ネフカ王国の禁忌を知る少女「トト」を守ったことで、遊次ら6人は王国軍から追われる身となった。絶体絶命の窮地に陥った彼らの前に現れたのは、暴君アスラナクへ反旗を翻す「ギルド」の者たちであった。
迫りくる兵士を足止めすべく、灯はムウミン軍副指揮官「ヘム」の前に立ち塞がる。重い制約を課せられながらも、彼女はオースデュエルにてヘムを撃破。ムウミン軍を機能停止させることに成功した。指揮官ムウミンによって命令を上書きすることは可能だが、灯の突き付けた契約により、兵士たちは外部との連絡を取れず、王宮から離れた山の頂上へと向かわされることとなり、しばらくの間、指揮官と兵士たちが接触することすら叶わない状況が作り出された。
遊次は、ギルドの一員である魚屋の店主「モナ」の腰に必死にしがみついていた。彼女が操る馬は広野を走っている。長い間走っているため、足はもたつき、速度も落ちてきている。
モナの後ろに小さなトトを座らせ、そのさらに後ろからトトを挟み込むようにしてモナの腰にしがみつきながら、遊次は揺れる馬の背で息を詰めていた。広大な荒野を何十分も逃げ回るわけにはいかない。馬の体力にも限界がある。しかし遊次が後ろを振り返ると、背後からは未だに、硬い地面を蹴る馬の足音が執拗に追いすがってきていた。
しかし瞬間、遊次の体が宙へと投げ出された。
「うわっ!」
馬が石に躓き、大きく体勢を崩したのだ。
「遊次ッ!!」
イーサンは他のギルドメンバーの馬から弾かれたように振り返る。遊次は馬から振り落とされ、硬い地面へと激しく体を叩きつけられた。全身を打つ痛みに顔を歪めながらも、遊次は必死に上体を起こす。すぐ背後には、激しい蹄の音を響かせ、追手の騎兵が迫っていた。
このままでは捕まる。そう覚悟した瞬間だった。猛進する兵士の眼前に、一枚のソリッドヴィジョンの契約書が突如として浮かび上がる。
「…なんだと!?」
騎兵の馬がいななきを上げて急停止する。兵士は困惑した様子で、光を放つ契約書と遊次たちとを交互に見比べることしかできない。
「…遅ェぜ、灯の野郎」
怜央は灯の勝利を確信し、安堵の笑みを浮かべる。
「ふぅ…ようやくかい」
モナは手綱から片手を離し、どっと噴き出した額の汗を拭いながら大きく安堵の息を吐く。トトも強張っていた表情を少しずつ和らげていった。
「クソッ!もう少しだったというのに!しかも…なんだこの契約は…ッ!」
馬上に取り残された兵士は、空中に浮かぶ契約書を恨めしそうに睨みつける。そして忌々しげに舌打ちをすると、デュエルディスクを取り出して仲間への通信を始めた。
「…あぁ、信じられんが副指揮官は負けたのだ。それより…デシェルト山の頂上に向かえというのは何だ!?ここからどれだけかかると思っている!?おまけに外部との連絡も絶たれているぞ!」
デュエルディスク越しに喚き散らす兵士の怒声から、遊次は灯が突き付けた契約の全容を察した。
「灯のやつ…契約で遠くの山に兵を向かわせて、王宮から引き離すつもりなんだ。ったく、俺じゃそんなこと思いつかねえぜ」
遊次は痛みを忘れたように弾けるような笑顔を見せ、馬上のモナとトトを見上げた。仲間を心の底から誇るように胸を張る。その顔を見て、トトもほっとしたように小さく微笑んだ。
「…すごい方々なのですね、遊次様のお仲間は。副指揮官をもう2人も倒すなんて」
見知らぬ異人である遊次たちに対し、トトは少しずつ心を開き始めている。モナはそんなトトの柔らかな表情を見つめ、ぶっきらぼうに遊次へと言葉を向けた。
「ほら、とっとと行くよ。乗んな」
差し出されたモナの手を、遊次は一つ頷いてからしっかりと掴み、馬の背へと乗り込む。荒い息を吐く馬は疲労を滲ませた重い足取りで、兵士からゆっくりと遠ざかっていった。
荒涼とした岩山と、どこまでも広がる青い海。
その境界に根を下ろすように、巨大な港町が広がっていた。
ここは「ペルメリト」。
首都ヘカポリスの隣に位置するこの町は、石造りの建物が所狭しと立ち並び、街の奥には威風堂々とした神殿が聳え立っている。乾いた街並みに点在するヤシの木が緑の影を落とし、活気づく港には幾艘もの帆船が停泊していた。潮風に晒されて錆びついた倉庫の周辺には、人払いがされているかのように人影がない。
灯とヌーラからもデュエルディスクによって連絡があり、彼女たちもこの町に隠されたギルドの拠点を目指すということだった。遊次達は5人は布や服で顔を隠しながら、物陰に潜んで今後についてを話し合う。
「で、拠点ってのはどこにあるんだ?」
遊次の問いかけに対し、モナはすぐには答えず、僅かな沈黙を挟んでから口を開いた。
「この近くさ。ただ…アンタら異人を拠点に入れるなんて言ったおぼえはないよ」
「はぁ?!おいおい、そりゃねーだろ!?」
遊次は信じられないとばかりに両目を丸く見開く。その抗議の声に応じたのは、モナの隣に立つ背の高いギルドの一員だった。
「トトを助けてくれたのは本当に感謝してるよ。でも…まだ君たちを完全に信用したわけじゃない」
外界との交流を絶つネフカ王国において、外国人との溝はやはり深い。そのあからさまな拒絶に怜央が苛立ちを露わにし、言い返そうと息を吸い込んだ。だが、それより早くトトが前へと進み出る。
「この方々は頼まれてもいないのに私を助けてくれたんです!命の恩人です!ですから、どうか拠点に連れていってくださいませんか?お願いです…!」
トトの必死な訴えを正面から浴び、モナは痛ましげに顔を歪める。やがて観念したように短く息を吐き出した。
「…わかったよ。ただ、アタシらがよくても、"アイツ"が許すかは…」
「ダビデ様なら、私からも説得します!」
食い気味に返されたトトの言葉の勢いに、モナは反論を飲み込む。
「…わかった。アンタがそこまで言うなら、アタシは何も言わないよ。ただ、堂々と異人を連れて回るわけにはいかない。だからちょっとの間、我慢してもらうよ」
モナは顎をしゃくり、背後の古びた倉庫を指し示した。その言葉の真意は掴めなかったが、遊次たちは強く頷き、モナに続いて薄暗い倉庫の中へと足を踏み入れた。
「えっと…どういうことでしょうか?」
引きつった笑みを浮かべるアリシアの視線の先には、大きな布が被せられた三台の荷車が並んでいた。
「言っただろう。アンタらを堂々と連れて歩くわけにはいかない。それとトトもね。だからこん中に押し込めて拠点まで運ぶ。いいね?」
躊躇して足を止めるアリシアの横を抜け、怜央が素早く荷車の縁に手をかける。そのまま身軽に飛び乗ると、ぶっきらぼうに振り返った。
「何やってんだ。早くしろ」
怜央はすでに荷車の上で膝を抱え、布を被る姿勢に入っている。その様子を見たオスカーが一歩前へ出た。
「仕方あるまい。神楽遊次とイーサン・レイノルズ。鉄城怜央、アリシア、トトはそれぞれ同じ荷車に乗れ」
淡々と割り振りを口にしたオスカーは、自ら最後の一台へと乗り込んだ。一人で空間を独占し、悠々と長い足を伸ばす。
