレンズを備えた巨大な機械獣。その足元で悠然と構えるツルギのトレンチコートが、吹き抜ける風に大きく揺れる。

 

「アーガスの効果発動。1ターンに1度、相手モンスター1体を対象に、そのモンスターと同じステータスの念写トークンを特殊召喚する」

 

 

■念写魔獣 アーガス

 リンクモンスター

 リンク3/光/機械/攻2400

 【リンクマーカー:左下/下/右】

 「念写」モンスター2体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードの攻撃力は、このカードのリンク先の「念写トークン」の攻撃力分アップする。

 ②:このカードがL召喚した場合に発動できる。

 デッキから「フィルム」永続魔法カード1枚を自分フィールドに置く。

 ③:自分・相手ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

「対象は当然、ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンだ」

 

アーガスが太い両腕を地につき、宙に浮かび上がるエターナルドラゴンをギロリと睨みつける。全身に組み込まれた無機質なレンズが一斉に鋭い閃光を放つと、溢れた光がアーガスの背後で像を結び、エターナルドラゴンと寸分違わぬ姿のトークンを実体化させた。

 

「さらに墓地の『多重露光念写』を除外して効果発動。念写Lモンスターが場に存在する時、攻守1000の念写トークンを特殊召喚する」

フィールドには残像のようにブレた、明確な輪郭を持たないトークンが現れる。

 

「アーガスはリンク先の念写トークンの攻撃力分、攻撃力がアップする。つまり…攻撃力8500だ」

 

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【ルーカス】

LP8000 手札:2

 

①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5100

②ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700

③ヘヴンアイズ・エクスシーア DEF2400

 

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3

 

 

【ツルギ】

LP8000 手札:1(念写蛙 マクローク)

 

①念写魔獣 アーガス ATK8500

②念写烏 モノクロウ ATK1900

③念写トークン ATK5100

④念写トークン DEF1000

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム、リバーサル・フィルム

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エターナルドラゴンはあらゆる効果を受け付けない完全耐性を誇る。だが、眼前にそびえ立つアーガスの攻撃力はそれを優に凌駕していた。圧倒的な力による物理的な蹂躙の前では、いかに無敵の盾であろうと意味をなさない。

 

「バトルフェイズだ。『念写魔獣 アーガス』でヘヴンアイズ・エターナルドラゴンに攻撃」

 

アーガスの全身に備わる無数のレンズが一斉に駆動し、標的を捕捉する微細なモーター音を響かせる。直後、大小様々なレンズ群から細い照準の光が放たれ、上空のエターナルドラゴンの巨体を幾重にもロックオンした。

 

光の網で対象を空間に縫い留めると、アーガスの胸部に据えられた巨大なメインレンズが重厚な音を立てて開く。幾重にも連なる絞り羽の奥で極限まで収束された光のエネルギーが、白く輝く極太の破壊熱線となって撃ち出され、無敵の装甲ごと白銀の竜を轟音と共に爆散させた。

 

「ッ…!」

ルーカス LP8000→4600

 

「念写トークンで、ヘヴンアイズ・エクスシーアへ攻撃」

 

エターナルドラゴンの姿を模したトークンが大きく顎を開き、まばゆい光のエネルギー弾を一直線に撃ち放つ。迎え撃つエクスシーアは瞬時に強固な盾を構えて防御の姿勢をとった。しかし、直撃した光弾の絶大な威力がその守りを容易く凌駕する。激突の衝撃と共にエネルギーの奔流が盾ごとエクスシーアを飲み込み、その装甲を容赦なく粉砕した。

 

「ラティチュード・フィルムの効果により、念写トークンは2度の攻撃が可能。念写トークンでドミニオンズへ攻撃」

エターナルドラゴンの姿を模したトークンが、先の一撃の余韻を置き去りにして再び大きく顎を開く。放たれた次なる光弾が、鋭い閃光となって一直線にドミニオンズへと襲い掛かった。防御の猶予すら与えない圧倒的なエネルギーの奔流。光弾の直撃を受けたドミニオンズはまばゆい光に飲み込まれ、一瞬にして粉砕された。

 

ツルギはがら空きとなったルーカスのフィールドを見据え、さらなる追撃を宣言した。

 

「『念写烏 モノクロウ』でプレイヤーへダイレクトアタック」

 

黒き翼を広げて急降下したモノクロウが、ルーカスの眼前へと迫る。胴体に備わる巨大なカメラレンズが、不気味な機械音を鳴らしてピントを合わせた。直後、けたたましいシャッター音とともにまばゆいフラッシュが炸裂する。レンズから放たれたその閃光が鋭い衝撃波へと変わり、直接ルーカスの全身を打ち据えた。

