遊戯王Next   作:湯(遊戯王SS投稿者)

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第83話:宣戦布告

禁忌に触れ、ネフカ王国の暴君「アスラナク」に命を狙われる少女「トト」。彼女を抱きかかえ、遊次達は兵士から逃げるも、このままでは追っ手を振り払えない。

 

遊次達を守るためにイーサンは一人身を翻し、アザン軍の副指揮官「セヘジュ」と対峙。強制オースデュエルによって兵士達の動きを止めるよう契約を突き付ける。しかし敗北すればイーサンは捕らえられ、遊次達が捕えられるのも時間の問題となる。

 

 

陽の差さない、ひんやりと湿った空気が淀む裏路地。不意に、石畳の一部を切り取るように嵌め込まれた鉄の蓋が、鈍い摩擦音を立ててズラリと動いた。

 

わずかに開いた真っ暗な隙間から、手が突き出される。指が石の縁に深く食い込み、力任せに体を引き上げた。暗渠から這い出た遊次は、その腕の中にトトをしっかりと抱え込んでいる。遊次が周囲の気配を警戒しながら路地へと身を乗り出す。それを合図にするように、ぽっかりと開いた穴の底から、灯、怜央、アリシア、オスカーが息を殺して次々と地上へ躍り出た。

 

遊次は肩で荒く息をしながら、開け放たれたマンホールの暗がりを見下ろした。底の底から、硬い金属同士が擦れ合うような、耳障りな鎧の音が反響しながら這い上がってくる。迫る追っ手の気配に顔を強張らせた遊次は、腕の中に抱えたトトへと視線を落とした。

 

「どこに隠れればいい!?」

 

「市場の方へ出てください!」

トトが真っ直ぐに指し示した方角へと、遊次たちは弾かれたように駆け出した。

 

石畳を蹴り、薄暗い路地を全力で駆け抜ける。やがて視界が急に開けると、そこには先ほど通り抜けたばかりの、雑多な市場の光景が広がっていた。市場は無数の人々でごった返している。

 

「あちらへ向かってください!裏路地があります!」

 

トトの指す方へ、遊次たちは密集する人垣を強引にかき分けて進む。やがて背後から、ガチャガチャと鎧が打ち合う音や野太い怒声が追いすがってきた。突然の喧騒に、周囲の者たちが怪訝そうに振り返る。兵士たちは通行人を乱暴に突き飛ばすが、分厚い人波に視界を塞がれて思うように進めない。遊次たちの姿を見失いかけ、苛立ちを露わにして群衆を押しのけ続けている。

 

人を縫って素早く進んだ遊次たちの前方に、露店の影に隠れた細い路地が現れた。

 

露店の魚屋に立つ女将は、突然現れた一行の姿に目を見開く。異国の若者に抱えられる見覚えのある少女の姿に気づき、彼女は思わず口を突いて零す。

 

「トト…!」

そして遊次達に視線を移すと、状況を探るように怪訝そうにすっと目を細めた。直後、周囲の人々を乱暴に押しのけながら進む兵士たちの怒声が響く。ただならぬ様子で後を追う軍の姿に、魚屋の女将は唖然として表情を強張らせる。

 

やがて兵士たちが通り過ぎると、彼女は何かを深く考え込むように押し黙った。そしてゆっくりと顔を向け、喧騒が続く市場の先を遠く静かに見つめていた。

 

 

「あそこです!あの路地を進むと穀物の計量所がありますから、そこで私を降ろしてください!」

 

トトの声に遊次は短く頷いた。後方で兵士たちが足止めを食らっている隙を突き、遊次たちは路地へと一気に駆け込んだ。

 

路地を抜けると、奥に緑の見える広々とした場所に出た。そこには大きな作業所らしき建物が建っている。これがトトの言っていた穀物計量所なのだろう。遊次が腕の中からトトを降ろすと、彼女は一目散に建物の外周をぐるりと回り込んだ。遊次たちも急いでその後を追う。裏手へ回ると、トトは建物の足元を指差した。

 

「ここに入ってください!」

トトが指差した先を見る。建物を支える石の土台部分、その石組みの一部が抜け落ちていた。立てかけられた板や無造作に置かれた麻袋の陰に隠れるようにして、横に細長い小さな穴が空いている。高さはわずか30センチほどしかない。

 

「こ、ここに…?」

灯は思わずぽつりと漏らした。小柄な子供であるトトなら簡単に入り込めるだろうが、大人が入るとなれば腹ばいになって無理やり体をねじ込まなければならない。そのあまりの狭さに、灯はわずかに躊躇してしまう。

 

遊次が身を屈めてその暗がりを覗き込むと、湿った土と石の匂いが鼻をついた。内部は石と梁が剥き出しになった歪な空間だ。奥行きは計量所の床下を這うように10メートルほど先まで真っ直ぐに伸びていた。

 

灯がためらっている間にも、トトは迷うことなく地面に伏せ、狭い穴の中へと潜り込んでいく。遊次と灯が短く視線を交わすと、遊次は灯の背中を軽く押した。少しでも奥へ入った方が、兵士の手から逃れやすいからだ。灯は意を決して屈み込み、腹ばいになって暗い穴の中へと無理やり体をねじ込んでいく。決して余裕のある空間ではなかったが、細身の彼女は内壁に体をぶつけることなく、ほふく前進の要領でゆっくりと奥へ這い進んでいった。

 

灯の後に続き、アリシア、怜央、遊次、そしてオスカーの順で暗がりへと身を滑り込ませていく。女性であるアリシアや小柄な怜央はともかく、体格の良い遊次とオスカーは、少し身を進めるだけでも全身に軋むような痛みが走る。それでも今は、苦痛に声を上げることなど許される状況ではない。6人はどうにか狭い空洞の中に全員の体を収めると、じっと息を殺して暗闇に潜んだ。

 

「この路地裏に入ったらしい!探せ!」

 

市場の方角から、血眼になって自分たちを捜す兵士たちの怒声が響いてくる。足元に開いたこの小さな穴など、追っ手も手始めに探りを入れるような場所ではない。だが、裏路地へ逃げ込んだこと自体は気付かれている以上、ここが見つかるのも時間の問題だった。

 

(頼むぜ、イーサン…!)

遊次は暗闇の中で祈るように目を閉じる。皆を守るため、独り地下道に残って戦うイーサンへと思いを馳せた。

 

 

 

 

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【セヘジュ】

LP7200 手札:1

 

①ペインチャージャー・アレクト ATK1500

(ペインカウンター:17)

②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100

(ペインカウンター:18)

③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600

(ペインカウンター:19)

④ペインチャージャー・アラストル ATK1600

(ペインカウンター:18)

 

 

①□②□④

 ⑧ ③

⑦⑩□□⑨

 

 

【イーサン】

LP8000 手札:5(グリッドパージ)

 

⑦ヴォルタンク・インダクタ ATK8800

(雷カウンター:4)

⑧ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK10300

(雷カウンター:2)

⑨ヴォルタンク・スイッチギア ATK9800

(雷カウンター:2)

⑩ヴォルタンク・ライトニングロッド ATK9600

(雷カウンター:2)

 

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター

(雷カウンター:16)

 

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット

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対峙する、イーサンとアザン軍副指揮官「セヘジュ」。

 

セヘジュが使うのは「ペインチャージャー」という、ダメージをカウンターに変換するシンクロテーマだ。だがイーサンは難なく妨害を乗り越え、ただ一撃で相手を葬るほどの攻撃力を出力し、攻撃を放つ。しかし、それこそがセヘジュの仕掛けた罠だった。

 

セヘジュは手札から発動した効果によってライフを回復し、その一撃を受け止めると、ダメージを全てカウンターへと変換した。溜まったペインカウンターは72。セヘジュは墓地の罠カードによって、それを攻撃力へと変換できるため、このままバトルフェイズで仕留めきることは不可能となった。

 

(奴が罠カードを発動すれば、全てのペインチャージャーの攻撃力は2万を超える…!だがこのまま攻撃をやめれば、次の相手ターンでその攻撃力が俺に襲い掛かる…!)

