遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第74話:悪魔の心臓

「勝者、鉄城怜央。契約に基づき、パラドックスブリッジ"デーヴァ"の生体認証使用権はイーサン・レイノルズへ返還されます。また、ルーカス・ヴラッドウッドに対し、Nextのメンバーへの強制オースデュエルの発動を禁じます」

 

デュエルディスクが乾いた機械音を響かせる。

 

「うおおっしゃあああ!!」

 

その音を耳にした瞬間、遊次はホールに響き渡る声で歓喜を露わにする。灯は胸を撫で下ろし、イーサンもその隣で噛み締めるように笑みを浮かべている。

 

「ありえない…ルーカスちゃんまで…」

 

美蘭は膝をつき、呆然とした目で虚空を見つめる。ジェンはただその隣で、静かに目を瞑っていた。

 

弟が敗れ去る様を、オスカーは無言のまま見届けた。静寂の中でステージを見上げるその眼差しはやがて、観客席の一角を鋭く射抜く。そこで待ち構えていた遊次と、オスカーの視線が真正面からぶつかり合った。互いの瞳に宿る熱が、次なる死闘の火蓋が切って落とされたことを雄弁に物語っていた。

 

「ブラボー!!」

 

ハイドは観客席から立ち上がり、豪快に拍手を送る。

拍手を受けた怜央は冷ややかな視線を返すだけだ。

しかしハイドは意に介さず、滑らかな口調で言葉を重ねる。

 

「君の見事な勝利に免じて、先ほどの非礼は見逃そう。

素晴らしいデュエルであったよ。鉄城怜央くん」

 

怜央はハイドを険しい眼差しで見据えたが、吐き捨てるように視線を逸らした。そのまま無造作にポケットへ手を突っ込んで歩き出し、倒れ伏すルーカスを一瞥すると、迷いのない足取りで壇上を降りた。

 

観客席へと戻り、怜央はすれ違い様に遊次の肩を掴み、一言だけ言葉を投げた。

 

「あとはお前がキメろ」

 

「…あぁ!」

遊次は視線をオスカーへと向けたまま、力強く応じた。

そして、一歩前へ進み出て、言葉を発する。

 

「これでお互いが持つ鍵は3つだ。鍵は俺以外の3人が1つずつ持ってる。全員倒さなきゃ、お前らに鍵は戻らねえぞ」

 

続くように灯が言葉を紡ぐ。

 

「オスカーさん以外の強制オースデュエルは、契約で封じました。あとはあなたの強制オースデュエルを使えなくすれば、もう私達から鍵は奪えない」

 

Nextはこの時のために、オスカー以外から鍵を奪い、強制オースデュエルを封じてきた。Nextの勝利条件は必ずしも鍵を全て奪うことではなく、ニーズヘッグの計画を実施不可能にすることだ。現在、3つの鍵の所有権をNextが有し、ニーズヘッグがそれらを奪う手段は強制オースデュエル以外にない。つまり、後はオスカーの強制オースデュエルさえ封じてしまえば、実質的にニーズヘッグの計画は破綻することとなる。

 

鍵はニーズヘッグが物理的に保管しているが、所有権がNextにある以上、ニーズヘッグが鍵に触れることは法律違反となる。オースデュエルによって決した契約はいかなる手段をもってしても履行される。

もし破ろうとすれば、警察が彼らを捕縛するために動き、DDASはあらゆる機器へアクセスし、彼らの行動を阻害することになる。つまり、無理やり鍵を持ち出すことはできない。

 

オスカーは客席を射貫くような沈黙を破り、不意に背を向けた。翻った黒いマントが空気を切り裂き、静まり返った会場に彼の足音だけが響く。一歩ずつ階段を踏みしめ壇上へ上がると、力なく横たわる弟の傍らで足を止めた。

そして何も語らず、ただ静かに、分厚い掌を差し出す。

 

「…ごめん、兄さん」

 

ルーカスは喉の奥までせり上がる悔恨を奥歯で噛み殺し、その手を強く握り締めた。震える膝に力を込めて、どうにかその場に立ち上がる。

 

ルーカスがステージから降りようと歩を進めると、その背中超しにオスカーの声が届く。

 

「己の正義を疑うな。お前にしか創り得ない世界がある」

 

思わず足を止め、ルーカスは背後の兄を振り返る。しかし、オスカーは微動だにせず正面を見据えたままで、その表情を伺い知ることはできない。投げかけられた言葉の真意を即座に理解することはできなかった。それでも、敗北の衝撃で瓦解しかけていた自らの芯を、兄が確実に見抜いていたことだけは伝わってきた。

 

「…あぁ。僕達は間違っていない」

ルーカスはそう呟き、舞台を後にした。

 

 

オスカーは舞台の中央で泰然と構え、正面の観客席へ向かって地を這うような低い声を響かせた。

 

「貴様らは我が同胞3人に打ち勝った。その力の根源はひとえに…"覚悟"だと、言わざるを得ない」

 

その言葉に、遊次は思わず眉を上げた。

意外だった。オスカーが自分達の覚悟を認めたことが。

 

オスカーはマントの下から漆黒のデュエルディスクを取り出し、鋭い手つきで左腕へと装着した。力強く腕を振り抜くと、重厚な裾が大きく弧を描いて広がり、決戦の気配を濃厚に漂わせる。

 

「俺は貴様らを見くびらない。

こちらも、相応の代償をもって挑ませてもらう」

 

≪強制オースデュエル発動≫

 

オスカーが左腕を天へ掲げると、不気味な赤色の円環がオーケストラホールの床を瞬く間に侵食していく。静寂の後に訪れた光景に遊次は目を見開き、慌てて自らのディスクを確認した。デュエルディスクのランプが赤く点滅を繰り返している。

 

「俺!?な、なに先走ってんだ!俺はまだ鍵を持ってねえぞ!今強制オースデュエル仕掛けても鍵は取り返せねえ!」

 

理解できず、遊次は声を荒げた。本来ならば、鍵を取り戻すためには当然、鍵を持つ者に対してオースデュエルを仕掛ける必要がある。遊次はオスカーと戦うつもりであったが、それは鍵の所有権を譲り受けてからの想定だった。

 

「俺から提示する契約は一つ。『なんでも屋Next』は、セカンド・コラプス計画の遂行において、我々に服従すること」

 

「なっ…」

それは完全に想定外の一手だった。

 

「こんなのありかよ!?お、おいイーサン!話が違ぇぞ!」

 

