遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第14話:決戦前夜

ドモンとのオースデュエルを制したのはイーサンだ。

 

デュエルディスクAI「勝者 イーサン=レイノルズ。

対戦相手ドモン=ハルクには、契約を履行する義務が発生します」

 

トーマス「ドモン!!」

 

倒れているドモンのもとへトーマスが駆け寄る。

 

イーサン「契約通り、お前らはもう二度とトーマス君に関与することはできない。

それと、学園通りエリアでの活動も禁じられた」

 

ドモン「クッ…クソ…!お前ら、最低だぜ!

トーマスは学校で色んなもんを奪われてここに辿り着いたってのに、

またトーマスから仲間を奪うのか!?」

 

遊次「…仲間なら悪事を止めてやれよ。トーマスのためを思うならな」

 

灯「そうだよ。まだ壁に落書きするレベルだけど、どんどんエスカレートしていってもおかしくない」

 

 

秋山「…トーマス君、話してくれる?何があったのか。

学校で色んなものを奪われたって…」

 

トーマス「そ、それは…」

 

イーサン「…辛い過去は話したくないよな。

でも、何も俺達は君の敵じゃないんだ。無理に学校を行けとも言わない。

とにかく、ワケを話してほしいだけだ」

 

トーマス「……」

 

ドモン「……いいさ、俺から話してやる。トーマスから話すのはつれえだろう」

 

ドモンは観念したように立ち上がり、遊次たちへと向き直る。

 

 

ドモン「トーマスは通ってた学校でいじめを受けてたんだ」

 

秋山「そ、そんなっ…」

 

ドモン「ヘッ、やっぱり知らねえのか。担任のくせにな。

元々はただの友達だった奴らが、何かのきっかけでいじめる側に回ったらしい。

俺も詳しいことまでは知らねえがな」

 

灯「……」

 

イーサン「秋山さんは本当に知らなかったんですか?」

 

秋山「…はい、知りませんでした。トーマス君、本当なの?」

 

トーマス「……そうだよ」

 

秋山「そんな…いじめてたのって、いつも一緒にいるマイク君たち?」

 

トーマス「うん…。いつも僕と一緒にいた奴らだよ。

…いじめが始まるまでは仲が良かったんだ、ほんとに。

きっかけは、僕がマイクにデュエルに勝っちゃったことだ」

 

遊次「デュエルに?どういうことだ?」

 

トーマス「僕、あんまりデュエルが強くなくて、

マイク君や他のメンバー…トウヤ君やダリ君に全然勝てなかったんだ。

僕は悔しくて一生懸命デュエルを練習して…。ある日、ついにマイク君に勝ったんだ。

でも、次の日からマイク君や他のみんなが僕に冷たくなって…」

 

遊次「意味わかんねえ!トーマスは何も悪くないだろ!」

 

灯「そうだね…。なんでそんなことが…」

 

トーマス「マイクはリーダー的な存在だったから、僕に負けたのが許せなかったんだ。

だから手のひらを返して僕をいじめだした。

でも親にも先生にも相談できなくて…。でも言わなかったら誰も気づいてくれないし…」

 

秋山「それで学校に来るのがイヤになっちゃったのね…。

ごめんなさい、私…一番近くにいたのに気づけなくて…!教師失格だわ…っ!」

 

秋山は目に涙を浮かべる。

 

ドモン「本当だぜ!そのくせ不登校になった途端、

今まで気にも留めてなかったくせに急にしつこくつきまといやがる!

そもそもお前らが手を差し伸べなかったのが悪いくせにな!」

 

秋山「…その通りよ…。返す言葉もない…」

 

ドモン「てめえら先公がトーマスにつきまとうのは保身のためだろうが!

