遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第65話:チェーン・ゼロ

ニーズヘッグのセカンド・コラプス計画を止めるため、Nextは再びメインシティへと向かった。

その途中で現れたニーズヘッグの刺客、『鄭 紫霞』(ジェン・ズーシャ)。

イーサンの持つ生体認証と、ニーズヘッグの持つパラドックス・ブリッジの鍵を懸けた戦いは熾烈を極めた。

 

相手のチェーンを封じ、絶対的な力を振るうジェンの「絶鎖獣」デッキ。

上級モンスターを2体呼び出し、あわやイーサンを仕留んとするその刹那、

イーサンは罠カードによって2体の絶鎖獣モンスターをL素材とし、切り札「ヴォルタンク・サンダーフォートレス」を呼び出した。

 

しかし、死をも恐れぬ勝利への執着によって、ジェンは真の切り札「絶鎖獣 セヴァーヴァナルガンド」をアドバンス召喚した。

その効果により、イーサンの全てのカードが除外され、Next一同は絶望の淵に落とされたのだった。

 

-------------------------------------------------

【イーサン】

LP6200 手札:3(ヴォルタンク・インダクタ)

 

 

【ジェン】

LP500 手札:0

 

①絶鎖獣 セヴァーヴァナルガンド ATK3700

--------------------------------------------------

 

「前のターン、貴方に破壊された魔法カード『絶鎖獣の恩寵』の効果発動。

このカードを墓地より除外し、除外されている絶鎖獣カード3枚をデッキに戻すことで、1枚ドローする」

 

引いたのはレベル5のモンスターカード。

ジェンは前を見据え、反撃の炎をその瞳に宿す。

 

「ゆくぞ。バトルフェイズ。

セヴァーヴァナルガンドでダイレクトアタック!」

 

地面が微かに軋み、金色の光の鎖が数多に大地を裂いて出現した。

鎖はイーサンの全身に這い上り、両手、両足、そして胴体を拘束する。

 

「イーサンッ!」

遊次は思わずイーサンに近寄ろうとするが、さらに地面から現れる光の鎖が2人を阻む。

 

黄金の装甲に包まれた右前脚が、凄まじい速度をもって振り上げられた。

その爪は、空間そのものを捻じ曲げるほどの重圧を帯びる。

爪の軌跡の先で大気が激しく圧縮され、亀裂のような歪みが生じた。

そして、巨大な爪は一切の躊躇なく振り下ろされる。

 

断罪の閃光が奔り、凄まじい衝撃波がイーサンの全身を貫く。

視界は白一色に染まる。

 

「ぐああああああ!!」

LP6200 → 2500

 

鎖が消滅した後、イーサンは深く息を吸い込むことすらできず、力なく地に倒れ伏した。

その圧倒的な一撃に、遊次達は言葉を失った。

 

「私はこれでターンエンドだ。

リベレートペガサスをリリースしてA召喚したことで、フィールドの絶鎖獣カードは効果の対象とならない」

 

倒れるイーサンを冷たい目で見つめながら、ジェンはさらに言葉を紡ぐ。

 

「さらにセヴァーヴァナルガンドは、相手がカード効果を発動した時、そのカードを除外する効果を持つ。

そしてこの効果は、1ターンに何度でも使用可能だ」

 

「んだと…!?」

 

怜央は眼前に立ちはだかる神獣の圧倒的な力に、目を見開く。

効果を発動する度に除外されては、モンスターを展開することなど不可能としか思えなかった。

 

「…心配するな、怜央」

イーサンは苦悶の表情を浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

満身創痍ながらも、その声はいつもと変わらぬ、はっきりとしたものだった。

 

「雷電は途切れない。途切れさせやしない」

イーサンはデッキトップに指をかける。

 

「俺のターン、ドロー!」

引いたのは、1枚の罠カード。

それを見たイーサンの目は、さらに鋭く光る。

 

「自分フィールドにモンスターがいない時、『ヴォルタンク・インダクタ』は手札から特殊召喚できる」

 

■ヴォルタンク・インダクタ

 効果モンスター

 レベル3/光/雷/攻撃力1000 守備力1500

 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ③:自分メインフェイズに発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク」モンスター1体を墓地へ送る。

 

 

現れたのは青いコイル形状のモンスター。

金属装甲の外殻に銅線が幾重にも巻きつき、中央では青白い電流がほとばしっている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4LXtcBt

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「インダクタの効果発動。

ヴォルタンクを1体、デッキから墓地へ送ることができる」

 

「セヴァーヴァナルガンドの効果発動。

相手モンスターが効果を発動した時、そのカードを除外する」

 

当然、ジェンが何もしないはずはなかった。

効果発動の宣言と共に、イーサンのフィールドの地面から光の鎖が現れ、インダクタを縛り付ける。

そして、一瞬にしてその鎖は引かれ、蒼き機体はバラバラに引き裂かれる。

 

「だが、効果は無効にならない。

インダクタの効果により、デッキから『ヴォルタンク・アーム』を墓地へ送る」

 

しかしイーサンが手を止めることはなかった。

 

「墓地のヴォルタンク・アームを除外して効果発動。

除外されている『ヴォルタンク』カード1枚をデッキに戻し、そのカードと同じ種類の『ヴォルタンク』カードを手札に加える。

前のターンに除外されたフィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』をデッキへ戻し、

魔法カード『ヴォルタンク・リブート』を手札に加える」

 

「『ヴォルタンク・リブート』を発動。墓地のヴォルタンクを特殊召喚する」

 

カードの発動と共に、イーサンの視線はジェンへと向けられる。

その視線の先で、ジェンはゆっくりと右手を上げる。

 

「セヴァーヴァナルガンドの効果発動。

カード効果が発動した時、そのカードを除外する」

イーサンの発動した魔法カードも光の鎖へと呑まれ、消えてゆく。

 

「チェーン1の『ヴォルタンク・リブート』により、墓地の『ヴォルタンク・スイッチギア』を特殊召喚!」

 

■ヴォルタンク・スイッチギア

 効果モンスター

 レベル5/光/雷/攻撃力2000 守備力2200

 このカード名の②③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを1つ取り除いて発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚する。

 ③:フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 自分の墓地の「ヴォルタンク」カードの枚数だけ、そのカードに雷カウンターを置く。(最大10個まで)

 ④:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。

 

 

再び、深い蒼を基調とした大型の装置型モンスターが現れる。

正面には太いレバー状のパーツが突き出し、その根元からは青白い放電が微かに走っていた。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/QFFwsKl

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「さらに俺は手札の『ヴォルタンク・コイル』を召喚」

 

■ヴォルタンク・コイル

 効果モンスター

 レベル1/光/雷/攻撃力500 守備力500

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分・相手メインフェイズに発動できる。

 このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として、

 「ヴォルタンク」Lモンスター1体をL召喚する。

 ③:墓地のこのカードを除外して発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク」カード1枚を除外する。

 

 

現れたのは、銅線を密に巻いた円柱形のコイルを胴体に持つモンスター。

上下を青いフレームが挟み込むように固定しており、四隅には太い支持脚が直角に張り出している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ELLKy2k

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「ヴォルタンク・スイッチギアの効果発動!

