遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第91話:カメラに写るもの

兄オスカーがネフカ王国へ旅立ったその裏で、弟のルーカスには密かな任務が課せられていた。

目的は、大統領マキシム・ハイドの弱みを握ること。

 

世界中の人々を危険に晒す『セカンド・コラプス計画』の計画書は、現在ハイドの掌中にある。

オスカーはこう語った。

 

「ハイドは犠牲なき未来という無根拠の幻想に、未来を託すような男ではない」。

 

ハイドは水面下で必ず別の計画を企てており、いずれ動き出す時が来る。万が一それがモンスターワールドへ再び魔の手を伸ばすものであった場合、政府とニーズヘッグの衝突は避けられない。そうなれば、ハイドは手元の計画書を切り札にしてオスカーの排除へ動く可能性が高い。対抗するためには、ハイドを表舞台へ引きずり出すための『材料』が必要だったのだ。

 

調査の末、ルーカスは20年前の祖父ヘックスの失脚にハイドが関与している可能性を突き止める。真相の鍵を握るフリーの記者「伊達ツルギ」との接触に成功したものの、彼は頑なに口を閉ざした。背後にハイドの脅迫があると察知したルーカスは、真実をこじ開けるべくツルギにオースデュエルを迫る。

 

しかし、ツルギは決して侮れる相手ではなかった。彼が操るのは、被写体となったモンスターをトークンとして複写する『念写』デッキ。ツルギはルーカスが構築した圧倒的な制圧盤面を軽々とすり抜け、リンク3『念写魔獣 アーガス』を呼び出す。そしてあろうことか、ルーカスの誇る切り札『エターナルドラゴン』をトークンとして複写し、ルーカスのフィールドを無残に蹂躙していった。

 

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【ルーカス】

LP2700 手札:2

 

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、エターナルドラゴン、エクスシーア、ドミニオンズ

 

【ツルギ】

LP8000 手札:2(念写蛙 マクローク)

 

①念写魔獣 アーガス ATK8500

②念写烏 モノクロウ ATK1900

③念写トークン ATK5100

④念写トークン DEF1000

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム、リバーサル・フィルム

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「仕留めきれなかったのは残念だが、俺のデッキはここからが本番だ。メインフェイズ2。俺はリンク3『念写魔獣 アーガス』と『念写烏 モノクロウ』をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

(更なるリンク召喚だと…)

ルーカスは鋭い眼差しでフィールドを睨む。

 

ツルギの頭上に巨大なサーキットが出現する。リンク3であるアーガスは3つの分身体を作り、まばゆい光の矢へと変わり、上空の回路へ向けて一直線に射出された。それらが勢いよく突き刺さると、4つのリンクマーカーが炎のように赤く点灯し、虚空に新たなゲートが開かれる。

 

「在りし日を永遠に。その赤き眼は今を縫い留め、過ぎゆく時を否定する」

 

「リンク召喚!現れよ、リンク4!

『念写蛇龍 ベローズウィルム』!」

 

 

■念写蛇龍 ベローズウィルム

 リンクモンスター

 リンク4/光/機械/攻2800

 【リンクマーカー:左下/下/右下/上】

 「念写」モンスター2体以上

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、撮影カウンターが置かれた相手モンスターは効果が無効となり、攻撃・リリースできず、融合・S・X・L召喚の素材にもできない。

 ②:自分・相手ターンに、相手フィールドにモンスターが存在する場合、

 自分フィールドの「フィルム」永続魔法・永続罠カード1枚を対象として発動できる。

 相手フィールドの全ての表側モンスターおよび、対象の「フィルム」カードに撮影カウンターを1つ置く。

 ③:自分・相手ターンに、自分フィールドの撮影カウンターが置かれた「フィルム」永続魔法・永続罠カード1枚を墓地に送って発動できる。

 相手フィールドの撮影カウンターが置かれていないモンスターを全てデッキへ戻す。

 

 

現れたのは、巨大な黒鉄の機械蛇だった。その体躯は、アコーディオンのように折り畳まれた無数の蛇腹で構成されている。頭部中央の巨大なカメラレンズが、獲物を捉えるかのように赤く冷徹に光る。金属と蛇腹が擦れ合う不気味な音を立てながら首をもたげる姿。その圧倒的な重量感と無機質な威圧感に、周囲の空気が凝固した。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/1uLiESP

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

呼び出した新たなモンスターを一瞥し、ツルギは口角を吊り上げる。もったいぶるように両手を広げ、ひどく余裕めいた笑みを浮かべた。

 

「このモンスターこそ俺の切り札。念写デッキの真骨頂だ。効果はちょっと複雑でね、説明するのが難しい。自分で読んでおいてくれ」

 

「記者のくせに言語化能力が皆無とはな。三流ライターに落ちぶれるのも納得だ」

 

追い詰められながらも即座に放たれた鋭い皮肉に、ツルギは両手を開いてわざとらしいほど大袈裟に肩をすくめた。

 

「永続魔法『リバーサル・フィルム』の効果発動。墓地の念写モンスターを特殊召喚できる。来い、『念写犬 フォーカスパニエル』」

 

■念写犬 フォーカスパニエル

 効果モンスター

 レベル2/光/機械/攻撃力500 守備力900

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、手札の「念写」モンスター1体を相手に見せて発動できる。

 そのモンスターと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 ②:自分フィールドの「念写トークン」1体をリリースして発動できる。

 このカードを墓地から特殊召喚する。

 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊する。

 

 

カメラの特徴を持つ機械の犬のモンスターが再び現れる。茶色と白色の金属装甲が全身を覆い、首や脚の関節には真鍮色の歯車やシリンダーが組み込まれている。顔の中央には巨大なカメラレンズが備わり、重なり合う絞り羽の奥から鋭い光を放つ。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/HExA48B

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「俺はカードを1枚伏せてターンエンド。ラティチュード・フィルムがある限り、俺の念写モンスターは効果で破壊されず、リバーサル・フィルムがある限り俺の『フィルム』カードは効果で破壊されない」

 

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【ルーカス】

LP2700 手札:2

 

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、エターナルドラゴン、エクスシーア、ドミニオンズ

 

 

【ツルギ】

LP8000 手札:1(念写蛙 マクローク)

 

①念写蛇龍 ベローズウィルム ATK2800

②念写トークン ATK5100

③念写犬 フォーカスパニエル DEF900

④念写トークン DEF1000

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム、リバーサル・フィルム

伏せカード:1

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ルーカスは眼前にそびえ立つ巨大なカメラ型の蛇龍を見上げる。空中に投影されたソリッドヴィジョンのデータへ視線を細め、静かに状況を計算した。

 

ベローズウィルムは、相手フィールドのモンスターにカウンターを置く効果を持つ。カウンターが置かれたモンスターは、ベローズウィルムがいる限りは効果が無効化され、さらにはリリースや攻撃・EXデッキからの特殊召喚のための素材にすることさえも禁ずる制約を与えるというものだ。

 

さらに、撮影カウンターは「フィルム」永続魔法・永続罠カードにも同時に置かれる。そしてそのフィルムを墓地に送ることで、撮影カウンターの置かれていないモンスターをバウンスする効果を持っている。

 

この1体のモンスターで2つの強力な妨害効果を有し、さらには永続魔法によって強固な耐性を得ている。未知の伏せカードもある中、ルーカスはこの盤面に立ち向かわなければならなかった。

 

(どう足掻いても、次のターンじゃケリはつけられないな。なら焦点を向けるべきは…)

 

脅威を前にしても、ルーカスの表情に焦りは浮かばない。一切の動揺を見せないその佇まいを、ツルギはじとりとした眼差しでねめ回す。絡みつく視線を受け流し、ルーカスはデッキトップへ指を掛けた。思考の果てにひとつの結論を導き出す。

 

「僕のターン…ドロー」

 

流れるような動作でカードを引き抜く。そのままEXデッキから表側表示の「ヘヴンアイズ・アポロジスト」を1枚抜き取り、デッキへと滑り込ませた。

 

「ヘヴンアイズ・ゲートキーパーのP効果を発動。EXデッキの表側カードを1枚デッキへ戻し、ヘヴンアイズ魔法カードを1枚手札に加える。ヘヴンアイズ・セレスティアルゲートを手札に加える」

 

「今手札に加えた永続魔法『ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート』を発動。このカードが存在する限り、ヘヴンアイズは効果の対象にならない」

 

■天界眼の真珠門(ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート)