 

イーサンは奥歯を強く噛み締めた。手元のカードへ視線を落とし、そして覚悟を決め、真っ直ぐ前を向き直る。

 

「バトルフェイズは続行だ。ヴォルタンク・ライトニングロッドで、ペインチャージャー・プラクシディケへ攻撃!」

 

ライトニングロッドの鋭い頂点へと眩い雷が急速に収束していく。

 

「なんだと…?自滅するつもりか!墓地の罠カード発動!『ペインチャージャー・パリオクシス』!ターン終了時までペインチャージャーの攻撃力は、ペインカウンターの数×300アップする!」

 

この効果が通れば、全ペインチャージャーの攻撃力は21600も跳ね上がる。その力で返り討ちに遭えば、イーサンのライフなど一瞬にして消し炭だ。しかしイーサンは迷いなく、手札のカードを一枚デュエルディスクへと叩き込んだ。

 

「速攻魔法『ヴォルタンク・リコンフィギュア』発動!雷カウンターを3つ取り除くことで、自分フィールドのヴォルタンクLモンスター1体をEXデッキへと戻し、その素材となるモンスターが墓地に揃っていれば、それらを特殊召喚できる!」

 

雷カウンター26 → 23

 

 

■ヴォルタンク・リコンフィギュア

 速攻魔法

 このカード名の①②の効果は1ターンにいずれか1つしか使用できない。

 ①:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、

 自分フィールドの「ヴォルタンク」Lモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをEXデッキに戻す。

 その後、そのL召喚に使用したL素材モンスター一組が全て自分の墓地に揃っていれば、

 その一組を特殊召喚し、EXデッキに戻したLモンスターと同じ数のリンクマーカーを持ち、

 カード名が異なる「ヴォルタンク」Lモンスター1体をL召喚できる。

 ②:自分の除外状態の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードを特殊召喚する。

 

 

 

ライトニングロッドの巨体が無数の光の粒子へと分解され、空気中へと霧散していく。それを見上げながら、セヘジュは惜しそうに口を開いた。

 

「…チェーン1のペインチャージャー・パリオクシスの効果により、私のモンスターの攻撃力はターン終了時まで21600アップする」

 

ペインチャージャー・アレクト ATK23100

ペインチャージャー・メガイラ ATK23700

ペインチャージャー・プラクシディケ ATK24200

ペインチャージャー・アラストル ATK23200

 

ペインチャージャーたちの身に、桁違いの力を持ったオーラが満ちていく。その様を見届けたセヘジュは、余裕のある笑みを浮かべた。

 

「攻撃モンスターをEXデッキへ帰還させることで、罠カードを使わせながら自滅を回避するとはな。しかし、ライトニングロッドは墓地から特殊召喚したモンスター。L素材モンスターは存在せず、ただEXデッキへと戻っただけだ」

 

最悪の事態を防ぐための緊急回避。だがその結果、イーサンのフィールドからはモンスターを1体失った。

 

セヘジュのフィールドには攻撃力2万オーバーのモンスターと、ポイネの効果によって戦闘破壊できない守備表示モンスター。これ以上攻撃をすることはできない。それでもイーサンの眼光は一切揺るがない。鋭い視線で敵を射抜いたまま、低く通る声で告げた。

 

「バトルフェイズは終了だ。メインフェイズ2。永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。フィールドの雷カウンターを2つ取り除くことで、もう1度通常召喚を行うことができる」

 

雷カウンター 23→21

 

「手札からヴォルタンク・コンデンサを召喚」

 

 

■ヴォルタンク・コンデンサ

 効果モンスター

 レベル4/光/雷/攻撃力1600 守備力1000

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、

 相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。そのカードを破壊する。

 ③:このカードが墓地に存在する場合、フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 墓地のこのカードを特殊召喚する。

 

 

フィールドに現れたのは、深い青色をした重厚な円筒形の部品型モンスターだ。土台には太いパイプが複雑に這い回り、銀色のボルトで堅牢に固定されている。頂部から真っ直ぐに突き出た二つの端子の間では、青白い電気がかすかに火花を散らしている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/NOqMzGy

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「俺はヴォルタンク・コンデンサとヴォルタンク・スイッチギアをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

頭上に、光輝く四角形のゲートが展開される。2体のモンスターは光の粒子となり、ゲートを囲う矢印のマーカーへと一直線に吸い込まれていく。光を受け止めた二カ所のマーカーが赤く鋭い輝きを放ち、起動した回路全体が脈打つように激しく明滅を始めた。

 

「戦乱に生まれし摩擦、集いて天に轟く迅雷となる。

リンク召喚!リンク2『ヴォルタンク・パワージェネレーター』!」

 

 

■ヴォルタンク・パワージェネレーター

 リンクモンスター

 リンク2/光/雷/攻1700

 【リンクマーカー:上/下】

 雷族モンスター2体

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度に、そのモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 このカードが相互リンク状態の場合、この効果で置かれる雷カウンターの数は2つとなる。

 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、自分の墓地の「ヴォルタンク」フィールド魔法・永続魔法・永続罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに置く。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、高さ約5メートルの巨大な発電機のようなモンスターだ。全身は濃い蒼色の鋼鉄装甲で覆われ、太いボルトとパイプが多数取り付けられている。中央の塔からは、青白い稲妻を帯びたエネルギーが上空へ噴き出し、頂上の光の輪から激しいスパークを散らしている。底部には巨大な送風ファンがあり、常に微細な電光を発している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/A3i8gl4

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「パワージェネレーターが存在する限り、召喚・特殊召喚された相手モンスターに雷カウンターが置かれる。さらに相互リンク状態である今、置かれるカウンターは2つとなる。俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

ターンが終了したことで、上がっていたペインチャージャーの攻撃力は元に戻る。

 

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【セヘジュ】

LP7200 手札:1

 

①ペインチャージャー・アレクト ATK1500

(ペインカウンター:17)

②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100

(ペインカウンター:18)

③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600

(ペインカウンター:19)

④ペインチャージャー・アラストル ATK1600

(ペインカウンター:18)

 

 

①□②□④

 ⑧ ③

⑦⑨□□□

 

 

【イーサン】

LP8000 手札:2

 

⑦ヴォルタンク・インダクタ ATK7300

(雷カウンター:3)

⑧ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK8600

(雷カウンター:2)

⑨ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK8000

 

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター

(雷カウンター:16)

 

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット

伏せカード:1

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このターンでセヘジュを仕留めきれず、それどころかライフを回復され、大量のカウンターを確保されてしまったイーサン。しかしフィールド魔法によって高火力を維持し、効果無効のスパークキャッスルや、セットカードもある。決して追い詰められたわけではない。

 

(焦る必要はない。次のターン、溜まったカウンターごと奴のモンスターは消える)

 

イーサンはデュエルディスクに伏せられた一枚のカードへ視線を落とした。すぐに顔を上げ、正面の敵を静かに見据え直す。対峙するセヘジュは、表情を硬く引き締めたまま口を開いた。

 

「仲間を守りたい気持ちは"痛い"程わかる。私も人の子、心も"痛む"さ。しかし、国を守るためにはあの娘を捕らえねばならない。何かを守ろうとしているのは私も同じだ」

 

その言葉を受け、イーサンは鋭く目を細めた。

 

「"禁忌"を知られたら、この国に危機が訪れると?お前はその禁忌の中身を知っているのか」

 

「いや、知らぬ」

感情を交えずに即答したセヘジュに対し、イーサンは鼻で短く息を吐いた。

 

「中身も知らない癖に、"国を守るため"なんてよく言えたな」

 

挑発めいた言葉をぶつけられても、セヘジュの顔に動揺は浮かばない。彼は静かに目を閉じ、淡々と返答を紡ぐ。

 

「耳が"痛い"な。しかし禁忌は王直属の七使徒でさえも知らぬ者がいる程だ。中身を知らずとも、それほどの重要機密であることには違いない」

 

閉じていた目が見開かれる。セヘジュはデュエルディスクを構えた左腕を、イーサンに向けて真っ直ぐに突き出した。

 

「お前を倒し、トト・ミポットと反逆者たる異人を捕らえる。それこそが、この国を守る者としての使命だ!」

 

イーサンの冷ややかな視線を受けながら、セヘジュはデッキトップに指を掛ける。

 

「私のターン、ドロー!墓地のペインチャージャー・ポイネの効果発動。ペインカウンターを2つ取り除くことで、墓地より特殊召喚する」

 

ペインカウンター 72 → 70

 

 

■ペインチャージャー・ポイネ

 効果モンスター/チューナー

 レベル1/闇/戦士/攻撃力500 守備力500

 このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。

 ②:相手モンスターの攻撃宣言時、手札のこのカードを捨て、自分フィールドのペインカウンターを任意の数取り除いて発動できる。自分は取り除いた数×1000ライフを回復する。

 この効果を使用したターン、自分フィールドの「ペインチャージャー」モンスターは戦闘で破壊されない。

 ③:自分フィールドのペインカウンターを2つ取り除いて発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

銀と黒の重装甲を纏った女戦士がフィールドに姿を現した。淡い桃色の髪をポニーテールに結い、鋭い紅い瞳を宿している。装甲の各所には、回路のような赤い発光ラインが複雑に走り、胸部中央にある赤いコアは不気味に明滅していた。左目の下には、一筋の赤い血涙のような紋様が刻まれている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/jMHj5ar

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「ヴォルタンク・パワージェネレーターの効果。相手がモンスターを召喚・特殊召喚した時、そのモンスターに雷カウンターを置く。相互リンク状態の時、置かれるカウンターは2つとなる」

現れたポイネに2本の稲妻が落ちる。

 

雷カウンター 21→23

 

(チューナーモンスター…更なるS召喚に繋げるつもりか)

イーサンは現れたモンスターを見つめ、思考を巡らせると、デュエルディスクに触れる。

 

「罠カード『ヴォルタンク・グリッドパージ』発動!雷カウンターを5つ取り除き、フィールドのカードを全てデッキへ戻し、その後デッキからヴォルタンクを1体特殊召喚する!」

