遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第76話:譲り受けた魂

オーケストラホールを舞台に幕を開けた、遊次とオスカーの最終決戦。「セカンド・コラプス計画への服従」か「セカンド・コラプス計画の破棄」か。世界の命運を懸けた最大規模のオースデュエルが始まった。

 

遊次は先行から「夜駆けのシチベエ」で互いの魔法・罠ゾーンを入れ替える奇策を展開。多数の装備魔法を駆使するオスカーの盤面を物理的に圧迫し、その自由を奪いにかかる。しかしオスカーは、効果発動を条件にそのモンスターのコントロールを奪う装備魔法「デモンズコア」により、致命的な二択を迫った。

 

遊次は「幽玄のカリオストロ」を奪われることによる即死コンボを予見し、自らの手で相手側に送り込んだカードを「爆炎の予告状」で焼き払う決断を下す。そして次のターン、枷の外れたオスカーは切り札「アームドホラー・ドラゴン」を降臨させた。

 

モンスターによる総攻撃を受け、遊次のライフは残り3900。鉄壁の制圧布陣を前に、遊次はある一つの"動作"だけでオスカーを欺き、「一攫千金の予告状」で3枚のカードを引き込むことに成功。

この手札に、遊次は逆転への希望を託す。

 

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【遊次】

LP3900 手札:3

 

①妖義賊-深緑のロビン ATK1800

②アームドホラー・エタナフォラス ATK2200

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

 

【オスカー】

LP8000 手札:5(ショックグリーヴ、マレフィックアイ、アームドホラー・ヴィシャスサイクル)

 

①アームドホラー・アスクレマリウス ATK2400

 (アームドホラー・デスラトル装備)

②アームドホラー・ドラゴン ATK4500

 (ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル装備)

③アームドホラー・ディオメデウス ATK2600

 (スティジアンウィング装備)

 

装備魔法:ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル、スティジアンウィング

永続魔法:カースエンブレイス

永続罠:アームドホラー・デスラトル

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オスカーの場には、装備魔法を墓地に送ることでモンスター効果を無効にするディオメデウスと、装備魔法を任意の数墓地に送り、その数だけ相手フィールドのカードを墓地へ送るアームドホラー・ドラゴンが並ぶ。

この2体のモンスターは装備魔法によって守られ手出しできず、装備魔法は永続魔法によって破壊不可能。

さらには罠カード「アームドホラー・デスラトル」により、EXデッキから特殊召喚されたモンスターが効果を発動すれば、装備カードと化してしまう状況。この圧倒的な制圧力を乗り越えなければ、オスカーに傷を与えることはできない。

 

遊次は眼前の黒き魔竜「アームドホラー・ドラゴン」を見上げ、固く口を結ぶ。

 

(…この手札じゃ、まだアイツのフィールドを突破できない。とにかく…まずはチャンスを掴むしかねえ)

 

張り詰めた意識のなかで、一つの情景が鮮明に浮かび上がった。自分が立っているのは、煮え滾る溶岩の海の上に渡された、一本の細い縄。行く手には巨大な鋸刃が轟音を立てて上下動を繰り返し、噴き上がる熱泥が視界を遮る。

 

その遙か彼方に、オスカーの冷徹な姿があった。

乗り越えなければならないのは、死を誘う無数の罠。

足を踏み外すことの許されない、命懸けの綱渡り。

それをクリアしなければ、遊次に勝利はない。

 

熟考の末、遊次は決然とデュエルディスクを掲げた。鋭い駆動音とともにディスクの両端が下部へと展開し、新たなゾーンが突き出す。

 

「俺はスケール2の『妖義賊-誘惑のカルメン』をPスケールにセッティング!」

 

■妖義賊-誘惑のカルメン

 ペンデュラムモンスター

 レベル5/闇/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900 スケール2

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 ①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。

 ②:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを自分の手札に加える。

 【モンスター効果】

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の墓地のモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 対象の自分の墓地の「ミスティックラン」モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、

 対象の相手フィールドのモンスターのコントロールを得る。

 ②:このカードが「ミスティックラン」モンスターの融合・S・X・L召喚の素材となった場合、

 または「ミスティックラン」モンスターの儀式召喚のリリースとして使用された場合に発動できる。

 EXデッキの表側表示のこのカードを手札に加える。

 

 

頭上に姿を現したモンスターは、紫のローブを羽織り顔をベールで覆っている妖艶な大人の女性のモンスターだ。黒の口紅を施した唇でニヒルな笑みを浮かべている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dwkEFaw

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「カルメンのP効果発動!フィールドの妖義賊をリリースしてデッキから妖義賊を特殊召喚する!

ロビンをリリース!来い、『妖義賊-美巧のアカホシ』!」

 

 

■妖義賊-美巧のアカホシ

 ペンデュラムモンスター

 レベル7/風/鳥獣/攻撃力2300 守備力2000 スケール8

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:元々の持ち主が相手となるモンスター1体を対象とし、1~7までの任意のレベルを宣言して発動できる。

 そのモンスターのレベルはターン終了時まで宣言したレベルになる。

【モンスター効果】

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の除外されている「予告状」カードを任意の枚数デッキに戻して発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したこのカードは、

 攻撃力がこの効果でデッキに戻した「予告状」カードの枚数×500アップし、

 このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターの効果を受けない。

 ②:自分メインフェイズに発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚を手札に加える。

 自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、

 この効果で手札に加えるカードは2枚になる。

 ③:このカードがEXデッキに表側で存在し、自分のPゾーンにPカードが存在する場合に発動できる。

 このカードを手札に加える。

 

 

遊次の頭上でカルメンが両腕を天へと掲げると、ルパンの姿は深い闇に呑み込まれ、霧散する闇の中から新たな影が立ち上がった。鳳凰の頭部を冠し、鮮烈な紅の着物に身を包んだそのモンスターは、腰に長刀を携えて静かに戦場を見据えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Beta2kb

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「この瞬間、ロビンの効果を発動!リリースされた時、相手モンスター1体の効果を無効にする。対象はアスクレマリウス!」

 

ディオメデウスとアームドホラー・ドラゴンは装備魔法によって守られているため、対象は必然的にアスクレマリウスとなる。

 

「さらにフィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』の効果をチェーン2で発動!秘密回廊は妖義賊がリリースされた時、カードを1枚ドローできる」

 

遊次はカードを1枚引き抜く。チェーン2で秘密回廊の効果が発動したことで、チェーン1のロビンの効果は無効にならない。

 

半透明のロビンが宙へ浮かび上がり、淀みない動作で矢を放つ。切っ先がアスクレマリウスの胸を捉えると、ガクリと体勢を崩した。力が抜けた体は杖に重くのしかかり、足元がおぼつかなく揺らぐ。

これで墓地の融合モンスターを復活させる効果も封じたことになる。

 

「永続魔法『妖義賊の連携陣』発動!」

 

■妖義賊の連携陣

 永続魔法

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分の墓地・フィールド・EXデッキの表側から

 「ミスティックラン」カードをそれぞれ1枚ずつデッキに戻し、

 相手フィールドの表側カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードがモンスターカードの場合、コントロールを得て、

 魔法・罠カードの場合、自分フィールドに置く。

 ②:元々の持ち主が相手となる自分フィールドのカード1枚を墓地へ送り、

 自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターはこのターン、相手の効果を受けない。

 ③:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する限り、

 自分のモンスターの守備力は倍になる。

 

 

「妖義賊の連携陣の効果発動!フィールド・墓地・EXデッキの表側の妖義賊カードをそれぞれデッキに戻して、相手フィールドのカードを奪う!Pゾーンのカルメン、墓地のリヘイ、EXデッキのプロメテを戻して、お前のフィールドの装備魔法『ホラーアームズ・スティジアンウィング』を奪う!」

 

遊次の繰り出した策に、アリシアは目を細める。

 

(装備カードを奪っても、装備状態は解除されず、ディオメデウスの無効効果は消えない。狙いは何だ…?)