 永続魔法

 このカード名の②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

 自分の「ヘヴンアイズ」モンスターは相手の効果の対象にならない。

 ②:自分のEXデッキ(表側)のPモンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを特殊召喚する。

 ③:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

ルーカスの眼前に、光を裂いて真珠の門が姿を現した。円環の意匠を帯びたその巨大な白き門は、天国への入り口を思わせる神々しさを放っている。

 

「ヘヴンアイズ・ヘラルドのP効果発動。手札のヘヴンアイズ・オファニムをEXデッキに表側で加え、デッキから『ヘヴンアイズ・アポロジスト』を手札に加える」

 

「手札からヘヴンアイズ・オスティアリウスを召喚」

 

■天界眼の結界手(ヘヴンアイズ・オスティアリウス)

 ペンデュラム

 レベル4/光/天使/攻1600 守1900 スケール9

 【P効果】

 ①:自分の「ヘヴンアイズ」モンスターのP召喚は無効にされない。

 ②:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」モンスターは戦闘で破壊されない。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手モンスターの攻撃宣言時、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 その攻撃を無効にする。

 ②:このカード以外の自分フィールドの「ヘヴンアイズ」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊し、デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体を手札に加える。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、重い金髪で片目を隠した少年のモンスター。瞳は白みがかった水色をしている。朱の縁取りを施した白き法衣を纏い、胸元には巨大な青き眼の宝飾があしらわれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/5eqpuR7

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「自分フィールドにヘヴンアイズがいる時、このカードは手札から特殊召喚できる。来い、ヘヴンアイズ・アポロジスト」

 

 

■天界眼の信仰者(ヘヴンアイズ・アポロジスト)

 ペンデュラム

 レベル2/光/天使/攻0 守0 スケール9

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:Pゾーンのこのカードを破壊して発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pカード1枚を自分のPゾーンに置く。

 【モンスター効果】

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「ヘヴンアイズ」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターは、自分のEXデッキ(表側)の「ヘヴンアイズ・アポロジスト」の数によって以下の効果を得る。

 ●1体以上:このカードの攻撃力は、自分のEXデッキ(表側)の「ヘヴンアイズ・アポロジスト」の数×500アップする。

 ●2体以上:このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 ●3体:このカードは相手のモンスター効果を受けない。

 

 

現れたモンスターは、深く被ったフードの下、青い単眼を持つ白い仮面を被っている。赤の縁取りが施された白い法衣を着ており、両手を祈るように固く結んでいる。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/7X4p3WD

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盤面に降り立った白い仮面のモンスター。ツルギはその姿をじっと見据え、静かに思考を巡らせる。

 

(あのモンスターは味方に効果を付与するカード。もしオスティアリウスに効果を付与すれば、前のターンのエターナルドラゴンと同様、完全耐性を得ることもできる。そうなればベローズウィルムの効果は効かなくなるが…)

 

盤面からルーカスへと視線を移す。その据わった冷徹な瞳は、眼前の相手が描く思惑の底までをも見透かそうとしていた。

 

(オスティアリウスに完全耐性を与えられたとして、あのモンスター自体に驚異的な効果はない。それにまだルーカスはP召喚を残してる。この布陣を真っ先に構えたのは、むしろベローズウィルムの効果を使わせるためだと考える方が自然だ)

 

ツルギはここでは何のアクションも起こさず、静かに優先権をルーカスへと明け渡した。

 

「ヘヴンアイズ・アポロジストの効果発動。ヘヴンアイズに効果を与える。対象はオスティアリウス」

アポロジストはオスティアリウスの前で、崇めるように膝をつく。すると、天から差した光がオスティアリウスを包み込んだ。

 

「付与された効果により、オスティアリウスはEXデッキのアポロジストの枚数に応じて効果を得る。アポロジストの枚数は2枚。オスティアリウスの攻撃力はEXデッキのアポロジストの数×500アップし、魔法・罠カードの効果を受けない」

 

ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK2600

 

しかしそれだけでは状況は動かない。今のままではオスティアリウスはモンスター効果を受ける上に、攻撃力もベローズウィルムには届かない。

 

「永続魔法『ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート』の効果発動。1ターンに1度、EXデッキからヘヴンアイズを特殊召喚できる。現れよ、ヘヴンアイズ・エクスシーア!」

 

■天界眼の威権士(ヘヴンアイズ・エクスシーア)

 ペンデュラム

 レベル7/光/天使/攻2500 守2400 スケール9

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分のEXデッキ(表側)のPモンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを自分のもう片方のPゾーンに置く。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 (このカードがEXデッキから特殊召喚されている場合、②の効果は1ターンに2度まで使用できる。)

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター2体をEXデッキに表側で加える。

 ②:1ターンに1度、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻し、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

フィールドに、白銀の重装甲を纏った翼の騎士が降臨した。白と紅に染まった巨大な翼を広げ、その手には光り輝く剣と、紅蓮の意匠が刻まれた大盾を携えている。甲冑の奥からは、淡い水色の眼光が鋭く放たれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/L6b38EK

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「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。EXデッキから特殊召喚した時、デッキから2枚のヘヴンアイズをEXデッキに表側で置く。ヘヴンアイズ・アコライトとヘヴンアイズ・アルケーをEXデッキに加える」

 

フィールドには3体のモンスター。ベローズウィルムによってこのモンスターにカウンターを乗せて固定化することも可能だ。

 

(オスティアリウスとエクスシーアは能動的に自分のモンスターさえも破壊できる。ここでベローズウィルムを使っても、固定できるモンスターはたった1体。ここはスルーでいい)

 

ツルギは冷静に判断し、再びルーカスへと優先権を渡した。ルーカスは気だるそうに小さく息を吐き、デュエルディスクへと触れる。

 

「永続魔法『ヘヴンアイズ・セレスティアルゲート』の効果発動。EXデッキの表側カードを1枚デッキへ戻し、カードを2枚ドローする」

 

(不確定の未来に身を託すなんて、僕の性分じゃない。つくづく、そんな状況に身を置かなきゃならなくなった自分が…憎い)

 

ルーカスの顔は、心底忌々しげに歪んでいた。未確定のドローに運命を委ねるしかない現状。そして何より、地球へ迫る隕石の脅威に対し、有効な計画を破棄することになった己の無力さへの憎悪だった。

 

勢いよく2枚のカードを引き抜き、視線を落として確認する。直後、ルーカスの動きが唐突に止まった。瞬きすら忘れ、まるで機械のように完全に静止したその姿は、彼が深い思考の海へと潜り込んだことを明確に示している。

 

数秒の静寂。やがてルーカスは、まっすぐに前を見据えた。

 

「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。EXデッキから特殊召喚されたこのモンスターは、1ターンに2度、EXデッキの表側カードを1枚デッキに戻し、フィールドのカードを破壊できる。まずはその伏せカードを破壊する」

 

これまで牽制するように盤面を整えていたルーカスが、ついに明確な攻撃の意思を見せる。ツルギは即座に反応しデュエルディスクに触れる。

 

「リバースカードオープン。

永続罠『アンチハレーション・フィルム』」

 

 

■アンチハレーション・フィルム

 永続罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手モンスターが効果を発動した場合、自分フィールドの「念写」モンスター1体をリリースして発動できる。

 そのモンスターと攻守・属性・種族が同じ「念写トークン」1体を自分フィールドに特殊召喚し、その効果を無効にして除外する。

 ②:自分フィールドの「念写」Lモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに自分フィールドの「念写トークン」1体をリリースできる。

 

 

「このカードも『フィルム』だ。よってリバーサル・フィルムによって相手の効果では破壊されない」

エクスシーアが鋭い光の斬撃を放つ。しかし、展開された薄い水膜がその一撃を受け止め、弾き返した。

 

ツルギの場に並ぶカードは、モンスターも魔法・罠もすべて強固な耐性に守られている。エクスシーアの刃では、これ以上盤面を切り崩すことは不可能だった。

 

「ヘヴンアイズ・エクスシーアの2度目の効果発動。EXデッキのカードを1枚デッキへ戻し、ヘヴンアイズ・アポロジストを破壊する」

 

エクスシーアが背後に立つ白い仮面の信仰者へと向き直る。そのまま一切の躊躇なく、手にした大剣を振り下ろした。アポロジストは一瞬にして光の粒子へと砕け散り、フィールドから姿を消した。

 

これでEXデッキのアポロジストは3枚。オスティアリウスは付与された効果によって、モンスター効果への耐性を得て、さらに攻撃力も500上昇する。

 

ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK3100

 