 

雷カウンター 23→18

 

■ヴォルタンク・グリッドパージ

 通常罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:フィールドの雷カウンターを5つ取り除いて発動できる。

 フィールドの全てのカードをデッキに戻す。

 その後、自分はデッキから「ヴォルタンク」モンスター1体を特殊召喚する。

 ②:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 お互いの墓地の全てのカードをデッキに戻す。

 

 

イーサンは自らのモンスターも失うことになるが、モンスター1体を特殊召喚でき、8000のライフもある以上、ペインチャージャーの更なるS召喚を止め、モンスターを一掃する方を優先したのだ。この効果をペインチャージャー・プラクシディケで無効にすることはできるが、さらにスパークキャッスルで効果を無効にできる。

 

フィールドにこの罠カードを止めるすべはない。

 

しかしそれは、「フィールドには」だ。

セヘジュは手札から1枚のカードを表へ向ける。

 

「相手が罠カードを発動した時、手札のペインチャージャー・リュペの効果を発動!ペインカウンターを3つ取り除いてこのモンスターを特殊召喚し、その罠カードを無効にする!」

 

ペインカウンター 70→67

 

「何…!?」

 

 

■ペインチャージャー・リュペ

 効果モンスター

 レベル5/闇/戦士/攻撃力1900 守備力2200

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。

 ②:相手が罠カードの効果を発動した場合、自分フィールドのペインカウンターを3つ取り除いて発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚し、その罠カードの効果を無効にする。

 ③:このカードをS素材にしたモンスターは以下の効果を得る。

 ●相手がモンスターを召喚・特殊召喚した場合、そのモンスターの攻撃力は、自分フィールドのペインカウンターの数×100ダウンする。

 

 

現れたのは、重厚な装甲に全身を覆われた戦士だった。メタリックな深緑とシルバーのプレートが複雑に組み合わさり、後ろで結わえられた暗い髪の隙間から、目元を横断する赤いラインと不敵な笑みがのぞく。両腕には、装甲と同じ緑を基調としたスコープ付きの巨大な銃器が構えられている。胸のV字ラインや銃身の各所からは、赤い光が脈打つように漏れ出していた。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/HhKdq3w

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リュペは軽やかな身のこなしで地面へと降り立つと、その身に雷が2本降り注ぐ。

 

雷カウンター 18→20

 

リュペはそのまま両腕の巨大な銃身を前方へ構え、銃口から赤いエネルギー弾を撃ち放った。一直線に飛来した一撃はイーサンの罠カードを真っ向から貫き、カードは瞬く間に炎に包まれて燃え尽きた。セヘジュの口角が上がり、顔に不敵な笑みが浮かぶ。

 

「さぞ辛いだろう。しかし人は痛みを受けてこそ進むことができる。これから受ける更なる痛みを、その身に刻むがよい!」

高らかに声を張り上げ、セヘジュは左腕を天へと掲げた。

 

「私はレベル3『ペインチャージャー・アレクト』、レベル5『ペインチャージャー・リュペ』に、レベル1『ペインチャージャー・ポイネ』をチューニング!」

 

アレクト、リュペ、ポイネの三体が同時に宙へと飛び上がる。空中でポイネの体が発光し、巨大な一つの光の輪へと姿を変えた。アレクトとリュペが、一直線にその輪の中へと飛び込んでいく。光の輪をくぐり抜けた2体は眩く輝く8つの星へと変わり、縦一列に並んだ。同時にリュペに置かれていたペインカウンターと雷カウンターがフィールドから消失する。

 

ペインカウンター 67→55

雷カウンター 20→16

 

「積み上がりし痛みは、ここに無数の弾丸となる。蹂躙し給え、横殴りの赤き血潮よ」

 

セヘジュが口上を唱えた直後、フィールドに巨大な光の柱が屹立し、頂点から一気に弾け飛んだ。

 

「シンクロ召喚!白亜の鎧纏いし痛みの戦士!

ペインチャージャー・エリニュス!」

 

 

■ペインチャージャー・エリニュス

 シンクロモンスター

 レベル9/闇/戦士/攻撃力2900 守備力2400

 チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。

 ②:自分フィールドのペインカウンターが置かれたモンスター1体をリリースして発動できる。

 このターン、このカードは相手モンスター全てに攻撃でき、相手モンスターとの戦闘時、攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力+500の数値となる。

 ③:自分・相手ターンに、自分フィールドのペインカウンターを3の倍数だけ取り除いて発動できる(最大15個まで)。

 取り除いたペインカウンター3つにつき、相手フィールドのカードを破壊する。

 

 

光が晴れると、そこには白亜の重厚な全身装甲に身を包んだ戦士が立っていた。鋭い白髪と、尖った耳を持つその顔は険しく、燃え盛るような赤い瞳が威圧的な光を放っている。装甲の隙間からは赤いラインが脈打ち、背中には巨大な翼を模した装甲が広がっている。その両腕には、装甲と同じ緑を基調とした、砲口が赤く輝く巨大なマルチバレル・ガトリングガンを構えている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/R4b6GJj

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「ヴォルタンク・パワージェネレーターの効果。エリニュスに雷カウンターを2つ置く」

 

雷カウンター 16→18

 

イーサンは、眼前に立ちはだかる新たなシンクロモンスターの姿を険しい表情で見つめていた。周囲の空間では赤い稲妻が激しく這い回り、すでにフィールド全体を完全に支配している。バチバチと弾けるその赤い電気は、ただ大気を震わせるだけでなく、直接肌を刺すような痛みをイーサンに感じさせていた。

 

「刮目するがよい。これがお前の与えた"痛み"の報い!ペインチャージャー・エリニュスの効果発動!お互いのターンに1度、最大15個までペインカウンターを取り除き、取り除いたカウンター3つにつき1枚、相手フィールドのカードを破壊できる!当然、取り除くカウンターは15個!よって、お前のフィールドの5枚のカードを破壊する!」

 

ペインカウンター 55→40

 

エリニュスが巨大なガトリングガンを構えると、複数の銃口の奥で禍々しい赤色のエネルギーが急激に充填されていく。そしてニヤリと笑みを浮かべ、雄々しい咆哮を上げた。直後、銃口から無数の赤いエネルギー弾が横殴りの雨のように乱射される。赤い弾幕は、イーサンのフィールドにそびえ立つ青き城塞を容赦なく削り取っていく。周囲に張り巡らされた巨大なアンテナ群も、その破壊力の前にはあっけなく折れてしまう。

 

破壊の雨の中、イーサンは左腕で身をかばいながら声を張り上げた。

 

「くっ…!フィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』の効果!ヴォルタンクモンスターが破壊される代わりに、このカードに置かれた雷カウンターを一つ取り除くことができる!」

 

一本のアンテナから地下道の上方へ向かって真っ直ぐに光が放たれると、瞬時に電気の障壁が展開され、イーサンのモンスターを包み込んだ。雷のバリアに激突した赤いエネルギー弾は、次々と弾き飛ばされていく。

 

「だがフィールド魔法と永続魔法は破壊される!」

鋭い軌道を描いたエネルギー弾の一つが、イーサンのフィールドの永続魔法を撃ち抜き、粉砕する。そして、周囲に張り巡らされていたアンテナ群もことごとく破壊され、光の粒子となって消え去っていった。

 

雷カウンター 18→7

 

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【セヘジュ】

LP7200 手札:1

 

①ペインチャージャー・エリニュス ATK2900

(雷カウンター:2)

②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100

(ペインカウンター:17)

③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600

(ペインカウンター:18)

④ペインチャージャー・アラストル ATK1600

(ペインカウンター:5)

 

①□②□④

 ⑧ ③

⑦⑨□□□

 

 

【イーサン】

LP8000 手札:2

 

⑦ヴォルタンク・インダクタ ATK1000

(雷カウンター:3)

⑧ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK2300

(雷カウンター:2)

⑨ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK1700

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なんとかモンスターの破壊は免れたものの、フィールド魔法を失い、ヴォルタンクの攻撃力は元の数値へと戻っている。

 

「我が精霊の力はこんなものではないぞ。ペインチャージャー・エリニュスの更なる効果を発動!1ターンに1度、ペインカウンターの乗ったモンスター1体をリリースすることで、エリニュスはこのターン、全ての相手モンスターに攻撃でき、その攻撃力は攻撃対象のモンスターより500高い数値となる。ペインチャージャー・アラストルをリリース!」

 

ペインカウンター 40→35

 

エリニュスがその腕を大きく掲げる。すると、フィールドのアラストルが激しく揺らぎ、真っ赤なエネルギーへと姿を変えた。その光は空中で流線を描き、吸い込まれるようにエリニュスへと吸収されていく。アラストルを飲み込んだエリニュスの全身が、強烈な真紅のオーラに包み込まれた。

 

「ゆくぞ、バトルフェイズ!ペインチャージャー・エリニュスよ、ヴォルタンク・パワージェネレーターを撃ち貫き給え!」

 