「お前…何さらっとVIP席確保してんだ…。まぁいいけどよ」
涼しい顔でくつろぐオスカーに呆れ果てながら、遊次も指示された荷車へと身を滑り込ませた。
「案外、体格的にも適切な振り分けかもしれないな…」
わざわざ文句を言うほどでもないと判断し、イーサンも遊次に続いて同じ荷車に乗り込む。
「アリシア様、よろしくお願いします」
トトは無垢な笑みで最後に取り残されたアリシアの服の裾を小さく引いた。見上げる彼女の視線を受け、アリシアも意を決して荷車へと足を踏み入れた。
全員が乗り込んだところで、モナは改めて6人へと呼びかける。
「んじゃあ、拠点に向かうよ。もう1度言うけど、ちゃんと"我慢"するんだよ!」
ギルドの拠点へと向かう道程は、想像を絶する過酷さだった。遊次たちを押し込んだ3台の荷車は、馬に引かれて荒れた道を進んでいく。車輪が地面の凹凸を拾うたび、強烈な振動がダイレクトに体を打ち据え、三半規管を刺激する。
(き…きもぢわどぅい……)
遊次は両手で口を覆い、胃の奥から込み上げるものを必死に呑み込んだ。今はただ、一刻も早く拠点へ到着することを祈ることしかできなかった。
荷車に揺られること十数分。不規則な揺れがゆっくりと収まり、やがて完全に停止した。バサリと頭上の布が払われる。視界に飛び込んできたのは薄暗い天井だった。冷たい土の匂いが鼻腔を抜けていく。上体を起こすと、そこは古びた小さな建物の中だった。
「ここは…」
荷車から降り立った遊次は、辺りを見回した直後、勢いよく両手で口元を塞いだ。そして脱兎のごとく、凄まじい速度で建物の外へと駆け出していく。
「お、おい!」
慌ててイーサンが後を追う。外へ出た彼の視線の先には、海に向かって激しく嘔吐している遊次の背中があった。
「ったく…あんまり外に出るな。見つかるぞ」
全てを吐き出し、肩を上下させて深呼吸をする遊次。イーサンはその襟首を掴むと、半ば引きずるようにして再び建物の中へと連れ戻した。一部始終を見ていたオスカーは腕を組み、呆れ果てたように目を閉じて言い放つ。
「だらしのない奴だ。その体たらくでは世界など救えん」
「そ、それとこれとは…関係ねえだろ…」
青白い顔をした遊次は、手の甲で口元を拭いながら必死に言い返した。
「オスカー氏の言う通りだ。この先が…ウッ…!思いやられるな」
「あなたもギリギリじゃないですか…」
口元を押さえ、頬を膨らませるアリシアに、灯は呆れた視線を送った。
「それで…ここがギルドの拠点…ですか?もっと秘密基地のような場所かと…」
トトが室内の様子を見回しながら小首を傾げる。そこは大きな木箱やしめ縄、無数の工具が無造作に置かれた、ただの作業場にしか見えなかった。外の光も入り込んでおり、到底身を隠せるような場所ではない。
「ここはほんの入り口さ。来な」
モナが表の扉の鍵をしっかりと閉める。ギルドのメンバーたちはそのまま奥へと進み、古びた扉を開け放った。その先には、地下へと真っ直ぐに続く長い階段が口を開けている。遊次たちは彼らの背中を追って薄暗い階段を下っていった。
階段を降りきった先の空間には、剥き出しの太い木材と鉄枠で組まれた無骨な昇降機が設置されていた。工事現場で資材を運ぶために使われるような、簡素な造りの足場だ。太いワイヤーが頭上の滑車から伸びており、ここからさらに深い地下へと降りられるようになっている。
モナたちが軋む音を立ててその足場へと乗り込む。底の知れない暗がりに向かうその装置に、遊次たちも少しおそるおそる足を踏み入れた。
軋む音を立てていた昇降機が、鈍い衝撃と共に底へと到着した。
「うおぉ…すげえ…」
足場から降り立った遊次たちの眼前に広がっていたのは、ひんやりと湿った空気が漂う広大な地下空間だ。仄かな明かりが薄暗く照らす堅牢な石造りのアーチが奥深くへと連なり、驚嘆する遊次の声が響く。石畳の細い通路の下には、プールを思わせるような深い穴が通路に沿うように通っている。
「広いな…。この空間全てがギルドの拠点ですか?」
イーサンは、奥へとどこまでも続く水路を見据えながら問いかけた。その声に、同行していた若いギルドメンバーが答える。
「そうです。ここは今は使われていない地下水路。ギルド立ち上げにあたって、ムルシドさんがここの修繕を自ら請け負い、僕らは作業員として正式にここに入っているんです」
「なるほど…」
アリシアは思わず感嘆の声を漏らし、周囲の堅牢な石壁を見渡した。王宮の管轄下である以上、外部の人間は決して立ち入れない。逆に作業員という名目があれば、ギルドの者は誰に咎められることもなく出入りができる。革命組織の拠点が地下に隠されているなど、王国軍も夢にも思わないだろう。それはムルシドの神官という地位があってこそ成立する、あまりにも大胆な発想だった。
「この先に仲間がいる。トト、皆アンタに会いたがってるよ」
モナが優しく微笑みかけると、トトは小さく瞳を揺らし、やがて花が綻ぶような満面の笑みを浮かべた。何ヶ月にも及ぶ王国軍からの逃亡生活は、確実に彼女の心身をすり減らしていたはずだ。しかし今の彼女の横顔は、久々の再会に対する期待と喜びに満ちあふれている。歩みを早めるトトに続くように、一同は地下水路の奥へと進んでいった。
地下水路の石畳を進むと、アーチ状の天井を持つ広い空間へと出た。松明が照らす石造りの部屋には木の机や棚、工具が置かれ、拠点内の作業場となっているようだった。部屋の中央では数人の大人が机を囲んでおり、その傍らには男の子と女の子の姿もあった。
足音に気づいた子供たちがこちらを向き、トトの姿を見つけて目を丸くする。
「トト!」
2人の子供が一斉に走り出し、勢いよくトトに飛びついた。トトも嬉しそうに二人をぎゅっと抱きしめ返す。
遊次たちはその様子を、ヌーラたちの後ろから見つめていた。革命組織の拠点に子供がいるのには驚いたが、彼ら自身がアスラナク打倒を掲げて活動しているとは考えにくい。おそらくは、その親がギルドの一員なのだろうと推測できた。
「トトぉ!会いたかったぜぇ!ほらよっ!」
奥から近づいてきたのは、筋骨隆々の大柄な男だった。浅黒い肌の太い腕には幾何学模様の刺青が刻まれ、長く編み込まれた黒髪には幾つもの金の輪がはめ込まれている。ひときわ目を引くのは、鼻につけられた大きな金のピアスだ。男は満面の笑みを浮かべたまま、ひょいとトトの体を持ち上げると、そのまま勢いよくぐるぐると回転し始めた。
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張り詰めていた糸が切れたように、トトの顔に年相応の無邪気な笑みが広がる。男は抱え上げていた小さな体をゆっくりと石畳へ降ろした。
「ムルシドの爺さんの所にずっといたんだろ?あの人は何してんだ?」