 

スティジアンウィングは、奪うことで最も効果の薄いカードだ。それはかえって明らかに意図が隠れていることを意味している。

これに対してオスカーが打てる手は、アームドホラー・ドラゴンの効果を使ってスティジアンウィングを墓地に送り、遊次の場のカードを墓地へ送ることくらいだ。しかし、それに見合うカードは遊次の場に存在せず、貴重な効果を無駄にするわけにはいかない。

 

カルメン、リヘイ、プロメテの3体が、透き通る霊体となって遊次の眼前に現れる。互いの軌跡を結んで虚空に三角形の紋様を描き出すと、その光がオスカーの場のスティジアンウィングを目掛け、一直線に放たれた。直撃を受けたカードはオスカーの盤面から掻き消え、遊次のフィールドへと移る。

 

そして直後、遊次は手札に残された最後の1枚を発動する。

 

「魔法カード発動!『妖義賊の施し』!相手から奪ったカードをフィールドから墓地へ送り、2枚ドローする!スティジアンウィングを墓地へ!」

 

ディオメデウスの背に装着されていた黒鉄の翼が、鉄錆となって飛散する。そして遊次はデッキから2枚のカードを力強く引き抜いた。

 

「うまい…!手札を増やしながら、ディオメデウスの無効効果も潰すとは…!」

 

装備魔法を奪いながら、コストとして墓地へ送ることで、遊次はディオメデウスの強力な効果を奪った。

イーサンは思わず前のめりに声を上げる。

 

「しかもアームドホラー・ドラゴンで墓地へ送れるカードの枚数も減ったぜ。一石三鳥ってワケだ」

 

怜央も思わぬ好機に不敵に口角を上げる。

アームドホラー・ドラゴンはフィールドの装備魔法を墓地へ送り、その枚数だけ相手フィールドのカードを墓地へ送る効果を持つ。1枚装備カードが減った以上、その影響力を狭めることにも繋がったのだ。オスカーは永続魔法によって手札から装備魔法を装備することができるが、魔法効果は遊次が奪ったエタナフォラスによって封じられている。カードの積み重ねが、今この状況を生んでいる。

 

 

(奴のデュエルはいつも綱渡りだ。そのくせ、狙ったかのように最適解を引き当てる。まるで…)

 

ルーカスは、複雑な感情が絡まり合う視線を遊次へと向ける。

その脳裏に、数週間前の遊次とオスカーの戦いでの、オスカーの言葉が蘇る。

 

(デッキは時に、デュエリストの心に呼応する。

少なくとも、奴がその器だっただけのことだ)

 

ルーカスは首を横に振り、かつての兄の言葉を振り払う。

 

(ありえない。運命に選ばれるのは、兄さんだ)

 

 

「これでディオメデウスの効果はなくなった。この時を待ってたんだ!EXデッキの美巧のアカホシの効果発動!1ターンに1度、デッキから妖義賊Pカードを手札に加える!さらに相手から奪ったカードが俺の場にあれば、その枚数は2枚になる!『妖義賊-戴火のプロメテ』と『妖義賊-雲龍のリヘイ』を手札に加える!」

 

「手札からスケール2の『妖義賊-戴火のプロメテ』をPスケールにセッティング!」

遊次は凛とした笑みを浮かべ、デュエルディスクにカードを叩きつける。

 

 

■妖義賊-戴火のプロメテ

 ペンデュラムモンスター/チューナー

 レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。

 このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。

 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。

 自分のデッキの上からカードを5枚めくり、

 その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。

 残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。

 【モンスター効果】

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、

 このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、

 相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 ③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。

 このカードをPゾーンに置く。

 

 

遊次の頭上に、火の玉に手足のついたモンスターが浮かび上がる。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI

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「魔法カード発動!妖義賊の隠し玉!」

 

■妖義賊の隠し玉

 通常魔法

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:除外状態の自分の「ミスティックラン」魔法・罠カード1枚をデッキに戻して発動する。

 そのカードを発動時の効果を適用する。

 ②:墓地のこのカードを除外し、除外状態の自分の「ミスティックラン」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドにセットする。

 

 

「このカードは、除外されてる自分の『ミスティックラン』魔法・罠カードを1枚デッキに戻して、その発動時の効果を適用できる!俺が選ぶのは『妖義賊の見参』!この効果により、デッキから妖義賊を特殊召喚する!

来い!『妖義賊-誘惑のカルメン』!」

 

現れたのは、先ほど連携陣の効果でデッキへと戻った、紫のローブを纏う妖艶な魔女だ。

 

「ディオメデウスの効果が使えなきゃコッチのもんだぜ。カルメンの効果発動!自分の墓地の妖義賊を1体相手フィールドに特殊召喚して、相手フィールドのモンスター1体を奪う!ロビンをお前のフィールドに特殊召喚して、ディオメデウスを奪う!」

 

深緑の外套を翻し、弓を携えたロビンがオスカーのフィールドへ降り立つ。そしてカルメンが不気味な笑みとともに手招きをすると、その誘いに引かれるように、ディオメデウスが一歩、また一歩と前へ歩み出た。華奢な指先がその巨躯に触れた瞬間、ディオメデウスはゆっくりと反転し、主であるはずのオスカーへとその身を正対させた。

 

 

「プロメテのP効果発動!相手から奪ったカードが俺の場にある時、デッキの上から5枚をめくり、その中から1枚、妖義賊カードを手札に加える」

 

このP効果は、遊次に更なる力を与えかねないものだ。今ここでアームドホラー・ドラゴンの効果を発動しプロメテを墓地へ送れば、その効果は防げるだろう。

故に、遊次は真っ直ぐとオスカーへ探るような視線を向ける。

 

(このタイミングじゃ、アイツはアームドホラー・ドラゴンの効果を使えねえはずだ)

 

しかし遊次の中には揺るがぬ確信があった。

彼の脳裏に浮かぶのは、桃色の着物を纏い白蛇の頭を持つモンスター「妖義賊-舞蛇のキク」。

前のターンに破壊され、今はEXデッキに表側で眠るカードだ。

 

(P召喚されたキクは、全ての戦闘ダメージを相手に反射する効果を持つ。もし俺がキクをP召喚しちまえば、全モンスターでアームドホラー・ドラゴンに自爆特攻して、一気に大ダメージを与えられる。EXデッキにキクがいる以上、どうしてもアイツはそのルートが頭の片隅にずっとあるはずだ)

 

アームドホラー・ドラゴンの効果はここでは使えない。

それが遊次の持つ確信。

 

(だから俺の手札にカードが残ってるこのタイミングで、アームドホラー・ドラゴンの効果は使えねえ。ここでプロメテを墓地に送っても、残り1枚の手札でPスケールを揃えてさらに展開すれば、反射ダメージだけでケリがつく。アイツはその可能性を見て見ぬふりしてギャンブルに走るタイプじゃねえ)

 

たとえ今発動したプロメテのP効果でさらなるカードを引きこまれるとしても、決してそれを止めるためだけにアームドホラー・ドラゴンの効果を使用することはできない。否、プロメテだけでなく、今後の展開においても、アームドホラー・ドラゴンの効果はそう簡単には使えない。舞蛇のキクという幻影が見え隠れし、さらに手札のカードが未知である以上は。

 

それこそが遊次の勝機。

自由に行動できる唯一の条件だ。

そして遊次の予想通り、オスカーは優先権を返し、プロメテの効果はここに成立する。

そしてこれこそ、遊次が逆転のチャンスを掴むために必要な一手であった。

 

(…来た!)

遊次はデッキから5枚をめくると、目を見開いた。

 

「俺は『妖義賊-士君子のブラックバード』を手札に加えて、残りのカードをデッキの一番下に戻す。さらにPゾーンの『妖義賊-戴火のプロメテ』のP効果発動。フィールドに妖義賊がいる時、Pゾーンのこのカードを効果を無効化して特殊召喚できる」

 

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【遊次】

LP3900 手札:4(雲龍のリヘイ、士君子のブラックバード)

 

①妖義賊-美巧のアカホシ ATK2300

②アームドホラー・エタナフォラス ATK2200

③妖義賊-誘惑のカルメン ATK2000

④妖義賊-戴火のプロメテ ATK1000

⑤アームドホラー・ディオメデウス ATK2600

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣

 

 

【オスカー】

LP8000 手札:5(ショックグリーヴ、マレフィックアイ、アームドホラー・ヴィシャスサイクル)

 

①アームドホラー・アスクレマリウス ATK2400

 (アームドホラー・デスラトル装備)

②アームドホラー・ドラゴン ATK4500

 (ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル装備)

③妖義賊-深緑のロビン ATK1800

 

装備魔法:ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル

永続魔法:カースエンブレイス

永続罠:アームドホラー・デスラトル

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遊次は右手を高く掲げ、高らかに宣言する。

 

「俺はフィールドのプロメテ・カルメン・アカホシをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」

 

リンクマーカーが次々と輝き、空間に青白いサーキットが展開する。

3体のモンスターの輪郭が光の粒となり、アローヘッドへと入る。

 

「権威を穿つ風雲児よ、今こそ逆境を覆す英雄となれ!