それは攻撃命令ではなく、まるで祈りのようだった。呼応するように、エリニュスの口角が不敵に歪む。両腕の巨大なガトリングガンが正面へ向けられ、銃口の奥で強烈なエネルギーが急激に練り上げられていく。

 

「ヴォルタンク・パワージェネレーターの効果発動!雷カウンターを3つ取り除くことで、墓地のフィールド魔法をフィールドに置くことができる!ヴォルタンク・カレントコレクターを再び発動!」

 

雷カウンター 7→4

 

再び周囲に高いアンテナ群が張り巡らされ、フィールドはわずかな電気を帯び始める。

 

ヴォルタンク・インダクタ ATK2200

ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK3500

ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK2900

 

「なんと痛々しき無意味な抵抗か!エリニュスの攻撃力はパワージェネレーターより500高い数値となる!」

 

ガトリングガンの銃口から、真っ赤なエネルギー弾が嵐のように撃ち放たれた。一直線に飛来した凶悪な弾幕が、パワージェネレーターを容赦なく貫いていく。その蒼い装甲に次々と無数の風穴が穿たれ、直後、限界を迎えた機体は轟音と共に木っ端微塵に爆発した。

 

「ッ…」

イーサン LP8000→7500

 

(エリニュスは全てのモンスターを戦闘破壊できるが、攻撃力は攻撃対象+500の数値にしかならず、ダメージは少ない。ここはなんとか耐え凌ぐしかない…)

 

濛々と立ち込めていた爆煙が晴れる。イーサンは険しい表情のまま、真っ直ぐに前を見据えて立っていた。息をつく暇さえ与えられず、セヘジュの追撃が飛ぶ。

 

「ペインチャージャー・エリニュスは、自身の効果により全ての相手モンスターに攻撃可能!ヴォルタンク・スパークキャッスルを貫き給え!」

 

エリニュスのガトリングガンから、再び真っ赤なエネルギー弾が掃射される。殺到する凶悪な弾幕がスパークキャッスルを容赦なく穿ち、その巨体を瞬く間に粉砕した。

 

イーサン LP7500→7000

 

「エリニュスよ、更なる追撃を!ヴォルタンク・インダクタへ攻撃願う!」

 

エリニュスの銃口が、ヴォルタンク・インダクタの小さな機体へと向けられる。続けざまに乱射された無数の赤いエネルギー弾が、その標的を容赦なく呑み込んだ。圧倒的な弾幕の前に、インダクタはあえなく粉砕される。

 

イーサン LP7000→6500

 

イーサンのフィールドはたった1体のモンスターによって蹂躙された。残されたのは空しく立つ無機質なアンテナ群のみだった。

 

「さあ、至極の痛みを味わうがいい!ペインチャージャー・プラクシディケ、ペインチャージャー・メガイラ!2体でダイレクトアタックを下し給え!」

 

プラクシディケが両手で巨大なレーザー銃を構え、隣に立つメガイラが凶悪な笑みと共に片手銃をイーサンへと突きつける。次の瞬間、極太のレーザー光線と鋭い真赤な弾丸が同時に撃ち放たれ、無防備なイーサンへ容赦なく襲い掛かる。

 

「ぐああああッ!!」

イーサン LP6500→1800

 

イーサンは鋭い衝撃に顔を歪め、たまらず膝をついた。

 

「メガイラの効果発動!相手に戦闘ダメージを与えた時、相手フィールドのカード1枚を無効にする。フィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』の効果は無効!」

 

メガイラが地下道の上方へ向けて、一発の弾丸を撃ち放つ。上空で弾けた銃弾は赤い網目状に広がり、フィールドを囲うアンテナ群へと降り掛かった。直後、アンテナ群は赤い稲光に包み込まれ、完全にその機能を停止させる。

 

「これぞ我が信仰の力!私はこれにてターンエンドだ」

 

-------------------------------------------------

【セヘジュ】

LP7200 手札:1

 

①ペインチャージャー・エリニュス ATK2900

(雷カウンター:2)

②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100

(ペインカウンター:17)

③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600

(ペインカウンター:18)

 

①□②□④

 □ ③

□□□□□

 

 

【イーサン】

LP1800 手札:2

 

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター(無効)

--------------------------------------------------

 

「仕留めきれなかったのは痛恨の極みだが、もはやお前に打つ手などない。エリニュスの破壊効果、そしてプラクシディケの無効効果と対象耐性付与は健在。さらにお前の場に残されたフィールド魔法も機能を停止している。お得意の攻撃力上昇効果も使えぬ」

 

「さらにペインチャージャー・リュペをS素材にしたエリニュスの効果により、お前がモンスターを召喚・特殊召喚した時、そのモンスターの攻撃力はペインカウンターの数×100ダウンする」

 

セヘジュは1歩前に進み出ると、膝をつくイーサンに見下すような視線を向ける。

 

「痛感するがよい、己の愚かさを。あの娘を庇いなどしなければ、お前の同胞も無事でいられただろう」

 

イーサンは無言で膝をついたまま、考えを巡らせる。もう遊次達と別れてからかなりの時間が経っている。彼らのことが、絶えず脳裏をかすめていた。

 

(副指揮官に報告が入っていない以上、まだ捕まってはいないだろう。だが、グズグズしてはいられない。早く決着を着けなければ…)

 

 

 

 

市場の裏路地を抜けた先にある穀物計量所。その足元に開いた狭い穴の中に、遊次は身を潜めていた。じめじめとした空気と苔の匂いが鼻をつく。這いつくばって押し込んだ体を締め付ける痛みに、遊次は顔を歪めた。だが、呻き声を上げるわけにはいかない。後方へ神経を研ぎ澄ますと、硬い金属の鎧が擦れ、足音を立てて辺りを歩き回る音がすぐ近くから聞こえてくる。

 

「この路地に入って以降、他の目撃証言はない!どこかに身を隠しているはずだ!」

 

頭上から響く兵士の怒声。追手はすでに、この周辺に的を絞っている。見つかるのは時間の問題だった。極度の緊張で喉が干からびる。唾を飲み込む微かな音すら、今の遊次にはひどく大きく聞こえた。にじみ出る汗を窮屈な姿勢のまま片手で拭い、遊次は思考を巡らせる。

 

(もうだいぶ時間が経ってるはずだ。あの副指揮官とかいう奴は、そんなに厄介な相手なのか…?)

 

息の詰まるような暗闇の中、最悪の想像ばかりが脳裏を過る。遊次はそんな弱気を振り払うかのように、強く何度か瞬きを繰り返した。

 

(いや、イーサンが負けるなんてありえねえ。今はイーサンを信じるだけだ)

 

 

 

 

 

 

イーサンはデッキトップへ指を掛け、静かに目を閉じた。

 

(結局は、このドロー次第か)

目を開き、眼前に陣取る敵のモンスターたちへ鋭い視線を向ける。イーサンは苛立ちを隠すことなく口を開いた。

 

「何が信仰の力だ。モンスターに祈って媚びへつらえば、勝てるとでも思ってるのか」

 

「媚びへつらう…だと!」

突然の侮蔑に、セヘジュは大きく目を見開く。だが、その瞳にはすぐさま深い哀れみの色が浮かんだ。

 

「よくわかった。外界にはお前のような浅はかな人間が蔓延っているのだな。だがアスラナク様が王座に就いた今、世界は変わる!お前たち異人を捕らえ、この決闘をその皮切りとしてみせる!」

 

セヘジュは左腕を天へと高く掲げ、声高に宣言する。対するイーサンは冷ややかな視線を崩さず、吐き捨てるように言葉を返した。

 

「デュエリストの"意志"が強ければ、デッキは勝手に応えてくれるんだ。知らないようなら今から見せてやる、俺の"守る意志"を」

 

「俺のターン…ドロー!」

イーサンは鋭い動作で力強くカードを引き抜いた。引いたカードを一瞥すると、すぐさま真っ直ぐに前を見据える。

 

「手札から永続魔法『ヴォルタンク・ディフュージョン』を発動!」

 

■ヴォルタンク・ディフュージョン

 永続魔法

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、

 雷カウンターが置かれた相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。

 ②:相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 そのカードに雷カウンターを3つ置く。

 

 

「お前のペインチャージャー・エリニュスには前のターン、パワージェネレーターによって雷カウンターが置かれている。そしてこのカードが存在する限り、雷カウンターが置かれた相手モンスターの効果は無効になる」

 

発動した永続魔法の効果。そして、自分を試すように向けられたイーサンの鋭い視線に、セヘジュは大きく目を見開いた。

 

「そうはさせん!ペインチャージャー・プラクシディケの効果発動!ペインカウンターを3つ取り除き、相手のカード効果を無効にする。その後、相手に1500のダメージを与える!」

ペインカウンター 35→32

 

プラクシディケが構えるレーザーガンの銃口に、赤い粒子が急速に充填されていく。放たれた光線はイーサンの永続魔法を真っ向から撃ち抜き、瞬く間に粉砕した。さらにカードを破壊した余波が赤いプラズマへと姿を変え、そのままイーサンへと襲い掛かる。

 

「ぐっ…!」

イーサン LP1800→300

 