遊次は対ニーズヘッグの作戦立案者であるイーサンの肩をゆする。イーサンはステージ上のオスカーを捉え、問いかける。

 

「…確かに所長である遊次とその契約を結べば、組織配下にいる俺達全員を計画に従わせられる。ちまちま鍵を取り返す必要はないってわけだ」

 

オースデュエルの仕組み上、組織の長に対しては、組織全体の方針に関する契約を結べる。チームのリーダーである怜央や、裏カジノの元締め組織のリーダーである鷺沼に対して、オースデュエルで悪事をやめさせたのと同じ理屈だ。当然、組織に属する個人の自由を完全に制限することはできず、あくまで組織の方針の範疇の契約のみ可能だ。しかし「なんでも屋Nextとしてセカンド・コラプスに従う」という契約はその範疇の話だ。

 

そして契約を回避するために解散や脱退を行うことは法律上不可能となっている。それらの手段を使えば契約が意味を成さないからだ。解散・脱退自体は可能だが、契約時点でのメンバーに対するオースデュエルの効力は消えない。

 

当然、その可能性は元々イーサンにも想定済であった。しかしニーズヘッグがいきなり遊次に対して計画への服従を迫るはずがないと考える根拠があった。

 

「だが、オースデュエルは互いに公平でなければならない。お前が一発で俺達の目的を頓挫させる契約を持ち出すなら、こちらも相応の契約を提示する権利がある。つまり…セカンド・コラプス計画の破棄だ」

 

世界デュエル憲章によって、オースデュエルの公平性は担保されている。たとえ強制オースデュエルであったとしても、相手には自分が要求した契約内容と釣り合う契約を提示できる。DDASは人の心を読み取ることができるため、返ってきた契約内容が平等だと認識した時点で、そのオースデュエルは自動で成立する。

 

つまりオスカーは言葉通り、相応の代償が伴う決断をしたのだ。オスカーは感情の起伏を消し、淡々と応じる。

 

「言ったはずだ。貴様らを見くびることはないと。手の内を晒して貴様らを幾度も相手取るのは、俺をもってしても分が悪い」

 

自身の力を確信しながらも、慢心を排して最善を採る。そこには、本質的な"勝利"を追求する強者の理性が宿っていた。

 

オスカーがリスクを避けるならば、ただ彼らの持つ鍵を1つ要求する強制オースデュエルを仕掛ければいい。オースデュエルが平等でなければならない以上、Next側もニーズヘッグの持つ鍵1本のみを契約として提示することになる。そこに強制オースデュエル無効化などを盛り込めば、オスカーは平等でないと考え、その契約は不成立となるからだ。その条件ならば仮にオスカーが敗北しても、計画が破綻することはない。

 

しかし、オスカーはその選択を採らなかった。この方法で全ての鍵を取り返すためには、Nextの面々に最低でも3度の勝利を収める必要があるからだ。さらに時間を要し、疲弊を余儀なくされる。

 

そしてオスカーは、手の内を晒し続けながら、何度もNextに立ち向かうことは不利だと判断した。故に、一度のオースデュエルでNextに完全勝利する契約を突き付けた。それは同時に、1度で自分達の計画が頓挫するリスクをはらんでいる。

 

これまでジェンや美蘭、ルーカスが遊次に対して、Next全体を計画に服従させるよう要求しなかったのは、彼らにもリスクが伴うからだ。もしNextに対して服従を要求していれば、Next側は対等な条件として、全ての鍵を要求しただろう。

そのリスクを負わずとも、あの時点のニーズヘッグは、イーサンの生体認証と、奪われた1本の鍵を取り返すだけでよかった。しかし残るはオスカー1人となった今、彼らはそのリスクに足を踏み入れざるを得なくなったのだ。

 

 

「まあ、俺は構わねえぜ。ここで完全に決着つけるってんなら、話はわかりやすいしな」

 

遊次は意を決して前へ踏み出し、一歩ずつ階段を上ってステージの壇上へと立った。至近距離で対峙するオスカーの威圧感に屈することなく、その瞳を正面から見据える。

 

「俺から提示する契約は、セカンド・コラプス計画の破棄だ。いいよな?」

 

「構わん」

オスカーは短く返事をする。その低い声を皮切りに、デュエルディスクが乾いた機械音を鳴らす。

 

 

「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」

 

プレイヤー1:オスカー・ヴラッドウッド

条件①:なんでも屋Nextに対して、セカンド・コラプス計画への服従を命ずる

 

プレイヤー2:神楽遊次

条件①:ニーズヘッグ・エンタープライズに対して、セカンド・コラプス計画の破棄を命ずる

 

詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。

そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、

承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。

 

遊次とオスカーは指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。

 

 

「契約内容を承認します。デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」

 

これが、正真正銘の決戦。

観客席に立つ灯の心拍数が上がってゆく。

その脳裏には、アームドホラードラゴンの一撃を受け宙を舞う、遊次の姿が思い浮かんだ。

 

しかし、あの時とは違う。隕石が刻一刻と地球に迫る中、世界中の人々を危険に晒すことになっても、遊次は誰も犠牲にしない道を探す道を選んだ。その覚悟が、この戦いに繋がっている。

 

(勝って、遊次…!)

灯は真っ直ぐな眼差しでステージ上の遊次を見つめる。

 

「さて…4年前のヴェルテクス・デュエリアからどれほど実力を伸ばしたか、見させてもらうとしよう」

 

ハイドは相も変わらず、世界の命運が懸った戦いの目撃者とは思えぬ態度で客席に深く腰掛ける。

 

 

オーケストラホールに束の間の静寂が広がる。

 

「デュエル!」

両者の声が重なり、火蓋は切って落とされた。

遊次のデュエルディスクのランプが緑色に光る。

 

「俺のターン!」

遊次は手札を見つめる。

 

(先行を取れたのはチャンスだ。ずっと考えてたんだ、オスカーを倒す方法を)

 

遊次は1枚カードを手に取り、真っ直ぐ前を向く。

 

「手札から魔法カード『爆炎の予告状』発動!」

 

■爆炎の予告状

 通常魔法

 ①:このカードは発動後、墓地に送られる。

 このカードの発動から2ターン後の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。

 ②:このカードが墓地から除外された場合に発動できる。

 相手フィールドのカードを全て破壊する。

 

発動したカードは瞬時に墓地へと送られ、静まり返ったフィールドには何の影響も残さない。

 