リンク召喚!リンク3『妖義賊-神出鬼没のギルトン』!」

 

 

■妖義賊-神出鬼没のギルトン

 リンクモンスター

 リンク3/風/獣戦士/攻撃力2200

 【リンクマーカー:左下/下/右下】

 モンスター2体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをL素材にしている場合、

 このカードは相手の効果で破壊されない。

 ②:このカードがL召喚した場合、相手のフィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターのコントロールを得る。

 その後、そのモンスターを含む自分フィールドのモンスターを素材として融合・S・X・L召喚を行うか、

 そのモンスターを含む手札・フィールドのモンスターをリリースして儀式召喚を行う。

 ③:このカードのリンク先にP召喚された場合に発動できる。

 自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

そのモンスターは、鋭い目つきを持つ豹の顔をした獣戦士。額には蒼のバンダナが巻かれ、胴体部分には茶色の革のチュニックを着ており、背中には鋭利な長剣が一本背負われている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/s8OJ6yB

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オスカーはデュエルディスクから浮かび上がるソリッドヴィジョンの盤面情報を見つめ、口を開く。

 

「そのモンスターはL召喚時、相手モンスターを奪い、次なる召喚に繋げる効果があるらしい。しかし、罠カード『アームドホラー・デスラトル』により、その効果を発動すればギルトンは我がモンスターの装備カードとなる。どうする、神楽遊次」

 

オスカーは真っ直ぐと問いかける。そのトーンは落ち着いた声音ながらも、ただ興味本位による問いにも聞こえた。

 

遊次は一瞬、言葉を返すことができなかった。世界の命運を背負った戦いの最中とは思えない、その温度差。このデュエルを通じてオスカーから感じ続けていた"引っかかり"が、今の問いかけに凝縮されているように思えた。だが、その正体までは掴めない。遊次は思考を振り切り、問いへの答えを紡ごうと前を向く。

 

「…やめとくぜ。ギルトンの効果は発動しない。でもリンク召喚したのはそのためじゃねえ。誘惑のカルメンの効果発動!L素材になった時、カルメンはEXデッキから手札に加えられる」

 

「手札から『妖義賊-雲龍のリヘイ』をPスケールにセッティング!」

 

 

■妖義賊-雲龍のリヘイ

 ペンデュラムモンスター

 レベル6/闇/幻竜/攻撃力2300 守備力1700 スケール2

 【P効果】

 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:手札を1枚捨て、自分の墓地の「予告状」魔法カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを除外する。

 この効果を使用するターン、自分は除外した「予告状」魔法カード以外の「予告状」魔法カードの効果を発動できない。

 ②:自分メインフェイズに発動できる。

 Pゾーンのこのカードをデッキに戻し、デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚をPゾーンに置く。

【モンスター効果】

 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②:元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送って発動できる。

 デッキから「ミスティックラン」罠カード1枚を手札に加える。

 

 

黒に紫の花柄の着物を纏った竜の頭を持つモンスターが頭上に現れる。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/kl0jjqA

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「さらにEXデッキのアカホシの効果発動!Pゾーンにカードがある時、EXデッキから手札に加えることができる。さらにそのままPスケールにセッティング!」

 

赤い着物を纏った鳳凰のモンスターが再び頭上へ浮かび上がり、ついにスケールが揃ったことになる。

 

「さてどうする、オスカーさんよぉ。お前が"舞蛇のキク"のP召喚を警戒してんのはわかってんだぜ。P召喚されたキクがいる限り、戦闘ダメージは全部お前に反射される。ついでに言っとくと、ギルトンのリンク先にP召喚されれば、カードを2枚ドローする効果もある。止めたほうがいいんじゃねえか?」

 

遊次は煽るように言い放つ。オスカーが最も警戒すべきは、遊次のEXデッキの「舞蛇のキク」によるダメージ反射だ。今ここでアームドホラー・ドラゴンでPスケールを墓地に送れば、P召喚と2枚のドローを防ぐことができるかもしれない。

 

答えは明快にも見えるが、自ら全てを開示するような遊次の言葉は、オスカーには何か意図を持っているように映った。

ホールの陰でジェンは腕を組み、思案する。

 

(神楽遊次の手札にはスケール2のカルメンと、未知のカードが2枚。ここでスケールを除去しても、再びPスケールがセットされる可能性は十分にある。そうなればいよいよダメージ反射を避けるすべはなく、敗北に直結する。社長ならばそのリスクを冒さず、P召喚されたキクを確実に仕留める選択をするはず)

 

 

「構わん。好きにするがいい」

オスカーは迷うことなく答えを提示する。呼応するように、遊次は高く右腕を掲げる。

 

「Pスケールは2~8!よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

「天に弧を描く義の心、その輝きより現れ同胞の声に呼応せよ!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達!」

 

天から降り注ぐ一筋の光から、3体のモンスターが姿を現した。

 

「EXデッキから舞蛇のキク、戴火のプロメテ!手札から士君子のブラックバード!」

 

キクは桃色の着物を纏った白蛇の頭を持つ。プロメテは火の玉のモンスター、ブラックバードは紳士服を纏ったカラスのモンスターだ。

 

「ギルトンの効果発動!リンク先にP召喚された時、カードを2枚ドローする!」

 

遊次の宣言と同時に、オスカーもまた狙い澄ましたように動く。

 

「罠カード『アームドホラー・デスラトル』の効果発動。EXデッキから特殊召喚されたモンスターが効果を発動した時、このカードを墓地へ送り、そのカードを装備カードへと変換する。ギルトンをアスクレマリウスに装備」

 

アスクレマリウスがひしゃげた叫び声を上げると、ギルトンの身体が呪縛を受けたように硬直した。見えない力に引き剥がされるように、ギルトンから抜け出た魂がアスクレマリウスのもとへ吸い込まれていく。魂はそのまま賢者の周囲をふらふらと漂い始め、残されたギルトンの肉体は音もなく砂となって崩れ落ちた。

 

「装備カードとなったギルトンがある限り、相手のこのカードと同じ種類…つまりリンクモンスターの効果は無効となる。当然、チェーン1で発動したギルトンの効果もな」

 

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【遊次】

LP3900 手札:3(カルメン)

 

①アームドホラー・エタナフォラス ATK2200

②アームドホラー・ディオメデウス ATK2600

③妖義賊-舞蛇のキク ATK1000

④妖義賊-戴火のプロメテ ATK1000

⑤妖義賊-士君子のブラックバード ATK1400

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ

 

 

【オスカー】

LP8000 手札:5(ショックグリーヴ、マレフィックアイ、アームドホラー・ヴィシャスサイクル)

 

①アームドホラー・アスクレマリウス ATK2400

 (ギルトン装備)

②アームドホラー・ドラゴン ATK4500

 (ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル装備)

③妖義賊-深緑のロビン ATK1800

 

装備魔法:ディアボリックキャノン、バンシーヴェイル、ギルトン

永続魔法:カースエンブレイス

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遊次の場には色とりどりのモンスターが並び立つ。遊次の表情には一点の曇りもない。

 

アリシアの脳裏に浮かんだのは、遊次が視線と指折りだけでオスカーを欺き、ロビンの効果を通したあの場面。あの効果により遊次は3ドローを可能とする予告状を手にし、それが今に繋がっている。

 

(たった一つの"小細工"から、この状況を創り出すとは…。信じられない。もしや、彼ならば…)

アリシアは瞳を揺らし、フィールドを見つめる。

 

「ブラックバードの効果発動!相手の魔法・罠カードを1枚破壊して、俺のフィールドにセットする!永続魔法『アームドホラー・カースエンブレイス』を破壊して奪う!」

 

ブラックバードが翼を打ち振るう。放たれた黒い羽根はオスカーの永続魔法を無残に貫き、破壊した。砕かれたカードは黒い風に運ばれるようにして、遊次のフィールドへとセットされる。

 

「永続魔法『妖義賊の連携陣』の効果発動!相手から奪ったカードを1枚墓地に送ることで、妖義賊1体はこのターン、相手の効果を受けなくなる!カースエンブレイスを墓地へ送り、対象に舞蛇のキクを選択!」

 

オスカーは目を細め思考する。

 

(この効果を通せば俺はキクを排除できない。バトルフェイズ中に他のモンスターを3体除去できるが、残りのモンスターによるアームドホラー・ドラゴンへの特攻は避けられん。奴が俺のディアボリックキャノンを奪い、アームドホラー・ドラゴンに装備させることでその攻撃力を上げれば、俺への反射ダメージは3000増加する。耐えきれるはずがない)

 

キクを生かせば、キク以外のモンスターによる特攻によって戦闘ダメージを反射するだけで、オスカーのライフを削り切るルートが残る。この効果が通れば、アームドホラー・ドラゴンをもってしてもキクを除去することができない。

 

遊次視点では、このままバトルに突入すれば、バトルフェイズ中にキクが除去されるのは目に見えている。そのため、遊次は「妖義賊の連携陣」によって、アームドホラー・ドラゴンの効果を"使わせた"のだ。

 

瞬間、オスカーは見計らったように腕を振るい、黒きマントを翻す。

 

「アームドホラー・ドラゴンの効果発動!装備魔法を墓地へ送り、その数だけ相手のカードを墓地へ送る。ディアボリックキャノンと装備カード扱いのギルトンを墓地へ送り、舞蛇のキクとディオメデウスを葬る!」