墓地の『ヴォルタンク』カードの数だけ、最大10個までフィールドのカード1枚に雷カウンターを置く。

お前のセヴァーヴァナルガンドは効果の対象にならない。

よって、ヴォルタンク・コイルに雷カウンターを置く!」

 

「無駄だ。セヴァーヴァナルガンドの効果発動!

スイッチギアは除外される!」

 

スイッチギアにも無慈悲なる光の鎖が襲い掛かり、その姿は瞬く間に消え失せる。

 

「だがスイッチギアによって、コイルに雷カウンターが10個置かれる」

 

コイルの小さな駆体に10本もの雷が同時に落ちる。

 

雷カウンター 0→10

 

(クソッ…!やっぱりまともにモンスターを並べられねえ…!)

遊次はもどかしそうに奥歯を噛み締める。

 

「…俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

唐突にイーサンのターンが終了したことに、遊次達は驚きを禁じ得なかった。

 

-------------------------------------------------

【イーサン】

LP2500 手札:1

 

①ヴォルタンク・コイル ATK500(雷カウンター:10)

 

伏せカード:1

 

【ジェン】

LP500 手札:1

 

①絶鎖獣 セヴァーヴァナルガンド ATK3700

--------------------------------------------------

 

「攻撃500のモンスターが1体…。

もしこのまま攻撃を受けたら、イーサンは…」

 

灯は不安の眼差しでフィールドを見つめる。

しかし今はイーサンを信じることしかできない。

 

圧倒的優勢のジェンは、真剣な表情でセットカードに視線を送っていた。

その表情には油断や慢心は浮かんでいない。

 

「私のターン、ドロー」

 

引いたのは永続魔法カードだ。

ジェンは再びイーサンの場のセットカードを見つめる。

暫しの思考の末、ジェンは動き出す。

 

「バトルフェイズ。

セヴァーヴァナルガンドで、ヴォルタンク・コイルに攻撃」

 

セヴァーヴァナルガンドがその巨体を沈め、攻撃態勢へと入る。

この攻撃が通ればイーサンは敗北してしまう。

遊次達は息を呑んだ。

 

しかしその杞憂を切り裂くように、イーサンは口を開いた。

 

「罠カード発動!『ヴォルタンク・グリッドパージ』!

雷カウンターを5つ取り除き、フィールドのカードを全てデッキに戻す!」

 

雷カウンター 10→5

 

■ヴォルタンク・グリッドパージ

 通常罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:フィールドの雷カウンターを5つ取り除いて発動できる。

 フィールドの全てのカードをデッキに戻す。

 その後、自分はデッキから「ヴォルタンク」モンスター1体を特殊召喚する。

 ②:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 お互いの墓地の全てのカードをデッキに戻す。

 

 

そのカードの発動に、遊次達の表情にも一瞬で光が戻る。

 

「よっしゃ!これが通ればあのモンスターも…」

 

遊次がジェンのフィールドに視線を移した時、ジェンは手札の1枚を表にしていた。

 

「手札の『絶鎖獣 ピールオッター』の効果発動!

このカードを特殊召喚し、フィールドの絶鎖獣1体を手札に戻す!」

 

 

■絶鎖獣 ピールオッター

 効果モンスター

 レベル5/地/獣/攻撃力2000 守備力1100

 このカードの①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの「絶鎖獣」モンスター1体を対象として発動できる。

 手札のこのカードを特殊召喚し、対象のモンスターを手札に戻す。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 ②:自分メインフェイズに発動できる。

 手札からレベル4以下の「絶鎖獣」モンスター1体を特殊召喚する。

 この効果に対して相手は効果を発動できない。

 ③:このカードをリリースして「絶鎖獣」モンスターがA召喚した場合、相手フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。

 そのモンスターを破壊する。

 

 

セヴァーヴァナルガンドが光へと消え、手札へと戻る。

そして代わりに現れたのは、青黒い体毛に緑の紋を浮かべたカワウソのモンスターだった。

肩と腕には黒鋼の装甲が食い込み、先端の鉤爪が鮮やかな緑色に輝く。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mJ3tKMB

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「だがグリッドパージの効果でそのモンスターはデッキへと戻る!」

 

フィールド全体に激しい雷が迸る。

ピールオッターとヴォルタンク・コイルは光に包まれ、姿を消した。

 

雷カウンター 5→0

 

「その後、俺はデッキからヴォルタンク1体を特殊召喚する。

現れよ、『ヴォルタンク・リアクトル』!」

 

 

■ヴォルタンク・リアクトル

 効果モンスター

 レベル5/光/雷/攻撃力1900 守備力2400

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分の墓地の「ヴォルタンク」カード5枚を対象として発動できる。そのカードをデッキに戻す。

 その後、デッキから「ヴォルタンク」カード1枚を手札に加える。

 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。

 自分フィールドに「ヴォルタンクトークン」(雷族・光・星1・攻/守500)1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

現れたのは、青い外殻と無数のパイプで組み上げられた機械だった。

中央の縦長の筒には稲妻のような光が走り、周囲を取り巻く太い配管が脈動するように張り巡らされている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/OlnkcMW

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「デッキがシャッフルされたことで、リアクトルの効果で自身に雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 0→1

 

「よっしゃあ!手札には戻っちまったけど、これで厄介な奴がフィールドからいなくなったぜ!」

 

「このまま何もなければいいけど…」

 

灯は両手を祈るように握り、フィールドを見つめる。

しかしその希望に冷水をかけるように、ジェンは手札から1枚のカードを選ぶ。

 

「永続魔法『絶鎖獣の鳴動』発動」

 

■絶鎖獣の鳴動

 永続魔法

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分は通常召喚に加えて1度だけ「絶鎖獣」モンスター1体をA召喚できる。