「このカードは、発動した時点では何も起きねえが、2ターン後に墓地から除外される。このカードが墓地から除外されれば、相手のフィールドを全て破壊できる」

 

「手札から『妖義賊-駿足のジロキチ』を召喚!」

 

 

■妖義賊-駿足のジロキチ

 効果モンスター

 レベル4/地/獣/攻撃力1600 守備力800

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」モンスターを1枚手札に加える。

 ②:このカードがリリースされた場合、

 相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。

 その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

 

 

フィールドにほっかむりを被ったネズミのモンスターが現れた。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/6MJzyaS

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「ジロキチが召喚された時、デッキからミスティックランを手札に加えられる。俺は『妖義賊-脱出のシェパード』を手札に加えるぜ」

 

「さらにフィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』を発動!」

 

■妖義賊の秘密回廊

 フィールド魔法

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードの発動時の処理として、「予告状」魔法カード1枚をデッキから手札に加えることができる。

 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター、または元々の持ち主が相手となるモンスターを対象とする

 相手フィールドのモンスター効果が発動した場合に発動できる。

 発動した効果を無効にする。

 ③:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスターがリリースされた場合に発動できる。

 自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

遊次がカードを発動すると、オーケストラホールに古い石畳の床が1枚ずつ広がってゆき、フィールド全体に張り巡らされる。壁には重厚な木材が使われている。茶色く染まった柱が霧の中にぼんやりと浮かび、暗い空間の中に優美な雰囲気を感じさせる。

 

「このカードが発動された時、デッキから『予告状』魔法カードを手札に加えることができる。俺が手札に加えるのは『一攫千金の予告状』!」

 

さらに遊次がデュエルディスクを掲げると、ディスクの両端から新たな二つのスロットが硬質な音を立てて展開された。そして、手札から2枚のカードを表へと向ける。

 

「俺はスケール2の『妖義賊-戴火のプロメテ』と、スケール8の『妖義賊-舞蛇のキク』をPスケールにセッティング!」

 

遊次の頭上に、火の玉に手足のついたモンスターと、桃色の着物を纏った白い蛇の頭を持つモンスターが浮かび上がる。

 

プロメテ:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI

キク:ttps://imgur.com/a/tsPN11Y

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「Pスケールは2~8!よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

遊次が左腕を高く掲げると、頭上の大きな振り子が揺れ始める。

 

「天に弧を描く義の心、その輝きより現れ同胞の声に呼応せよ!」

 

「ペンデュラム召喚!来い!『妖義賊-脱出のシェパード』!」

 

天から降り注ぐ一筋の光から、1体のモンスターが姿を現した。

 

■妖義賊-脱出のシェパード

 効果モンスター

 レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。

 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、

 以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。

 ●相手はデッキからモンスター2体を選ぶ。自分は選んだモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。

 

 

そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。カーキ色のジャケットを羽織り、下からは白いシャツの襟が見える。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW

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「脱出のシェパード自身をリリースして効果を発動!お前がデッキから選んだ2体モンスターを、俺のフィールドに効果を無効・攻守0にして特殊召喚する」

 

オスカーはデッキから2枚のカードを抜き取ると、遊次の手元へ向けて鋭く弾き飛ばした。飛んできたカードを指先で捕らえた遊次は、すぐさまデュエルディスクへ叩きつける。

 

「来い、アームドホラー・テューロバス!アームドホラー・メラブエル!」

 

現れたのは、朽ちた軍服を纏う骸骨の海賊と、古びた法衣をまとった髑髏の魔導士だ。

 

テューロバス:ttps://imgur.com/a/AEcKi6Q

メラブエル:ttps://imgur.com/a/RFhvQr5

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「フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』の効果発動!妖義賊がリリースされた時、1ターンに1度カードを1枚ドローする」

 

「さらに俺は手札から『一攫千金の予告状』を発動!」

 

 

■一攫千金の予告状

 通常魔法

 ①:このカードは発動後、墓地に送られる。

 このカードの発動から2ターン後の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。

 ②:自分の手札が1枚以下で、このカードが墓地から除外された場合に発動できる。

 自分はデッキから3枚ドローする。

 

このカードも予告状だ。発動時には何も起きず、ただ墓地へと送られる。

 

 

「俺は、お前から奪ったアームドホラー・メラブエルと、駿足のジロキチでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

2体のモンスターが眩い光の奔流と化し、地面に現れた黒い銀河の渦へと吸い込まれていく。

 

「夜に這い寄る不敵な魔の手、その技巧で勝利を奪い取れ!」

口上を唱えると、黒い銀河が逆流し、新たなモンスターが姿を現す。

 

「エクシーズ召喚!ランク4!『妖義賊-怪盗ルパン』!」

 

■妖義賊-怪盗ルパン

 エクシーズモンスター

 ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500

 レベル4モンスター×2

 元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。

 ②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。

 自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、黒いハットを被りマントを纏った怪盗の姿。手には白い手袋、目元には白い仮面を着けている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC

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「怪盗ルパンの効果発動!コイツが相手から奪ったモンスターを素材としている時、お互いのターンにいつでも、墓地の予告状を除外できる。俺は一攫千金の予告状を除外!」

 

ルパンが、眩い金箔とルビーのような赤い封蝋で彩られた緑色の予告状を手に取り、軽快に上へ放り投げた。宙で封が弾け飛ぶと同時に、天から溢れ出した金銀財宝が、じゃらじゃらと音を立ててフィールドへ降り注ぐ。

 

「一攫千金の予告状が墓地から除外された時、俺の手札が1枚以下なら、カードを3枚ドローできる!」

 

降り積もる金貨の雨が、対峙する二人を分断するように舞い落ちる。黄金の輝きに視界を遮られながらも、遊次は不敵に笑い、デッキから3枚のカードを力強く引き抜いた。

 

 

「舞蛇のキクのP効果発動!デッキから儀式魔法か儀式モンスターを手札に加えられる。俺は『儀式の予告状』を手札に加える。相手から奪ったカードが俺の場にある時、さらに1枚ドローできる」

 

「『戴火のプロメテ』のP効果発動!相手から奪ったカードが俺の場にある時、デッキの上から5枚めくって、『ミスティックラン』カードを1枚手札に加える!」

 

遊次はデッキの上から5枚を手に取る表へ向ける。

4枚はモンスターカード、1枚は罠カードだ。

 

「俺は罠カード『妖義賊の羽衣』を手札に加えて、残りをデッキの一番下に戻す」

 

その時、オスカーが微かに眉を寄せた。淡々と処理を進める遊次の姿を、その鋭い眼差しが射抜く。

 

(奴は更なる展開に繋げられるモンスターを捨て、防御系の罠を選択した。何故だ?)