男の気さくな問いかけに、トトの表情がサッと曇る。先ほどまでの陽気な空気は消え失せ、痛みに耐えるような沈痛な面持ちで俯いた。
「ムルシドさんは…捕まってしまいました。王国軍が押し寄せてきて、私を庇って…」
「なんだと…」
予想外の悲報に、男の屈強な体が一瞬強張る。絶句する彼の背後の死角から、足音すら立てずに一人の女が進み出てきた。
「それより…その後ろの奴らは?」
彼女は黒いライダースーツに身を包んだ、20代後半ほどの女だった。浅黒い肌に短い黒髪がよく映えている。薄暗い地下水路の中だというのに黒いサングラスをかけており、指先でレンズをわずかに下げると、奥から品定めするような鋭い猫の目のような琥珀色の瞳が覗いた。
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「よ、よく見たらニーズヘッグの社長もいるぞ…!なんで…」
彼女の言葉と同時に、部屋にいた者たちの視線が一斉に遊次たちへと向けられた。どの目にも明らかな警戒の色が浮かんでいる。
すると、大人たちの足元から、トトがその空気を振り払うように声を上げた。
「その方々は、デュエリアからの使節で、私を王国軍から助けてくれた恩人です!でもそのせいで王国軍から狙われていて…」
「デュエリアの?どういうことだ?そもそもなんで異人がこの国にいるんだよ」
髪を編み込んだ鼻ピアスの巨漢が、腕を組んで怪訝な目を遊次たちに向ける。デュエリアから使節が来訪していることは、一般人には伝わっていないようだった。
向けられた疑念の視線を受け止め、遊次が一歩前へ出る。
「俺らは世界を救う方法を見つけるためにこの国に来たんだ」
突拍子もない発言に、ギルドの面々が怪訝そうに首を傾げる。その場の戸惑いを代弁するように、背後からモナが呆れた声を上げた。
「何言ってんだいアンタ。ますます怪しいね…」
彼らを拠点へ連れてきたモナ自身、デュエリアからの来訪の目的までは知らされていなかった。その様子を見たライダースーツの女が、不満げな声を投げかける。
「ねぇモナ、なんでそんなわけのわからない連中をこの拠点に入れたの。部外者が…ましてや異人が入っていい場所じゃないのはわかってるでしょう」
「アタシも最初は反対したんだけどねぇ…」
彼女の鋭い視線を浴び、モナは気まずそうに頭を掻きながらトトへと目を向けた。その張り詰めた空気を切り裂くように、トトが声を張り上げる。
「彼らは今も王国軍に狙われています!それに、世界を救うために来たというのも本当なのです!ムルシド様も彼らを信頼して、全てを託そうとしたのです!」
必死に訴えかけるトトの言葉に、正面から反論する者はいなかった。だが「世界を救う」という言葉の意味を呑み込み、突然現れた遊次たちを心から信用するには、まだ誰もが頭の整理をつけられずにいた。
「本当は国王と話し合いしに来たんだけど、どうも話が通じない相手みたいだし、トトを連れて兵士から逃げてたから、そんな状況じゃなくなっちまって…」
遊次は警戒を解かせようと必死に事情を説明する。だが、その言葉を遮るように怜央が一歩前へ出て口を開いた。
「アスラナクって野郎を倒さねえと、どうやら世界は救えねえらしい。お前ら、アスラナクを倒したいんだろ。だったら四の五の言わねえで俺らに協力しろ」
一切の取り繕いもない怜央の言葉に、鼻ピアスの巨漢が顔をしかめて怒鳴り返す。
「なんだチビ!そもそもその世界を救うとかいうのがわけわかんねえってんだよ!誰が信用できっか!」
「んだと…?」
巨漢が怜央をギロリと見下ろし、怜央も微塵も怯むことなく鋭い眼光で睨み返す。元より異邦人への排他意識が根強い彼らに、これ以上言葉を尽くしても理解を得られないことは明白だった。険悪な空気を断ち切るように、オスカーが前へ出る。
「ギルドのリーダーは誰だ。その者と話がしたい」
オスカーの一声に、ギルドの面々は一斉に奥の扉を振り返った。やがて扉が開き、中から一つの影が姿を現す。
「リーダーは俺だ」
歩み出てきた声の主の姿に、遊次たちは驚きを隠せなかった。革命組織を率いるトップ。その正体は、16,7歳の、明らかに自分たちよりも年下の少年だったからだ。
浅黒い肌に、琥珀色の瞳。側頭部を短く刈り上げ、逆立った髪は鮮やかな黄色と白色の二色に分かれている。首から下には銀色と赤銅色を基調とした重厚な金属鎧を着込み、胸当ての中央には六芒星の意匠が大きくあしらわれていた。
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「ダビデ様…!」
トトが顔を綻ばせると、ダビデと呼ばれたその少年は彼女の頭をぽんぽんと優しく撫でた。しかし遊次たちへと向き直った瞬間、その表情は鋭く引き締まる。
「まずは…トトを助けてくれてありがとう。本当に、感謝する」
ダビデは深く頭を下げる。言葉一つで大人たちを諫める姿に、アリシアは彼がリーダーである理由を感じ取った。だが次の瞬間、ダビデは顔を勢いよく上げ、遊次たちに人差し指を突きつける。
「でも異人は入れねえっ!!とっとと出ていけっ!!」
先ほどの落ち着いた態度は一変し、大口を開けて声を荒らげる。それは年相応の少年の姿であり、他の者と変わらぬ違法人への明確な拒絶だった。
呆れたように大きく息を吐き出し、遊次がダビデの正面に立つ。
「話ぐらい聞いてくれたっていいだろ?さっきも言ったけど、俺らはアスラナクと戦わなきゃならないと思ってる。目的は同じだ」
歩み寄ろうとする遊次に対し、ダビデは間髪入れずに言い放つ。
「信用できねーな!母ちゃんも言ってたぞ、味方みたいなツラして近づいて来る奴ほど信用するなってな!」
「か、母ちゃんって…」
そのあまりにも少年然とした言葉に、遊次たちは唖然とした。先ほどまで感じていた革命組織のリーダーとしての威厳はすっかり崩れ去り、彼に対する認識はただの少年へと書き換えられていた。
「ダビデ様!この方々は命がけで私を助けてくれたんです!ムルシド様は言っていました、彼らこそアスラナクを倒すために必要な存在だと!」
「ムルシドさんが…?」
トトの必死の説得に、ダビデも驚きを見せる。しかし彼が考えこんでいる間に、後ろからライダースーツの女の声が割って入った。
「ムルシドさんも騙されてるかもしれないわよ。そもそもその異人たちは、アスラナクが許可したからこの国に入れたんでしょ。なのにアスラナクと対立するなんておかしな話じゃない。何か裏があるかもしれないわ。もしかしたら…この拠点のことを奴らに報告する気かも」
「た、確かに!シャムサは相変わらず頭いいなっ!」
シャムサと呼ばれたライダースーツの女の言葉に、ダビデは再び水を得たように顔を上げた。
「つまり、そういうことだっ!異人なんて信用できねーよ!大昔、異人がこの国にすげー攻撃しにきてたって、父ちゃんも言ってたしなっ!」
「今度は父ちゃんかよ…。お前、親の受け売りばっかりじゃねーか!」