 

これは相対した者同士でしか行えない、言葉なき会話。お互いに高い次元で思考の糸を張り巡らされているからこそ到達できる境地だ。

 

アームドホラー・ドラゴンが地響きのような咆哮をあげると、白骨の双砲と罠カードはぱらぱらと砂へと変わり、朽ち果てる。そして遊次の足元に黒き渦が広がり、その中から無数の"腕"がキクとディオメデウスの足を掴んだ。抵抗むなしく、2体のモンスターは奈落へと引きずり込まれる。

 

「墓地へ送られたディアボリックキャノンは効果により手札に戻る」

 

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【遊次】

LP3900 手札:3(カルメン)

 

①妖義賊-戴火のプロメテ ATK1000

②妖義賊-士君子のブラックバード ATK1400

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ

 

 

【オスカー】

LP8000 手札:6(ショックグリーヴ、マレフィックアイ、ディアボリックキャノン、アームドホラー・ヴィシャスサイクル)

 

①アームドホラー・アスクレマリウス ATK2400

②アームドホラー・ドラゴン ATK3500

 (バンシーヴェイル装備)

③妖義賊-深緑のロビン ATK1800

 

装備魔法:バンシーヴェイル

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「これでやっと、オスカーさんの妨害効果を乗り越えた!」

 

観客席の灯が、弾かれたように歓声を上げた。

遊次の手札は未だ潤沢。絶望的な状況から、綱渡りのようなプレイを繰り返し、ここまで辿り着いた。窮地を覆して立つその背中に、彼女は勝利への確かな希望を見ずにはいられなかった。

 

「俺はブラックバードとプロメテでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

2体のモンスターが眩い光の奔流と化し、地面に現れた黒い銀河の渦へと吸い込まれていく。

 

「エクシーズ召喚!再び現れろ!ランク4『妖義賊-怪盗ルパン』!」

 

■妖義賊-怪盗ルパン

 エクシーズモンスター

 ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500

 レベル4モンスター×2

 元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。

 ②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。

 自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、黒いハットを被りマントを纏った怪盗の姿。手には白い手袋、目元には白い仮面を着けている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「ルパンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドのモンスターを奪う!アームドホラー・ドラゴンは残念ながら装備魔法で守られてる。アスクレマリウスを奪う!」

 

瞬きする間もなく、怪盗ルパンがアスクレマリウスの背後を取る。翻った白マントが対象を包み隠し、次の刹那には、ルパンは既に遊次のフィールドへと戻っていた。そして恭しく白帽子を取り払うと、手品のようにアスクレマリウスが飛び出し、フィールドに着地する。

 

遊次は瞼を閉じ、己の深奥へと意識を沈める。一切の雑念を排したその心は、鏡の水面のように澄み渡っていた。来るべき激戦を前にして、彼を包む空気だけが不気味なほどに凪いでいる。

やがて遊次は、ゆっくりとその目を開いた。

 

「雲龍のリヘイのP効果発動!手札のカルメンを捨てて、墓地の『儀式の予告状』を除外する!」

 

頭上に控えたリヘイが、青い予告状を天高く放り投げる。刹那、フィールドには乱れ飛ぶ桜吹雪が巻き起こった。

 

「除外された『儀式の予告状』の効果発動!手札・フィールドからモンスターをリリースして、デッキから儀式召喚を行う!レベル7『アームドホラー・アスクレマリウス』をリリースして、儀式召喚を執り行う!」

 

アリシアの視線はフィールドに釘付けになっていた。フィールドに1つの灯篭が現れ、アスクレマリウスが光へと消えると、灯篭に炎が灯る。

 

「桜吹雪の舞う中に、現れたるは荒野の義賊!

儀式召喚!来い、俺の切り札!『妖義賊-ゴエモン』!」

 

 

■妖義賊-ゴエモン

 儀式モンスター

 レベル7/地/戦士/攻撃力2500 守備力2000

 「予告状」儀式魔法カードにより降臨。

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:元々の持ち主が相手となるカードが自分フィールドに存在する限り、

 自分フィールドのモンスターは相手の効果の対象にならない。

 ②:相手の墓地のモンスター、または魔法・罠カード1枚を対象として発動する。

 モンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、

 魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。

 ③:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをリリースして儀式召喚された場合、以下の効果を得る。

 元々の持ち主が相手となる自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動する。

 そのモンスターの元々の攻撃力分、自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力をアップする。

 

 

桜吹雪と共に現れたのは、大剣を携えた戦士のモンスター。メタリックなボディは鉄の装甲で覆われており、鎧には赤の紋様が描かれている。腰と背に太い注連縄を巻き、大見得を切るように左手を前に突き出すその姿は、まるで鋼鉄の歌舞伎役者だ。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/VBKj9UV

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

その堂々たる姿を見れば、遊次のデッキを知らない者でさえも一目でわかるだろう。そのモンスターが、彼の切り札であると。

 

「ゴエモンの効果発動!1ターンに1度、相手の墓地のカードを奪う!お前の墓地から、アームドホラー・ケルヴァラクを特殊召喚!」

 

再び、槍を携え甲冑に身に纏うアンデットが姿を現す。

 

「ケルヴァラクの効果発動!1ターンに1度、相手の墓地のカードを1枚除外する。アームドホラー・ディオメデウスを除外させてもらうぜ」

 

「さらにゴエモンの効果発動!相手から奪ったモンスターをリリースして儀式召喚している時、フィールドの相手から奪ったモンスターをリリースすることで、その元々の攻撃力分、俺の全てのモンスターの攻撃力を上げる!

ケルヴァラクをリリースして、俺のモンスターの攻撃力を2400アップさせる!」

 

ゴエモンの大剣が閃き、ケルヴァラクの躯体を黒い煙へと還す。噴き上がった闇は遊次のフィールドに重く垂れ込め、残されたモンスターたちへ纏わりついた。その瘴気が糧となるように、モンスター達の全身にどす黒い力が漲り始める。

 

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【遊次】

LP3900 手札:2

 

①妖義賊-怪盗ルパン ATK4500

②アームドホラー・アスクレマリウス ATK4800

③妖義賊-ゴエモン ATK4900

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ

 

 

【オスカー】

LP8000 手札:6(ショックグリーヴ、マレフィックアイ、ディアボリックキャノン、アームドホラー・ヴィシャスサイクル)

 

①アームドホラー・ドラゴン ATK3500

 (バンシーヴェイル装備)

②妖義賊-深緑のロビン ATK1800

 

装備魔法:バンシーヴェイル

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「やりやがった、遊次のヤロウ…!」

 

怜央の表情が弾け、抑えきれない歓喜が笑みとなって溢れ出す。盤上が雄弁に語る戦況は、誰の目にも明らかに、ゲームセットを告げていた。それは、遊次の勝利という形で。

 

「し、信じられない…。まさか、あのオスカー・ヴラッドウッドを…」

アリシアは呆然とフィールドを見つめ呟く。

 

「ウソだ…。オスカー様…ッ!!」

 

対照的に、美蘭の瞳は激しく揺れ動く。

現実から逃れるように、その視線は焦燥と共に宙を彷徨った。

 

(こんなところで、終わるのか…?僕達の、計画が…)

あまりにもあっけない幕引きに、ルーカスはフィールドを睨みつける。

 

観客達が色めき立つ中、ハイドだけは赤いシートに腰を据え、ただ不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

勝利を目前にしても、遊次の声色は凪のように静かだった。

そのまま、ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。

 

「世界ってさ、自分の想像なんか簡単に超えてくるんだよな。ここ最近、痛いほど思うぜ。

モンスターが暮らす世界があって。今も地球にバカデケぇ隕石が向かってて。それを止めるために、何万人も犠牲にしようとしてる奴らがいて」

 

遊次は真っ直ぐ、淡々と言葉をぶつける。

オスカーは依然、口をつぐんだままだ。その表情からは心の内を読み取れない。

 

「でも…何も知らなかった俺らが、そいつらを追い詰めてるんだ。

想像してなかっただろ、この光景を。でも、これが現実なんだよ。だからさ…」

 

「お前が言う"幻想"ってヤツも、この世界のどっかにあるかもしんねえだろ。

誰も犠牲にしない、最高の未来が」

 

鋭く突きつけられた指先が、盤上の結論を物語る。

それは遊次がこのデュエルで導き出した答えであり、揺るぎない勝利の宣言だった。

 

しかしオスカーは、ただ静かに首を振る。

 

「貴様には、現実など見えていない」

 

悠然と佇むその姿には、虚勢など微塵もない。

事実を淡々と告げるようなその重みに、遊次の瞳から確信の色が揺らぎ始めた。その疑念を自ら振り払うように、遊次が口火を切る。

 