 

胸を掠めた違和感。だが、その正体を今すぐ暴くことはできなかった。

 

 

「手札の『妖義賊-美巧のアカホシ』の効果!除外されてる予告状を任意の数デッキに戻して、手札から特殊召喚できる!一攫千金の予告状をデッキに戻して特殊召喚する!」

 

 

■妖義賊-美巧のアカホシ

 ペンデュラムモンスター

 レベル7/風/鳥獣/攻撃力2300 守備力2000 スケール8

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:元々の持ち主が相手となるモンスター1体を対象とし、1~7までの任意のレベルを宣言して発動できる。

 そのモンスターのレベルはターン終了時まで宣言したレベルになる。

【モンスター効果】

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の除外されている「予告状」カードを任意の枚数デッキに戻して発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したこのカードは、

 攻撃力がこの効果でデッキに戻した「予告状」カードの枚数×500アップし、

 このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターの効果を受けない。

 ②:自分メインフェイズに発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚を手札に加える。

 自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、

 この効果で手札に加えるカードは2枚になる。

 ③:このカードがEXデッキに表側で存在し、自分のPゾーンにPカードが存在する場合に発動できる。

 このカードを手札に加える。

 

 

「この効果で特殊召喚したアカホシは、デッキに戻した予告状の数×500攻撃力が上がって、さらに自分の攻撃力以下の相手モンスターの効果を受けない」

 

妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800

 

「アカホシの効果発動!1ターンに1度、デッキから妖義賊Pカードを手札に加える。相手から奪ったカードがフィールドにある時、手札に加えるカードは2枚となる!俺はデッキから『妖義賊-雲龍のリヘイ』と『妖義賊-山嵐のユライ』を手札に加えるぜ」

 

 

「戴火のプロメテのP効果発動!妖義賊が俺の場にいる時、Pゾーンから効果を無効にして特殊召喚できる!」

 

火の玉のモンスターがゆらゆらと頭上からフィールドに現れる。

 

「俺はレベル4のアームドホラー・テューロバスに、レベル4の戴火のプロメテをチューニング!」

 

プロメテの姿が弾け、光の輪へ変わる。それをテューロバスが通り抜け、4つの星へと変換される。

 

「亡霊の囁きが幻影の賢者を呼び覚ます。光なき檻より甦り全てを欺け」

 

口上と共に、光輪の中心を巨大な光の柱が貫き通す。

溢れ出した輝きが、フィールドを白一色に塗りつぶした。

 

「シンクロ召喚!現れよ!

『妖義賊-幽玄のカリオストロ』!」

 

 

■妖義賊-幽玄のカリオストロ

 シンクロモンスター

 レベル8/闇/悪魔/攻撃力2700 守備力1000

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをS素材としている場合、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

 ②:相手フィールドのモンスターが効果を発動した場合、

 自分フィールドの元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地へ送って発動できる。

 その効果は「このカードのコントロールを相手に移す」となる。

 

 

それは全身を幾重にも巻かれた黒布に覆われ、まるで意志を持つかのように、布が風もなく舞い踊る姿。眼孔の奥で鈍く輝く紅き両目が滾り、左右の腕には鋭く湾曲した双刃を携えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/k8GA3wQ

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「手札から『妖義賊-山嵐のユライ』をPスケールにセッティング!」

 

 

■妖義賊-山嵐のユライ

 ペンデュラムモンスター

 レベル7/地/戦士/攻撃力2100 守備力2400 スケール8

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が元々の持ち主が相手となるカードの効果を発動した場合、

 相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを破壊する。

 【モンスター効果】

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、

 相手モンスターはこのカード以外のモンスターを攻撃できない。

 ②:このカードは自分フィールドの元々の持ち主が相手となるカードの数だけ、

 1ターンに戦闘・効果で破壊されない。

 ③:自分の墓地の「ミスティックラン」モンスター5体を対象として発動できる。

 対象のカードから1枚を手札に加え、残りのカードを好きな順番でデッキの上に戻す。

 

 

遊次の頭上に現れたのは、重厚な緑色の布で全身を覆う図体の大きいモンスターだ。長いドレッドの髪をしており、手には巨大な斧が握られている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/XAICnJf

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「カードを3枚伏せる。俺はこれでターンエンドだ!」

 

遊次は腰に手を添え、どこか楽しげに口角を上げた。

 

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【遊次】

LP8000 手札:4(儀式の予告状)

 

①妖義賊-怪盗ルパン DEF1500

②妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700

③妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

Pゾーン:妖義賊-山嵐のユライ、妖義賊-舞蛇のキク

伏せカード:3

 

【オスカー】

LP8000 手札:5

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「ルパンは相手ターンでも墓地の予告状をいつでも除外できる。墓地にあるのは『爆炎の予告状』、お前のフィールドをドカンとぶっ壊すカードだ。しかもカリオストロは、相手から奪ったカードを墓地に送ることで、相手モンスターの効果を書き換えられる。さらに伏せカードは3枚!どっからでもかかってきやがれ!」

 

ヒリつくような重圧にさらされながらも、その瞳には輝きが宿っている。死線をさまよう現状でさえ遊び尽くそうとする心が、その表情に滲み出ていた。

 

イーサンはステージを見据え、静かに思索を巡らせる。

その瞳の奥には、拭い切れぬ疑念が滲んでいた。

 

(2体による妨害効果に、伏せカードには自分のモンスターに耐性を与える罠カードがある。強力な盤面ではあるが…以前もルパンとカリオストロの並びを簡単に突破されたんだぞ。何か策があるのか…?)