不登校の子供がいたら学校の立場が悪くなるからだろ!」

 

秋山「それは違う!私は本気で…!」

 

秋山は今にもつかみかかりそうな勢いで、ドモンに食って掛かる。

イーサンはすかざる止めに入る。

 

 

イーサン「…言い争っていてもしょうがない。

トーマス君はなんでこいつらのチームに入ったんだ?」

 

トーマス「…僕が昼間から学校も行かずに街を歩いてたら、

同じぐらいの年齢の子に話しかけられたんだ。チームに来ないかって。

そこには僕と似たような、学校に行けなくなった子供がいっぱいいて…」

 

遊次「なるほどな。それだけなら別に悪いとは思わねえ。

学校に無理やり行けとも思わねえ。

でも、なんで壁にラクガキしたり、悪いことに走っちまったんだ?」

 

トーマス「…チームのみんながそうするから…。

僕たちを見捨てた大人から、奪い返すんだって…」

 

遊次「壁にラクガキしたら奪い返せんのかよ?」

 

トーマス「それは…」

 

 

灯「多分、意味なんてないんだと思う。

行き場のない怒りや悲しみをどこかにぶつけたかった…そうじゃない?トーマス君」

 

トーマス「…わかんない。もしかしたらそうかも…。

何か目的があったわけじゃなくて、とにかく…嫌なことから逃げたくて」

 

 

遊次「まぁ、そんなもんだろうな、悪い事を始める理由なんて。

トーマスって中学生だろ?

それを仕切ってんのがダニエラとかこいつとか、ちょっと上の連中だよな?」

 

ドモン「…あぁ。デュエルでチームの勢力を広げるのが俺らの役目だ。

ガキ共はただチームを居場所にしてるだけだ」

 

イーサン「チームを広げて何になるんだ?」

 

ドモン「奪われたなら奪い返すしかねえ。それが俺らチームのモットーだ。

チームには汚ねえ大人共に色んなもんを奪われた奴らがいっぱいいる。

学校だけじゃなく、親に奪われたって奴もな。

結局この世界は力が全てだ。力で奪い返すしかねえんだ!」

 

イーサン「だが、ただの担任教師をデュエルで倒したって意味がないだろ。

別に秋山先生がトーマス君から何かを奪ったわけじゃない」

 

ドモン「奪ったのと変わらねえよ。手を差し伸べようとしなかったんだからな」

 

遊次「んなもん八つ当たりだろ。何の解決にもなってねえ。

担任の先生どころじゃねえ、無関係の一般人も襲ってただろうが」

 

ドモン「子供達に手を差し伸べないで自分だけ私腹を肥やしてるからだ、ダニエラも言ってただろ」

 

イーサン「それすらも悪と認定するのならあまりにも行き過ぎた行為だな。

大人への恨みが膨れ上がって、ただ憂さ晴らしをしてるに過ぎない」

 

 

灯「…あなた達は?あなたやダニエラは何のためにこんなことを…」

 

ドモン「……ヘッ、まあここまで来たら話してやってもいい。

…俺も1年前から不登校だ。学校で起きた暴力事件を、全部何もしてねえ俺のせいにされてな。

まともに調べもしねえくせに、大人共はよってたかって俺を攻めやがった」

 

ドモン「ダニエラは家庭だ。両親が喧嘩ばっかりで、その矛先はダニエラにも向いた。

そりゃひでえもんさ。家に居場所なんざなかったってよ」

 

遊次「……」

 

ドモン「怜央は…正直俺らよりもひでえ。マジで報われねえ人生を送ってきてやがる」

 

ドモン「…お喋りがすぎたな。

俺らがされてきて仕打ちはただの理不尽だろうが。俺らが何か悪ぃことしたか?

そんな理不尽に抗うには、力で従わせるしかねえんだ!

てめえらみたいな恵まれてたきた奴らには何もわからねえ!」

 

イーサン「…お前らが受けてきた仕打ちは理解した。そこに対しては同情しかないさ」

 

ドモン「同情なんざいらねえ!もう二度と邪魔すんなっつってんだ!」

 

遊次「お前らがこのまま何も変わらねえなら、俺らは邪魔するしかねえよ。

いくらお前らに辛い過去があっても、人から物を奪ったりすんのが正当化されるわけじゃねえ」

 

灯「そうだよ、子供達を思う気持ちがあるなら…。

トーマス君だけじゃない、他にも子供達が店の品物を盗んだり、そういう事件が多発してるって。

犯人は、あなた達のチームの子供達。

業務提携した探偵さんのところにも、依頼や相談がかなり来てる」

 

ドモン「知ったこっちゃねえな。大人共がどんな目に遭おうが俺らは何も思わねえ。

綺麗ごとじゃ何も解決しねえんだよ!」

 

結局、話は平行線を辿っている。

その時、背後から2人の男女が現れる。

 

 