 ②:自分の墓地の「絶鎖獣」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを手札に加える。

 自分フィールドにレベル7以上の絶鎖獣モンスターが存在する場合、この効果は相手ターンでも発動できる。

 この効果に対して相手は効果を発動できない。

 ③:相手エンドフェイズに発動できる。

 デッキから「絶鎖獣」カード1枚を選びデッキの上に置く。

 

 

「効果発動。自分の墓地の『絶鎖獣』魔法・罠カード1枚を手札に加える。

手札に加えるのは『絶鎖獣の封印』」

 

そのカードは、墓地から複数体のモンスターを効果を無効にして特殊召喚するものだ。

さらに自分の方がLPが少ない場合、その特殊召喚したモンスターは戦闘で破壊されない。

 

「カードを1枚伏せターンエンドだ」

 

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【イーサン】

LP2500 手札:2

 

①ヴォルタンク・リアクトル DEF2400(雷カウンター:1)

 

【ジェン】

LP500 手札:1(セヴァーヴァナルガンド)

 

永続魔法:絶鎖獣の鳴動

伏せカード:1(絶鎖獣の封印)

--------------------------------------------------

 

(あの伏せカードが発動されれば、再び墓地のモンスターが特殊召喚される。

そうなれば次のターンにセヴァーヴァナルガンドがA召喚されてしまう)

 

2度目のセヴァーヴァナルガンドの降臨を許せば、もうイーサンにチャンスはない。

 

(さらに、あの永続魔法…俺のターンに墓地の魔法・罠を手札に加えられる上に、

俺のエンドフェイズにデッキトップに好きなカードを置ける効果まである)

 

イーサンは未だ自分のターンをスタートさせず、思考の海に潜り続ける。

 

(『絶鎖獣の封印』でモンスターを大量に特殊召喚されれば、奴のライフに攻撃は届かないだろう。

ならレールガンの効果ダメージで決着を狙うか?いや、だが…)

 

頭の中に幾多のルートが浮かび上がるが、求めている道には辿り着かない。

そんな時、後ろから声が聞こえた。

 

「張り詰めすぎんなよ、イーサン」

振り向くと、遊次が笑みを浮かべていた。

 

「デュエルは楽しんでナンボだ!

こんな互角に戦い、羨ましくてしょうがねえぜ!」

 

世界の命運を巡る死闘には、到底似つかない言葉だった。

しかし、凝り固まった思考をほぐすには十分だった。

イーサンもニヤリと口角を上げる。

 

灯や怜央も、少し前までの緊張した面持ちとは打ってかわり、その表情には明るさが戻ってきている。

そんな彼らの表情を見て、イーサンはハッとした。

 

(そうだ…。俺の歩む道の先は、"皆"が笑える未来じゃなきゃいけないんだ)

 

イーサンは再び前を向き、ジェンと相対する。

 

「フッ、楽しむってのは出来るかわからないが…考えすぎるのはやめた。

進むべき道は、カードが示してくれる」

 

イーサンはデッキトップに指を掛ける。

遊次もその後ろで満足気に頷いている。

 

イーサンは指先に力を込める。

フラッシュバックのように脳裏に蘇るのは、いつもの、日常の1ページ。

そこには、遊次、灯、怜央の笑顔があった。

 

そして、最後に思い浮かんだのは、泣きじゃくる"神楽天聖"の顔だった。

 

(一つも取りこぼしたくないんだ。

"皆"が幸せじゃなきゃ、意味がないんだよ)

 

イーサンの瞳に、さらに一層の覚悟が宿る。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ドローしたのは速攻魔法。

そしてそのカードを見た瞬間、イーサンの脳内には回路が走った。

 

「ヴォルタンク・リアクトルの効果発動。

墓地のヴォルタンクを5枚デッキに戻し『ヴォルタンク』カード1枚を手札に加える。

エンジン、モーター、インダクタ、ポテンショメータ、アームをデッキに戻し、

『ヴォルタンク・エンジン』を手札に加える。

デッキがシャッフルされたことでリアクトルにカウンターが1つ置かれる」

 

雷カウンター 1→2

 

「手札に加えたヴォルタンク・エンジンを召喚。

効果でデッキから『ヴォルタンク・モーター』を手札に加える。

デッキがシャッフルされたことで2体のモンスターにカウンターが置かれる」

 

雷カウンター 2→4

 

「フィールドにヴォルタンクがいる時、ヴォルタンク・モーターは手札から特殊召喚できる」

精密な歯車とねじ部品が露出した蒼き小さなモンスターが現れる。

 

「ヴォルタンク・モーターの効果発動。

雷カウンターを2つ取り除き、デッキから『ヴォルタンク』モンスターを呼び出す。

来い、ヴォルタンク・インダクタ」

 

雷カウンター 4→2

 

現れたのは青いコイル形状のモンスター。

金属装甲の外殻に銅線が幾重にも巻きつき、中央では青白い電流がほとばしっている。

 

「デッキがシャッフルされたことで4体のモンスターにカウンターが置かれる」

雷カウンター 2→6

 

ジェンは眼前の4体の蒼きモンスター達を鋭い眼差しで見つめる。

 

(ここからL召喚でモンスターが減る可能性が高い。ならば…)

 

「罠カード『絶鎖獣の封印』を発動!

相手モンスターの数だけ、墓地の絶鎖獣を効果を無効にして特殊召喚する!

墓地から、レンドウルフ、リベレートペガサス、スティングフォックス、チップモールを特殊召喚する!」

 

鎖に囚われた4体のモンスターがイーサンの眼前に出現する。

ジェンにとっての最大の勝ち筋は、次のターンに再びセヴァーヴァナルガンドを呼び出すことだ。

セヴァーヴァナルガンドの召喚にはレンドウルフを含む3体のリリースが必要。

そのためには可能な限りモンスターを並べる必要があった。

 

「さらに自分の方がLPが少ない場合、これらのモンスターは戦闘で破壊されない」

 

以前にも目の当たりにした圧倒的な防壁。

これではこのターンにジェンのライフを削り切ることは不可能に近い。

だがイーサンの眼差しは揺らがなかった。

 

「ヴォルタンク・インダクタの効果発動。

1ターンに1度、デッキからヴォルタンクモンスター1体を墓地へ送る。

『ヴォルタンク・アーム』を墓地へ送る。

シャッフルが発生したことで、雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 6→10

 

「ヴォルタンク・リアクトルの効果発動。

雷カウンターを2つ取り除くことで、トークンを1体生成する」

 

雷カウンター 10→8

 

空間にかすかな電気の音が走る。

フィールドの一点に紫電の光が集束し、稲妻の光体が現れた。

 