 

一方、オスカーの眼差しは冷徹に盤面を射抜いたままだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

遊次のターン終了と同時に、オスカーはデッキトップのカードを鋭く引き抜いた。そして迷いなく手札のカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「アームドホラー・ファイノメネウスを召喚」

 

■アームドホラー・ファイノメネウス

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1600 守備力1200

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「アームドホラー」モンスター1体を墓地へ送る。

 ②:手札の「アームドホラー」カードまたは「ホラーアームズ」カード1枚を相手に見せて発動できる。

 そのカードを墓地へ送り、自分はデッキから1枚ドローする。

 このカードが装備カードを装備している場合、この効果でドローできる枚数は2枚となる。

 

 

現れたモンスターは、骸骨の顔に冷たい輝きを宿した眼を光らせる、アンデットの詩人だ。全身を覆う漆黒のローブと堅牢な甲冑は、ところどころに深い紫の布地が走り、威圧感を強めている。片手には分厚い魔導書を携え、もう一方の掌からは青白い旋律のような光が溢れ出す。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/7qvP48d

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「ファイノメネウスの効果発動。召喚時、デッキから『アームドホラー』モンスターを1体墓地へ送る」

 

カリオストロの効果の書き換えは、あくまで相手から奪ったカードがなければ発動できない。現時点ではまだ発動不可能だ。

 

「俺はアームドホラー・メラブエルを墓地へ送る。メラブエルの効果発動。効果で墓地へ送られた場合、デッキからホラーアームズ装備魔法を1枚手札に加える。手札に加えるのはホラーアームズ・バンシーヴェイル」

 

「さらに手札から装備魔法『ホラーアームズ・ディアボリックキャノン』をファイノメネウスに装備」

 

この瞬間、遊次は待っていたと言わんばかりにすぐさま声をあげる。

 

「トラップ発動!『妖義賊の見参』!デッキから妖義賊を特殊召喚する!」

 

■妖義賊の見参

 通常罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分・相手ターンに発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。

 その後、自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、

 デッキから「ミスティックラン」カード1枚を手札に加えることができる。

 ②:墓地のこのカードを除外し、墓地の「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを手札に加える。

 

 

「来い!妖義賊-夜駆けのシチベエ!」

 

■妖義賊-夜駆けのシチベエ

 ペンデュラムモンスター

 レベル5/地/獣/攻撃力2100 守備力1500 スケール8

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの「ミスティックラン」Pモンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを自分のPゾーンに置く。

 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」カードまたは「予告状」魔法カード1枚を墓地へ送る。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の手札が相手の手札の枚数以上で、このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 自分・相手の手札を全て入れ替える。

 ②:自分・相手の魔法&罠ゾーンにカードが存在し、このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 自分・相手フィールドの魔法&罠ゾーンのカードを全て入れ替える。

 ③:自分メインフェイズに発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。

 

 

そのモンスターは、兎の顔を持ちながら二足歩行で立つ獣人だ。肩には青いマントが掛かり、胸元には飾りの留め具が輝いている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/pZDHsmf

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オスカーは眼前に現れた獣のモンスターに一瞬だけ視線を送った。

 

「チェーン1で発動したディアボリックキャノンはファイノメネウスに装備される。装備モンスターの攻撃力は1000アップし、2回の攻撃が可能となる」

 

ファイノメネウスの両肩に、白骨を捩じり合わせた双砲が装備される。砲身は脊柱のように節を連ね、表層の亀裂から青黒い瘴気がゆるやかに漏れ出す。

 

「シチベエが特殊召喚された時、効果発動!お互いの魔法・罠カードを全て入れ替える!」

 

シチベエが袋の口をめいっぱい広げると、遊次の頭上のユライとキク、そして双方の魔法・罠が次々と袋の暗がりへ吸い込まれた。そして高く飛び跳ねたシチベエが、上空で袋の底を力強く叩く。放たれたユライとキクはそのままオスカーの頭上へと舞い降り、入れ替わったカードたちは、互いのフィールドへと吸い付くように収まった。

 

-------------------------------------------------

【遊次】

LP8000 手札:4(儀式の予告状)

 

①妖義賊-怪盗ルパン DEF1500

②妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700

③妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800

④妖義賊-夜駆けのシチベエ DEF1500

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

伏せカード:ホラーアームズ・ディアボリックキャノン

 

【オスカー】

LP8000 手札:5(バンシーヴェイル)

 

①アームドホラー・ファイノメネウス ATK2600

(装備:ディアボリックキャノン)

 

Pゾーン:山嵐のユライ、妖義賊-舞蛇のキク

伏せカード:2

--------------------------------------------------

 

「お前のデッキは、装備魔法を装備したモンスター同士で融合するコンセプトだ。でも今、お前の魔法・罠ゾーンに空きは1つ。カリオストロの効果のコストで俺の場に来た装備魔法を墓地に送れば、いよいよお前は装備モンスターを1体しか用意できねえ。つまり…お前は融合召喚すらできねえってわけだ!」

 

遊次は得意げな笑みを浮かべ、オスカーに指を突き付ける。空きが1つしかなければ、装備魔法を1つしか用意できず、その状態から融合魔法カードを使用することは物理的に不可能。モンスター効果で融合を行うとしても、装備魔法を2枚用意できなければ前提条件が成り立たない。装備魔法を駆使するオスカーにとって、魔法・罠ゾーンを圧迫されることは最も避けなければならない。

 

 

「フッ、しかも遊次の野郎、ご丁寧にPスケールを両方8にしてやがる。ロン毛野郎にペンデュラム召喚させねえようにな」

 

怜央は観客席に座り足を組んだまま、口角を上げる。一見無意味に思われたユライのPスケールセッティングは、オスカーの魔法・罠ゾーンを入れ替えながらも、P召喚を利用されないための布石だったのだ。

 

灯はステージ上の遊次の凛とした笑みを見つめる。

オスカーに敗北してから、遊次は頭の中で何度もシミュレーションを繰り返しただろう。嫌でもそうせざるを得なかったはずだ。その結果編み出されたのがこの"秘策"。オスカーのデッキを知っているが故のピンポイントメタだ。

 

その横顔を仰ぎ見た灯の内に、確かな希望の兆しが芽生えていく。何もかも、"あの時"とは違う。

 

 

(プロメテの効果でわざわざ防御系の罠カードを引きこんだのは、自らの伏せカードを増やし、俺のフィールドを圧迫するためか)

 

前のターンに抱いた違和感に答えが示された。オスカーは自らのデュエルディスクにセットされた相手のカードを数秒で確認し、再び前を向く。

 

「悪くはない。だが、脆い。貴様にもわかっているはずだ。この程度では俺を縛れはしない」

 

奇襲を仕掛けた遊次を前にしても、オスカーが言葉を乱すことはない。その冷徹なまでの落ち着きに対し、遊次もまた不敵な笑みを絶やさずに応じた。

 

「まあ、何もできずにターンエンドってこたぁねえだろうな。けど、必死に足掻かなきゃ縄はほどけないぜ。体力をめいっぱい使ってな」

 