イーサンは左腕で体を庇うと、すぐさまそれを振り払い、手札へと手を伸ばす。

 

「手札からヴォルタンク・アームを召喚」

 

■ヴォルタンク・アーム

 効果モンスター

 レベル3/光/雷/攻撃力1300 守備力1300

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 フィールドの雷カウンターを全て取り除き、

 取り除いた分だけ対象のカードに雷カウンターを乗せる。

 ③:このカードを墓地から除外し、

 除外されている「ヴォルタンク」カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードをデッキの一番下に戻す。

 その後、戻したカードと同じ種類の「ヴォルタンク」カード1枚をデッキから手札に加える。

 

 

青いアーム形状のモンスターは、直線的な金属製の腕部を持つ。腕には先端に大型のグリップ状の部品が装備され、複数の管や配線が側面に沿って配置されている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/SlcldTi

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「墓地のヴォルタンク・ポテンショメータを除外し効果発動。墓地のLモンスター1体をEXデッキに戻し、そのリンクマーカーの数以下のレベルを持つヴォルタンクを、デッキから特殊召喚できる」

 

 

■ヴォルタンク・ポテンショメータ

 効果モンスター

 レベル2/光/雷/攻撃力600 守備力900

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク」罠カード1枚を手札に加える。

 ③:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のLモンスター1体を対象として発動できる。

 そのカードをEXデッキに戻し、そのカードのリンクマーカーの数以下のレベルを持つ「ヴォルタンク」モンスター1体を、デッキから特殊召喚する。

 

 

「リンク3のスパークキャッスルをEXデッキに戻し、デッキからレベル3のヴォルタンク・インダクタを特殊召喚する」

 

■ヴォルタンク・インダクタ

 効果モンスター

 レベル3/光/雷/攻撃力1000 守備力1500

 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ③:自分メインフェイズに発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク」モンスター1体を墓地へ送る。

 

 

フィールドに無機質な青い直方体が現れる、深く沈んだ青いメタリックの筐体は、幾何学的なプレートに覆われている。上部からは銀色のつまみが無造作に突き出し、正面からは2本の鋭利な端子が前方を睨むように突き出している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4LXtcBt

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「デッキがシャッフルされたことで、ヴォルタンクに雷カウンターが1つずつ置かれる」

 

雷カウンター 2→4

 

「さらにインダクタの効果発動。デッキからヴォルタンクを1体墓地へ送る。俺はデッキからヴォルタンク・コイルを墓地へ送る。シャッフルが発生したことで、ヴォルタンクにカウンターが置かれる」

 

雷カウンター 4→6

 

「墓地のヴォルタンク・コイルを除外し、効果発動。デッキからヴォルタンクカード1枚を除外する。除外するのは魔法カード『ヴォルタンク・ブースト』。シャッフルが発生したことで、ヴォルタンクに雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 6→8

 

(いくらカウンターを集めようと、フィールド魔法が無効になっている限り圧倒的な攻撃力を叩きだすことは不可能。さらにエリニュスの破壊効果も残している。恐れることは何もない)

 

淡々とした展開が続く中、フィールドの雷カウンターは確実にその数を増やしていく。その光景を前に、セヘジュは胸をよぎる一抹の不安を振り払うように思考を巡らせた。

 

「ヴォルタンク・アームの効果発動。フィールドの全ての雷カウンターを、1枚のカードに集約する。対象はフィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』」

 

無骨な機械腕が上方へと伸びる。すると、フィールドに溜まった光球が一点へと吸い寄せられていく。アームが機械的な挙動で振り抜かれ、集まった光球を回転させるように勢いよく放り投げた。宙を舞った八つの光球は放射状に広がり、周囲を取り囲むアンテナ群へと次々に明かりを灯していく。

 

「墓地のヴォルタンク・コンデンサの効果発動。雷カウンターを3つ取り除き、墓地のこのカードを特殊召喚できる」

深い青色をした円筒型の部品モンスターが、イーサンのフィールドへ再び姿を現す。セヘジュは並んだ3体のモンスターへ鋭い視線を向けた。

 

雷カウンター 8→5

 

(これでモンスターは3体。ヴォルタンク・スパークキャッスルのL召喚条件を満たす。あのモンスターが現れれば、エリニュスの効果も無効化されてしまう)

 

スパークキャッスルは雷カウンターを取り除くことで、相手が発動したモンスター効果を無効にできる。L召喚を許せば、エリニュスの無効効果は実質意味を成さなくなる。

 

さらにセヘジュはソリッドヴィジョンとして浮かぶ盤面情報に目を凝らす。その視線の先には、ヴォルタンク・コイルの効果で除外された魔法カード「ヴォルタンク・ブースト」があった。

 

(もしここで奴のモンスターを全て破壊すれば、墓地に送られたヴォルタンク・アームによって除外されたカードをデッキに戻し、同じ種類のカードを手札に加えられる。『ヴォルタンク・ブースト』を手札に加えれば、雷カウンターを4つ取り除いて2枚のドローが可能。だが…)

 

雷カウンターは全てフィールド魔法に集約されている。逆にそれさえ破壊してしまえば、イーサンのフィールドから雷カウンターを全て奪うことができるため、ドローソースを手札に加えられたとしてもドローまでは繋がらない。

 

セヘジュは左手を前方へ突き出し、高らかに宣言する。

 

「ペインチャージャー・エリニュスの効果発動!ペインカウンターを12個取り除き、取り除いたカウンター3つにつき相手のカードを破壊する!お前の3体のモンスターと、フィールド魔法を破壊する!」

 

ペインカウンター 32→20

 

エリニュスが巨大なガトリングガンを構える。直後、無数の赤いエネルギー弾が、横殴りの雨となって銃口から乱射された。凄まじい弾幕が、イーサンのモンスター3体を宙へと浮き上がらせるほどの威力で撃ち抜く。周囲に張り巡らされたアンテナ群も次々とへし折られ、イーサンのフィールドは瞬く間に更地と化した。

 

雷カウンター 5→0

 

空っぽのフィールドに立ち尽くすイーサン。勝利を確信したセヘジュの高笑いが響き渡る。

 

「これぞ信仰のもたらす力!精霊を軽んじる異人共には到達できぬ境地だ!」

 

だが、イーサンは一切の表情を崩さない。ひどく落ち着いたトーンで、淡々と告げた。

 

「悦に浸ってるところ悪いが、時間がないんだ。そろそろ切り上げさせてもらう」

 

前を見据える、鋭く冷え切った眼差し。その瞳に射抜かれ、セヘジュは反射的に一歩後ずさっていた。

 

「墓地のヴォルタンク・アームを除外し、効果発動。除外されているヴォルタンクカードを1枚デッキに戻し、同じ種類のヴォルタンクカードを1枚デッキから手札に加える。魔法カード『ヴォルタンク・ブースト』をデッキに戻し、『ヴォルタンク・リブート』を手札に加える」

 

「そして今手札に加えたヴォルタンク・リブートを発動。墓地のヴォルタンクを蘇らせる。現れよ、ヴォルタンク・エンジン」

 

 

■ヴォルタンク・エンジン

 効果モンスター

 レベル4/光/雷/攻撃力1800 守備力1200

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

 デッキから「ヴォルタンク・エンジン」以外の「ヴォルタンク」モンスター1体を手札に加える。

 

 

青いエンジンを模したモンスターは、金属光沢のある深い青色の体を持つ。胴体は直方体に近い形状で、表面には複数のランプや操作盤のような装飾が施され、冷たい光を放つ。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/nb09OhR

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「ヴォルタンク・エンジンの効果発動。特殊召喚時、デッキからヴォルタンクを1体手札に加える。ヴォルタンク・モーターを手札に加え、シャッフルされたことで雷カウンターが1つ置かれる」

 

雷カウンター 0→1

 

「フィールドにヴォルタンクが存在する時、手札からヴォルタンク・モーターを特殊召喚できる」

 

■ヴォルタンク・モーター

 効果モンスター

 レベル2/光/雷/攻撃力1100 守備力1500

 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

 ③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分フィールドに「ヴォルタンク」モンスターが存在する場合、

 このカードは手札から特殊召喚できる。

 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。

 「ヴォルタンク・モーター」以外の「ヴォルタンク」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

 

 

現れたのは青いモーター形状のモンスター。外殻は精密な歯車とねじ部品が露出し、中央部に大型の回転軸が設けられている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3jDG7gK

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「墓地のヴォルタンク・リブートの効果発動。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルし、その後1枚ドローする。シャッフルが発生したことでフィールドのヴォルタンクに雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 1→3

 

「ヴォルタンク・モーターの効果発動。雷カウンターを2つ取り除き、デッキからヴォルタンクを特殊召喚できる。現れよ、ヴォルタンク・リアクトル」

 

雷カウンター 3→1

 

 

■ヴォルタンク・リアクトル

 効果モンスター

 レベル5/光/雷/攻撃力1900 守備力2400

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:自分の墓地の「ヴォルタンク」カード5枚を対象として発動できる。そのカードをデッキに戻す。