辛抱強く言葉を紡いでいた遊次も、これにはたまらず声を荒らげた。
「はぁ~!?ちげーしっ!じーちゃんもばーちゃんも、みーんな言ってたってのっ!異人には気を付けろってな!」
「そういうことじゃねえよ…」
「コイツ、本当にリーダーなのか?」
遊次と怜央は揃って天を仰ぎ、深々と溜め息をこぼす。埒が明かない状況を見かねて、イーサンが一つ咳払いをした。彼は手元のデュエルディスクを操作し、空間にソリッドヴィジョンの契約書を浮かび上がらせる。
「副指揮官を追い払ったのは事実だ。オースデュエルの契約書があるからな」
「そんな紙切れ1枚、偽造でもなんでもできるじゃない」
シャムサは契約書を軽く一瞥すると、鬱陶しそうに手で払った。ダビデもそれに同調するように力強く頷き、遊次たちを真っ向から睨みつける。
「とにかく、異人の協力なんかなくたってアスラナクを倒す!俺らは最初からそのつもりで集まってんだからなっ!」
この国に根付く異邦人への敵対心は、あまりにも強固だった。遊次は苛立ちを抑えきれず、ガシガシと後頭部をかきむしる。次第にその手つきが荒くなり――突如、堰を切ったように声を張り上げた。
「だぁーー!!もういいわこのやり取り!!」
唐突な大声に、ギルドの面々はビクッと肩を震わせて遊次を注視する。背後のアリシアも何事かと目を見開いていたが、イーサンや怜央たちは止めるでもなく、日常茶飯事だと言わんばかりに軽い笑みを浮かべて見守っているだけだった。
「おいダビデとかいうお前!母ちゃんとか父ちゃんの教えを大事にしてんのはいいことだけどなぁ、人を見かけで判断すんなってのは教わんなかったのかぁ?!」
遊次は指を突き付け、ダビデにずかずかと迫る。突然の剣幕に、ダビデは目を見開いて後ずさった。しかし、すぐに負けじと言い返す。
「お、教わってるってのっ!でも特に異人には気を付けろとも言われてんだよ!」
「あぁそうかよ!じゃあお前の親にいっぺん会わせろ!間違った教育すんなって文句言ってやっからよぉ!」
その言葉が引き金だった。ダビデの顔から子供っぽさが消え失せ、鋭い怒りが宿る。彼は一気に踏み込み、遊次の胸倉を力任せに掴み上げた。
「ふざけんな!帰れよ!!」
ダビデは遊次を乱暴に突き放す。よろめく遊次の前へ、今度はダビデの背後から鼻ピアスの巨漢が進み出てきた。
「でもよぉダビデ、こいつらスパイかもしれねえんだろ?拠点を知られた以上、もう帰すわけにもいかねェんじゃねえのか?」
巨漢は太い指の関節をパキパキと鳴らしながら、じりじりと距離を詰めてくる。ダビデはハッとして巨漢を見たが、すぐに迷いの滲む顔で口を開いた。
「確かにそうだけど…暴力はダメだって、母ちゃんが言ってた。だから…」
ダビデは懐に手を入れると、折り畳まれたデュエルディスクを取り出して構える。
「コイツで勝負だ!お前らがスパイかどうかは、すぐにわかる!」
ダビデの言葉に、遊次は不敵に口角を上げた。懐へ手を伸ばし、自身のデュエルディスクを引き抜く。
「俺もそれがいいと思ってたんだ。デュエルは魂の会話…俺が一番好きな、父さんの言葉だ」
怒りを露わにしていたダビデは、遊次の楽しげな表情と意外な言葉に一瞬目を丸くした。だが、すぐに気を取り直して噛み付く。
「…なんだよ、オメーも親の受け売りじゃねえか」
遊次は、胸倉を掴むダビデの腕をゆっくりと引き剥がした。そのまま左腕にデュエルディスクを固定し、真っ直ぐに視線を返す。
「確かに父さんがくれた言葉だ。けど、今は俺自身の言葉でもあるぜ」
ダビデは再び呆気に取られる。目の前にいるのは信用できない異人であるはずだ。それも自分の両親の教育を間違っているなどと言ってのけた失礼な異人だ。だが何故か、その言葉や表情の節々から自然と滲み出るものに、静かな重みのようなものを感じた。それが何なのかはまだわからないまま、ダビデはただその気配に押されていた。
それを振り払うように、ダビデはデュエルディスクを装着し、声を張り上げる。
「オースデュエルだ!俺が勝ったらお前らの目的を全部喋ってもらうっ!それと拠点のことは誰にも言わないこと!後ろのオメーらもなっ!」
ダビデはイーサンや怜央たちをも睨みつける。本人の同意があれば、他者のオースデュエルに自身を含めることが可能だ。代わりに遊次たちも目的を契約に盛り込める以上、決して不公平な条件ではない。
だが、遊次の口から出たのは予想を裏切る言葉だった。
「俺から提示する契約は、無い」
「…はぁ!?」
ダビデは理解ができず、驚きの声を上げる。後ろに控える仲間たちも一様に顔を見合わせていた。
「契約で無理やり言うことを聞かせても、心から信じてもらえるわけじゃねえだろ。それじゃダメだ。俺たちが本気で世界を救うために、トトを救うために…アスラナクを倒そうとしてるんだって、わかってもらわなきゃ意味がないんだよ」
しかしそれでは、仮に勝利しても再び反発され、話が平行線を辿る可能性が残る。今はひとまずは身を隠し、どうすべきか考えるべきだとアリシアは考えていた。拠点に留まるためには、今は契約によって無理にでも話を収束させるべきだと。
しかし、イーサンや怜央たちに異議を呈する素振りはない。オスカーも何も言わず、ただ目を瞑って腕を組んでいる。そこでアリシアの脳裏によぎったのは、デュエリアシンフォニーホールで見た、奇跡にも等しい遊次のデュエルだった。
(…確かに神楽君の言うことも一理ある。ここは、彼を信じるしかないか)
アリシアは口を開くことなく、再び前を見据えた。
ダビデの胸中に、さらに理解不能な感情が渦巻く。目の前の男から感じる、この言葉にできない感覚は何なのか。ダビデはそのもやもやを強引に振り払うように、声を張り上げた。
「そうか、オメーがそうしたいってんなら勝手にしろっ!」
ダビデがデュエルディスクを構え、遊次もまた同じように構えを取る。
「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」
プレイヤー1:ダビデ・サーディク
条件①:神楽遊次および同行者5名が、ネフカ王国に入国した目的を虚偽なく開示すること
条件②:神楽遊次および同行者5名が、ギルドの拠点に関する情報を一切口外しないこと
プレイヤー2:神楽遊次
提示条件無し
詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。
遊次とダビデは指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。そして開けた地下水路へと歩いてゆき、対峙する。
トトは複雑な面持ちで2人の姿を見つめる。彼女は遊次たちを信頼している。しかし同じく大切な仲間であるダビデ達は、彼らを拒絶する。トトの中でも、もはや何が正しいのかを見失いかけていた。