遊次もオスカーほどの実力者を完全に制圧できるとは思っていなかった。しかし少なくとも、デッキの主力である融合モンスターを呼ぶために、オスカーは通常の数倍のリソースを割くことになる。それだけでもオスカーの力を奪うには十分だ。

 

「…縄を解く方法はそれだけではないがな」

オスカーは遊次にも聞こえぬほどの声を落とし、手札のカードを1枚手に取った。

 

「ファイノメネウスの効果を発動。手札の『アームドホラー』カードを捨て、カードをドローできる。装備魔法を装備している時、2枚のカードをドローできる」

 

オスカーの手札から魔法カード「アームドホラー・フュージョン」が墓地へ送られ、代わりの2枚が引き抜かれた。

 

遊次の狙い通りに局面は動き始めていた。

着実に優位を築いている実感はある。

しかし、いまだ凪いでいるオスカーを前に、遊次は冷たい胸騒ぎを覚えていた。

 

「墓地のアームドホラー・メラブエルの効果発動。装備カードを装備したアームドホラーが俺の場にいる時、墓地より特殊召喚できる」

 

■アームドホラー・メラブエル

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1500 守備力1500

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。

 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を手札に加える。

 ②:墓地の「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。

 (このカードが装備カードを装備している場合、

 「アームドホラー」魔法・罠カードまたは「ホラーアームズ」カード1枚も対象にできる。)

 そのカードを手札に加える。

 ③:自分フィールドに装備カードを装備したアンデット族モンスターが存在する場合に発動できる。

 このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

現れたモンスターは、古びた法衣をまとった髑髏の魔導士だ。頭部は仮面のように半分が金属で覆われ、空洞の眼窩に青白い光が燃えている。右手は符文を描いた光輪を生み出し、左手で小さな星屑のような粒子を操る。胸元には骨のペンダントが吊り下がり、布地のあちこちには天体を思わせる紋様が縫い込まれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RFhvQr5

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「手札のホラーアームズ・バンシーヴェイルをメラブエルに装備する」

 

メラブエルの背後に青白い帳が立ちのぼる。それは霧のように形を変えながら、やがて黒き魔女の輪郭を描き出した。裂けた口元からは声にならぬ叫びが漏れ、薄闇そのものが震える。

 

「手札のアームドホラー・シルヴォラスは、自分フィールドの装備魔法を墓地へ送ることで、特殊召喚できる」

 

シルヴォラスに装備されていた黒き霧の魔女は、その姿をすぐに消失させた。

 

 

■アームドホラー・シルヴォラス

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1800 守備力500

 ①: このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードは、自分フィールドの装備魔法カード1枚を墓地へ送ることで、手札から特殊召喚できる。

 ②:自分フィールドの「アームドホラー」モンスター1体をリリースして発動できる。

 そのモンスターとカード名の異なる「アームドホラー」モンスター1体を、デッキから特殊召喚する。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 ③:自分の「アームドホラー」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊できなかった場合に発動できる。

 その相手モンスターを手札に戻す。

 

 

現れたのは武闘家のような姿をしたアンデット族モンスターだ。その体は朽ちた衣を幾重にも巻き付け、所々に古代の呪符を象った蒼い装飾が輝いている。頭蓋の上には鹿の枝角を模した骨飾りを生やし、手には鎖の先に吊られた香炉が握られている。その双眸は蒼い不気味な光を放っている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dH5BQM1

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「魔法カード発動。アームドホラー・ネザーリバーブ。墓地の『アームドホラー』モンスターと『ホラーアームズ』装備魔法を1枚ずつ選択し、そのモンスターを特殊召喚して、選んだ装備魔法を装備させる。墓地のアームドホラー・テューロバスを特殊召喚し、ホラーアームズ・バンシーヴェイルを装備」

 

 

■アームドホラー・テューロバス

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1700 守備力1000

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「アームドホラー」モンスター1体を手札に加える。

 ②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。

 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を墓地へ送る。

 ③:自分・相手メインフェイズに発動できる。

 「アームドホラー」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分のフィールドから選んで墓地へ送り、

 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

 

現れたのは、朽ちた軍服を纏う骸骨の海賊。黒く焦げた外套の下からは、海藻のようにほつれた布が層を成して垂れ下がっている。右腕には古びた銃を握り、銃身の表面には青く光る宝石が埋め込まれている。胸骨の隙間や眼窩からは冷たい蒼光が漏れ、腰には巨大な錨を鎖で吊るしている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/AEcKi6Q

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そしてその背に、再び黒き霧の魔女が不気味な声で笑い、蠢き始める。

 

「テューロバスの効果発動。特殊召喚時、デッキから『アームドホラー』モンスターを1体手札に加える。バンシーヴェイルを装備したモンスターは相手の効果を受けない。カリオストロでこの効果を書き換えることは不可能だ」

 

(意地でも手札に加える効果を通してくるか。まあ、そりゃそうだよな。アイツが融合召喚するためには"あのカード"が必要なんだ)

 

遊次の眉間に一瞬皺が寄るが、それでも落ち着き払った様子に変化はなかった。遊次は再び前を見据える。オスカーはデッキから手札に加えた1枚のカードを表へ向けた。

 

「俺はデッキからアームドホラー・アルベレトを手札に加える。そしてアルベレトの効果を発動。このカードを手札から捨てることで、自分フィールドの装備魔法を相手フィールドに送ることができる。バンシーヴェイルを貴様のフィールドへと送る」

 

オスカーの前に、アンデットの道化師がおどけた様子で浮かび上がる。顔はむき出しの頭蓋で、金色の縁取りが仮面のように走り、空洞の眼窩には冷たい蒼光が灯っている。胸元の破れからは乾いた肋骨と金色の装飾がのぞき、腰の縄帯には札飾りや小さな金具がいくつも垂れている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ZF7sZCF

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アルベレトが手を叩くと、オスカーの場のバンシーヴェイルが遊次の場へと移動する。

 

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【遊次】

LP8000 手札:4(儀式の予告状)

 

①妖義賊-怪盗ルパン DEF1500

②妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700

③妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800

④妖義賊-夜駆けのシチベエ DEF1500

 

装備魔法:ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル

 

【オスカー】

LP8000 手札:3

 

①アームドホラー・ファイノメネウス ATK2600

 (ディアボリックキャノン装備)