「ヴォルタンク・インダクタとトークン1体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

「リンク召喚!リンク2『ヴォルタンク・ライトニングロッド』!」

 

■ヴォルタンク・ライトニングロッド

 リンクモンスター

 リンク2/光/雷/攻1800

 【リンクマーカー:下/左】

 雷族モンスター2体

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードがリンク素材として墓地に送られた場合、

 墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。

 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、

 フィールドのカード1枚を対象として発動する。

 そのカードを破壊する。

 

回路が完成すると同時に、二体の光が奔流となって中央へと収束した。

眩い蒼が爆ぜ、雷鳴のような轟きとともに、天へ貫く巨大な光柱が立ち上がる。

青いボディと、飛び出た大きないくつものネジが特徴的だ。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bK4xj8i

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「ライトニングロッドの効果発動。

雷カウンターを2つ取り除くことで、相手フィールドのカードを1枚破壊する」

 

雷カウンター 8→6

 

「破壊するのはリベレートペガサスだ」

 

ライトニングロッドが放った稲妻が、リベレートペガサスを貫いた。

白馬は悲鳴を上げる間もなく、全身を走る青白い光に飲み込まれる。

その体躯は、光の粒子となって瞬時に崩壊し、跡形もなく消え去った。

 

「このままジェンさんのモンスターを減らしていけば、

あの金の狼もアドバンス召喚できない可能性が高いよね」

 

イーサンは順調に展開を繰り広げ、ジェンはモンスターを減らしてゆく。

このままいけば、再びセヴァーヴァナルガンドが現れない可能性が高い。

灯達にはこれこそが一番の勝ち筋に思えた。

 

「墓地の『ヴォルタンク・コンデンサ』の効果発動。

雷カウンターを3つ取り除く事で、墓地から特殊召喚できる」

 

雷カウンター 6→3

 

■ヴォルタンク・コンデンサ

 効果モンスター

 レベル4/光/雷/攻撃力1600 守備力1000

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、

 相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。そのカードを破壊する。

 ③:このカードが墓地に存在する場合、フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 墓地のこのカードを特殊召喚する。

 

 

現れたモンスターは金属の青い円筒形の胴体を持つ。

胴体の中央から上向きに一直線に伸びる端子がついている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/NOqMzGy

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(コンデンサは雷カウンターを使って魔法・罠カードを破壊する効果があるが、

奴の墓地のグライズバットにより1度、絶鎖獣カードの破壊を免れることができる。

リベレートペガサスの破壊はスルーしたぐらいだ、確実にあの永続魔法が守られる。

ならば、雷カウンターは無駄にできない)

 

イーサンは一瞬でそう結論づけ、更なる展開を進める。

 

「俺はライトニングロッドとコンデンサをリンクマーカーにセット。

リンク2のライトニングロッドは、2体分の素材となる」

 

リンクマーカーが次々と輝き、空間に青白いサーキットが展開する。

ライトニングロッドが1体の分身を作ると、3体のモンスターの輪郭が光の粒となり、線で結ばれていく。

 

「リンク召喚!『ヴォルタンク・スパークキャッスル』!」

 

 

■ヴォルタンク・スパークキャッスル

 リンクモンスター

 リンク3/光/雷/攻2300

 【リンクマーカー:右/左/下】

 雷族モンスター2体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:相手モンスターが効果を発動した時、

 フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動する。その発動を無効にして破壊する。

 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する。

 

光とともに現れたのは蒼き巨大な城。

両端には巨大なネジが突き刺さっており、天守の部分は避雷針となっている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/FtT734v

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「この時、L素材となったライトニングロッドの効果発動。

墓地のヴォルタンク・インダクタをデッキに戻し、1枚ドローする。

デッキがシャッフルされたことで、フィールドのヴォルタンクに雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 3→7

 

「スパークキャッスルの効果発動。

雷カウンターを3つ取り除き、墓地のヴォルタンクをリンク先に復活させる。

来い、ヴォルタンク・パワージェネレーター!」

 

雷カウンター 7→4

 

■ヴォルタンク・パワージェネレーター

 リンクモンスター

 リンク2/光/雷/攻1700

 【リンクマーカー:上/下】

 雷族モンスター2体

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度に、そのモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 このカードが相互リンク状態の場合、この効果で置かれる雷カウンターの数は2つとなる。

 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、自分の墓地の「ヴォルタンク」フィールド魔法・永続魔法・永続罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに置く。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、高さ約5メートルの巨大な発電機のようなモンスターだ。

全身は濃い蒼色の鋼鉄装甲で覆われ、太いボルトとパイプが多数取り付けられている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/A3i8gl4

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「パワージェネレーターの効果発動。

雷カウンターを3つ取り除き、墓地の永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』をフィールドに置く」

 

雷カウンター 4→1

 

フィールド全体に白いサーキットが血管のように張り巡らされる。

 

「仕上げといこうか。

俺はヴォルタンク・スパークキャッスルと、ヴォルタンク・エンジンをリンクマーカーにセット!

リンク3のスパークキャッスルは3体分の素材となる!」

 

地面に巨大なサーキットが出現すると、スパークキャッスルが3体分の分身を作り、4体のモンスターがアローヘッドへと入ってゆく。

 

「リンク召喚!リンク4『ヴォルタンク・サンダーフォートレス』!」

 

■ヴォルタンク・サンダーフォートレス

 リンクモンスター

 リンク4/光/雷/攻3000

 【リンクマーカー:上/左/左下/下】

 雷族モンスター2体以上

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードがフィールドに存在する限り、

 自分フィールドの雷カウンターの乗ったモンスターは相手の効果の対象にならない。

 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、相手フィールドのカード1枚を対象として発動する。

 そのカードを持ち主のデッキに戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

現れたのは蒼き巨大要塞。

外殻は厚みがあるため、外敵の攻撃をも防ぐ堅牢な装甲となっている。

正面中央には大きな電気扉が設置され、城塞型の構造の中核部には、巨大な電磁砲が据え付けられている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/YhifH9K

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

ジェンは眼前に再び現れた要塞を見上げる。

それはイーサンがこれからどう動くかを見極めるような鋭い眼差しだ。

 

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。

フィールドのリンクモンスター1体のリンクマーカーの数だけ、フィールドのカード1枚に雷カウンターを置く。

サンダーフォートレスのマーカーの数分、4つのカウンターをサンダーフォートレスに置く」

 

サンダーフォートレスの天守に鋭い4度の雷が落とされる。

雷カウンター 1→5

 