 その後、デッキから「ヴォルタンク」カード1枚を手札に加える。

 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。

 自分フィールドに「ヴォルタンクトークン」(雷族・光・星1・攻/守500)1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

現れたのは、青い外殻と無数のパイプで組み上げられた機械だった。中央の縦長の筒には稲妻のような光が走り、周囲を取り巻く太い配管が脈動するように張り巡らされている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/OlnkcMW

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「シャッフルが発生したことで、3体のモンスターに雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 1→4

 

「ヴォルタンク・リアクトルの効果発動。墓地のヴォルタンクカードを5枚デッキに戻し、ヴォルタンクカードをデッキから1枚手札に加える。グリッドパージ、リファインドサーキット、リコンフィギュア、インダクタ、エンジンをデッキに戻し、ヴォルタンク・スイッチギアを手札に加える。シャッフルが発生したことで、3体のモンスターに雷カウンターが置かれる」

 

雷カウンター 4→7

 

「手札のヴォルタンク・スイッチギアは、雷カウンターを1つ取り除くことで手札から特殊召喚できる」

 

雷カウンター 7→6

 

 

■ヴォルタンク・スイッチギア

 効果モンスター

 レベル5/光/雷/攻撃力2000 守備力2200

 このカード名の②③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを1つ取り除いて発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚する。

 ③:フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

 自分の墓地の「ヴォルタンク」カードの枚数だけ、そのカードに雷カウンターを置く。(最大10個まで)

 ④:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。

 相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。

 

 

「ヴォルタンク・リアクトルの効果発動。雷カウンターを2つ取り除くことで、ヴォルタンクトークンをフィールドに生成する」

 

雷カウンター 6→4

 

空間にかすかな電気の音が走る。フィールドの一点に紫電の光が集束し、稲妻の光体が現れた。

 

「俺はヴォルタンク・エンジンとヴォルタンクトークンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

リンクマーカーが次々と輝き、空間に青白いサーキットが展開する。エンジンとトークンの輪郭が光の粒となり、線で結ばれていく。

 

「リンク召喚!再び現れよ、リンク2『ヴォルタンク・パワージェネレーター』!」

 

 

■ヴォルタンク・パワージェネレーター

 リンクモンスター

 リンク2/光/雷/攻1700

 【リンクマーカー:上/下】

 雷族モンスター2体

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度に、そのモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 このカードが相互リンク状態の場合、この効果で置かれる雷カウンターの数は2つとなる。

 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除き、自分の墓地の「ヴォルタンク」フィールド魔法・永続魔法・永続罠カード1枚を対象として発動できる。

 そのカードを自分フィールドに置く。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

現れたのは、高さ約5メートルの巨大な発電機のようなモンスターだ。全身は濃い蒼色の鋼鉄装甲で覆われ、太いボルトとパイプが多数取り付けられている。中央の塔からは、青白い稲妻を帯びたエネルギーが上空へ噴き出し、頂上の光の輪から激しいスパークを散らしている。底部には巨大な送風ファンがあり、常に微細な電光を発している。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/A3i8gl4

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「ヴォルタンク・スイッチギアの効果発動。墓地のヴォルタンクカードの枚数分、カード1枚に雷カウンターを置く。墓地のヴォルタンクカードは6枚。よってモーターに雷カウンターを6個置く」

 

スイッチギアのレバーが弾かれたように下りる。直後、極太の稲妻がモーターへと突き刺さる。激しい閃光が走る中、機体の頂上部には六つの光球が連なって浮かび上がる。

 

雷カウンター 4→10

 

「ヴォルタンク・パワージェネレーターの効果発動。雷カウンターを3つ取り除き、墓地のフィールド魔法を自分フィールドに置く。ヴォルタンク・カレントコレクターをフィールドへと戻す!」

 

雷カウンター 10→7

 

「フィールド魔法により、ヴォルタンクは雷カウンターの数×300、攻撃力がアップする」

 

「だがペインチャージャー・エリニュスが得た効果により、お前のモンスターはペインカウンターの数×100ダウンする!」

 

ヴォルタンク・パワージェネレーター ATK1800

ヴォルタンク・モーター ATK1200

ヴォルタンク・リアクトル ATK2000

ヴォルタンク・スイッチギア ATK2100

 

フィールド魔法による攻撃力上昇と、エリニュスの攻撃力下降が相殺しあい、ほとんど攻撃力は元の数値と変わらない状態だ。セヘジュは未だ、余裕の笑みを崩していなかった。

 

「急いでいた割には、まだまだ私のモンスターを倒すことすらできぬようだ。それでもまだ足掻くというのか?」

 

イーサンの瞳は揺るがない。微かに口角を上げ、真っ直ぐに見返した。

 

「お前の"仕事"はもう済んでる。黙って見てればいい」

 

"仕事"という言葉に、セヘジュは一瞬の引っかかりを覚える。だが、ただの負け惜しみだとすぐに切り捨て、口元に薄ら笑いを浮かべた。

 

「…フン、ならばお望み通りジタバタと痛々しく足掻く様子を見届けてやる」

 

「俺はパワージェネレーターとスイッチギア、2体のモンスターをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

イーサンの頭上の空中に、巨大なサーキットが浮かび上がった。パワージェネレーターの巨躯と、スイッチギアの重厚な機体が宙へと引き寄せられ、次々とサーキットの中へ吸い込まれていく。直後、枠に配置されたマーカーが赤く光を放った。

 

「リンク召喚!再び現れよ、リンク2『ヴォルタンク・ライトニングロッド』!」

 

回路が完成すると同時に、二体の光が奔流となって中央へと収束した。眩い蒼が爆ぜ、雷鳴のような轟きとともに、天へ貫く巨大な光柱が立ち上がる。青いボディと、飛び出た大きないくつものネジが特徴的だ。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bK4xj8i

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「さらにライトニングロッドとリアクトルの2体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

 

今しがた現れたばかりのライトニングロッドは、リアクトルと共に空中のサーキットへと吸収されてゆく。

 

「回路に蓄積されし電荷は、迫る魔を阻む防壁となる。

リンク召喚!現れよリンク3『ヴォルタンク・チャージリダウト』」

 

 

■ヴォルタンク・チャージリダウト

 リンクモンスター

 リンク3/光/雷/攻2200

 【リンクマーカー:左/左下/下】

 雷族モンスター2体以上

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、

 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードがL召喚した場合、墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを手札に加える。

 ③:相手が魔法・罠カードの効果を発動した場合、フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動する。

 その発動を無効にしてデッキに戻す。

 

 

イーサンの前に巨大な要塞が現れる。壁に囲まれ、四方からはさながら最新鋭の兵器のような電磁砲がいくつも覗いている。まるでそれは超巨大な戦車にも見える。その外壁と砦は蒼いボディをしており、各所に巨大なボルトが付いている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/9jFDvVT

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「チャージリダウトがL召喚した時、効果発動。墓地のヴォルタンクを1体、手札に戻す。俺はヴォルタンク・リレーを選択。さらにL素材として墓地に送られたライトニングロッドの効果発動。墓地のヴォルタンクモンスター1体をデッキへ戻し、1枚ドローする」

 

「リアクトルをデッキへ戻し、1枚ドロー。シャッフルが発生したことで、2体のモンスターとフィールド魔法に雷カウンターが置かれる。チャージリダウトのリンク先にいるモーターにはさらに追加でカウンターが置かれる」

 

雷カウンター 7→11

 

「チェーン1のチャージリダウトの効果により、墓地のヴォルタンク・リレーを手札に加える。さらに永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』を発動!」

 

 

■ヴォルタンク・リファインドサーキット

 永続魔法

 このカード名の①②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:フィールドの表側のカード1枚を対象として発動できる。

 フィールドのリンクマーカーの数だけ、そのカードに雷カウンターを置く。

 ②:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。

 このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、

 自分メインフェイズに「ヴォルタンク」モンスターを1体を召喚できる。

 ③:雷カウンターが乗ったカードがフィールドを離れた場合、

 フィールドの表側のカード1枚を対象として発動できる。

 墓地へ送られたそのカードに置かれていた数だけ、

 雷カウンターを対象のカードに置く。

 

 

「リファインドサーキットの効果発動。雷カウンターを2つ取り除き、このターンもう1度だけヴォルタンクを通常召喚できるようになる。俺は手札のヴォルタンク・リレーを召喚」

 

雷カウンター 11→9

 

■ヴォルタンク・リレー

 効果モンスター

 レベル3/光/雷/攻撃力1200 守備力900

 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。

 ②:このカードが召喚した場合、

 墓地のレベル4以下の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを特殊召喚する。

 ③:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚し、フィールドのモンスターの数だけ、

 フィールドの表側カードに雷カウンターを置く。

 

 

直方体の形状をしていた装置のような青色のモンスターが現れる。前面中央には、固定された小型のボタンスイッチが配置され、両側にはそれぞれ金属製の端子が設置されている。

 

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/J4rW1NM

※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

 

 

「ヴォルタンク・リレーの召喚時、効果発動。墓地のレベル4以下のヴォルタンクを復活させることができる。現れよ、ヴォルタンク・エンジン」

 