(モンスター効果を受けない以上、オスティアリウスはもう固定できず、攻撃は止められない。だが…アンチハレーション・フィルムによって、念写トークンをリリースすることで念写Lモンスターの戦闘破壊を免れることができる。つまり、アイツもこのまま攻撃してくることはない)

 

ツルギの佇まいには一片の焦燥も見当たらない。手持ちの妨害手段を温存したまま静観を貫くその姿勢そのものが、見えない重圧となってルーカスへのしかかる。

 

「ヘヴンアイズ・ヘラルドのP効果を発動。EXモンスターゾーンのエクスシーアをメインモンスターゾーンへと移動させる。僕のPスケールは1から9。よってレベル2~8のモンスターを同時に召喚可能」

 

ルーカスの頭上で巨大な振り子が揺れ始める。それは更なる進撃の予兆だった。

 

「天上の聖なる魂達よ、揺れ動く源流によりこの現し世に帰還せよ」

 

「ペンデュラム召喚!現れよ、我がモンスター達!」

響き渡る口上と共に、頭上の空間から2つの眩い光の筋が放たれ、フィールドへと力強く降り注いだ。

 

「EXデッキから、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ!」

 

 

■天界眼の勧告者(ヘヴンアイズ・ドミニオンズ)

 ペンデュラム

 レベル7/光/天使/攻2400 守2700 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:もう片方のPゾーンに「ヘヴンアイズ」Pカードが存在する場合に発動できる。

 Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚された場合に発動できる。

 相手フィールドの全ての表側カードの効果を、ターン終了時まで無効にする。

 ②:相手がモンスター効果を発動した場合、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 その効果を無効にして破壊する。

 

 

1体目は、水色に光る瞳を持つ、翼の先端を赤く染めた上級天使。金色の冠と白い仮面、金装飾を施した白い法衣に赤い帯を垂らし、その手には、巨大な紅玉を冠した金色の長杖を携えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/O2IHFKC

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「手札から、ヘヴンアイズ・ヴァーチュス!」

 

■天界眼の力翼霊(ヘヴンアイズ・ヴァーチュス)

 ペンデュラム

 レベル6/光/天使/攻2200 守2100 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が「ヘヴンアイズ」モンスターをP召喚した場合に発動できる。

 相手の魔法・罠カードを全て破壊する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体を特殊召喚し、デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。

 ②:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

2体目は、白と紅に彩られた巨大な翼を広げ、鳥人の上級天使。白銀の羽毛に包まれたその顔には、鋭い嘴と、冷徹に光る水色の瞳が備わっている。白き衣に黄金の装飾を纏い、足には鋭利な金の鉤爪を備えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/AfY9rth

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【ルーカス】

LP2700 手札:2

 

①ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK3100

②ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500

③ヘヴンアイズ・ドミニオンズ ATK2400

④ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200

 

永続魔法:セレスティアルゲート

Pゾーン:ゲートキーパー、ヘラルド

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、エターナルドラゴン

 

 

【ツルギ】

LP8000 手札:1(念写蛙 マクローク)

 

①念写蛇龍 ベローズウィルム ATK2800

②念写トークン ATK5100

③念写犬 フォーカスパニエル DEF900

④念写トークン DEF1000

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム、リバーサル・フィルム

永続罠:アンチハレーション・フィルム

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「ヘヴンアイズ・ドミニオンズの効果発動!EXデッキからP召喚した時、相手の全ての表側カードの効果をターン終了時まで無効にする!」

 

「そうはいかない。永続罠『アンチハレーション・フィルム』の効果発動。相手モンスターが効果を発動した時、念写モンスターを1体リリースすることで、そのモンスターと同じステータスの念写トークンを特殊召喚し、さらにその相手モンスターを除外する。フォーカスパニエルをリリースし、ドミニオンズの効果を無効にする」

 

このまま効果が通れば、ドミニオンズは除外されてしまう。ルーカスは鋭く腕を振り抜き、間髪入れずにチェーンを重ねた。

 

「ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果発動。お互いのターンに1度、ヘヴンアイズカードを破壊し、デッキからヘヴンアイズモンスターを手札に加える。破壊するのはドミニオンズだ」

 

オスティアリウスが両手を地に突き立てる。直後、青いレーザーを思わせる結界がドミニオンズの周囲へ瞬時に張り巡らされた。幾筋もの線が一気に内側へと収束し、ドミニオンズの身体を光の粒子へと変えていく。

 

「オスティアリウスの効果で、僕はデッキから『ヘヴンアイズ・カントル』を手札に加える。ドミニオンズは破壊されEXデッキへ送られたことで、除外は免れる」

 

『アンチハレーション・フィルム』の対象となったドミニオンズがすでにフィールドを離れていることにより、トークンが生み出されることはなかった。

 

「だが効果は無効になったままだ。ドミニオンズの全体無効は適用されない。さらにリリースされたフォーカスパニエルの効果を発動。フィールドから墓地へ送られた時、相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊できる。Pゾーンのヘヴンアイズ・ヘラルドを破壊」

 

空中に浮かび上がった半透明のフォーカスパニエルが、ルーカスの頭上のヘラルドへ向けてシャッターを切る。開かれた口の舌から現像された1枚の写真が現れると、フォーカスパニエルはそれを牙で乱暴に噛み砕き、引き裂いた。呼応するように、ヘラルドは呻き声を上げて破壊される。

 

幾重にも連なったチェーン処理が終わり、フィールドに一時の静寂が降りる。ツルギは眼前に並び立つ3体の天使を見据え、静かに思考を巡らせた。

 

(リンク召喚に繋がる可能性がある。そろそろだな)

 

「『念写蛇龍 ベローズウィルム』の効果を発動。自分フィールドの『フィルム』カードを対象として発動。そのフィルムカードと、相手フィールドの全てのモンスターに撮影カウンターを置く」

 

ベローズウィルムが巨大な体をうねらせ、赤いレンズの眼光を3体のヘヴンアイズへと向ける。けたたましい咆哮とともに、強烈な赤いフラッシュがフィールドを染め上げた。直後、背後のフィルムに1枚の写真が浮かび上がる。そこに写し出されているのは、上空を見上げる3体の姿だった。

 

エクスシーアとヴァーチュスは、写真と寸分違わぬ姿勢で上を向いたまま完全に硬直する。その中でただ1体、オスティアリウスだけが長い前髪をかき分け、ベローズウィルムを鋭く睨み返していた。

 

「撮影カウンターが置かれた相手モンスターは効果が無効となり、攻撃できない。さらにリリースもできず、あらゆる召喚のための素材にもできない。オスティアリウスはモンスター効果を受けずカウンターは置かれないが…これで少なくともリンク召喚には繋がらない」

 

フィルムに相手モンスターの姿を焼き付け、そのままモンスターを写真のように固定する。それがベローズウィルムの真価だった。しかしベローズウィルムはまだなおも強力な妨害効果を一つ残している。すでに通常召喚とP召喚を消費したルーカスにとって、この盤面を覆すのは容易なことではない。

 

しかしルーカスの目に迷いはなかった。手札から1枚のカードを選び、デュエルディスクに装填する。

 

「魔法カード発動『ヘヴンアイズ・ヴォケーション』。EXデッキの表側カードを1枚デッキへ戻し、デッキからレベル4以下のヘヴンアイズを1体特殊召喚する」

 

■天界眼の召命(ヘヴンアイズ・ヴォケーション)

 通常魔法

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 デッキからレベル4以下の「ヘヴンアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。

 自分フィールドにEXから特殊召喚された「ヘヴンアイズ」モンスターが存在する場合、

 さらにデッキから「ヘヴンアイズ」Pカード1枚を選び、EXデッキの表側に置くか、Pゾーンに置くことができる。

 ②:墓地のこのカードを除外して発動できる。

 ターン終了時まで、自分のEXデッキ(表側)のLモンスターに、そのリンクマーカーの数と同じレベルを与える。

 

 

「来い、ヘヴンアイズ・ヘラルド」

 

■天界眼の祝告使(ヘヴンアイズ・ヘラルド)

 ペンデュラム

 レベル3/光/天使/攻900 守1300 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:手札のPモンスター1体を相手に見せて発動できる。

 そのカードをEXデッキに表側で加え、そのカードとはカード名が異なる「ヘヴンアイズ」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 ②:EXモンスターゾーンのPモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをメインモンスターゾーンに移動する。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 ①:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻し、

 自分のPゾーンの「ヘヴンアイズ」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに特殊召喚する。

 ②:自分のフィールドの「ヘヴンアイズ」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊し、デッキからレベル5以上の「ヘヴンアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