「サンダーフォートレスの効果発動。

雷カウンターを3つ取り除き、相手フィールドのカード1枚をデッキへ戻す。

対象は当然、レンドウルフだ」

 

雷カウンター 5→2

 

イーサンは鎖で縛られた目の前のレンドウルフを見上げ、指し示す。

 

「…永続魔法『絶鎖獣の鳴動』の効果発動。

レベル7以上の絶鎖獣が存在する時、相手ターンにも墓地の『絶鎖獣』魔法・罠を手札に加えることができる。

手札に加えるのは速攻魔法『絶鎖獣の轟咆』」

 

レンドウルフがデッキに戻れば、フィールドにレベル7の絶鎖獣が存在しなくなり、永続魔法の効果は使用できなくなる。

その前に効果を発動したということになる。

 

「サンダーフォートレスの効果により、レンドウルフはデッキへと戻る」

 

サンダーフォートレスはフィールドの雷を自らに集め、電磁波としてレンドウルフに照射する。

レンドウルフは電磁波により分解され、フィールドから消滅する。

 

「デッキがシャッフルされたことで、フィールドのヴォルタンクに雷カウンターが置かれる。

さらにカウンターはリンクモンスターのリンク先にも置かれる」

 

サンダーフォートレスのリンク先にはパワージェネレーターとモーター。

パワージェネレーターのリンク先にはサンダーフォートレスが存在する。

 

雷カウンター 2→9

 

-------------------------------------------------

【イーサン】

LP2500 手札:3

 

①ヴォルタンク・リアクトル DEF2400(雷カウンター:1)

②ヴォルタンク・サンダーフォートレス ATK3000(雷カウンター:4)

③ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK1700(雷カウンター:2)

④ヴォルタンク・モーター DEF1500(雷カウンター:2)

 

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット

 

【ジェン】

LP500 手札:2(セヴァーヴァナルガンド、絶鎖獣の轟咆)

 

①絶鎖獣 スティングフォックス(効果無効) DEF900

②絶鎖獣 チップモール(効果無効) DEF1200

 

永続魔法:絶鎖獣の鳴動

--------------------------------------------------

 

「よし!レンドウルフがフィールドにいなきゃ、セヴァーヴァナルガンドはA召喚できねえ!」

 

遊次は高く拳を上げ、歓喜する。

セヴァーヴァナルガンドはレンドウルフをA召喚のリリースとして指定している。

それがフィールドから消えたとなれば、現在はA召喚の条件を満たしていないこととなる。

 

「その永続魔法は俺のエンドフェイズに、絶鎖獣カードをデッキトップに置く効果がある」

イーサンはジェンのフィールドの「絶鎖獣の鳴動」を指す。

 

「しかし、その1枚でレンドウルフをフィールドに呼び出し、

3体のリリースでセヴァーヴァナルガンドをA召喚するのは至難の業だ。さらに…」

 

イーサンは墓地から1枚のカードを取り出す。

 

「墓地のヴォルタンク・アームを除外し、効果発動。

除外されている『ヴォルタンク』カード1枚をデッキに戻し、その後同じ種類の『ヴォルタンク』カードを手札に加える。

お前のヴァナルガンドによって除外された『ヴォルタンク・レールガン』をデッキに戻し、同じくレールガンを手札に加える」

 

デッキがシャッフルされたことで、フィールドのモンスターに雷カウンターが置かれる。

雷カウンター 9→16

 

「レールガンは雷カウンターを取り除き、効果ダメージを与えることができる。

お前はそれを防ぐために、手札の速攻魔法『絶鎖獣の轟咆』を使わざるを得ない」

 

「その速攻魔法には、2枚のドローやトークンを特殊召喚する効果もあるが、

レールガンがあることで、お前は3つ目の『相手のチェーン1の効果の発動を防ぐ』効果しか選ぶことができない。

ドロー効果やトークン生成を使えば、その後にレールガンを発動され敗北するからな」

 

ジェンの手札に「絶鎖獣の轟咆」がある以上、レールガンでとどめを刺すことはできない。

しかしイーサンはそれを理解した上で、使用する効果を固定し、さらなるアドバンテージを与えない策を取った。

セヴァーヴァナルガンドをA召喚させなければ、ジェンに勝機はない。

その勝ち筋を徹底的に奪う戦術だ。

 

「じゃあアイツは正真正銘、次にドローする1枚だけでヴァナルガンドをA召喚しなきゃいけないってわけだ。

確かに相当な無茶…だな」

 

イーサンの圧倒的有利にも関わらず、怜央の表情はまだ曇ったままだった。

 

(これで本当にイーサンの勝ちなのか?

あのデカブツなら…何かやりかねねぇ)

 

怜央の両目はジェンの姿を捉えている。

絶望的な状況でありながら、彼は未だ動揺することなく、ただ前だけを見据えている。

その瞳からは、敗北の気配など微塵も感じられない。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

エンドフェイズがやってきた。

ジェンはその瞬間を待っていたかのように、その口元には、小さく静かな笑みが浮かんだ。

 

「永続魔法『絶鎖獣の鳴動』の効果発動。

相手エンドフェイズ、『絶鎖獣』カードをデッキの一番上に置くことができる。

私は『絶鎖獣 スクラッチキャット』をデッキトップへ置く」

 

スクラッチキャットはデッキからレベル4以下の絶鎖獣を特殊召喚する効果を持つモンスターだ。

 

「私のデッキには、絶鎖獣をデッキから墓地へ送ることで、そのモンスターと同じ名前を得る『ノッチラクーン』がいる。

スクラッチキャットでこのモンスターを特殊召喚し、レンドウルフの名前を得れば、再びセヴァーヴァナルガンドは姿を現す。その瞬間、貴方の敗北が決定する」

 

「そんな…」

瞬間、遊次達の表情に再び雲がかかり始める。

 

「さらに私の手札の速攻魔法により、貴方は次のターン、チェーン1での効果発動ができなくなる。

もう抵抗の術はない」

 

セヴァーヴァナルガンドはチェーン不可の全除外効果を持つ。

それを避けるために、イーサンはリリースに必要なモンスターを減らす戦術を取った。

しかし、ジェンにはこの状況からもセヴァーヴァナルガンドを呼び出す手段があった。

 

「…貴方は、私のデッキの力を見誤った。

それこそが、貴方の敗因だ」

 

その言葉は、勝利宣言だった。

 

(ここまでやったってのに、終わるのかよ?ここで……)

 