表面に複数のランプや操作盤のような装飾が施された蒼きエンジン型のモンスターが、再び現れる。

 

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。フィールドのカード1枚に、フィールドのリンクマーカーの数だけ雷カウンターを置く。チャージリダウトに雷カウンターを3つ置く」

 

雷カウンター 9→12

 

蒼いボディの部品型モンスターが次々とフィールドに姿を現し、その機体に激しい電気を纏ってゆく。目の前で進む展開を見つめていたセヘジュの目が、ゆっくりと大きく見開かれていく。イーサンの真の狙いに、ようやく気付いたかのように。

 

「ま、待て…。まさか…」

 

-------------------------------------------------

【セヘジュ】

LP7200 手札:1

 

①ペインチャージャー・エリニュス ATK2900

②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100

(ペインカウンター:5)

③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600

(ペインカウンター:15)

 

①□②□④

 ⑦ ③

⑨⑧⑩□□

 

 

【イーサン】

LP300 手札:3

 

⑦ヴォルタンク・チャージリダウト ATK3800

(雷カウンター:4)

⑧ヴォルタンク・モーター ATK2700

(雷カウンター:8)

⑨ヴォルタンク・リレー ATK2800

⑩ヴォルタンク・エンジン ATK3400

 

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット

--------------------------------------------------

 

イーサンは持てるリソースを全て使い、雷カウンターをストイックに充填し続けた。そして今、全ての相手モンスターを上回る攻撃力を出力している。攻撃力ダウン効果を持つペインチャージャー・エリニュスを突破できること。それこそがイーサンが目指すべき"臨界点"だったのだ。

 

しかしこれらは、ただデッキが回ったからというだけで出来上がった盤面ではないことを、他ならぬセヘジュ自身は気付き始めていた。しかし、言葉を発しようとした矢先、イーサンは冷淡に宣言する。

 

「とっとと終わらせよう。バトルフェイズ、ヴォルタンク・エンジンで、ペインチャージャー・エリニュスへ攻撃」

 

ヴォルタンク・エンジンのシリンダーが轟音を上げ、機体に蒼い電撃が走る。正面のタービンを超高速で回転させながら、閃光と共にエリニュスへと突進した。激突の衝撃と雷撃を浴び、エリニュスは獣のような叫びを上げて砕け散る。

 

「ぐああああ!」

セヘジュ LP7200→6700

 

砕け散るエリニュスと共に拡散する雷撃。それを全身に浴びながら、セヘジュは弾かれたように眼前の蒼きモンスターたちを睨みつけた。彼が見据えるフィールドでは、すでに異変が起き始めていた。

 

ヴォルタンク・チャージリダウト ATK5800

ヴォルタンク・モーター ATK4700

ヴォルタンク・リレー ATK4800

ヴォルタンク・エンジン ATK5400

 

「あっ…あぁあ…!」

セヘジュは声にならない声を上げる。エリニュスによる攻撃力ダウンの呪縛は解かれ、ヴォルタンクの攻撃力は本来あるべき数値へと戻った。

 

何故こうなったのか。どこから歯車は狂ったのか。セヘジュは必死に考えを巡らせる。しかし、イーサンにはそれを待っている道理などなかった。

 

「ヴォルタンク・モーターで、ペインチャージャー・プラクシディケへ攻撃」

 

ヴォルタンク・モーターの機体が蒼く脈動し、唸りを上げる。高速回転するシャフトから、圧縮された蒼い電撃波が解き放たれた。雷撃を真っ向から受けたプラクシディケはあえなく破壊される。

 

「どぅああああああ!!」

セヘジュ LP6700→4600

 

下級モンスターに過ぎないモーターの一撃は、フィールド魔法の恩恵によって切り札すら凌ぐ威力へと変貌していた。激しい雷撃を浴びたセヘジュは、全く納得がいかないという顔でイーサンを睨みつける。

 

「ふざけるな…。そのフィールド魔法は、私がエリニュスによって破壊したからこそ、お前は墓地からそれを貼り直すことができたに過ぎない…!もし私がフィールド魔法を破壊していなければ、攻撃力上昇効果は無効のままだった!そんな"偶然"の産物で、私を凌いだと…」

 

激昂して言葉をぶつけていたセヘジュの表情が、ふと凍りつく。叫ぶ彼の脳裏に、先ほどのイーサンの言葉が蘇っていた。

 

(お前の"仕事"はもう済んでる。黙って見てればいい)

 

「まさか…意図的にフィールド魔法を破壊"させた"というのか…!?この私に…」

 

セヘジュの脳裏に、ターン序盤の光景がフラッシュバックする。イーサンは『ヴォルタンク・アーム』により、無効化されたはずのフィールド魔法へわざわざ雷カウンターを集約させていた。さらに、雷カウンターを消費して2枚のカードをドローできる『ヴォルタンク・ブースト』をデッキから除外し、手札に加えられる状況を作っていた。まるで、セヘジュへ見せつけるように。

 

効果が無効化されているとはいえ、フィールド魔法を残せば雷カウンターはフィールドに維持される。そうなれば、イーサンが魔法カードによって2枚のドローができることは確約されていた。だからこそ、セヘジュはフィールド魔法を破壊する選択をした。それがごく自然な判断だからだ。

 

しかしセヘジュは確信した。それこそがイーサンの仕掛けた巧妙な罠であると。セヘジュがフィールド魔法を破壊したことで、パワージェネレーターの効果により、墓地からフィールド魔法を再発動するというルートが生まれた。そしてその結果が今だ。

 

攻撃力を跳ね上げるフィールド魔法と、大量の雷カウンターを供給するヴォルタンク・スイッチギア。二つのピースが揃わなければ、イーサンの反撃は届かなかっただろう。

 

もしあの時、セヘジュがフィールド魔法を破壊せずに残していればどうなっていたか。フィールド魔法を貼りなおすためには、イーサンは自力でデッキからフィールド魔法を手札に引き込む必要に迫られ、手数が足りなくなっていたはずだ。だが、セヘジュが自らの手でカードを墓地へ送ったことで、勝利のルートに手が届いた。イーサンは初めから、セヘジュ自身にこの盤面を完成させるよう仕向けていたのだ。

 

 

「ヴォルタンク・リレーで、ペインチャージャー・メガイラへ攻撃」

 

ヴォルタンク・リレーの内部で、カチリと重厚な接点が切り替わる音が響く。両側面のポートから無数の細い電撃が放たれ、メガイラの周囲に網目状の電気回路を形成して拘束した。直後、接続された回路を通じて規格外の過電流が一気に流し込まれ、メガイラは凄まじい爆音と共に破壊された。

 

「うあああああ!!」

セヘジュ LP4600→1900

 

セヘジュのフィールドから全てのモンスターが消え失せた。イーサンには、まだ最後の一撃が残されている。力なく膝をついたセヘジュは、眼前にそびえ立つ戦車のごとき蒼き要塞を、恐怖に染まった瞳で見上げた。

 

「ありえぬ…。我が信仰が、愚かな異人ごときに…!」

 

怒りに身を震わせて吐き捨てるセヘジュへ、イーサンはただ冷徹な声を落とす。

 

「知ってるか。デュエルってのは信仰の強さで決まるものじゃない。オツムと出来と、勝負強さで決まるんだ」

 

イーサンは自身のこめかみを指で叩き、膝をつくセヘジュを静かに見下ろした。彼が身に纏う立派な黒き鎧も、整えられた顎髭も、今の姿をただ無様に引き立てているだけだった。

 

「わ、わかっているのか!?あの少女を守れば、お前達も反逆者とみなされ、この国を敵に回すのだ!引き返すなら今の内だぞッ!?」

 

必死に言葉を尽くして叫ぶその姿は、まるで縋るようだった。その言葉に、イーサンはぽつりと言葉を落とす。

 

「引き返すなら今の内、か。同感だな。だが…」

 

イーサンの脳裏に浮かんだのは、自分を真っ直ぐ見据える遊次の言葉。

 

(女の子1人守れねえで…世界なんか守れっかよ)

 

小さく息を吐き、イーサンはセヘジュを見下ろす。

 

「残念ながら、遊次は誰にも止められない。お前らも力づくで止めるしかないだろうな。だから…」

 

その眼差しに確かな覚悟を宿し、左腕を掲げる。そしてイーサンは最後の言葉を告げた。

 

「一国を敵に回そうとも…俺は仲間を、家族を守る」

 

その言葉と共に、イーサンの左腕が振り下ろされる。

 

「ヴォルタンク・チャージリダウトでダイレクトアタック」

 

チャージリダウトの機体に備わった四つの砲口が、一斉にセヘジュへと向けられる。砲身の奥でバチバチと荒々しい音を立てながら、高密度の電撃波が急激に充填されていく。

 

「ク、クソ…!クソォオオオ!!」

 

叫ぶセヘジュの頭の中は、恐怖に支配されていた。それは眼前で砲口を向けるモンスターに対してではない。黄金の鎧を纏い、玉座から冷徹な眼差しで見下ろす男の、"赤い瞳"に対してだった。