現れたのは、白みがかった水色の瞳を持つ白銀の髪の魔道士だ。白の法衣に赤の装飾を纏い、胸元には蒼い石の首飾りを下げている。その手には、青い光を放つ宝珠を冠した銀の杖を携えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mCnG2uS

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「さらにEXデッキから特殊召喚されたヘヴンアイズがいる場合、デッキからヘヴンアイズPカードを1枚、PゾーンかEXデッキに置くことができる。ヘヴンアイズ・オファニムをEXデッキへ置く」

 

新たに現れた白銀の魔導士へ、ツルギは鋭い視線を向ける。

 

(あのモンスターはPゾーンのモンスターを特殊召喚する効果を持つ。さらにはヘヴンアイズを破壊することで更なる展開が可能…)

 

ヘラルドによる展開を許せば、撮影カウンターによって固定したモンスターを破壊することで場を空けられ、さらなる展開に繋げられてしまう。取れる選択肢は一つだった。

 

「ベローズウィルムのもう1つの効果を発動!撮影カウンターの置かれたフィルムを1枚墓地へ送ることで、撮影カウンターが置かれていない相手モンスターをデッキへと戻す!」

 

3体の天使が上空を見上げる姿を焼き付けたフィルムが、フィールドから跡形もなく消失する。

 

「カメラが写すものだけが事実だ。都合の悪い情報には消えてもらう」

 

写真に記録されていなかったヘラルドの身体が、足元からじわりと輪郭を失っていく。白銀の魔導士は消えゆく己の姿を困惑した眼差しで見つめたまま、完全に空間から削り取られた。

 

「でも、これでお前はもう僕を止められない」

ルーカスの口角が、獰猛な弧を描いて吊り上がる。

 

しかしその言葉を受けても、ツルギの余裕は微塵も揺るがない。強固な自陣を背に、ルーカスの手札を見透かすように言い放つ。

 

「そうだな。でも君の手札2枚のうち、1枚はただの下級Pモンスターだ。残り1枚でこの盤面を崩せると?」

 

その問いに、ルーカスはひどく呆れたように鼻を鳴らした。心の底から相手を嘲蔑する冷酷な視線を、ツルギへと突き刺す。

 

「残りの1枚を使って"盤面を崩す"?ナメるなよ凡人。

この1枚を使わず、お前に"勝つ"んだ」

 

突然の勝利宣言に、ツルギは表情を険しく強張らせた。彼にどんな手が残されているのか、警戒を強めて盤面を睨みつける。

 

「僕はヘヴンアイズ・カントルをPスケールにセット」

純白の法衣を纏った賛歌師がルーカスの頭上に浮かび上がる。

 

「ヘヴンアイズ・カントルのP効果発動。ヘヴンアイズ1体を対象に、連続攻撃を与える。対象はオスティアリウスだ」

 

カントルの唇から、透き通るような歌声が溢れ出した。フィールドを包み込むその調べは、光の波となってオスティアリウスへと吸い込まれていく。聖なる旋律に呼応するように全身が眩い輝きを帯びる。

 

「バトル。ヘヴンアイズ・オスティアリウスは、アポロジストから付与された効果により、相手モンスターの効果を受けず、カウンターは置かれていない。念写トークンへ攻撃」

 

ツルギは盤面を睨み、身構えていた。だが想定を裏切る単純な攻撃宣言に、毒気を抜かれたように目元を緩める。

 

オスティアリウスが両掌を地面へと押し当てると、ブレたような実態を持たないトークンの周囲を青白い閃光が走り抜ける。光は幾何学的な軌跡を描き、対象を完全に幽閉する檻を作り上げた。オスティアリウスが胸の高さで両掌を鋭く打ち鳴らす。乾いた破裂音を合図に、光の檻が内側へと急激に圧縮され、逃げ場のない圧力がトークンを跡形もなく粉砕した。

 

「カントルから付与された効果により、相手モンスターを破壊した場合、続けて攻撃が可能。オスティアリウスでベローズウィルムへと攻撃!」

 

オスティアリウスが天を仰ぎ、両腕を横へと大きく開く。標的となるベローズウィルムの、鋼鉄の蛇腹で構成された巨体を包み込むように、無数の青白い閃光が網の目状に展開された。オスティアリウスが空中で両掌を打ち合わせる。乾いた音を合図に、檻のような光の網が一斉に牙を剥き、眼下のベローズウィルムへと襲い掛かった。

 

ツルギ LP8000→7700

 

「永続罠『アンチハレーション・フィルム』の効果。念写Lモンスターが破壊される代わりに、フィールドの念写トークン1体をリリースすることができる」

 

青い光が直撃する寸前、ベローズウィルムの眼前にエターナルドラゴンの姿をした念写トークンが割り込んだ。大きく広げたその翼が、背後の機械蛇を完全に庇う盾となる。降り注ぐ青い光刃はすべてエターナルドラゴンの巨体へと吸い込まれ、トークンは光の粒子となってフィールドから霧散した。

 

-------------------------------------------------

【ルーカス】

LP2700 手札:1

 

①ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK3100

②ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500

(撮影カウンター)

③ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200

(撮影カウンター)

 

永続魔法:セレスティアルゲート

Pゾーン:ゲートキーパー、カントル

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、エターナルドラゴン、ドミニオンズ、オファニム

 

 

【ツルギ】

LP7700 手札:1(念写蛙 マクローク)

 

①念写蛇龍 ベローズウィルム ATK2800

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム

永続罠:アンチハレーション・フィルム

--------------------------------------------------

 

「僕はこれでターンエンドだ」

拍子抜けするほど短い幕引き。ツルギは大げさに息を吐き、呆れたように首を左右に振った。

 

「ここまで言動不一致だと逆に感心するな。俺に勝つんじゃなかったのか?それとも、あれはただのリップサービスかな」

 

「リップサービス、建前、社交辞令…僕はその手の媚びを売るような真似が嫌いなんだ」

 

挑発を真っ向から受け流し、ルーカスの口角が歪む。

その立ち姿に焦りの色は微塵もない。

 

しかし、盤面の戦力差は明白だった。ルーカスに残された防御の手立ては、オスティアリウスによる1度の攻撃阻止のみ。ツルギの布陣を崩すには到底足りず、手順通りにカードをプレイしていくだけで確実に相手のライフをゼロにできる。勝利は目前だった。

 

ツルギは愛用のカメラを顔の前に構え、真っ直ぐにルーカスへレンズを向ける。

 

「まぁいい。1つ特ダネをパーにされたが…代わりにいいネタが入った。『天下のニーズヘッグ副社長、三流ゴシップライターに敗北』ってな」

 

乾いた作動音が響き、フラッシュが焚かれる。レンズ越しに見えるルーカスの双眸は、ただ氷のように冷ややかにこちらを射抜いていた。

 

カメラを下ろし、ツルギは自身のデュエルディスクへと向き直る。そして、次なる一手へ向けてデッキトップへ指を掛けた。

 

「俺のターン、ドロー!」

ツルギが勢いよくカードを引き抜く。だが、流れるはずの時間は強制的に押し留められた。対面から響いた声が、場の空気を冷ややかに叩いたのだ。

 

「ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果発動。お互いのターンに1度、ヘヴンアイズカードを破壊し、デッキからヘヴンアイズモンスター1体を手札に加える」

 

ルーカスの視線には一点のブレもない。己の優位を微塵も疑わない強烈な意志を宿し、真正面からツルギを射抜いている。無言で盤面を睨むツルギを意に介さず、ルーカスは淀みなく言葉を続けた。

 

「オスティアリウスは完全耐性を持つ。この効果は止められない。Pゾーンのヘヴンアイズ・カントルを破壊し、デッキから『ヘヴンアイズ・インターセッサー』を手札に加える」

 

「この瞬間、手札のインターセッサーと、破壊されたカントルの効果を発動。チェーン2のカントルの効果。フィールドから離れた場合、デッキからヘヴンアイズを1体、EXデッキに加える。僕はヘヴンアイズ・アルケーをEXデッキへ加える」

 

「チェーン1のインターセッサーの効果。このカードがカード効果で手札に加わった場合、このカードを特殊召喚できる」

 

 

■天界眼の執成者(ヘヴンアイズ・インターセッサー)

 ペンデュラム

 レベル5/光/天使/攻2000 守2000 スケール9

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分メインフェイズに発動できる。

 このカードのスケールはターン終了時まで1になる。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがデッキから手札に加わった場合、手札のこのカードを相手に見せて発動できる。