遊次の心に絶望が浸食し始める。

オスカーに敗北し、ニーズヘッグの計画には二度と関われないはずだった。

しかし、まるで奇跡のように契約は解除され、Nextは二度目のチャンスを得た。

始めとは異なり、皆が明確なる決意を抱いて。

 

しかし、その1歩目があっけなく挫かれようとしている。

怜央も俯き、拳を強く握る。

灯は祈るように、イーサンを見つめている。

 

イーサンは静かに前を向き、ゆっくりと口を開く。

 

「デッキを見誤ってたのは、お前の方だ」

 

「…何?」

 

ジェンは眉間に皺を寄せる。

すでにエンドフェイズに突入しており、もうイーサンに抵抗の手段など存在しない。

そのはずだった。

 

「今はまだ、俺のターンだ。

何故、俺にもう手がないと決めつけてるんだ?」

 

そう言うと、イーサンは手札から1枚のカードを取り出す。

遊次達の視線は、一斉にそのカードへと集まる。

 

「速攻魔法発動。『ヴォルタンク・リコンフィギュア』。

雷カウンターを3つ取り除くことで、フィールドのヴォルタンクLモンスターをEXデッキへと戻し、その素材を墓地より復活させる。

そしてその後、同じリンク数のカード名が異なるヴォルタンクをL召喚する」

 

雷カウンター 16→13

 

■ヴォルタンク・リコンフィギュア

 速攻魔法

 このカード名の①②の効果は1ターンにいずれか1つしか使用できない。

 ①:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、

 自分フィールドの「ヴォルタンク」Lモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをEXデッキに戻す。

 その後、そのL召喚に使用したL素材モンスター一組が全て自分の墓地に揃っていれば、

 その一組を特殊召喚し、EXデッキに戻したLモンスターと同じ数のリンクマーカーを持ち、

 カード名が異なる「ヴォルタンク」Lモンスター1体をL召喚できる。

 ②:自分の除外状態の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを特殊召喚する。

 

 

「エンドフェイズにL召喚だと…!?」

 

ジェンには、これから起きることが想像できなかった。

そしてそれとは反対に、遊次はゆっくりと笑みを浮かべる。

 

「リンク4『サンダーフォートレス』をEXデッキへ戻し、

素材であるスパークキャッスルとエンジンを特殊召喚する」

 

フィールドに建つ蒼い巨大な要塞の巨躯が、突如として青い電光の渦に飲み込まれた。

電光の奔流は要塞を内部から解体するように絡め取り、光の螺旋となって上空の一点へ収束し、消失した。

 

雷カウンター 13→10

 

要塞が消滅した空間で、膨大な電気エネルギーが激しく渦巻く。

直後、そのエネルギーが雷鳴と共に爆発的な光を放った。

ジェンは、その閃光の強さに、反射的に右手を上げて顔を覆った。

 

光が収束した時には、サンダーフォートレスは場に存在せず、眼前にはスパークキャッスルが聳え立っていた。

城壁には鋭利な装甲と、雷を放つための尖塔が連なっている。

その巨大な城塞の足元には、蒼き小型部品のモンスターであるヴォルタンク・エンジンが、激しい火花を散らしながら、同時に実体化した。

 

「そして『ヴォルタンク・スパークキャッスル』と『ヴォルタンク・エンジン』をリンクマーカーにセット。

サーキットコンバイン!」

 

瞬く間に、地面には巨大な魔方陣のような回路が展開する。その中心から、輝く四本の矢印が放射状に伸びた。

蒼い城塞は激しく振動し、その巨躯から青い電光を纏った半透明な分身を左右に2体、同時発生させた。

城塞本体、2体の分身、そして傍らの小型の機械の全てが、回路の矢印の先端へと勢いよく吸い込まれていく。

 

「疾る稲光が、ここに蒼き巨塔を打ち建てる。

微かな揺らぎは、やがて消滅の波動となる」

 

「現れろ!リンク4!

『ヴォルタンク・プラズマウェイブタワー』!」

 

 

■ヴォルタンク・プラズマウェイブタワー

 リンクモンスター

 リンク4/光/雷/攻2800

 【リンクマーカー:上/左上/右上/下】

 雷族モンスター2体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードがL召喚した場合に発動できる。

 相手フィールドの雷カウンターが置かれたカードを全てデッキに戻す。

 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク」永続魔法または「ヴォルタンク」フィールド魔法を発動する。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

蒼い巨塔が、地を突き割るように姿を現す。

鋼鉄の装甲は面ごとに冷たい光を返し、内部の鉄骨が重く噛み合い、揺るぎない輪郭を形づくっていた。

張り出したアンテナの群れが鋭い影を落とし、深く打ち込まれたボルトが巨体を締め上げる。

その存在は、ただ立つだけで見る者の胸を圧した。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/TJF6V8w

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「なんだ、このモンスターは…」

 

鋼鉄の輪郭を視線でなぞるたび、胸を圧迫する感覚が増していく。

表面を覆う装甲は、まるで人間の意思を拒絶するかのような冷徹な光を放っていた。

アンテナの群れが落とす影が顔にかかり、ジェンは一瞬、呼吸を忘れた。

 

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。

雷カウンターを持ったカードがフィールドを離れた場合、そのカードに置かれていたカウンターを別のカードへ置く。

サンダーフォートレスに置かれていたカウンターを全て、プラズマウェイブタワーへ置く」

 

雷カウンター 10→13

 

「プラズマウェイブタワーの効果発動。

雷カウンターを3つ取り除き、デッキからヴォルタンク永続魔法を発動することができる。

俺は『ヴォルタンク・ディフュージョン』を発動」

 

雷カウンター 13→10

 

「シャッフルが行われたことで、雷カウンターが置かれる」

雷カウンター 10→15

 

-------------------------------------------------

【イーサン】

LP2500 手札:2

 

①ヴォルタンク・リアクトル DEF2400(雷カウンター:3)

②ヴォルタンク・プラズマウェイブタワー ATK2800(雷カウンター:4)

③ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK1700(雷カウンター:6)

④ヴォルタンク・モーター(雷カウンター:2) DEF1500

 

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット、ヴォルタンク・ディフュージョン

伏せカード:1

 

【ジェン】

LP500 手札:2(セヴァーヴァナルガンド、絶鎖獣の轟咆)

 

①絶鎖獣 スティングフォックス(効果無効) DEF900

②絶鎖獣 チップモール(効果無効) DEF1200

 

永続魔法:絶鎖獣の鳴動

--------------------------------------------------

 

フィールドに1枚のカードが表向きで現れる。

 