「バトル!怪盗ルパンで、お前の場の深緑のロビンに攻撃!」

 

ルパンがシルクハットを指で弾き、音もなく跳躍する。空中から滑空するようにロビンへ接近すると、すれ違いざまに白手袋の掌打を胸元へ叩き込んだ。一拍遅れて衝撃が走り、ロビンの身体はガラスが割れるような音を立てて粉砕された。

 

オスカー LP8000 → 5300

 

「行くぜ!ゴエモンで、アームドホラー・ドラゴンに攻撃!」

 

ゴエモンは高く飛び上がり、桜嵐を纏った大剣がその背に掲げられる。

ゴエモンは重力を味方に、眼下のアームドホラー・ドラゴンへと急降下した。

迎え撃つ悪魔竜の顎から放たれたのは、全てを呑み込む漆黒の衝撃波。

 

桜を纏う刃と昇りゆく闇が正面から激突し、虚空で時間が停止したかのように拮抗する。

剣圧と衝撃が軋み合い、激しい火花を散らす中、ゴエモンの気合いが轟いた。

それはまるで、かつての苦き敗北を押し返すように。

 

力の均衡が崩れる。

桜の輝きが闇を強引に押し開き、勢いを取り戻した刃は衝撃波ごと竜の巨体を一刀両断した。

桜色の輝きと漆黒の霧が混ざり合い、爆発的なエネルギーとなって四方へ弾ける。

巻き起こった衝撃の奔流は、対面に立つオスカーの身体を容赦なく打ち据えた。

 

「ッ…墓地へ送られたバンシーヴェイルの効果発動。このカードを手札へ戻す」

オスカー LP5300 → 3900

 

オスカーのフィールドから、すべてのモンスターが一掃された。

だが、遊次の攻撃はまだ終わっていない。

わずかな静寂の後、遊次は前を見据え、最後の攻撃を宣言した。

 

「トドメだ!アスクレマリウスで、ダイレクトアタック!」

 

アスクレマリウスが杖を構える。あと一度の攻撃で、この勝負は決定する。

美蘭たちは、跳ねる心音と共に、祈るようにその攻撃を見つめる。

 

 

しかしオスカーはゆっくりと、手札の1枚のカードを表へと向けた。

 

 

「手札のアームドホラー・バルドヴァインの効果発動。相手の直接攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚し、手札・墓地から装備魔法を1枚装備する」

 

 

■アームドホラー・バルドヴァイン

 効果モンスター

 レベル6/闇/アンデット/攻撃力2100 守備力2700

 このカード名の、①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

 その後、自分の手札・墓地から装備魔法カード1枚を選び、このカードに装備する。

 ②:このカードが装備カードを装備している場合に発動できる。

 自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中から「アームドホラー」カード1枚を選んで手札に加える。

 残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。

 ③:「アームドホラー」モンスターが自分フィールドを離れる場合、自分のモンスターに装備された装備カードを任意の数だけ対象として発動できる。

 それらのカードを別の正しい対象となるモンスターに移し替える。

 

 

虚空より、古びた王冠を戴く骸の戦士が具現化する。王冠の下にあるのは、錆びついた黄金の髑髏を模した兜だ。とりわけ口元は、鉄格子のような縦のスリットが牙のごとく並び、硬質な威圧感を放っている。重厚な黒き鎧と、剥き出しになった肋骨。その深奥では、青白い怨念の雷が激しく明滅している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/DxOYwaI

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

その背へ、巨大な黒鉄の翼が装備される。バルドヴァインは岩のような籠手を嵌めた両腕を交差させ、呼応するように翼を堅く閉ざした。鋼の羽が幾重にも重なり、何者も寄せ付けぬ絶対の城塞となる。

 

「スティジアンウィングを装備したモンスターは戦闘で破壊されない」

 

「そんな…」

 

灯の視線が力なく足元へと滑り落ちる。

掴みかけたはずの光は幻のように消え、目の前には再び分厚い絶望が立ちはだかっていた。

これが、オスカーの言う「現実」だった。

 

「オスカーにとって、直接攻撃は最初から脅威じゃなかった。だからこそ、処理するのはダメージを反射するキクだけでよかったんだ」

イーサンは悔しさを滲ませ、戦況を分析する。

 

「ガッハッハ!そう来なくては面白くない!まだまだやれるだろう、オスカー君!」

 

沈痛な空気を引き裂くように、ハイドが勢いよく立ち上がる。

その顔には、世界をまたにかけた戦いでさえも愉しむ、捕食者のような笑みが張り付いていた。

 

「…バトルフェイズは終わりだ」

遊次は奥歯を噛み、悔しさを露わにしながらデュエルディスクに触れる。

 

「墓地の『妖義賊の隠し玉』の効果発動。除外されてる『ミスティックラン』魔法・罠カード1枚をセットできる。『妖義賊の下準備』をセット」

 

「さらに俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

その声からは、戦意が剥がれ落ちているように聞こえた。

 

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【遊次】

LP3900 手札:1

 

①妖義賊-怪盗ルパン ATK4500

②アームドホラー・アスクレマリウス ATK4800

③妖義賊-ゴエモン ATK4900

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ

伏せカード:3(妖義賊の下準備)

 

【オスカー】

LP3900 手札:6(バンシーヴェイル、ショックグリーヴ、マレフィックアイ、アームドホラー・ヴィシャスサイクル、ディアボリックキャノン)

 

①アームドホラー・バルドヴァイン DEF2700

 (スティジアンウィング装備)

 

装備魔法:スティジアンウィング

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「よかった…。オスカー様が負けるわけないモンね!」

美蘭は大きく息を吐き、水を得た魚のように活力を取り戻す。

 

(前はあっさり勝ったのに、まさか兄さんがここまで追い詰められるなんて…)

 

しかし隣に立つルーカスは険しい表情でフィールドを見つめる。

わずか数週間前に敗北を喫した遊次が、オスカーをあと1歩のところまで追い詰めている。

その理由がルーカスにはわからなかった。

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

俯く遊次へ一瞥もくれることなく、オスカーは己の盤面だけを見据えている。

淀みない動作で指を掛け、デッキトップから鋭くカードを引き抜いた。

 

「装備魔法『ホラーアームズ・ショックグリーヴ』をバルドヴァインに装備」

 

バルドヴァインの右足を、節くれ立った巨大な脊椎を思わせる白骨の装甲が螺旋状に包み込む。

足首には幾重にも重なり合った分厚い頭蓋の破片が噛み合い、踵からは杭のように太い大腿骨の突起が突き出している。

 

「ショックグリーヴの効果発動。相手の魔法・罠カードを1枚破壊し、カードを1枚ドローする。その伏せカードを破壊」

 

伏せカード3枚の内、1枚は妖義賊の下準備。その位置はわかっている。オスカーは内訳がわかっていない2枚の内、1枚を指定する。

 

「速攻魔法『妖義賊の早業』発動!Pゾーンの妖義賊を1体特殊召喚できる!来い、美巧のアカホシ!」

 

鳳凰の頭を持つ赤い着物を纏ったモンスターが、遊次の頭上からフィールドへと降り立つ。

 

 

「墓地のアームドホラー・メラブエルの効果発動。フィールドに装備魔法を装備したアームドホラーが存在する時、1ターンに1度墓地より蘇る」

 

■アームドホラー・メラブエル

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1500 守備力1500

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。

 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を手札に加える。

 ②:墓地の「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。

 (このカードが装備カードを装備している場合、

 「アームドホラー」魔法・罠カードまたは「ホラーアームズ」カード1枚も対象にできる。)

 そのカードを手札に加える。

 ③:自分フィールドに装備カードを装備したアンデット族モンスターが存在する場合に発動できる。

 このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

現れたモンスターは、古びた法衣をまとった髑髏の魔導士だ。頭部は仮面のように半分が金属で覆われ、空洞の眼窩に青白い光が燃えている。右手は符文を描いた光輪を生み出し、左手で小さな星屑のような粒子を操る。胸元には骨のペンダントが吊り下がり、布地のあちこちには天体を思わせる紋様が縫い込まれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RFhvQr5

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

「手札の装備魔法『ホラーアームズ・マレフィックアイ』をメラブエルに装備」

 

メラブエルの片眼に装飾具が深く食い込む。黒鉄で鋳造された環は、まるで呪縛の鎖の一部のように眼窩を覆い、その中央に埋め込まれた宝玉が不気味な赤黒い光を脈打たせている。

 

「マレフィックアイの効果発動。1ターンに1度、相手の表側のカード効果をターン終了時まで無効にする。永続魔法『妖義賊の連携陣』を無効にする」

 

メラブエルの義眼が赤く光ると、遊次のフィールドの永続魔法は石化し、効力を失う。

 

「アームドホラー・メラブエルの効果発動。このカードが装備魔法を装備している時、墓地のアームドホラー魔法・罠カード1枚を手札に加えることができる。対象はアームドホラー・ネザーリバーブ」