 このカードを特殊召喚する。

 ②:相手ターンにこのカードをリリースして発動できる。

 EXデッキ(表側)から「ヘヴンアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。

 ③:このカードがEXデッキに表側で加わった場合、

 このカード以外の自分のEXデッキ(表側)のカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードをPゾーンにセットする。

 

 

姿を現したのは、長い白銀の髪を後ろで束ねた壮年の男。鋭く冷ややかな淡青色の双眸と顎の短い髭が、静かな威厳と落ち着いた年輪を感じさせる。長身を包むのは、純白を基調とし、真紅の裏地をあしらった豪奢な法衣。胸元や腰回りに緻密な十字の装飾が施された出で立ちで、白手袋に包まれた片手を導くように前方へと静かに差し出している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/fqrHml5

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「ヘヴンアイズ・インターセッサーの効果発動。相手ターンにこのカードをリリースし、EXデッキのヘヴンアイズを1体特殊召喚できる」

 

「なに……!」

ツルギの表情がこわばる。フィールドには相手を封じるベローズウィルムも、効果を無効にする永続罠も残されたままだ。盤面の優位は変わっていないはずなのに、ツルギは目を見開いて言葉を失っていた。

 

前のターン、ルーカスが確信を持って勝利を口にした理由を、ここに至って完全に理解したからだ。

 

「『アンチハレーション・フィルム』のモンスター効果を無効にする効果は、念写モンスターをリリースしなきゃ発動できない。でもお前のフィールドにはベローズウィルムしかいない」

 

「もしベローズウィルムをリリースすれば、撮影カウンターが置かれて動けなくなっているモンスターが息を吹き返す。そうなればエクスシーアがその永続罠を破壊し、結果インターセッサーの効果は無効にならない。つまり、その罠はもう意味を成さないってことだ」

 

前のターン、オスティアリウスの攻撃によって結果的に2体のトークンがフィールドから消えた。それは、コストとしてリリースする先がベローズウィルムしかいない状況を、意図的に作り出すためだったのだ。

 

「前のターン、お前はベローズウィルムの除去効果を使うために、撮影カウンターが置かれた『リバーサル・フィルム』をコストとして墓地に送った。それによって永続罠は破壊耐性を失い、エクスシーアで破壊可能となった。お前のおかげだよ」

 

もしあの時リバーサル・フィルムを維持していれば、永続罠はエクスシーアによって破壊されない。ベローズウィルムをコストにしてインターセッサーを無力化し、ルーカスの動きを完全に封じ込めることができていた。しかしそれは、ベローズウィルムのバウンス効果を使わないということだ。果たしてそんな選択肢など、あったのだろうか。その答えは、すぐにルーカスから提示される。

 

「でも、あそこでヘラルドをデッキに戻したのは正解だよ。止めてなければリンク召喚が通って、お前は1ターン早く負けていたんだからね」

 

ツルギは静かに息を吐いた。あの状況下で選び取ったプレイングに瑕疵はなかった。だが、その最善手すらも結果として自身の首を絞める鎖へと変わっていた。ツルギはやり場のない感情を堪えるように奥歯を強く噛み締めた。

 

ルーカスの勝利条件は、撮影カウンターが置かれたフィルムが存在しないこと。そして永続罠のリリース先がベローズウィルムしか存在しないこと。

 

その二つが揃った今、ルーカスはただ目の前の道を悠々と歩むだけでいい。

ルーカスは高らかと左腕を掲げる。

 

「ヘヴンアイズ・インターセッサーの効果により、自身をリリースしてEXデッキからヘヴンアイズ・ドミニオンズを特殊召喚する!」

 

インターセッサーの身体が静かに宙へと浮上した。白手袋に包まれた右手が硬く握り込まれ、その拳が自らの胸元へと添えられる。次の瞬間、その身は眩い光の粒子となって溶けた。そして直後、空を裂いて巨大な閃光がフィールドへと勢いよく突き刺さる。

 

光の中から、翼の先端を赤く染めた上級天使が現れる。金色の冠と白い仮面、金装飾を施した白い法衣に赤い帯を垂らし、その手には、巨大な紅玉を冠した金色の長杖を携えている。

 

「EXデッキへ送られたインターセッサーの効果を発動。さらにチェーンしてドミニオンズの効果発動!EXデッキから特殊召喚された時、相手の全ての表側カードの効果を、ターン終了時まで無効とする!」

 

「ドミニオンズは相手が発動したモンスター効果を無効にして破壊できる。ベローズウィルムの効果でカウンターを乗せようとしても無駄だ」

 

ドミニオンズがフィールドに着地したことで、ベローズウィルムは実質的に無力化された。あわせて永続罠の効果も使用できない。そこへさらに永続的な無効化が重ねられ、いかなる反撃の手立ても塞がれていた。この徹底して統制された盤面こそ、ルーカスが前のターンから計算し尽くしていた結末だった。

 

ドミニオンズが黄金の錫杖を掲げる。放たれた凄まじい密度の白光が、フィールドを波状に呑み込んだ。光に晒された機械の蛇龍とフィルムは、無機質な灰色へと変貌していった。

 

「カメラが何を写そうが、壊れてたら意味がないな?」

ルーカスは嘲るように片眉を小さく上げる。

 

ルーカスのプレイはまるで、最初から全てわかっていたかのようだった。前のターンの始まりから今に至るまで、放たれたすべての一手が、この瞬間を迎えるための歯車として精密に計算されていたとしか思えない。ツルギは虚脱した眼差しで、己の首に巻き付いた見えない糸の正体を辿る。

 

(ドミニオンズがEXデッキにいること。俺のターンにインターセッサーを手札に加え、特殊召喚したこと。全て"あのモンスター"がいるから成立することだ…)

 

ツルギの視線には、重い金髪で片目を隠した結界師「オスティアリウス」がいる。

 

(あのモンスターが完全耐性を与えられていたからこそ、ベローズウィルムを意に介さず効果を発動し、ドミニオンズを自ら破壊してEXデッキに送ることができた。インターセッサーを手札に加え、今ドミニオンズを特殊召喚できたのも、オスティアリウスが耐性を与えられ、永続罠で効果を無効にできないからだ)

 

すべての起点はどこだったか。思考を遡らせたツルギの背筋を、冷たい悪寒が撫で上げた。オスティアリウスの召喚。そしてアポロジストによる耐性の付与。それは前のターンの最序盤に行われたものだ。

 

あの時点では、セットされた永続罠カードの正体すら割れていなかった。手探りの暗闇であったはずの状況下で、ルーカスは一切の迷いなく最善手を見極め、遠く離れたこの「次のスタンバイフェイズ」に、焦点を定めていたのだ。

 

ドミニオンズの効果により、フィールドは全て無効化された。だが、それだけで命脈が絶たれたわけではない。ツルギは伏せていた顔を上げ、闘志の消えない瞳で真っ直ぐに前を睨み据える。

 

「だが、まだデュエルは終わっていない。勝負はここから…」

 

「チェーン1のヘヴンアイズ・インターセッサーの効果。このカードがEXデッキへ送られた時、EXデッキのPカードを1枚、Pゾーンにセットする。対象は…ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン」

 

宣告と同時、ルーカスの頭上に巨大な影が差す。現れたのは、全身を白銀の鱗に包んだ幻竜。鮮烈な血の赤に染まった幾重もの翼を背に広げ、首元には純白の布を纏う。鋭利な白い装飾羽が連なる頭部からは、冷たく鋭い青の眼光が放たれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/K66hvXU

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張り詰めたツルギの知覚が、周囲の時間を泥のように引き延ばしていく。眼前で翼を広げる、荘厳なる白銀。その絶対的な威容に、ツルギの双眸は瞬きすら忘れて釘付けになっていた。

 

「言っただろ、僕にリップサービスは無い」

ルーカスは左手を高らかと掲げる。

 

「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンのP効果発動!お互いのターンに1度、L素材となるモンスターを墓地へ送り、このカードをPゾーンからL召喚する!」

 

 

■天界眼の久遠竜(ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン)

 リンク/ペンデュラム

 リンク4/光/幻竜/攻3000 スケール9

 【リンクマーカー:左/左下/右下/右】

 EXデッキから特殊召喚されたモンスターを含む光属性モンスター4体

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドのモンスターを対象とする相手の効果が発動した時、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。その効果を無効にし除外する。

 ②:自分・相手ターンに発動できる。このカードのL素材となるモンスターをフィールドから墓地へ送り、PゾーンのこのカードをL召喚扱いで特殊召喚する。

 【モンスター効果】

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードの攻撃力は、自分のEXデッキの表側のカードの数×200アップする。