「契約内容を承認します。デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」
「デュエル!」
遊次のデュエルディスクのランプが緑色に点灯する。
「俺のターン!フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』発動!」
■妖義賊の秘密回廊
フィールド魔法
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの発動時の処理として、「予告状」魔法カード1枚をデッキから手札に加えることができる。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター、または元々の持ち主が相手となるモンスターを対象とする
相手フィールドのモンスター効果が発動した場合に発動できる。
発動した効果を無効にする。
③:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスターがリリースされた場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
古い石畳の床が1枚ずつ広がってゆき、フィールド全体に張り巡らされる。壁には重厚な木材が使われている。茶色く染まった柱が霧の中にぼんやりと浮かび、暗い空間の中に優美な雰囲気を感じさせる。
「このカードの発動時、デッキから『予告状』魔法カードを手札に加えられる。俺は爆炎の予告状を手札に加えるぜ」
「自分フィールドにモンスターがいない時、コイツは手札から特殊召喚できる。
来い『妖義賊-脱出のシェパード』!」
■妖義賊-脱出のシェパード
効果モンスター
レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
●相手はデッキからモンスター2体を選ぶ。自分は選んだモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。カーキ色のジャケットを羽織り、下からは白いシャツの襟が見える。
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「シェパードの効果発動!自身をリリースすることで、相手の墓地かデッキのモンスター2体を、攻守0、効果を無効にして奪うことができる。さあ、デッキからモンスターを2体選んでくれ」
「な…やっぱお前、ロクでもねーヤツだなっ!しょっぱなから泥棒かよ!」
「ど、泥棒じゃねえ!義賊だ!」
相手のカードを奪うという戦術については、これまでも幾度となくツッコまれてきた。ましてや今は、自分たちが信用に足る人間だと証明するためのデュエルの真っ最中である。痛いところを突かれ、遊次はバツが悪そうにたじたじとなるしかなかった。
「父ちゃんが言ってた…鍵はちゃんとかけろって。こういうことだったのか…」
「それはマジの泥棒の話だろうが!」
「まさか、遊次を超えるバカが見れるとはな。これも貴重な旅の経験ってヤツか」
怜央はダビデを見つめながらしみじみと呟いた。
ダビデは少し悩んだ後、デッキから2枚のカードを抜き出し、遊次へと投げ渡す。遊次は受け取ったカードをまじまじと見つめ、フィールドへと特殊召喚した。
「俺はお前から奪った『メタリカメタル アダマンテ』と、『メタリカスミス ヴェルンド』を特殊召喚!」
2体のモンスターがフィールドに現れる。
「メタリカメタル アダマンテ」は、全身が鋭角的な黒青色の結晶体で構成された小さなモンスターだ。胸部の大きな結晶と頭部の双眸が青白く発光し、両の腕には巨大な結晶の拳を備える。身体の周囲には、三日月型の結晶の破片がいくつも円を描くように浮遊している。
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「メタリカスミス ヴェルンド」は、豊かな褐色の髭を蓄え、太く逞しい腕を備える鍛冶師のモンスター。金の星型の意匠を持つ重厚な黒鉄の鎧と、銀色の葉が連なるような肩甲を纏い、片手には巨大な四角い鉄槌を握っている。
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「この瞬間、フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』の効果発動。妖義賊がリリースされた時、1ターンに1度、カードを1枚ドローできる。さらに手札から魔法カード『爆炎の予告状』発動!」
■爆炎の予告状
通常魔法
①:このカードは発動後、墓地に送られる。
このカードの発動から2ターン後の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
②:このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
相手フィールドのカードを全て破壊する。
しかしフィールドには何も起きず、発動された魔法カードはただ墓地へ送られる。
「ほぇ…?何も起きねーぞ?」
首を傾げるダビデに、遊次は得意げに語り始める。
「コイツは予告状だ。2ターン後に墓地から除外されて…除外された時に相手カードを全部破壊するカードだ!」
「なんだって!?でも破壊は2ターン後だってんなら、とりあえず次の俺のターンは関係ねーってことだな!」
ダビデの反応を見て、遊次は口角を上げる。予告状カードは確かに2ターン後に除外されるが、破壊効果の発動自体は2ターン後である必要はなく、除外された瞬間に発動する。それを意図的に隠し相手を欺くのは遊次の十八番だが、それに簡単に引っかかるダビデに、イーサンは頭を悩ませる。
(これは、すぐに勝負がつきそうだな。でもただ勝つだけじゃ、俺達を信用してもらうための"会話"ができない…)
「俺は手札から『妖義賊-早撃ちのキッド』を召喚!」
■妖義賊-早撃ちのキッド
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1700 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
手札から「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カードを捨て、
相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
フィールドへ躍り出たのは、ガンマンの装いを纏う少年のモンスター。目深に被ったハットの奥で、まだあどけなさの残る顔つきに不敵な笑みを浮かべている。その小さな体には不釣り合いなほど重厚なリボルバー銃を左手で構えている。