 

指定された魔法カードは、墓地からモンスターを特殊召喚できるカードだ。

 

(あの魔法カードで墓地のペルフェゴルが特殊召喚されれば、その効果でどっちみち俺の伏せカードは破壊される。だったら…)

 

「罠カード発動!『妖義賊の影縛り』!相手がフィールドのカード効果を発動した時、自分フィールドの同じ種類のカード…アカホシを墓地へ送って、メラブエルの効果を無効にして墓地へ送る!その後、俺のフィールドに特殊召喚する!」

 

 

■妖義賊の影縛り

 通常罠

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手がフィールドカード効果を発動した場合、そのカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)の

 自分のカード1枚をフィールドから墓地に送って発動できる。その効果を無効にして墓地へ送る。

 その後、そのカードがモンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、

 魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。

 無効にした魔法カードがPカードだった場合、自分のPゾーンにセットする。

 

 

アカホシが闇に飲まれ、消え失せる。

その足元から伸びた三筋の影がメラブエルへと迫り、瞬く間にその身を縛り上げた。影は強烈な力で獲物を引き寄せ、遊次のフィールドへと叩きつける。拘束されたメラブエルは為す術なく膝をつき、防戦の構えを取らされた。

 

しかし、これで遊次の妨害手段は消え去った。

遊次は険しい表情でフィールドを見つめ続ける。

 

「アームドホラー・バルドヴァインの効果発動。装備カードを装備している場合、デッキの上からカードを3枚めくり、その中から『アームドホラー』カード1枚を手札に加える。スティジアンウィングを墓地へ送り効果を使用」

 

オスカーはデッキの上から3枚をめくり表側へと向ける。遊次は眼前にソリッドヴィジョンとして浮かび上がったその3枚のカード情報に目を凝らす。

 

「俺はアームドホラー・ガルヴァリアスを手札に加え、残りの2枚をデッキの一番下に戻す」

 

遊次はデュエルディスクから浮かび上がるカード情報を見つめ、目を細める。

 

「魔法カード『アームドホラー・ヴィシャスサイクル』発動。手札の装備魔法を3枚まで墓地へ送り、その数だけドローする」

 

■アームドホラー・ヴィシャスサイクル

 通常魔法

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:手札の装備魔法カードを3枚までデッキに戻して発動できる。

 戻した枚数だけ自分はデッキからドローする。

 ②:このカードを墓地から除外し、自分の除外状態の「ホラーアームズ」装備魔法カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを手札に加える。

 

 

「俺は手札のマレフィックアイ、バンシーヴェイルを墓地へ送り、2枚ドローする」

 

この瞬間、遊次は一瞬の間を置いた後、険しい表情でセットカードを発動した。

 

「…罠カード『妖義賊の下準備』発動。相手の墓地の魔法・罠カード1枚を奪ってセットする。お前の墓地のバンシーヴェイルを奪う。さらにその後、デッキから『爆炎の予告状』を墓地に送る」

 

 

■妖義賊の下準備

 通常罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。

 デッキから「予告状」カード1枚を墓地へ送り、

 相手の墓地から魔法・罠カード1枚を選び自分フィールドにセットする。

 ②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「ミスティックラン」モンスター3体を選んで発動できる。

 選んだカードをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。

 この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

 

バンシーヴェイルは遊次の場へとセットされる。

オスカーは目を細めその意図を探るが、その視線の先に立つ遊次は顔を伏せ、戦意を失っているようにしか見えなかった。

 

「…アームドホラー・バルドヴァインを攻撃表示へと変更」

 

バルドヴァインは軋んだ鉄の音を鳴らしながら拳を構え、臨戦態勢に入る。

 

フィールドが水を打ったように静まり返る。

だがそれは間もなく顕現する『絶望』への露払いだ。

肌を刺すような気配に、遊次は息を呑んで身構えた。

 

「墓地のアームドホラー・ドラゴンの効果を発動。墓地のアンデット族3体と装備魔法3枚を除外することで、このカードを融合召喚扱いとして特殊召喚する!」

 

オスカーは墓地よりエタナフォラス、ケルヴァラク、ファイノメネウスの3体と、デモンズコア、ネクロメイル、インファーナルクローの3枚を掴み、一気に除外する。

オスカーはこのために、あえて3枚の装備魔法を狡猾にも墓地に残していたのだ。

 

「融合召喚!再び現れよ、アームドホラー・ドラゴン!」

 

黒い骨が剥き出しとなった悪魔のようなアンデットのドラゴンが、再び眼前に現れる。

これこそが死の淵より蘇るアンデットの特性。

やっとの思いで倒したモンスターは、あっけなく遊次の前にその身を晒した。

 

「アームドホラー・ドラゴンの効果発動。融合召喚時、デッキ・手札・墓地から装備魔法を3枚まで装備する。墓地のスティジアンウィングと手札のマレフィックアイ、ディアボリックキャノンを装備。この効果に相手はチェーンできない」

 

アームドホラー・ドラゴンの背に黒霧の魔女が現れ、黒鉄の翼が広がり、眼には赤き宝玉が埋め込まれる。フィールドの装備魔法の合計は4枚。

 

 

「どうすんだ遊次…!このままじゃテメェは…」

 

観客席に立つ怜央は奥歯を噛み、その顔に焦りを映す。

これから起きることは明白であった。

 

「アームドホラー・ドラゴンの効果を発動。フィールドの装備魔法を任意の数墓地へ送り、その数だけ相手のカードを墓地へ送る。ショックグリーヴ、マレフィックアイ、ディアボリックキャノンを墓地へ送り、貴様のフィールドのゴエモン、アスクレマリウス、ルパンを葬る」

 

ゴエモンの効果により、自分の場に相手から奪ったカードがあれば、フィールドのモンスターは対象耐性を持つ。

しかしアームドホラー・ドラゴンの効果は対象を取らない効果だ。

 

バルドヴァインとアームドホラー・ドラゴンに装備されていた武具は弾け、砂へと変わる。遊次の足元に黒き渦が広がり、その中から無数の"腕"が3体のモンスターの足を掴み、あっけなく奈落へと引きずり込まれた。

 

「墓地へ送られた3枚の装備魔法の効果発動。1ターンに1度、墓地へ送られた場合に手札へと戻る」

 

ルーカスは口元を歪ませる。

その表情からは先ほどまでの不安は消え失せていた。

 

「さすが兄さんだ。スティジアンウィングを残したことで、アームドホラー・ドラゴンの対象耐性は維持されてる。神楽遊次のお得意の、手札から発動して相手モンスターを奪うカードもこれじゃ無力だ」

 

これまでの戦いで、オスカーも遊次の手の内を知り尽くしている。手札から発動しコントロールを奪うモンスターを警戒するのは当然だった。

 

「手札からホラーアームズ・ディアボリックキャノンをアームドホラー・ドラゴンへ装備。攻撃力は1000上昇し、2回の攻撃が可能となる」

 

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【遊次】

LP3900 手札:1

 

①アームドホラー・メラブエル DEF1500

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣(無効)

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ

伏せカード:ホラーアームズ・バンシーヴェイル

 

【オスカー】

LP3900 手札:5(ガルヴァリアス、ショックグリーヴ)

 

①アームドホラー・バルドヴァイン ATK2100

②アームドホラー・ドラゴン ATK4500

 (スティジアンウィング、ディアボリックキャノン装備)

 

装備魔法:スティジアンウィング、ディアボリックキャノン

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支えを失ったように、遊次が膝をつく。

焦点の合わぬ瞳はただ地面を見つめ、力なく垂れたその背中は震え続けていた。

灯たちの顔から、サーッと血の気が引いていく。

 

オスカーは何も言わず、遊次を見下ろし続ける。

 

「これが…現実だってのかよ……!」

 

遊次の拳が、無造作に地面を叩いた。

その背中から、戦意という火が消え失せている。

誰よりも敗北を拒んできた男が吐いた、絶望の言葉。

それが何よりも雄弁に、この勝負の終わりを告げていた。

 

「…クソッ…!!」

 

ドン、と鈍い音が響く。

怜央は前の座席を思い切り殴りつけ、奥歯を噛み締めた。

 

 

「バトル。アームドホラー・ドラゴンで、アームドホラー・メラブエルに攻撃」

 

オスカーは勝利の確信に浸ることなどなく、冷徹に宣言する。

 

アームドホラー・ドラゴンが、凍てつく霊気の奔流を吐き出した。

眼前に迫る、死の香り。その冷気を肌で感じた刹那、遊次の思考の淵から、決して消えることのない『戦う理由』が濁流となって噴き出した。

 

 

セカンド・コラプスが実行されれば、何もかも壊れちまうかもしれない。

 