怜央「…そこで何をしている?ドモン」

 

ドモンが背後を振り返る。

 

ドモン「怜央…それにダニエラも」

 

ダニエラ「負けたんだってね。アタイと同じく。

このエリア一帯に関わらないなんてオースデュエルしちまって。迷惑なもんだよ、ホント」

 

ドモン「…すまねえ」

 

怜央「なんでも屋。もはやお前らは無視できる存在じゃねえ。

ダニエラとドモンを倒して、俺らの勢力図を塗り替えやがったからな」

 

 

遊次「俺らはお前らに迷惑行為をやめさせたいだけだ。

居場所のない子供達の居場所を作ってやってるのは悪いことじゃねえ。

辛い過去があって、そこから這い上がろうとしてんのもわかるぜ。

でもな、やり方が間違ってんだ!お前らのやり方の先には未来なんてねえ!」

 

灯「人から物を奪ったり、子供達の悪事を止めなかったり…。

その結果、もっとエスカレートして歯止めが利かなくなったら…。

それを止めるのがあなた達の役目でしょう?」

 

 

怜央「そもそも、ガキ共がそんなことをするまで追い込んだのは誰だ?

そいつらにわからせてやるまで、俺らが止めてやる義理はねえ」

 

イーサン「本当に子供達のことを考えてるならそんな言葉は出ない。

お前らは結局、己の大人への復讐に子供達を巻き込んでるだけだ」

 

ダニエラ「そもそも、アタイらのチームに入る前に、子供達はひどい目に遭ってきたんだよ!

子供達が悪事に手を染めるのがイヤってんなら、その大本を正すのが正義ってもんだろう!」

 

ドモン「そうだ!俺らを止めたところで、不幸な子供が幸せになるわけじゃねえ!」

 

 

遊次「…あぁ、その通りだ。

お前らを止めたところで、お前らが受けてきた仕打ちがなかったことになるわけでもねえ。

これからそういう不幸な子供達が現れなくなるわけでもねえ。

だからって、お前らの悪事だって見逃せねえ!」

 

遊次「お前らのせいで不幸になる人間がいるなら、俺らはそういう奴らも救う!

不幸な子供達を救うのには、俺らだって全力を尽くす!

だから、お前らも真っ当な手段で子供達を、自分自身を救ってみせろよ!」

 

 

ダニエラ「……」

 

ドモン「……」

 

 

遊次の叫びは、誰の心にも届かなかったわけじゃない。

しかし、凍った心を簡単に溶かすことはできない。

 

 

ダニエラ「…アンタみたいな真っ直ぐな奴、今まで見たことないよ、アタイは。

でも…もう引き返せないのさ」

 

ドモン「…もう大人共への憎しみを消すことはできねえ。

そうさ、お前らの言った通り八つ当たり・憂さ晴らしかもな。

でも、それが俺の生きる意味になっちまってんだ、とっくのとうに…!」

 

 

怜央「ダニエラ、ドモン。こいつらの言う事を真に受けるな。俺らに残されてる道はただ一つだ」

 

怜央「…なんでも屋、お前らとはいずれ決着を着けなければならない」

 

遊次「…あぁ。俺もそう思ってたところだ。

俺らに対抗できんのはもうお前だけだ。お前がリーダーなんだろ、怜央」

 

 

遊次「最後に確認だ。まだお前らは悪事をやめる気はねえんだな?

子供達の悪事も止める気はねえんだな?」

 

 

怜央「…あぁ。止まる気はねえし、ガキ共が何をしようが俺らが止める必要はない。

俺らが歩みを止めちまったら、ガキ共も、俺らも、報われないまま終わっちまう!

俺達はただ"奪い返す"ためだけにここまで来た!

それを邪魔するってんなら、だれが相手でもぶっ潰すだけだ!」

 

 

遊次「…よくわかったよ。お前らはもう復讐心に支配されちまってる。

それ以外のことはもう考えられねえ、考えることをやめちまってんだ」

 

 

遊次「俺と決着を着けろ、怜央。

俺はNextの全てを懸ける!お前らはお前らの全てをそのデュエルに懸けろ!」

 

怜央「上等だ!今からでも返り討ちにしてやる!」

 

 

遊次「…いや、明日だ。明日の午後6時に工場に来い!そこで決着を着けろ!」

 

怜央「明日だと?なんだ?怖気づいたか!」

 

遊次「んなわけねえだろ。まずはトーマスの事を解決しなきゃいけねえ。

お前らとは関われねえ契約だからな」

 

 

怜央「…チッ。なら明日必ず来い。逃げるなよ」

 

怜央は踵を返す。

 

 

遊次「お前こそ逃げんじゃねえぞ。俺が勝ったらお前らには二度と悪事はさせねえ」

 

怜央「正義の味方気取りか?寒ぃんだよ。

お前を潰して、この街に二度と入れねえようにしてやる!