②アームドホラー・メラブエル ATK1500

③アームドホラー・シルヴォラス ATK1700

④アームドホラー・テューロバス ATK1600

 (バンシーヴェイル装備)

 

Pゾーン:山嵐のユライ、妖義賊-舞蛇のキク

伏せカード:2

--------------------------------------------------

 

(やっぱそう来るよな。これでアイツの魔法&罠ゾーンはまた1枠空いた。でも結局は、"融合"を通さなきゃいい話だ)

 

遊次は頭の中でシミュレーションを繰り返す。融合効果を持つテューロバスは今、装備魔法で効果を受けない。しかし今その効果を使っても、カリオストロの効果のコストとして遊次の場の装備魔法を墓地に送れば、装備魔法を装備したモンスターは1体だけとなり、融合は不発。

 

つまりオスカーが融合召喚を行うためには、もう1体、装備カードを装備したアンデット族が必要となる。ここからさらに装備魔法を装備してテューロバスの効果で融合したとしても、カリオストロの効果を発動し、コストとしてバンシーヴェイルを墓地に送れば、装備魔法の効果は消えて、テューロバスはカリオストロの効果を受ける。そうなれば融合効果は書き換えられ、結局は融合が不発となる。これが遊次の思い描いているシナリオだ。

 

ただ魔法・罠ゾーンを圧迫するだけでなく、装備魔法をカリオストロのコストとして墓地に送るという仕組みが、何重にもオスカーに枷を与えている。オスカーが手を尽くしても、未だそれを崩す前兆は見られない。

 

「手札のホラーアームズ・ショックグリーヴをメラブエルに装備する」

 

メラブエルの右足を、節くれ立った巨大な脊椎を思わせる白骨の装甲が螺旋状に包み込む。足首には幾重にも重なり合った分厚い頭蓋の破片が噛み合い、踵からは杭のように太い大腿骨の突起が突き出している。

 

「ショックグリーヴの効果発動。相手の魔法・罠カードを1枚破壊し、カードを1枚ドローする。フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』を破壊」

 

■ホラーアームズ・ショックグリーヴ

 装備魔法

 アンデット族モンスターにのみ装備可能。

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローする。

 このカードがフィールドに存在する限り、このカードの効果で破壊したカードが置かれていたゾーンは使用できない。

 ②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

 このカードを手札に加える。

 

 

骨塊と化した右足が、硬い石畳へと激しく叩きつけられる。衝撃が空間そのものを揺さぶり、周囲に張り巡らされていた石畳の秘密回廊は、重力に引かれるように底へと沈んで消え失せた。歪んだ景色が晴れると、再び荘厳なオーケストラホールがその姿を現す。

 

「アームドホラー・シルヴォラスの効果発動。アームドホラー・メラブエルをリリースし、デッキから別の名を持つアームドホラーを特殊召喚する。現れよ、アームドホラー・ペルフェゴル」

 

■アームドホラー・ペルフェゴル

 効果モンスター

 レベル7/闇/アンデット/攻撃力2500 守備力1900

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:墓地の「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを特殊召喚する。

 ②:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 (このカードが装備カードを装備している場合、2体まで相手モンスターを対象にできる。)

 そのモンスターを破壊する。

 

 

現れたのは、巨大な斧を携えたアンデットの戦士だ。全身を覆うのは緑青に蝕まれたような古代の甲冑で、そこから骨のような身体が覗いている。鎧の継ぎ目からは青白い瘴気が漏れ出し、まるで肉体そのものが呪いに浸食されているかのようだ。頭部には角を持つ兜が固定され、その奥で光る眼窩は蒼炎のように揺らめいている。握られた大斧の刃には古代文字のような紋様が刻まれ、同じ瘴気が脈動しているのが見て取れる。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/rtDjWFa

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オスカーが敷かれた網を未だ引き裂けずにいる一方で、戦場に降り立った新たな影が、遊次の表情を強張らせる。盤面を支配していたはずの自信は、そのモンスターの出現とともに霧散し始めていた。

 

(ペルフェゴルは俺の場のカードを破壊する効果がある。カリオストロが対象になったら融合効果を書き換えられねえ…)

 

遊次は顔をしかめ、眉間に指先を当てて必死に思考を凝らす。

 

「墓地へ送られたホラーアームズ・ショックグリーヴの効果発動。このカードを手札へ戻す」

 

遊次の心にじわじわと不気味な暗闇が広がってゆく。しかし、事態はさらに1枚のカードにより急変する。

 

「装備魔法『ホラーアームズ・デモンズコア』を発動。

貴様のカリオストロに装備する」

 

「なに…!?」

 

これまで装備魔法は全て自身のモンスターに装備されてきた。新たなカードの登場に、観客席の怜央の表情にも警戒の色が滲む。

 

カリオストロの胸の中央に、禍々しい赤色の核が埋め込まれた。まるで生きた心臓のように、その核がドクンドクンと大きく脈打ち始める。

 

「デモンズコアを装備したモンスターはアンデット族となる」

 

オスカーの低く静かな声を皮切りに、カリオストロの喉から低い呻き声が漏れた。核の鼓動に合わせて赤黒い奔流が全身を駆け巡り、巻きついた包帯が急速に朽ちていく。その隙間から覗く肌は生気を失った土気色へと変わり、纏う空気が冷たく澱んだ死者のそれへと完全に変質する。

 

「な、なんだこれ…」

呆然とする遊次に、オスカーは次なる言葉を紡ぐ。

 

「デモンズコアを装備したモンスターが効果を発動した瞬間、そのモンスターのコントロールは相手プレイヤー…即ち俺へと移る」

 

■ホラーアームズ・デモンズコア

 装備魔法

 このカード名の②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:装備モンスターはアンデット族になり、装備モンスターが効果を発動した場合、装備モンスターのコントロールを相手に移す。

 ②:装備モンスターが融合素材となることでこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。

 自分はデッキから1枚ドローする。

 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

 このカードを手札に加える。

 

 

「ほぉ…面白くなってきたじゃないか」

観客席に深く身を静める腰掛けるハイドの瞳が、愉悦に細められる。

 

「これじゃ、もしカリオストロの効果で融合を止めても、今度はカリオストロが奪われちゃう…」

 

灯が嘆くように声を漏らすが、怜央は落ち着いた調子で言葉を返した。

 

「だが、効果が無効になるわけじゃねえんだろ。融合自体は止められる。最悪カリオストロが奪われても、遊次の墓地には全部ぶっ壊せる爆炎の予告状があるんだ。構やしねえだろ」