俺が育ったドミノタウンも。

孤独だったチームの子供達が、一緒に暮らす幸せな家も。

 

マルコスの思い出が詰まった学校も。

空蝉さんが守ろうとした森も。

また立ち上がろうとしてるシャンリンの夢も。

 

ただ生きたいと願った、譲の命も。

 

 

メラブエルは霊気の濁流にのまれ、フィールドから消え失せる。

 

「ディアボリックキャノンの効果発動。装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、デッキからモンスターを特殊召喚する。来い、アームドホラー・テューロバス」

 

 

■アームドホラー・テューロバス

 効果モンスター

 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1700 守備力1000

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「アームドホラー」モンスター1体を手札に加える。

 ②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。

 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を墓地へ送る。

 ③:自分・相手メインフェイズに発動できる。

 「アームドホラー」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分のフィールドから選んで墓地へ送り、

 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

 

現れたのは、朽ちた軍服を纏う骸骨の海賊。黒く焦げた外套の下からは、海藻のようにほつれた布が層を成して垂れ下がっている。右腕には古びた銃を握り、銃身の表面には青く光る宝石が埋め込まれている。胸骨の隙間や眼窩からは冷たい蒼光が漏れ、腰には巨大な錨を鎖で吊るしている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/AEcKi6Q

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「テューロバスが特殊召喚した時、デッキより『アームドホラー』モンスターを手札に加える。アームドホラー・シルヴォラスを手札へ加える」

 

 

守るべき壁は消え失せ、オスカーのモンスターと遊次の間を阻むものはなくなった。

 

眼前には、絶望そのものを体現した巨竜。

アームドホラー・ドラゴンは感情のない虚ろな瞳で、無防備な獲物を睥睨する。

膝をつく遊次は、ただ力なく首を巡らせた。

焦点の合わぬ瞳で、頭上に迫る破壊の化身をぼんやりと見つめ返すことしかできない。

 

「ディアボリックキャノンを装備したモンスターは2度の攻撃が可能。アームドホラー・ドラゴンで、神楽遊次にダイレクトアタック」

 

それは、無慈悲なる宣言。

オスカーは最後の瞬間まで決して驕ることなく、命令を下す。

 

アームドホラー・ドラゴンが、双肩の砲門――ディアボリックキャノンを遊次へと向けた。

 

 

遊次は俯き、遊次は自分に言い聞かせるように呟く。

 

「俺は背負ったんだ…あいつらの願いを。

たとえ何があっても、壊させやしない。そう誓ったんだ」

 

その声は誰にも届くことはない。

 

深淵のような闇のエネルギーが、一点に収束していく。

 

ホールの陰でそれを見つめるジェンは、ただ終わりの時を待つ。

美蘭はその圧倒的な力に、恍惚の眼差しを向ける。

ルーカスは世界からまた一つ"過ち"が正されることに、口元を歪める。

 

アームドホラー・ドラゴンは地獄からの呼び声が如く、低く咆哮する。

それはまさに、終戦の合図。

 

目を覆いたくなるような"現実"に、灯は思わず目を瞑る。

イーサンは縋るような眼差しで、フィールドを見つめ続ける。

怜央は、諦めにも近い言葉を口にした遊次に、怒りを向ける。

 

凝縮された破滅の光が、今まさに放たれんとする刹那。

遊次の口が、微かに動いた。

 

「全部、守るんだ。何一つ、犠牲にさせやしない」

 

オスカーの双眸が、僅かに見開かれる。

異変は明らかだった。

 

死を前に絶望で塗り潰されていたはずの遊次の瞳。

そこには今、揺るぎない闘志が灯っていたのだ。

 

「だから…力を貸してくれ、譲」

 

遊次はそう呟き、手札のカードを1枚、表へ向けた。

 

「手札の『ビックリボー』の効果を発動!

相手モンスターの直接攻撃時、このカードと墓地のモンスター1体を特殊召喚して、2体のモンスターでシンクロ召喚を行う!」

 

 

■ビックリボー

 ペンデュラムモンスター/チューナー

 レベル1/光/悪魔/攻撃力100 守備力100 スケール1

 【P効果】

 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドのモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。

 自分のデッキの上から5枚めくり、その中からモンスター1体を選んでフィールドに特殊召喚する。

 その後、そのモンスターの元々の攻撃力を戦闘を行う自分モンスターの攻撃力に加える。

 【モンスター効果】

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。

 手札のこのカードと自分の手札・墓地・EXデッキの表側のモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 その後、このカードとこのカードの効果で特殊召喚したモンスターのみを素材としてS召喚を行い、

 そのSモンスターに攻撃対象を移し替える。

 

 

「なんだと…」

常に冷徹だったオスカーの唇から、驚きが零れ落ちる。

 

聞こえてくるはずのない抵抗の意思。

それを耳にした灯は、重い頭を強引に引き上げた。

 

「俺はビックリボーと、墓地のゴエモンを特殊召喚!」

 

殺伐としたフィールドに、突如として星印の描かれた木箱が出現する。

ゆっくりと蓋が開くと、バネのきしむ音と共に、茶色い毛玉のような悪魔が飛び出した。

逆立った毛並みと、ギョロリとした金色の瞳。

緑色の鋭い爪を構え、小さな体で敵を威嚇する。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/v7osMuG

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直後、その隣へさらに巨大な箱が落下した。

ビヨォン、と間の抜けた音が響き、バネ仕掛けの勢いで中身が弾け飛ぶ。

飛び出してきたのは、墓地に眠っていたはずの遊次の切り札――ゴエモンだった。

 

遊次がゆらりと立ち上がる。

先刻までの悲壮感はどこへやら、その顔からは弱さなど微塵も感じられない。

彼は不敵な笑みを浮かべ、堂々と言い放った。

 

「騙して悪かったな。俺は最初から一つも諦めちゃいない」

 

「…先程の言葉も狂言か。まさか、そこまでプライドを捨てているとは思うまい」

 

オスカーの声には、呆れと僅かな感嘆が混じっていた。

 

地に這いつくばり、震える声で吐いた「これが現実か」という弱音。

仲間である灯たちさえも欺いたその言葉は、遊次の策略。

確実に相手に直接攻撃を宣言させるための、狡猾な罠だった。

 

「何言ってんだ。勝利にプライドがあるから、手段を選ばねえんだよ」

 

窮地すらも楽しむかのような、底抜けに明るい表情。

その顔を見た瞬間、灯たちの瞳に再び力が宿った。

重く垂れ込めていた敗北の予感は霧散し、場に満ちる空気が一変する。

 

「ビックリボー…これは俺のライバルから譲り受けた、魂のカードだ!

コイツがいれば、俺は負けない!」

 

「見せてやる!限界を超えた、俺の新しい力!」

 

遊次の右腕が、天を衝く勢いで振り上げられた。

全員の視線が集まる。

 

 

「レベル7『妖義賊-ゴエモン』に、レベル1『ビックリボー』をチューニング!」

 

号令と共に、二体のモンスターが高く飛び上がる。

小さな悪魔は瞬く間にその輪郭を溶かし、鮮烈な光の輪へと変貌した。

その円環の中央を、ゴエモンが一直線に突き抜ける。

その体は七つの輝きとなり、直列に並び立った。

 

「暗雲漂う戦場に、現れたるは天空の義賊!

蒼天の頂へ翔け上がり、絶望を奪い去れ!」

 

口上を唱え終わると、フィールド全体がホワイトアウトした。

その光の中から、一筋の七色の光が螺旋を描き、ホールの天井へと舞い上がってゆく。

そして光は弾け、降り注ぐ光の破片の中、その"騎士"は姿を現した。

 

「シンクロ召喚!光臨せよ!レベル8!