「馬鹿な…。こんな、ことが……」

そしてそのカードを目にしたジェンは、全てを悟った。

 

 

■ヴォルタンク・ディフュージョン

 永続魔法

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、

 雷カウンターが置かれた相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。

 ②:相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードに雷カウンターを3つ置く。

 

 

「このカードが存在する限り、雷カウンターが置かれた相手モンスターの効果は無効化される。

そして、俺のフィールドのパワージェネレーターは、相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度に、そのモンスターに雷カウンターを置く効果を持つ。

これは、チェーンを伴わない効果だ」

 

「つまり…お前がモンスターを呼び出した瞬間、そのモンスターの効果は無効化される。

お前がデッキトップへ置いたスクラッチキャットの効果は無効となり、レンドウルフの名前を得るノッチラクーンとやらを特殊召喚できない。

お前はもう、セヴァーヴァナルガンドを召喚することはできない」

 

ジェンは永続魔法によって、スクラッチキャットをデッキトップに固定した。

その効果によりノッチラクーンを特殊召喚し、レンドウルフの名称を得れば、

永続魔法の効果によりA召喚をもう1度だけ行うことができる。

そこでセヴァーヴァナルガンドを呼び出せば、ジェンの勝利が確定するはずだった。

 

しかし、自ら未来を確定させたことが、ジェンの進むべき道を断つことに繋がった。

自らの手で、敗北への道を選んでしまったのだ。

 

「仮にヴァナルガンドが現れても、地に足を着けた瞬間、その力は失われる。

お前にはもう、一片の勝機もない」

 

カードを持つジェン腕が、だらりと垂れさがる。

圧倒的な無力感が、ジェンの全身を支配した。

 

「鎖を断ち切る、チェーン不可の効果。

さらに速攻魔法により、チェーン1での効果の発動すらも、俺には許されなかった。それならば…」

 

「永続効果…"チェーン・ゼロ"でお前を葬るまでだ」

 

そして、イーサンのデュエルディスクのランプは消え、ジェンにターンは移る。

ジェンは、デッキトップのカードを引くことができなかった。

俯き、悔いるように奥歯を噛み締める。

声すら発さず、ただ静かに、自らの内に怒りを滾らせていた。

 

遊次達もその姿を、真剣な表情で見つめる。

まだ、デュエルは終わっていない。

その終わりを見届けるまで、彼らは何も言わなかった。

 

ジェンはゆっくりと目を開く。

眼前には、巨大な蒼き電波塔が聳え立つ。

それが、まごうことなき現実だった。

 

ジェンは前を向き、デッキトップに指をかける。

 

「私のターン、ドロー」

 

引いたカードは見るまでもなく、わかっている。

しかし、僅かな奇跡を信じるかのように、ジェンはそのカードにゆっくりと視線を移す。

 

引いたのは「絶鎖獣 スクラッチキャット」。

未来は変わらない。

それは、自ら確定させてしまった、敗北への一途。

 

ドローフェイズはまだ終わらない。

優先権はジェンにある。

ジェンは手札の速攻魔法「絶鎖獣の轟咆」を見つめる。

 

(このカードを発動すれば、奴はチェーン1での効果の発動ができない。

まだ、このデュエルを続けることができる…)

 

ジェンはフィールド、手札、墓地、除外…全てのカードから、新たな道がないかを模索した。

しかし、どれだけ思考を巡らせても、この状況を覆す手は見つからなかった。

 

イーサンには、全てのカードが見えていた。

手札も、デッキトップでさえも。

その上で彼はこの盤面を作り上げた。

 

誰の目にも、結末は明らかだった。

 

「…申し訳ありません、社長。私は…無力だった」

 

イーサンのデュエルディスクの赤い光が、緑色に変わる。

それは、優先権の移動を示す合図。

 

ジェンは、相手のチェーン1での効果の発動を封じる速攻魔法を発動しなかった。

それは即ち、戦う意志の否定。

 

瞬間、イーサンがデュエルディスクに触れる。

 

「ドローフェイズ、リバースカードオープン。

永続罠『ヴォルタンク・レールガン』。

雷カウンターを任意の数取り除き、その数×300、相手にダメージを与える」

 

■ヴォルタンク・レールガン

 永続罠

 このカード名の②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 ①:自分または相手のデッキがシャッフルされた場合、相手モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを任意の数取り除いて発動できる。

 取り除いた雷カウンターの数×300ポイントのダメージを相手に与える。

 (最大3000まで)

 ③:フィールドの雷カウンターを任意の数取り除き、相手モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターの攻撃力は、取り除いた雷カウンターの数×300ポイントダウンする。

 

 

イーサンの背後に巨大な蒼き電磁砲が現れる。

 

「雷カウンターを2つ取り除き、600のダメージを与える」

 

蒼い電磁砲の砲口が、ゆっくりとジェンへと向けられる。

ジェンは、その銃口を微動だにせず、ただ見つめ返した。

 

巨砲の内部でエネルギーが満ちていく。

砲口の内側が青い光の渦を濃くし、機械が軋む音と静電気の囁きが周囲に響いていた。

ジェンの瞳には、迫りくる光の輪郭が冷徹なまでに焼き付いていた。

その両の拳は、爪が掌に食い込むほど強く握りしめられ、震えている。

ジェンは眩い光に顔を灼かれながらも、最期までその輝きから目を逸らそうとしなかった。

 

光が飽和したその瞬間、蒼白の稲妻が、重く太い一本の楔となって放たれた。

それは空気の振動を伴い、ジェンの胸を貫いた。

 

ジェン LP500 → 0

 

 

「勝者、イーサン・レイノルズ。

契約により、パラドックスブリッジ"グール"の鍵の所有権はイーサン・レイノルズへと渡ります。

また、Nextのメンバーへの強制オースデュエルの発動を禁じます」

 

DDASがオースデュエルの決着を告げる。

 

ジェンは目を瞑り、立ち尽くしたままだ。

そこには一切の抵抗の意思もない。

それは、1人の決闘者としての矜持。

 

イーサンが振り向き、同時に遊次と灯、怜央も前へと歩き出す。

イーサンと遊次は、互いの歩調を緩めることなく距離を詰めると、ただ一瞬、互いの視線を捉えた。

そして二人は同時に右腕を掲げると、互いの前腕を静かに、強く打ち合わせた。

 

「まずは1つ目だな」

 

「あぁ」

 

そこには確かに、強い勝利への喜びがあった。

しかし、彼らの瞼は緩むことなく、張り詰めたままだ。

 