 

 

限界まで高められた電圧が臨界点を超え、チャージリダウトの砲身が同時に咆哮を上げた。空間を歪ませるほどの雷鳴を轟かせ、蒼白のエネルギーが一本の巨大な雷撃へと収束する。逃げ場を失ったセヘジュを、その光の奔流が真正面から飲み込んでいった。

 

セヘジュ LP1900→0

 

轟音がフィールドを震わせ、凄まじい爆炎が一切の視界を白銀に塗り潰す。やがて光芒が消え、噴煙が風に流された後に残ったのは、力なく打ち伏した敗者の姿だった。激闘の終わりを告げる、重苦しいまでの静寂が辺りを支配した。

 

 

「勝者、イーサン・レイノルズ。契約に基づき、アザン軍兵士に対し、神楽遊次およびその同行者を追うことを禁じます。なお、本契約はアザン軍指揮官『アザン・ヤダフ』の指揮権の下位に属し、その命令を制限する効力は有しないものとします」

 

決着を告げる冷徹なシステム音が、静寂の地下道に響き渡る。地面に突っ伏したセヘジュは、一言も発さぬまま深く項垂れていた。その姿にイーサンは一瞥もくれず、身を翻す。そのまま足に力を込め、地上を目指して走り出す。

 

 

 

 

市場通りの喧騒から外れた路地裏。その奥に佇む穀物計量所は、いまや多数の兵士たちによって占拠されていた。彼らは蔵の扉を蹴り開け、積み上げられた荷の隙間まで徹底的に探し回っている。トトを抱えて逃げ延びた遊次たちの身柄を確保するためだ。

 

捜索にあたっていた一人の兵士が、不意に足を止める。泥の浮いた地面に、不自然なほど細長い穴が口を開けていた。

 

(…まさかな)

常識的に考えて、そんなところに人間が潜り込むはずがない。だが兵士は念のためにと地面に膝をつき、その暗がりの奥を覗き込んだ。狭い穴の底から兵士を射抜いたのは、漆黒のコートに身を包んだニーズヘッグCEO、オスカーの鋭利な眼差しだった。その奥には、暗闇の中で見開かれたいくつもの目があった。

 

「い…いたぞぉおおおおお!!」

 

絶叫と同時に、兵士は穴の中に腕を突っ込み、オスカーの足首を掴み取った。だが、刹那。放たれた強烈な蹴りが、兵士の身体を無造作に跳ね飛ばした。穴の中から素早く這い上がったオスカーが、泥を散らして立ち上がる。包囲する兵士たちの視線が、一斉にオスカーへと注がれた。

 

単身で兵士たちの前にその身を晒したオスカーの背中に、遊次はたじろいだ。

 

(オスカー…!)

息を呑む間もなく、地を這う鎧の腕が遊次の足を捕らえんと伸びてくる。遊次は必死に何度も足を蹴り出し、まとわりつく鋼の指を力任せに振りほどいた。

 

しかし、その隙を突いて別の兵士が穴の向こう側へと回り込む。無骨な手が、最前にいるトトを捕らえんと迫った。

 

「トトちゃんっ!」

灯が反射的にトトを抱きかかえ、必死にその身を盾にする。だがその程度でこの窮地を凌げるはずもなかった。一分と経たぬうちに、トトは外へと引きずり出され、奪い去られてしまうだろう。

 

(…間に合わなかったか。致し方ない。兵士共を一人ずつ片付けるしかあるまい)

 

オスカーは迫りくる兵士を冷徹に見据え、デュエルディスクを鋭く展開した。兵士たちが距離を詰め、包囲網を完成させようとした、その時。計量所の周囲から、けたたましいサイレン音が地を這うように無数に鳴り響いた。

 

兵士たちの動きが止まった。当惑が広がる中、彼らの視線は一斉に自らの手元へと引き寄せられる。デュエルディスクのランプが、警告を告げるように赤く激しく明滅していた。ディスクからソリッドヴィジョンの光が収束し、1枚の書類が虚空に浮かび上がる。そこにある文字をなぞる兵士たちの顔から、次第に余裕が消え、驚愕に塗りつぶされていった。

 

「ふ…副指揮官がやられた…!?」

 

「『神楽遊次およびその同行者を追うことを禁ずる』…だと!?」

 

飛び交う困惑の声を耳にした遊次たちは、数瞬の沈黙のあと、重い鎖から解き放たれたように安堵の吐息を漏らした。

 

「イーサンが勝ったんだ…!これで兵士達は俺らを捕まえられないはずだぜ、トト」

 

遊次は穴の奥でうずくまるトトへ、柔らかい眼差しを向けた。しかし彼女は未だ怯えきって固まっている。遊次はその様子を見ると、泥にまみれた体をゆっくりと穴の外へ引きずり出し、確かな足取りで立ち上がった。

 

「ほらよ兵士共!捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」

 

不敵な笑みを浮かべ、遊次は目前に立ち並ぶ兵士たちを堂々と煽った。しかし、殺気を孕んで詰め寄っていたはずの兵士たちは、あと一歩の距離で彫像のように硬直している。彼らを縛り付けているのは、オースデュエルによって確定した絶対的な契約だ。僅かでも背く兆候を見せれば、ネットワークを介したAIが即座に介入し、物理的な罰則をもってその身を制圧する。

 

成す術もなく立ち尽くす兵士たちの姿を見て、トトを抱く灯は、強張っていた表情をようやく安堵の笑みに変えた。怜央とアリシアも重く溜めていた息を吐き出し、窮屈な穴の底から解放されるように、一人、また一人と泥の地面へ這い上がった。

 

トトの手を握る灯、そして怜央とアリシアが、立ち往生する兵士たちの隙間を抜けて遊次とオスカーの元へ集まった。一点に身を寄せた一同の中で、怜央が周囲を鋭く睨みつけながら声を低くする。

 

「安心すんのはまだ早ェ。とっととトンズラこかねえとキリがねえぞ」

遊次は力強く頷き、迷いなく前を見据えた。

 

「イーサンと合流するぞ!」

遊次を先頭に一行が一斉に地を蹴った。手出しできぬまま、歯噛みして見送るだけの兵士たちを置き去りにして、一行は路地の奥へと走り去る。遠ざかるその背後から、一人の兵士が必死の叫びを上げた。

 

「その娘をここに置いていけ!そうすればお前達の命は見逃してやる!」

 

背後から突き刺さるような叫びが、逃走する遊次の足を強引に止めさせた。つられるように灯たちも速度を落とし、忌々しげに兵士たちを振り返る。遊次は踵を返し、追いすがろうとする男たちへ射抜くような鋭い視線を突き刺した。

 

「お前らよぉ…王の命令だかなんだか知らねえけど、こんな小せえ子を必死に狙って、恥ずかしくねえのかよ!」

 

叩きつけられた気迫に、兵士たちは一瞬だけ気圧され、たじろぐ。だがすぐに顔を強張らせ、自らを正当化するように叫び返した。

 

「その娘は禁忌に触れたのだ!生かしておくわけにはいかん!」

 

すると静かに、オスカーが遊次の隣へと歩を進めた。凍てつくような冷徹さを纏い、男たちの妄執を切り捨てるように言葉を継ぐ。

 

「禁忌など、貴様らの都合に過ぎん。俺は世界を救うために此処まで来た。この少女はそのための鍵だ。誰にも渡さん」

 

自分を守るように並び立つ背中を、トトは揺れる瞳で見つめていた。その潤んだ瞳から、こらえきれない涙がゆっくりと滲み出す。

 

「その娘の捕縛は王勅なり!守るというのなら、お前達も反逆罪だ!生かしてはおけん!」

 

対峙する兵士が、怒りに顔を歪ませて吠えた。最後通牒とも取れる叫びが路地に響く。だが、遊次の瞳に宿った覚悟が揺らぐことはなかった。彼は突き放すような冷徹さと、燃えるような意志を込めて言い放つ。

 

「あぁそうかよ。じゃあその王様に伝えとけ。

トトを狙うなら、テメェをブッ飛ばすってな」

 

突きつけられた人差し指は、まさしく宣戦布告。

 

国を揺るがす不敬な言葉に、兵士たちは逆上し、一斉に喚き散らす。

 

遊次とオスカーは迷うことなく踵を返す。遊次は立ち尽くすトトの肩へ、優しく手を置く。そして兵士達の喧騒を背中で受け流しながら、力強く歩み出した。

 

 

第83話「宣戦布告」 完

 

 

 

ネフカ王宮、謁見の間。

ムルシドの裏切りとトトの捕縛失敗を受け、ついに暴君アスラナクと七使徒が動き出す。

 

遊次達はギルドを探し求め隣町を目指すも、兵士に見つかり追われてしまう。

死に物狂いで逃げる中、前方からも馬に乗った人影が。

 

遊次達は、この絶体絶命の窮地をどう乗り切るのか。

 

 

「骨を捨てるのは肉を喰らい尽くしてからだ。其奴にはまだ、たんまりと肉がついているぞ」

 

次回 第84話「暴君と使徒」

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