 

「くっ…」

ルーカス LP4600→2700

 

 

ふと、彼の脳裏に兄の声がフラッシュバックした。

 

(マキシム・ハイドは俺との会談の際、セカンド・コラプスの計画書と同意書を手にしている。そこには当然、俺の署名もある。もしハイドが再びモンスターワールドを手にかけるようなことがあれば、奴は必ず俺を排除しにかかる。どんな手段を使っても、な)

 

オスカーは言った。マキシム・ハイドは不確定な未来に縋るような男ではない。そしてハイドの頭には、すでに別の計画があると。

 

モンスターワールド侵攻計画はニーズヘッグの介入によって失敗に終わった。だが二度目があるとすれば、そうは行かない。ハイドはその障壁となるオスカーを排除しにかかる。オスカーはそう読んでいたのだ。

 

(俺は今、奴に心臓を握られているも同然だ。

覚悟しておけ。お前達だけで戦う時が来ることを)

 

パラドックス・ブリッジを奪い、多くの人々を犠牲にするセカンド・コラプス計画。テロ行為同然のその計画書には、オスカーの名が記されている。本来、政府はその計画に同意し、ニーズヘッグに協力する他なかった。

 

しかしフラワーによる美蘭の拉致というイレギュラーが起きたことで、その計画書は無調印のままハイドの手に渡ることになった。それが、オスカーにとっての弱点となってしまった。

 

故にオスカーは、カウンターとしてハイドの弱点を握るように命令を下した。

それが、ルーカスが今戦う理由だ。

 

爆弾は、いつ起爆してもおかしくない。

だからこそ、オスカーは言った。

「覚悟しておけ」と。

 

ルーカスは拳を強く握り、前を強く見据える。

 

(お前だけは逃がさないぞ、伊達ツルギ。

もう…時間がないんだ)

 

 

 

 

 

そこはデュエリア政府管轄の国立研究所。広々とした研究所の上部中央には、巨大なドーム状の観察室が設けられており、その中には神秘的な眩い光を放つオレンジ色のエネルギー体が浮かんでいる。

 

光の塊は突如として渦を巻くように活性化し、雷鳴のごとき轟音をドームの中に激しく反響させ始めた。大統領「マキシム・ハイド」は研究所の中央で神々しく光を放つオレンジ色のエネルギー体を見上げている。

 

その傍らにいるのは、この研究所の所長であり、科学分野の世界的権威「Dr.オクトー」。紫の無造作な髪に白いひげをたくわえ眼鏡をかけている、背の小さな男だ。研究者らしい白衣を纏っており、そのよれた皺からは年季が感じられる。

 

「思ったより順調そうだな、オクトー君」

頭上の光を見上げるハイドの口元に、満足げな笑みが浮かぶ。

 

「フッ、あんたが私のサイエンティスト心を擽ったからだ。面白い研究のためなら、寝る間も惜しんで働くよ、私は」

オクトーが短く鼻で笑う。口角をニヒルに吊り上げ、眼鏡の奥で瞳をギラつかせるその顔つきは、理性を捨て去った剥き出しの獣のようだった。

 

「とはいえ、完成まであと何ヶ月かはかかるがね」

その言葉と呼応するように、荒れ狂っていたオレンジ色のエネルギー体が突如として勢いを失う。激しい発光は急激に収縮し、落ちる寸前の線香花火のように頼りなく萎んでいった。

 

「急いでくれたまえ。この地球には時間がないのだよ」

ハイドの表情から先ほどの笑みが完全に消え去り、切迫した鋭い眼差しがオクトーへと向けられる。

 

「前も言っただろう。私があなたのオーダーに応えられなかったことなど、一度もないと」

小さく瞬く光の残滓を背に、オクトーは真剣な表情で言い放った。

 

 

 

第90話「アナザー・ミッション」 完

 

 

 

 

ルーカスの盤面を蹂躙し、追い打ちのように新たなるリンクモンスターを呼び出すツルギ。モンスター達はフィルムに焼き付けられ、写真に写らぬものは無情にもフィールドから消え去っていく。

 

強力なツルギの切り札を前に、果たして打つ手はあるのか。ルーカスは真実を掴み、暗躍する大統領マキシム・ハイドへ楔を打つための手がかりを得ることはできるのか。

 

 

「駒がなければゲームはできない。でも盤上の駒はプレイヤーがいなければ動かない。僕が嫌いなのは、ポーンが勝手に明後日の方向へ飛ぶことだ」

 

次回 第91話「カメラに写るもの」

 

 

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