行くぞドモン、ダニエラ」

 

怜央はドモンとダニエラを引き連れ、路地裏へと去っていく。

 

 

 

 

遊次「トーマス、ごめんな。お前の居場所を無理やり奪うことになっちまって」

 

トーマス「僕…どうしたら…。僕、これからどうしたらいいの!?

学校になんて戻りたくないよ!!」

 

灯「学校に無理に戻ってほしいわけじゃないの。トーマス君に、悪いことはしてほしくないだけ」

 

イーサン「秋山先生、依頼は果たしました。

トーマス君の今後については、依頼など関係なく我々も協力します」

 

秋山「本当にありがとうございます…!」

 

秋山は涙を浮かべて感謝を述べる。

 

秋山「トーマス君、ごめんね。私、担任なのに全然気付いてあげられなかった。

いくら謝っても許してもらえないと思うけど…」

 

トーマス「…別に秋山先生が悪いって、本当は思ってないよ。

僕も言い出せなくて黙ってたし」

 

秋山「それでも、絶対に違和感はあったはずなの。

それに気付けなかったなんて教師失格よ、ほんと…」

 

秋山「まずは、ご両親に全部お話ししないといけないと思ってるの。

…イジメのことを、お父さんとお母さんに伝えるのは辛いと思う。

でも、お父さんとお母さんはトーマス君の事を誰よりも考えてくれる、1番の味方だから。

信じてあげてほしいの」

 

 

トーマス「……」

 

灯「トーマス君。秋山先生も、私たちも、トーマス君のために全力を尽くすから。

簡単には信じられないかもしれないけど、私たちの思いは本物だから」

 

秋山「親御さんとお話しして、イジメてたマイク君達にも話を聞く。

元通りになりたいかどうかはトーマス君の気持ち次第だけど…。

とにかく、もうトーマス君にひどい事なんて絶対にさせないから!」

 

トーマス「……わかった。父さんと母さんに話す。怖いけど…」

 

トーマスは重々しく首を縦に振る。

 

秋山「トーマス君…ありがとう」

 

 

灯「無理やり引きはがすような真似しちゃって、ごめんね。

あのチームは、遊次が、私達が、絶対になんとかする。

今は、私たちがトーマス君の居場所になるから」

 

イーサン「アイツらのチームが悪いチームじゃなくなったら、俺がドモンに課した契約も解除する。

チームの奴らと一生会えないとか、そういうわけじゃない」

 

遊次「トーマス、もう少しの辛抱だ。お前からずっと居場所を奪うつもりなんてねえ。

学校も、あのチームも…すぐには変わらないかもしれないけど、俺達で変えていく」

 

トーマス「チームを…変える?Unchained Hound Dogsを?」

 

遊次「あぁ!

ドモンもダニエラも、そして怜央も、根っこから悪い奴じゃないはずなんだ、多分…。

だが、あいつらの過去が、あいつらの足を掴んで離さねえんだ」

 

 

遊次「怜央…あいつの過去に何があったかは知らないが、

あのチームの中で一番意思が固い奴のは間違いねえ」

 

遊次「止まってるあいつらの足を1歩前に進めるために、

明日、怜央とデュエルで決着を着ける。

デュエルを通してあいつの心の奥底にあるもんを引っ張り出す!」

 

 

灯「うん。遊次ならできるって信じてるよ!」

 

イーサン「勝てよ、遊次!」

 

遊次「…あぁ!当たり前だ!!」

 

 

 

NextとUnchained Hound Dogsの決戦は明日。

 

遊次は、デュエルによって怜央と通じ合えると信じている。

遊次は復讐に囚われた者達の足を、憎しみから解放できるのだろうか。

 

 

 

 

第14話「決戦前夜」 完

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