車へと戻ろうとする最中、怜央は振り向き、ジェンに向かって言葉を放つ。

 

「今度は俺が相手してやってもいいぜ。

もう1本鍵を懸けてな」

 

ジェンは立ち尽くしたまま、言葉を返す。

 

「…やめておこう。私の手の内は割れている」

 

ジェンが勝負を受けない以上、彼とのオースデュエルで残りの鍵を手に入れることは不可能だ。

 

「…行こう」

 

イーサンは後ろの遊次達へ視線を送り、遊次はただ一度強く頷く。

4人はすぐに窓の破損した真っ赤な車の方へ向かう。

 

ジェンは1歩も動かぬまま、背中越しに遊次達に言葉を投げかける。

 

「まだ終わりではない。

我が同胞が必ず、貴方達の無謀を止めに来る」

 

遊次は振り向き、彼の背中を見つめる。

そして、一言だけ言葉を返した。

 

「俺達は負けねえ。

誰も犠牲にしない道があるって、証明してみせる」

 

そして遊次は前を向き、車へと向かい、助手席に乗り込んだ。

灯がキーを回すと、軋んだエンジンが唸りを上げ、破損した赤い車体は地面を蹴って加速していく。

そのテールランプの赤い光は、あっという間に宵闇へと吸い込まれていった。

 

色濃くなった夕闇が、ジェンの背中に深く孤独の影を落とす。

ジェンは振り向き、その視線は、空を切り裂くようにそびえ立つ、黒い龍の形をした巨大なビルのシルエットを捉えた。

 

 

イーサンがジェンとの戦いに勝利したことで、ニーズヘッグの持つ5本の鍵の内、1つを手に入れた。

Nextの持つ手札が増えたことで、「1度負ければニーズヘッグの計画を止められない」という状況を脱することができた。

 

しかし、まだ戦いは始まったばかりだ。

誰も犠牲にしない道を目指すためには、それ以外の選択肢を奪う必要がある。

Nextが全ての鍵を手にするまで、パラドックス・ブリッジを巡る戦いは終わらない。

 

 

 

 

 

メインシティのとある薄暗い倉庫。

花模様の仮面を被った謎の人物「フラワー」は、眼前のソリッドヴィジョンの画面を指先で操作しながら、携話の向こうへと声を発する。

 

「確かに、10億サークの入金が確認できました。

約束通り、七乃瀬美蘭を解放します」

 

そう言うと、フラワーは手にしていたナイフを一振りし、椅子に縛り付けられていた美蘭の拘束ロープを切り裂いた。

続けて、頭部の目隠しを剥がし取る。

光を浴びた美蘭は、何度か瞬きを繰り返したが、その直後、すぐに背後のフラワーを鋭く見上げた。

美蘭の瞳には、強い敵意が籠められていた。

 

フラワーはそんな美蘭の様子に動じることなく、携帯電話を差し出した。

美蘭はそれを数秒見つめた後、奪うように受け取ると、

フラワーを睨みつけながら、電話先のオスカーへ叫ぶように声を発した。

 

「オスカー様?解放されたよ。ねえ、こいつヤっちゃっていいよね!?」

 

美蘭の顔には強い殺意と狂気の滲んでいた。

しかし、電話口のオスカーの声は冷たく、静かなものだった。

 

「余計な手出しはするな。お前には今からやるべきことがある」

 

「…やるべきこと?」

美蘭は一瞬、目の前のフラワーに視線を送る。

 

「…詳しい話は後で聞きます」

美蘭はそう告げると、電話を切り、それをフラワーに投げ渡す。

 

「この借りは絶対返すから。覚えときなよ」

美蘭は沸き立つ衝動を抑えながら、フラワーを睨みつける。

 

「…楽しみにしています。それでは、ごきげんよう」

 

フラワーはスカートの端を掴み膝を曲げると、素早い動きで倉庫の外へと走り去った。

美蘭は自らが招いた失態に歯を食いしばり、再びオスカーへと電話をかけた。

 

「…フラワーはいなくなりました。

ごめんなさい、私のせいで…っ…」

 

美蘭の目に涙が滲む。

 

「後悔は後だ。ジェンがイーサン・レイノルズの強制オースデュエル無効を解除した。

だが、敗北し鍵を1本奪われた」

 

「えっ…!?」

 

美蘭は倉庫の端に置いてあったボックスに駆け寄り、デュエルディスクを手にする。

すると、1枚の通知書がソリッドヴィジョンとして浮かび上がった。

それはオースデュエルにより、パラドックス・ブリッジ"グール"の鍵の所有権がイーサンに渡ったことを示す内容だった。

 

「…わかった。それを私が取り返せばいいんだよね」

 

美蘭はすぐに自分の使命を理解した。

電話口からルーカスの声が聞こえてくる。

 

「ジェンが奴らの車に発信器をつけた。その情報を追って奴らのもとへ向かえ。僕もすぐに行く」

 

「…わかったよ」

美蘭は電話を切り、前を見る。

すると、倉庫の天井から、ぽとりと美蘭の肩に何かが落ちる。

 

「ゲー君!無事だったんだねっ!」

それは美蘭のペットであるトカゲのゲー君だった。

 

「行くよ。誰にもオスカー様の邪魔はさせない」

 

美蘭は強い覚悟の滲んだ瞳で、倉庫を後にした。

ニーズヘッグとNextの次なる戦いが、再び始まろうとしていた。

 

第65話「チェーン・ゼロ」 完

 

 

 

 

イーサンと怜央、灯と遊次は二手に分かれて次なる戦いへと向かう。

灯たちの前に姿を現したのは、七乃瀬美蘭だった。

 

灯は14年前、約束を果たすことなく、美蘭の前から去った。

しかし美蘭は「あの時、灯が来なくてよかった」と語る。

その背後には、今後の美蘭の生き方を定義するある出来事があった。

 

そして始まる、灯と美蘭のオースデュエル。

しかし、14年前の何もできなかったあの頃とは違う。

お互いに1歩も譲らず、2人の力は拮抗する。

 

戦いの中で、美蘭は灯の戦う理由を理解する。

それは自分とよく似ているが、決定的に違う部分が1つあった。

そしてそれこそが、灯の中に根付く"弱さ"だった。

 

美蘭の言葉に、灯はかつてないほど取り乱し、遊次は迷うことしかできなかった。

 

「だから…思い通りにならないことは、ぜーーんぶ、ブッ潰せばいいって思ったんだ。

そのために、アタシは強くなったんだよ!」

 

 

次回 第66話「正反対の、似た者同士」

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