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「キッドの効果発動!召喚時、手札から妖義賊を1体、特殊召喚できる。『妖義賊-駿足のジロキチ』を特殊召喚!」
■妖義賊-駿足のジロキチ
効果モンスター
レベル4/地/獣/攻撃力1600 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「ミスティックラン」モンスターを1枚手札に加える。
②:このカードがリリースされた場合、
相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
現れたのは、薄茶色のほっかむりで頭部を包み、濃緑のマントを羽織る二足歩行のネズミのモンスター。黒灰色の顔には鋭く吊り上がった黄色の双眸と丸いピンク色の鼻先を備える。体には裾の破れた橙色の衣服と暗灰色の短いズボンを身に纏い、腰の太いベルトに小さな革袋を下げる。背後からは長く節のある尾が伸びている。
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「ジロキチが召喚した時、効果発動!デッキから妖義賊を1体、手札に加えることができる。手札に加えるのは『妖義賊-戴火のプロメテ』。そしてそのままPゾーンにセッティング!」
遊次の頭上に、火の玉に手足のついたモンスターが浮かび上がる。
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「プロメテのP効果発動!相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、デッキの上から5枚めくって、その中から妖義賊カードを1枚手札に加えられる」
遊次はデッキの上から5枚をめくり、表へと向ける。そしてその中から1枚の魔法カードを手札に加え、残りをデッキの一番下へと戻す。
「俺は罠カード『妖義賊の下準備』を手札に加えるぜ。さらにプロメテのP効果発動!妖義賊がフィールドにいる時、効果を無効にしてPゾーンから特殊召喚できる」
プロメテは遊次の頭上からゆらりとフィールドへ降り立つ。
「俺は、お前から奪った『メタリカスミス ヴェルンド』と『妖義賊-駿足のジロキチ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!このモンスターをXする時、相手から奪ったモンスターはレベル4として扱う!」
2体のモンスターが眩い光の奔流と化し、地面に現れた黒い銀河の渦へと吸い込まれていく。
「夜に這い寄る不敵な魔の手、その技巧で勝利を奪い取れ!」
口上を唱えると、黒い銀河が逆流し、新たなモンスターが姿を現す。
「エクシーズ召喚!ランク4!『妖義賊-怪盗ルパン』!」
■妖義賊-怪盗ルパン
エクシーズモンスター
ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500
レベル4モンスター×2
元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。
②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。
自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れたのは、黒いハットを被りマントを纏った怪盗の姿。手には白い手袋、目元には白い仮面を着けている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC
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「さらに、俺はレベル4のキッドに、レベル4のプロメテをチューニング!」
「亡霊の囁きが幻影の賢者を呼び覚ます。光なき檻より甦り全てを欺け」
口上と共に、光輪の中心を巨大な光の柱が貫き通す。溢れ出した輝きが、フィールドを白一色に塗りつぶした。
「シンクロ召喚!現れよ!
『妖義賊-幽玄のカリオストロ』!」
■妖義賊-幽玄のカリオストロ
シンクロモンスター
レベル8/闇/悪魔/攻撃力2700 守備力1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをS素材としている場合、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
②:相手フィールドのモンスターが効果を発動した場合、
自分フィールドの元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地へ送って発動できる。
その効果は「このカードのコントロールを相手に移す」となる。
それは全身を幾重にも巻かれた黒布に覆われ、まるで意志を持つかのように、布が風もなく舞い踊る姿。眼孔の奥で鈍く輝く紅き両目が滾り、左右の腕には鋭く湾曲した双刃を携えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/k8GA3wQ
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「プロメテがフィールドからEXデッキの表側に加わった時、効果発動。このカードをPスケールにセッティングできる」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。カリオストロは、相手から奪ったカードを墓地に送ることで、相手が発動したモンスター効果を書き換えることができる。さらに『妖義賊の秘密回廊』は、俺のフィールドの妖義賊か相手から奪ったモンスターを対象にする効果を、1ターンに1度無効にできる」
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【遊次】
LP8000 手札:2
①妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
②妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700
③メタリカメタル アダマンテ DEF0
フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊
伏せカード:1
Pゾーン:妖義賊-戴火のプロメテ
【ダビデ】
LP8000 手札:5
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遊次の展開したフィールドを見渡し、ダビデは不思議そうに首をかしげる。
(あのXモンスター…出てきた割に特に俺を邪魔する効果はねーぞ?)