 ②:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。

 自分のEXデッキ(表側)のPモンスターを可能な限り特殊召喚する。

 ③:相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に、EXデッキ(表側)のカード1枚をデッキに戻して発動できる。それを無効にし、破壊する。

 

 

オスティアリウス、ヴァーチュス、エクスシーア、ドミニオンズ。4体の天使たちが虚空へと舞い上がり、白銀の竜の正面で静止する。そしてまばゆい光球へと変わり、そのまま竜の巨体へ吸い込まれるように溶け込んでいった。

 

エターナルドラゴンが重厚な翼を悠然と広げる。その圧倒的な質量に反して一切の摩擦音を響かせることなく、巨竜は滑るようにフィールドへと着地した。

 

「エターナルドラゴンの効果発動。特殊召喚に成功した時、EXデッキの表側のPモンスターを可能な限り特殊召喚する。現れよ、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ、ヘヴンアイズ・アルケー、ヘヴンアイズ・オファニム!」

 

天から降り注ぐ三筋の激しい光柱が、再臨した竜の傍らに突き刺さった。その輝きの中から、金色の冠と白い仮面の大天使『ドミニオンズ』が再び現れる。

 

その隣には、眩い白金の長髪をなびかせた雄々しき天使『アルケー』が凛と立つ。白と金の豪奢な甲冑に身を包み、真紅のマントを翻すその手には、黄金の戦斧が握られている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/oTtCp46

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そして常識的な生命の姿を逸脱した、理解を絶する天使『オファニム』。幾重にも重なり合う無数の白い翼。その羽の一枚一枚には、おぞましいほどの数の「瞳」が埋め込まれ、瞬きもせずにツルギを凝視している。中心に爛々と輝く巨大な眼球と、背後に浮かぶ光輪が、神聖さを通り越した根源的な恐怖を突きつける。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mta0Uph

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眼前の圧倒的な神々しい輝きを、ツルギはただ茫然と見つめる他なかった。人間が到底抗うことのできない、絶対的で神聖なる存在。その力に、戦意はみるみるうちに失われていく。

 

「ヘヴンアイズ・オファニムの効果発動。EXデッキから特殊召喚された時、EXデッキの表側カードを1枚デッキに戻し、相手フィールドの全てのモンスターを手札へ戻す」

 

 

■天界眼の千里卿(ヘヴンアイズ・オファニム)

 ペンデュラム

 レベル8/光/天使/攻2800 守2400 スケール1

 【P効果】

 ①:相手フィールドのモンスターの攻撃力は、自分のEXデッキの表側のカードの数×200ダウンする。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがEXデッキから特殊召喚された場合、自分のEXデッキのPカード1枚をデッキに戻して発動できる。

 相手フィールドのモンスターを全て手札に戻す。

 ②:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

 このカードは、このカードの効果で装備したモンスターの効果を得る。

 

 

オファニムの翼に刻まれた無数の瞳と、中心の巨大な眼球が一斉に不気味な白光を放った。その瞬間、ツルギの頭上の空間を切り裂いて謎の巨大な円盤状の光が出現する。そこから放たれる引力は、物理法則を無視した絶対的な重力波となってフィールドを蹂躙する。

 

巨大な機体を持つベローズウィルムでさえ、その圧倒的な力の前では無力だった。鋼鉄の塊がまるで見えない手に引き上げられるようにして、ふわりと軽々と宙に浮き上がる。その巨躯は光の粒子へと分解されながら、円盤の深淵へと容赦なく吸い込まれていった。

 

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【ルーカス】

LP2700 手札:1

 

①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK4400

②ヘヴンアイズ・オファニム ATK2800

③ヘヴンアイズ・ドミニオンズ ATK2400

④ヘヴンアイズ・アルケー ATK2300

 

永続魔法:セレスティアルゲート

Pゾーン:ゲートキーパー

EXデッキ(表側):アポロジスト×3、オスティアリウス、エクスシーア、ヴァーチュス、カントル

 

 

【ツルギ】

LP7700 手札:2(念写蛙 マクローク)

 

永続魔法:ラティチュード・フィルム

永続罠:アンチハレーション・フィルム

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エターナルドラゴンは召喚・特殊召喚を無効にする。ドミニオンズはモンスター効果を無効にし、アルケーは魔法・罠カードを無効にする。

 

ツルギの手札は2枚。

足掻くまでもなく、勝敗は決していた。

 

抗う気力すら失い、ツルギの指先から力が抜け落ちる。力なく足元へ散らばったのは、モンスターカード1枚と、魔法カード1枚。全て、ルーカスのモンスターによって止められることが決定づけられているカードだった。

 

戦意喪失したツルギを、ルーカスは一切の温度を感じさせない瞳で射抜く。

 

「お前がハイドに脅迫されてるってのは推測だけど、あのジジイのやり方は想像がつく。大方、家族のことでも持ち出されたんだろ」

 

不意にツルギの網膜の裏へフラッシュバックしたのは、クレヨンで描いた絵を誇らしげに掲げ、無邪気に笑いかけてくる息子「アキト」の姿。

 

だがその愛しい残像は、瞬時にある男の姿によって黒く塗り潰される。

 

外界から隔離された、豪奢な車内。真っ白な本革のシートに深々と巨体を預けていたのは、百獣の王を思わせる分厚い白髪の大男「マキシム・ハイド」。その逃げ道を塞ぐような酷薄な瞳が、今もツルギの心臓を冷たく締め付けていた。

 

その微かな動揺だけで十分だった。自身の推測が正しいと確信したルーカスは、射抜くような眼差しのまま、声音からさらに温度を奪う。

 

「身の回りの小さなものを犠牲にする覚悟もない凡人が、偉そうに大義を掲げるからそうなるんだ。ほんと、愚かだね」

 

見下すような視線を浴び、ツルギは沈黙したまま両手で固く拳を握り込んだ。反論しようとした直後。ルーカスは表情を変えぬまま静かに言葉を続けた。

 

「だけど…あの時、お祖父様を信じたその"眼"だけは褒めてやる」

 

ツルギは小さく喉を鳴らし、出かかった言葉をそのまま飲み込んだ。リップサービスなど決して口にしない男から投げられたその一言。それに呼応するように、長年抱え込んでいた複雑な思いが、熱を帯びて胸の奥からせり上がってくる。

 

「…俺の眼が優れてるんじゃない。他の奴らの眼が曇ってるんだ。ヘックス・ヴラッドウッドは、テロに加担するような人じゃない。そんなの…少し考えればわかることなのにな」

 

悔しさを堪えるように唇を噛み締めるツルギ。その姿を静かに目で追うと、ルーカスは軽く首を振って髪を揺らした。そして、再び真っ直ぐに前を向く。

 

「ハイドの手に堕ちても、その考えは変わらないか。なら後は、選ばれし者が真実を暴くその時を、指を咥えて見ていろ」

 

ツルギは深く俯き、さらに強く口元を噛む。その強張った表情には、明らかな葛藤が浮かんでいた。

 

「俺は…弱い」

小さく呟き、ツルギはゆっくりと顔を上げる。

 

「ターンエンド」

ツルギのフィールドにモンスターは1体も存在しない。すべての道は絶たれ、盤面は完全に決着の時を迎えていた。

 

ルーカスは無言のままカードを引き抜くと、そのまま鋭く腕を振り下ろす。

 

「エターナルドラゴン、オファニム、アルケー。3体のモンスターで、プレイヤーにダイレクトアタック」

 

終幕の宣告に呼応し、エターナルドラゴンが咆哮を上げる。ツルギの頭上に広がる虚空から、巨大な光の楔が顕現していく。オファニムが無数の眼球が蠢く異形の翼を、ぐちょぐちょと粘着質な音を立てて展開する。その背後には巨大な光輪が浮かび上がっている。そして、アルケーが手にした巨大な黄金の斧を軽々と持ち上げ、無慈悲な一撃の構えをとる。

 

ルーカスは、天を圧する巨大な天使たちの影の下を静かに進んでいく。ふと記憶の底から響いたのは、かつて兄が残した言葉だった。

 

(覚悟しておけ。お前達だけで戦う時が来ることを)

モンスターたちの前で足を止める。もはや抗う気力もなく首を垂れるツルギを、冷徹な眼差しで見下ろした。

 

「僕は何を犠牲にしてでも、守るべきもののために戦う。ノブレス・オブリージュ。それが選ばれし者の使命だ」

 