『妖義賊-虹翼のゴエモン・スカイ』!」

 

全身を包むのは、鏡のように研ぎ澄まされた白銀の重装甲。

背には幾重にも重なる翼が広げられ、その一枚一枚がプリズムのように虹色の輝きを放っている。

本来のゴエモンに刻まれた赤き紋様は蒼色に変わっている。

右腕には身の丈を超える巨大な円錐の槍。

鋭く光る紅蓮の瞳が、眼下のオスカーを射抜く。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/S3EgA5y

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

ゴエモン・スカイは虹色の翼をはためかせ、遊次の頭上で静止した。

その威容は、この場の誰をも圧倒するほどに神々しい。

 

「これが…新しいゴエモンの姿…」

灯は瞬きも忘れ、その白銀の騎士に目を奪われていた。

 

オスカーに敗れ、それでも遊次が再起を誓ったあの日。

ドミノタウンの人々の想いを受け止め、前を向いた時にこのカードは生まれた。

その誕生の瞬間を、灯たちは間近で目撃している。

 

あの時、肌で感じた「運命」という不確かな予感。

それが今、確かな実像を結び、眼前に君臨していた。

 

 

「ゴエモン・スカイの効果発動!このカードがS召喚に成功した時、相手の魔法・罠と、攻撃表示モンスターを全部奪う!」

 

「なんだと……!」

 

 

■妖義賊-虹翼のゴエモン・スカイ

 シンクロモンスター

 レベル8/光/戦士/攻撃力3100 守備力2600

 チューナー+「妖義賊-ゴエモン」

 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがS召喚した場合に発動できる。相手フィールドの全ての攻撃表示モンスターのコントロールを得て、全ての魔法・罠カードを自分フィールドに置く。

 ②:フィールドの元々の持ち主が相手となるモンスターを任意の数リリースして発動できる。

 このカードはターン終了時まで、攻撃力が墓地に送ったモンスターの元々の攻撃力の合計分アップし、通常の攻撃に加えて、墓地へ送ったモンスターの数だけ攻撃できる。

 ③:自分・相手ターンに元々の持ち主が相手となる自分フィールドの魔法・罠カード1枚を墓地に送って発動できる。

 このターン、自分モンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

 

耳を疑うような、驚異的な能力。

だが、オスカーは思考を停滞させはしない。

マントを激しく翻し、最後の抵抗を見せる。

 

「アームドホラー・バルドヴァインの効果発動!アームドホラーが自分フィールドを離れる場合、フィールドの装備魔法を、他のモンスターに移し替える!アームドホラー・ドラゴンに装備された2枚のカードを、バルドヴァイン自身へ装備させる!」

 

それは今後起こることを1秒にも満たない時間でシミュレーションした結果、導き出された解。

オスカーは装備魔法をバルドヴァインへ移し替えることで、遊次の手に渡ったアームドホラー・ドラゴンから耐性を奪い、極限までその力を弱めたのだ。

 

アームドホラー・ドラゴンの巨躯を覆っていた白骨の砲身と黒鉄の翼が、音もなく粒子へと分解された。

それらは流体のようにバルドヴァインへと滑り込み、即座にその身体へと装着される。

 

「チェーン1のゴエモン・スカイの効果!お前の魔法・罠とモンスターを奪う!」

 

ゴエモン・スカイが白銀の槍を高く掲げると、虹色の波動が爆発的に広がった。

強烈な輝きがオスカーのモンスターを包み込み、3体は地響きのような低い呻き声を上げる。視界を埋め尽くす極光に、オスカーは思わず片手で顔を覆った。

 

やがて光が霧散し、オスカーはゆっくりと目を開く。

そこには、ゴエモン・スカイの両脇を固めるように並び立つ、アームドホラー・ドラゴンとバルドヴァインの姿があった。

遊次のフィールドで、かつての主を見据えている。

 

-------------------------------------------------

【遊次】

LP3900 手札:0

 

①妖義賊-虹翼のゴエモン・スカイ ATK3100

②アームドホラー・バルドヴァイン ATK3100

 (スティジアンウィング、ディアボリックキャノン装備)

③アームドホラー・ドラゴン ATK3500

④アームドホラー・テューロバス ATK1700

 

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊

永続魔法:妖義賊の連携陣(無効)

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ

伏せカード:ホラーアームズ・バンシーヴェイル

装備魔法:スティジアンウィング、ディアボリックキャノン

 

【オスカー】

LP3900 手札:6(ガルヴァリアス、シルヴォラス、ショックグリーヴ)

--------------------------------------------------

 

「ありえない…ありえないだろ、こんなの!!」

 

つい先刻まで浮かべていた余裕の笑みは、瞬時に剥がれ落ちた。

ルーカスは引きつった顔で、目の前の理不尽を拒絶するように叫ぶ。

美蘭は呆気にとられ、言葉を失ったまま唇を震わせ、ジェンもまた、石像のように硬直していた。

 

「ガッハッハッハ!なんと規格外の力!君達はどれほど私を楽しませれば気が済む!」

 

ハイドは高揚のあまり、椅子を蹴る勢いで立ち上がった。

大きく広げた両腕は、この予測不能な事態を歓迎しているかのようだ。

 

 

数秒の沈黙を経て、オスカーはハッと息を呑んだ。

遊次を見据えるその目に、戦慄が走る。

 

「ディオメデウスの除外、バンシーヴェイルの奪取。全ては、このためだったのか…」

 

見開かれた双眸は、かつてないほど激しく揺らいでいた。

常に冷徹だった男が見せた、初めての動揺。

だがその揺らぎの奥底には、確かに静かな昂ぶりが滲んでいた。

 

 

遊次は無言のまま、力強く一度だけ頷く。

それを受け、オスカーは顔を伏せた。

サラリと落ちた長い黒髪が、彼の表情を闇の中へ隠してしまう。

 

彼は反芻していた。

前のターン、遊次が見せた一連のプレイを。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ケルヴァラクの効果発動!1ターンに1度、相手の墓地のカードを1枚除外する。

アームドホラー・ディオメデウスを除外させてもらうぜ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

遊次はオスカーから奪ったケルヴァラクによって、墓地のディオメデウスを除外した。

あれがなければ、ディオメデウスは自身の効果で墓地から融合召喚され、再び無効効果を使えるようになっていた。

そうなれば、遊次の手札のビックリボーは無効化され、とっくにデュエルは終焉を迎えていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「…罠カード『妖義賊の下準備』発動。相手の墓地の魔法・罠カード1枚を奪ってセットする。お前の墓地のバンシーヴェイルを奪う」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

遊次はオスカーの手札から「相手の効果を受けない」効果を付与する装備魔法「バンシーヴェイル」を奪った。

もし今そのカードがアームドホラー・ドラゴンに装備されていれば、ゴエモン・スカイが現れてもその効果を受けず、アームドホラー・ドラゴンはオスカーのフィールドに留まっていただろう。

 

 

前のターンから、遊次は仕掛けていたのだ。

確実にゴエモン・スカイの効果を通すための布石を。

 

オスカーが再び顔を上げる。

その表情は、遊次にしか伺い知れない。

 

「…面白ぇよな、デュエルってのは。何が起きるか、最後までわからねえ」

遊次はふっと力を抜き、優しく笑った。

 

 

「そうだろ、オスカー」

遊次が真っ直ぐと見据えるその視線の先。

 

 

オスカーは、高揚した表情で口角を上げていた。

まるで、少年のように。

 

 

対峙する両者だけが、今、確かに"熱"を共有している。

遊次の中で、ずっと引っかかっていた違和感が腑に落ちる。

 

(罠カード『アームドホラー・デスラトル』により、その効果を発動すればギルトンは我がモンスターの装備カードとなる。どうする、神楽遊次)

 

前のターン、オスカーは問いかけた。

世界の命運を懸けた戦いでありながら、まるで何も懸っていないかのような軽やかさで。

あれは、ただ純粋にこのデュエルを楽しんでいるが故の、混じりけのない言葉だったのだ。

 

冷徹な仮面の下で、オスカーの情熱は確かに脈打っていた。

デュエルは武器であり、戦いの道具だ。

だが同時に「ゲーム」でもあるという特異性が、この矛盾した感情を生み出す。

 

金を、命を、あるいは世界の明日を懸けた戦い。

その重圧と恐怖の前に、多くの者は純粋な楽しみなど忘却してしまう。

 

だが、ごく稀にその本能を抑えきれない人種が存在する。

 

神楽遊次とオスカー・ヴラッドウッド。

決して交わらぬ思想を持つ二人が、唯一共有していたもの。

 

それは「デュエルを楽しむ心」だった。

 

 

「デュエルを続けようぜ、オスカー。

俺はとことん、お前とぶつかり合いたい」

 

遊次の瞳が、射抜くようにオスカーを捉える。

 

「いいだろう。完膚なきまで叩きのめしてくれる」

 

向けられた闘志に、オスカーは不敵な笑みを浮かべたまま、応えた。

 

 

 

第76話「譲り受けた魂」 完

 

 

 

 

 

 

新たな切り札『ゴエモン・スカイ』がもたらした逆転の兆し。だが、勝利へと手を伸ばす遊次を、オスカーの冷酷な意志が強く引き留める。

 

オスカーは全ての予想を覆し、未知なる融合モンスターを盤面へと呼び出す。玉座に鎮座し、悪魔の駒を弄ぶ巨大なモンスター。盤面を支配する統治者として君臨するそれは、相対する者を"詰む"存在だった。

 

それでも、遊次の瞳は一条の光となる道筋を真っ直ぐに捉えている。しかしその胸の奥底には、一抹の不安が渦巻いていた。

 

彼が最後に信じるものは何か。

世界の行く末を懸けた死闘が、ついに決着の刻を迎える。

 

「俺は、誰も犠牲にしない未来があるって信じてる!

足が動かねえってんなら、俺達が、お前らも引き連れて前に進む!」

 

 

次回 第77話「『信じる』」

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