 

怜央の言葉を受け、灯の頭が冷えていく。考えてみれば、彼の言う通りかもしれない。想定外の一手には驚かされたが、決して致命的なものではないだろう。灯は自分に言い聞かせ大きく息を吐き、再びステージに目を向ける。

 

-------------------------------------------------

【遊次】

LP8000 手札:4(儀式の予告状)

 

①妖義賊-怪盗ルパン DEF1500

②妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700

 (デモンズコア装備)

③妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800

④妖義賊-夜駆けのシチベエ DEF1500

 

装備魔法:ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル

 

【オスカー】

LP8000 手札:3(ショックグリーヴ)

 

①アームドホラー・ファイノメネウス ATK2600

 (ディアボリックキャノン装備)

②アームドホラー・ペルフェゴル ATK2500

③アームドホラー・シルヴォラス ATK1700

④アームドホラー・テューロバス ATK1600

 (バンシーヴェイル装備)

 

装備魔法:デモンズコア

Pゾーン:山嵐のユライ、妖義賊-舞蛇のキク

伏せカード:2

--------------------------------------------------

 

(ペルフェゴルの破壊効果が使われりゃ、結局そこにカリオストロの効果を使うしかねえ。でも、その瞬間デモンズコアの効果でカリオストロはオスカーの手に渡っちまう。クソッ…どうすればいい…!)

 

苦悶に歪む遊次の様子を、ルーカスは愉悦に満ちた瞳で見つめる。その唇が、歪な弧を描く。

 

「残酷だな、兄さんは。まさか今この瞬間が、奴らの運命を決めるとは誰も思わないだろうに」

 

「え、どういうこと?」

不可解な言葉に、美蘭が隣で怪訝そうに首を傾げた。

 

「ちょっとは自分で考えろよ。でもまあ、1つヒントを出してやろう」

 

ルーカスは薄気味悪い笑みを崩さぬまま、美蘭を突き放すように言葉を投げた。

 

「もし道を違えれば…神楽遊次は破滅する」

 

その眼差しは、遊次が知らぬ間に踏み込んでいる奈落の縁を克明に捉えている。勝ち誇ったような響きを伴い、無慈悲な一言を落とした。

美蘭は呆然と口を半開きにしたまま、再びステージへと目を凝らした。ルーカスの視線の先に潜む真実を見定めるために。

 

頭のなかで幾度も計算を繰り返す。しかし遊次は未だ、苦悩を続けていた。複雑な状況と想定できるケースは膨大で、人が瞬時に判断できる容量を優に超えている。

 

(カリオストロの破壊をただ受け入れたら、モンスターの総攻撃でよくて瀕死、最悪は死ぬ…。カリオストロの効果でペルフェゴルの破壊を無効にするか、爆炎の予告状で全部吹っ飛ばすしかねえ。ルパンで爆炎の予告状を除外して相手フィールドを破壊するのが、一番生き残る確率が高い。けど…)

 

遊次の脳裏に、数週間前の記憶が蘇る。突如現れた、悪魔のようなアンデットのドラゴン。自陣を一気に蹂躙し、圧倒的な破壊力をもって遊次を敗北に至らしめたモンスター。

オスカーの切り札「アームドホラー・ドラゴン」。

その姿は、まるでトラウマのように遊次の脳に植え付けられている。

 

(あのモンスターは、装備カードを装備したアンデット族3体を素材に要求する。今のままアイツの魔法・罠ゾーンが埋まってりゃ、どう頑張っても召喚しようがねえ。でも爆炎の予告状でぶっ壊しちまったら…!)

 

オスカーの墓地の「アームドホラー・フュージョン」は、墓地のモンスターを素材に融合召喚を行える。しかしこの効果で融合したモンスターはそのターン直接攻撃ができないため、遊次のライフが全て削られることはないだろう。その点では安全と言える。しかしバトルフェイズを経れば、ディアボリックキャノンの効果により、モンスターを戦闘破壊した時にデッキからアームドホラーを特殊召喚できる。バトルによってカリオストロが破壊されれば、メインフェイズ2でモンスター3体と装備魔法3枚し、融合召喚が可能。つまりアームドホラー・ドラゴンの降臨を許してしまう。

 

オスカーの魔法・罠ゾーンが圧迫されている限り、アームドホラー・ドラゴンは呼び出せない。遊次はあのモンスターの降臨を拒絶したかった。魔法・罠ゾーンを圧迫する戦略も理に適ってはいるが、それよりもあのモンスターへの本能的な恐怖がそうさせたのかもしれない。

 

遊次は手札の1枚のカードに視線を送る。それは「妖義賊-助太刀のサルバトーレ」。自分フィールドのモンスターが破壊された時に手札から特殊召喚し、さらには相手の墓地のモンスターを特殊召喚する効果を持つ。

 

(コイツがいれば、バトルフェイズ中に俺を守るモンスターが2体増えるから、死ぬことはねえ。だったら、次のターンのことを考えて魔法・罠を圧迫した状態を残しておきたい。そうすりゃ、オスカーはどう転んでも装備魔法を1枚しか発動できない。融合モンスターを呼ばれても、装備魔法が1枚なら怖くねえしな)

 

遊次は意を決して前を向く。

彼の中で、ほとんど結論は出ていた。

 

カリオストロの胸に埋め込まれた禍々しい心臓は、今もドクドクと脈打っている。そのカードによって道は分かれ、遊次は選択を迫られた。

 

 

『もし道を違えれば…神楽遊次は破滅する』。

 

ルーカスの言葉の意味とは何か。

オスカーの真の狙いとは何か。

 

遊次が選んだ道は、希望へと繋がっているのか、それとも。

 

第74話「悪魔の心臓」 完

 

 

 

 

遊次の選択が、局面を大きく変える。

決断し前を向いた視界に飛び込んできたものに、遊次は思わず背筋を凍らせる。

 

オスカーは顔色一つ変えず、遊次の敷いた罠を潜り抜ける。その身に力を入れることすらなく。

追い詰められた遊次に追い打ちをかけるように、オスカーは新たな融合モンスターを呼びだす。

 

ぶつかり合う、二つの思想。

正しき未来とは何か。

唯一答えを指し示すのは、"デュエル"だけだ。

 

「幻想に手を伸ばすのは、誰かを救うためではない。己が救われるためだ。

そうしている間だけは、希望に酔いしれていられるからな」

 

 

次回 第75話「正しき未来」

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