掲げられていた腕が、ゆっくりと振り下ろされる。

 

宙に縫い付けられていた巨大な光の楔が、轟音を立てて大地を穿つ。

間髪を容れずオファニムの光輪が臨界に達し、視界を白く焼き尽くす閃光が空間を貫く。

さらに空気を引き裂いて急降下したアルケーが、鋭い風切り音と共に黄金の斧を振り抜いた。

 

抗う術をなくしたツルギは静かにまぶたを閉じ、視界を白く染め上げる圧倒的な光の質量へと、ただその身を投げ出した。

 

 

ツルギ LP7700→0

 

 

「勝者、ルーカス・ヴラッドウッド。契約により伊達ツルギに対し、ルーカス・ヴラッドウッドの質問に必ず真実を答える義務を課します」

無機質な電子音が、静まり返った夜の州道に虚しく吸い込まれていく。

 

アスファルトへ崩れ落ちたツルギの元へ歩み寄ったルーカスは、足元に膝をつくツルギを冷淡な瞳で射抜いた。

 

「さあ、取材の時間だ」

 

 

 

窓越しのネオンが頼りなく瞬く、州道沿いの寂れた飲食店。ひび割れたビニールレザーのソファーに、色褪せた化粧板のテーブル。フロアに他の客の姿はなく、換気扇の低い駆動音だけが空間を満たしている。その一番奥のボックス席で、ルーカスとツルギの2人は静かに向かい合っていた。

 

背もたれに深く体重を預けたルーカスは、腕を組んだまま対面の男を鋭く見据えた。

 

「まず、20年前の祖父がサイバーテロ主導者に資金援助したという件について、お前はハイドが関与している証拠を掴んだが、奴に口止めされた。合っているか」

 

「…NOだ」

 

「何?」

想定外の返答に、ルーカスが不快げに眉間を狭める。

 

「正確には、半分はYESだ。ハイドが直接関与した証拠は無い。それを掴もうとした俺を、ハイドが口止めしたからだ」

 

「…お前はあの事件について、どこまで掴んでいる?」

 

短く息を吐いたツルギは、腹をくくったように視線を上げ、静かに口を開く。

 

「まずは事実を整理しよう。20年前、ある男が政府に対してサイバーテロを仕掛けようとした」

 

「男の名は浦木理人。政府のコンピュータに侵入する際に痕跡を残してしまい、サイバーテロ未遂として逮捕に至った」

 

ルーカスは微動だにしない。相槌を打つことすらなく、彫像のように静止したまま耳を傾ける。

 

「その数日後、ヘックス・ヴラッドウッドが浦木理人に資金援助を行ったという記事が出た。2人がバーで話している写真付きでな。当初ヘックスは疑惑を否定したが…浦木はヘックスから資金援助を受けたと証言した。それがヘックス・ヴラッドウッドの転落の原因だ」

 

ルーカスの両目に、拭いがたい昏い憎悪が滲み出る。静まり返った店内の空気が、鋭利な刃物のように冷たく張り詰めた。

 

「浦木の自白後も、ヘックスは疑惑を否定し続けた。浦木と懇意にしていたのは事実だが、サイバーテロを企てていたことなど知らなかったと」

 

「実際、お祖父様が直接サイバーテロについて認知していた証拠はなかった。当然だ。浦木とかいうクズの狂言なんだからな」

ルーカスの低く抑え込んだ声の底に、隠しきれない怒りが滲み出る。

 

ツルギは卓上のカップに視線を落としたまま、黒い水面に生じる微かな波紋を見つめていた。

 

「だが世間はバッシング一辺倒だった。会社も彼を切らざるを得なかった。証拠もないのに犯罪者のように扱われ、ヘックスは表舞台から姿を消した」

 

淡々と紡がれるツルギの言葉に、ルーカスは膝の上で両手を痛いほどきつく握り込んだ。脳裏を乱反射するのは、幼い頃にテレビの画面越しに見た光景だ。浴びせられる無数の閃光の渦中で、追いつめられた祖父。そして記憶は、静まり返った屋敷の薄暗い部屋へと切り替わる。窓辺にぽつりと佇み、生気を失った瞳でただ外を見つめていた、ひどく痩せ細った彼の後ろ姿が、今も鮮明に焼き付いている。

 

ツルギの瞳にひときわ強い光が宿る。まっすぐに正面を見据え、言葉を重ねていった。

 

「だが俺は到底信じられなかった。長年ニーズヘッグを追ってきて、ヘックス・ヴラッドウッドの人柄や思考は知り尽くしている。あの人は、本気でデュエルを、デュエリストを愛してる。あの人が…テロになど加担するはずがない」

 

その顔には、単なる取材対象としてではなく、個人としての執念とも呼べる確信が滲んでいた。

 

「君も知っての通り、俺は勢いに任せてヘックスを擁護する記事を出したが、全く相手にされなかった。だから俺は徹底的に調べ上げることにした。まず、浦木がサイバーテロを画策していたのは事実だ。証拠が残っていたし、そこは疑う余地がなかった。だが…一つ不可解な点があった」

 

沈黙を守っていたルーカスの眉が、わずかに跳ねる。そのまま伏せていた目を上げ、ツルギの顔をじっと睨み据えた。

 

「浦木は匿名でハッカーとして活動していた。俺はそのハッカー仲間を突き止めて、"インタビュー"させてもらった。ちょっとばかし強引な方法でな」

 

違法スレスレ、もしくは違法な手段でオースデュエルを持ちかけたのだろう。ルーカスには容易に想像がついた。ツルギは真っ直ぐに前を見据えたまま、言葉を続ける。

 

「仲間の証言によると、浦木のハッキング能力は並大抵のものじゃなかったらしい。本当に政府に対してサイバーテロを起こせるぐらいの腕はあったんだ。そんな浦木が、簡単に痕跡を残すはずがない」

 

「つまり、浦木はわざと痕跡を残し自ら逮捕されたと?」

ルーカスの問いに、ツルギは視線を外さず、深く頷いた。

 

これはルーカスが掴むことのできなかった事実だ。当時から祖父が濡れ衣を着せられていることは確信していたものの、その確固たる根拠は持っていなかった。それを今、20年越しに手にしようとしている。

 

「もう一つ、別の角度から検証した。浦木はデュエル教育推進協会という非営利団体の理事だった。子供たちにデュエルの楽しさを広め、伝えるのが目的だそうだ。おそらく、ヘックスが資金援助をしたのは浦木というより、彼の団体だったんだろうな」

 

「…デュエルを世界へ。お祖父様が掲げたモットーだ。あろうことか、浦木はそこに付け入った」

 

当時の煮え切らない記憶が引き出されたのか、ルーカスの顔に不快げな陰りが差していた。ツルギは正面のルーカスを見つめ、仕組まれた罠の端緒を語り出す。

 

「その協会ができたのは事件からわずか1年前。俺が思うに、これは最初からヘックスを釣るためだけに作られた団体だ」

 

ツルギは視線を交わすことなく、真っ直ぐに空間の一点を捉えて口を開く。

 

「カメラに写るものは紛れもなく事実だ。だが…真実とは限らない」

 

「…で?当然お前はその証拠を手に入れたんだろうな?」

ルーカスがわずかに顎をしゃくり、探りを入れるように目を細めた。ツルギは表情を微塵も崩さない。一定の温度を保った平坦な声が返る。

 

「証言なら得られた。ヘックスと浦木の密会を撮影した張本人のな」

 

「そいつもグルか?」

ルーカスの眉が鋭く跳ね上がった。

 

「いや、違う。オースデュエルで聞き出したが、その記者はシロだった。事件の前日、手紙が届いたらしい。20時『Bar Silent Stag』でヘックスとテロ首謀者の密会があると。その記者はアンチヘックスで有名だったし、おそらく"黒幕"に利用されたんだろうな」

 

「…マキシム・ハイド、だな」

確信へ一歩踏み込み、ルーカスは射抜くような強い視線を突きつける。しかし、ツルギは頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。あらゆる問いに真実を述べることを強いる契約があるにも関わらず。

 

「…ヘックスの失脚が何者かによる陰謀なら、当時ニーズヘッグ内でヘックスと対立していたハイドが真っ先に槍玉に挙がる。その裏取りをしようとした矢先…俺は尻尾を掴まれた」

 

脳裏に鮮明に蘇るのは、街灯もまばらな暗い夜道での光景だった。静寂を切り裂き、その場所にそぐわない、異様に長い純白の高級車が突如として滑り込んでくる。

車内から姿を現したのは、奔放な白髪を蓄えた、岩のように屈強な老年の大男だった。

 

男の短い指示で運転手が外へ退出すると、後部座席は二人きりの息詰まる密室へと変わる。座席に深く腰掛けた大男から放たれる、全身を物理的に押し潰すかのような凶悪な重圧。あの夜に味わった恐怖の感触は、今なおツルギの肉体に生々しく焼き付いていた。

 

ツルギは自嘲するように小さく口元を歪める。

 

「俺もその時は、むしろ奴の懐に飛び込むチャンスだと思った。だがハイドはヘックスの名前すら一度も出さず…俺に言った」

 

『息子が、いるそうだね』

 

ツルギの喉仏が無意識に上下する。雷鳴のように胸の奥を打ち据える、ひどくくぐもった重低音。その声が今このダイナーに響き渡ったかのように、テーブルへ置かれた彼の拳にはじわりと冷や汗が滲んでいた。

 

「ハイドは俺以外の誰も知らないような情報を、まるで明日の天気でも調べるみたいに、簡単に手に入れていた。それは、俺が今まで違法な手段でネタを手に入れてたってことだ」

 

向かい合うルーカスは鼻で短く息を吐き捨て、哀れみすら滲まない冷ややかな声を落とした。

 

「不正を暴く側の記者が、自らの不正のせいで真実を取り逃す…因果応報だな」

 

突き刺さるような刃を、ツルギは身じろぎ一つせずに真っ向から浴びる。

 

「"何かを守りたければ線を引くな"。それが俺のポリシー、だった。だが俺は正義よりも、自分の幸せを選んだ。俺が逮捕されれば…家族はどん底に落ちるからだ」

 

テーブルの傷に落とされた視線は、這い上がれない沼の底を覗き込んでいるかのように暗く濁っていた。固く結ばれた口元と、微かに震えを帯びた眼差し。信念をへし折り、ただ平穏にすがりついた男の顔には、決して拭い去ることのできない深い自嘲の影が張り付いていた。

 

「ハイドはオースデュエルでお前を縛らなかったのか?ただの口約束なら、お前の心変わりで全部水の泡になるだろ」

 

ルーカスは淡々とした口調で問いを投げかける。

ツルギは静かに首を横に振った。

 

「オースデュエルなんか仕掛ければ、自分の関与を認めるようなものだ。奴は脅迫相手に対してでさえ、決して弱みを見せようとしなかった」

 

オースデュエルを行えば法的に口を封じることができるが、その事実は契約書という形で残る。口封じが成立すれば契約書を誰かに見せることはできないが、物的証拠が残るのは確かだ。ハイドはその小さな糸の綻びさえも許さなかった。

 

「ハイドのしたことは、俺に息子がいることを確認し、俺が犯罪を犯したという事実をご親切に教えてくれただけだ。それが奴の立場を脅かすことにはならない。わざわざオースデュエルなんて切り札を切る必要すらなかったのさ」

ツルギの頬が引きつり、ひどくやつれた自嘲の笑みが浮かぶ。

 

「結果、お前は口をつぐみ、ハイドの傀儡に成り下がった…か。予想通りすぎて笑えるよ。これだから凡人は」

 

ルーカスが冷酷に口角を上げる。ツルギは一切の弁解をせず、ただ目を伏せた。やがてルーカスは笑みを消し去り、低いトーンで問う。

 

「それがお前の知ってる事件の全てか?」

ツルギが一度だけ頷く。ルーカスは肩を落とし、深く息を吐き出した。

 

「結局、現時点であの事件にハイドが関与しているとはまだ証明できないな」

ルーカスは窓の外へと顔を向ける。

 

「でも、少なくともハイドが一人の記者に脅迫まがいの口封じをしたのは確かだ。それに…お祖父様を陥れた奴が誰か、ハッキリとわかった」

 

暗闇に沈む寂れた田舎道を網膜に映すその眼差しは、底知れぬほどに冷え切っている。だが、瞬きすら忘れて一点の虚空を貫く凍てついた瞳の奥底には、静かな怒りの熱が確かに燻っていた。

 

ツルギはゆっくりと腰を上げ、ルーカスから視線を切って背中を見せた。

 

「"凡人"の役目は終わりだ。俺はこれ以上、深入りするつもりはない」

 

去ろうとするツルギの背へ、冷たい声が投げかけられる。

 

「最後の質問だ。お前の息子は今、どこで何をしている」

 

弾かれたようにツルギが勢いよく振り向いた。強張った顔に浮かんでいたのは、むき出しの敵意と、隠しきれない恐怖の色だった。

 

「…何故そんなことを聞く」

 

「ハイドから脅迫を受けた記者…お前の存在は奴への牽制になる。でも今は、あいつだけがお前という駒をコントロールできる状態だ。それは不平等だろ?」

 

座ったままのルーカスを、ツルギは顎の筋肉を硬直させて見下ろした。その瞳の奥には、得体の知れないものに向けるような薄ら寒さと、ひどく濁った暗い色が渦巻いていた。

 

未だ口を閉ざすツルギに、ルーカスは淡々と言い放つ。

 

「お前が答えなくても契約は果たされるぞ。DDAS、コイツ自身とコイツの息子の個人情報・経歴を全て答えろ」

 

音声にシステムが反応し、ルーカスの眼前に二つのソリッドヴィジョンが瞬時に展開された。空中に浮かび上がった片方のウインドウには、ツルギの居住地や連絡先を含む来歴。もう片方には、息子の「伊達アキト」に関する情報が同じ粒度で並んでいる。

 

「へぇ…お前の息子、探偵なんだ。しかも元DIEBと来た。これは利用し甲斐があるね」

 

「何をするつもりだ!息子に危害を加えるなら…」

 

血相を変えて詰め寄るツルギを前にしても、ルーカスは顔色ひとつ変えなかった。ただ冷ややかな視線で、ツルギを静かに見据える。

 

「何もしないさ。お前が僕の駒になるなら、ね」

 

勝者の表情で見上げるルーカスに、ツルギは鼻で短く息を吐き、挑発するように唇の端を吊り上げた。

 

「…凡人に頼らなきゃ何もできないのか?選ばれし者とやらが聞いて呆れるな」

 

しかしルーカスは足を組んだまま、わずかに態勢を崩すことすらせずに答えた。

 

「駒がなければゲームはできない。でも盤上の駒はプレイヤーがいなければ動かない。僕が嫌いなのは、ポーンが勝手に明後日の方向へ飛ぶことだ」

 

その言葉に、ツルギは沈黙した。かつては正義を追求し、真実を追い求めた男。その行きつく果ては、世界を動かす存在の盤上の駒に過ぎなかった。だがそれは、自らが屈することを選んだがゆえの結末だったのかもしれない。彼は心の中で自虐した。

 

「…これからどうするつもりだ」

ツルギが短く問うと、ルーカスはシートへ深く体重を預けた。

 

「浦木理人を見つけ出し、ハイドが20年前の事件の糸を引いていたことを認めさせる。そうなれば…ハイドの心臓を握れる」

ルーカスの口元に、温度を持たない鋭い弧が刻まれる。

 

その顔から一切視線を外さず、ツルギは微かな声を落とした。

 

「君の目的はなんだ。何のためにハイドの弱みを探る?

もしや…次期大統領選か?」

 

深く考え込むツルギの問いに、ルーカスは芝居がかった歪な笑顔を作った。

 

「教えるわけないだろ、負け犬」

 

 

Next、ニーズヘッグ、政府。

迫る悪星神から世界を守るすべを探す者たち。

目的を同じくする彼らは、未だ一枚岩ではない。

 

理想を信じ、突き進む者。

理想を疑い、己を信じる者。

 

オスカーの目論み通り、二つの思想は対立するのか。

その時、ルーカスの掴んだ手掛かりは、果たして切り札となるのか。

 

第91話「カメラに写るもの」 完

 

 

 

 

デュエリア・ギルド同盟はアスラナク打倒へ本格的に動き始める。対する王国軍もまた、異人捕縛のため着実に外堀を埋めていた。自軍の兵が失踪したことで後がなくなったムウミンは、驚異的な集中力で遊次達の潜むエリアを突き止める。

 

夜が明け、遊次は古文書を隠すために街へと出るが、そこでついに七使徒の一人と邂逅。遊次達はこれより、大きな戦いの渦へと足を踏み入れることとなる。

 

 

「深き眠りの中の小さき希望、その夢は美しき森の守護者なり」

 

次回 第92話「激戦の火種」

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