空間に浮かび上がるソリッドヴィジョンのカード情報に目を凝らす。テキストの文字を追っていたダビデは、ある一文に気付いてハッと前のめりになった。そのまま遊次を指差し、声を荒げる。
「お前、騙しやがったなっ!この予告状とかいうカード、破壊効果の発動は墓地から除外された時じゃねーか!だったらこの俺のターンにも発動できるじゃねーかよっ!」
「俺は2ターン後に破壊されるなんて一言も言ってないぜ?」
遊次は肩をすくめ、あっけらかんと答える。ダビデにもテキストから戦術を正しく理解する最低限の盤面把握力はあるようだ。
「ふざけんじゃねー!人のモンスター盗むし嘘もつくし、やっぱ異人は信用なんねー!絶対にぶっ倒す!」
ダビデは怒りのままに声を上げ、デッキトップへ勢いよく指を掛けた。
「俺のターン、ドロー!手札から『メタリカスミス イルマリネン』を召喚!」
■メタリカスミス イルマリネン
効果モンスター
レベル3/地/戦士/攻撃力1400 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「メタリカメタル」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターは以下の効果を得る。
●このカードをS素材としたSモンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果で破壊されない。
②:自分メインフェイズに発動できる。手札から「メタリカメタル」モンスター1体を特殊召喚する。
白髪の短髪と顎髭を蓄え、左目の周囲を青い金属の装飾で覆う、筋骨隆々の鍛冶師のモンスターがフィールドに現れる。黒を基調とする装束の上に青い意匠の入った装甲や分厚い前掛けを身に纏い、右手には四角い鉄槌を握っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sUNcaBG
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「手札にメタリカスミス、またはメタリカメタルがいる時、『メタリカキャバリア ヌアザ』は手札から特殊召喚できる!」
■メタリカキャバリア ヌアザ
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1700 守備力1800
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「メタリカメタル」モンスターまたは「メタリカスミス」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「メタリカ」モンスターは相手の効果で破壊されない。
③:自分フィールドの「メタリカ」モンスター1体をリリースして発動できる。
そのモンスターとはカード名の異なる「メタリカ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
赤髪に青い双眸を備えた青年のモンスターがフィールドに現れる。星の意匠が施された黒と濃紺の装束を纏い、腰には複数のベルトを巻いて長い裾を垂らしている。右肩を露出させた生身の腕で銀色の長剣を握り、対照的な左腕は、肩の付け根から指先までが重厚な銀色の機械で構成されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/r4mkzBt
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「このモンスターがいる限り、自分フィールドのメタリカは相手の効果で破壊されない!」
「なに、マジか!?」
新たな騎士のモンスターが出現したことで、遊次の最大の武器であった『爆炎の予告状』は機能停止してしまう。
「メタリカキャバリアは、メタリカを守る騎士だ!これでお前の予告状も効かねーぜ!バーカバーカ!」
子供のように囃し立て、ダビデはその勢いに乗って次なる手を打つ。
「イルマリネンの効果発動!1ターンに1度、手札の『メタリカメタル』を特殊召喚できる!来い!『メタリカメタル オリハルコン』!」
無防備なまでに躊躇のないその行動に遊次は一瞬の疑念を抱くが、僅かな思考の末にチェーンを重ねる。
「カリオストロの効果発動!お前から奪ったアダマンテを墓地に送って、その効果を『自身のコントロールを相手に移す』効果に書き換える!」
しかし、ダビデは全く動じることなく、待ち構えていたかのように手札のカードを切る。
「速攻魔法発動!『メタリカ・ゲッシュ』!メタリカを対象にした効果、またはメタリカの効果にチェーンした効果を無効にして除外する!」
■メタリカ・ゲッシュ
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「メタリカ」モンスターを対象とする相手の効果が発動した場合、または自分フィールドの「メタリカ」モンスターの効果にチェーンして相手が効果を発動した場合に発動できる。
その効果を無効にして除外する。
②:自分フィールドに「メタリカ」モンスターが存在する場合、墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
ヌアザが目にも止まらぬ速さで銀の刃を振り抜く。放たれた鋭い斬撃を浴びたカリオストロは雄叫びを上げ、フィールドから消失する。
「…やるじゃねえか」
遊次は苦笑いを浮かべる。その背後で、ギルドの一員が得意げに口を開く。
「ダビデの『メタリカ』デッキは突破力特化だ。小細工は効かないよ」
「さーて、こっからは伸び伸びやらせてもらうぜ。チェーン1のイルマリネンの効果で、手札から『メタリカメタル オリハルコン』を特殊召喚っ!」
■メタリカメタル オリハルコン
効果モンスター/チューナー
レベル1/光/岩石/攻撃力500 守備力500
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「メタリカ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードが「メタリカ」SモンスターのS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
現れたのは、全身が黄金色と緑青の混じった無骨な鉱石で構成された、小さなモンスターだ。鋭く上へ伸びる岩くれで形成された頭部の奥で双眸が黄色く発光し、丸い胴体はマグマのように赤熱した球体のコアを抱えている。太く短い四肢に鋭い爪を備え、身体の周囲には同じ鉱石でできたC字型の破片や音叉のような形状のパーツがいくつも浮遊している。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sUz8Gp5
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「『メタリカメタル オリハルコン』の効果発動!特殊召喚した時、デッキからメタリカ魔法・罠カードを1枚手札に加えることができるっ!俺は罠カード『メタリカ・パラディウム』を手札に加えるぜ!」
遊次はしばらく盤面情報を見つめた後、デュエルディスクに触れる。
「リバースカードオープン!『妖義賊の下準備』!デッキから予告状を1枚墓地に送って、相手の墓地の魔法・罠カード1枚を俺の場にセットする」
■妖義賊の下準備
通常罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
デッキから「予告状」カード1枚を墓地へ送り、
相手の墓地から魔法・罠カード1枚を選び自分フィールドにセットする。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「ミスティックラン」モンスター3体を選んで発動できる。
選んだカードをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「俺はデッキから『儀式の予告状』を墓地に送って、お前の墓地の速攻魔法『メタリカ・ゲッシュ』をいただくぜ」
「おい!また泥棒かよっ!」
遊次にセットされた自分のカードを見つめ、ダビデは再び憤慨する。
「まあ別にそんぐらい屁でもねーけどなっ!『メタリカスミス イルマリネン』の効果発動!フィールドのメタリカメタルに対して、S素材になった場合の効果を付与する!」
イルマリネンが光を帯びた鉄槌を構え、傍らに浮かぶオリハルコンへと幾度も打ち下ろす。打撃のたびにオリハルコンの身体は輝きを増していき、最後に両手で渾身の一撃を叩き込むと、その全身から眩い光が迸った。
「イルマリネンが打ったことで、オリハルコンをS素材にしたモンスターは、効果で破壊されず、効果の対象にならない。でもまだ終わらないぜ。『メタリカキャバリア ヌアザ』の効果発動!メタリカを1体リリースして、別のメタリカをデッキから特殊召喚できる。イルマリネンをリリースして『メタリカスミス レギン』を特殊召喚!」
■メタリカスミス レギン
効果モンスター
レベル3/闇/戦士/攻撃力1500 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「メタリカメタル」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターは以下の効果を得る。
●このカードをS素材としたSモンスターは、攻撃力が800アップし、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
②:自分の墓地の「メタリカメタル」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
イルマリネンがフィールドから姿を消し、代わって銀髪を後ろへ流し、口髭を蓄えた鍛冶師のモンスターが現れる。黒と濃紺を基調とする装束に鋭角的な銀色の金属装飾を纏い、左耳には銀の耳飾りが光る。両腕は黒い装甲と手袋で堅牢に覆われ、腰に巻くベルトには幾つもの小袋や工具を提げている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/YP01jE5
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「レギンの効果発動っ!メタリカメタル・オリハルコンに効果を与えるっ!」
レギンは鉄槌を大きく振りかぶり、オリハルコンの枷へと幾度も力強く打ち据えた。激しい金属音が空間に響き、鉄槌が叩きつけられるたびに眩い火花が散る。打ち込まれる熱と衝撃を吸収するように、オリハルコンの身体は激しく脈打ち、力を帯びて赤く輝き始めた。
「これでオリハルコンを素材にしたSモンスターは攻撃力が800アップして、2回攻撃できる。さーて…そろそろ見せてやるよ。俺の切り札を!」
ダビデは凛々しい笑みを浮かべ、肩をぐるぐると回し始める。切り札の登場を待ちわびるように、ギルドの子供たちはわくわくとした眼差しでダビデを見つめる。
「レベル3『メタリカスミス レギン』、レベル4『メタリカキャバリア ヌアザ』に、レベル1『メタリカメタル オリハルコン』をチューニングッ!」
オリハルコンが緑色の光の輪へと姿を変え、レギンとヌアザの身体を包み込む。2体が実体を失って7つの眩い光の星となり、輪の中で一直線に並ぶ。
「勇ましき魂、気高き刃金、熱情を込める匠。三位揃いて悪しき世を断つ刃とならん!」
瞬く星々を貫くように、太い光の柱が天井に向かって立ち昇った。
「シンクロ召喚ッ!俺の相棒!
メタリカパラディン シグルフリード!」
■メタリカパラディン シグルフリード
シンクロモンスター
レベル8/炎/戦士/攻撃力3300 守備力3000
チューナー + チューナー以外のモンスター2体
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分・相手ターンに相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
②:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
破壊したモンスターの元々の攻撃力分、相手にダメージを与え、このカードの攻撃力はその数値分アップする。
③:このカードが相手によって破壊され、このカードのS素材モンスター一組が自分の墓地に揃っている場合に発動できる。それらを墓地から特殊召喚する。
迸る光芒の先、若き王者の風格を湛えた精悍な男の相貌が露わになる。三つ編みを交えた黄金の長髪が熱風にたなびき、身に纏うのは、深紅と漆黒の金属光沢が入り混じる重厚な装甲。その両肩や胸部、膝の各所には、幾重にも重なり合う鋭利な金の星型結晶が多層的な装飾として配され、背からは銀の星座を散りばめた紺碧のマントが重々しく翻る。
シグルフリードが右の掌を正面へと力強く広げると、収束する光が一振りの大剣を形作る。星を象った巨大な鍔を戴くその剣は、赤く透き通る結晶の刃を宝石のように眩く輝かせている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/9DE0NQE
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「そいつが…お前の相棒か」
現れた騎士の放つ覇気に、遊次は圧倒されるほかなかった。
「この時、オリハルコンの効果発動!メタリカSモンスターの素材として墓地へ送られた場合、カードを1枚ドローできる!」
「シグルフリードは、2人のメタリカスミスが鍛え上げたオリハルコンを素材にした。これによってシグルフリードは効果で破壊されず、効果の対象にならない。さらに攻撃力が800アップして2回の攻撃が可能!」
効果で破壊されない以上、現れたSモンスターに対しても、爆炎の予告状の破壊効果は意味を成さない。
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【遊次】
LP8000 手札:2
①妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
伏せカード:1(メタリカ・ゲッシュ)
Pゾーン:妖義賊-戴火のプロメテ
【ダビデ】
LP8000 手札:4
①メタリカパラディン シグルフリード ATK4100
(破壊耐性・対象耐性・2回攻撃可)
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(戦士・鍛冶師・鉱石の3体によるシンクロ。鍛冶師が鍛えた鉱石は輝きを増し、それが騎士の刃となった時、強大な力となる。興味深いデッキだ)
オスカーはシグルフリードを見つめながら、ダビデのデッキを分析する。
「シグルフリードの効果発動!お互いのターンに1度、相手のカードを1枚破壊できる!このフィールド魔法があったら、お前のモンスターを対象に取る効果を無効にされちまうんだったよな。じゃあフィールド魔法を破壊だ!」
シグルフリードが大きく弧を描くように剣を振り上げる。放たれた斬撃が石畳の秘密回廊を叩き割ると、空間そのものが崩れ去り、フィールドは元の薄暗い地下水路へと姿を戻した。
遊次の頭の中には、これから起きることがまるで未来を見てきたかのように映像として広がる。
(このままじゃ、シグルフリードの攻撃でルパンが破壊される。その時、シグルフリードの効果で破壊したモンスターの攻撃力分、俺はダメージを受ける。さらにそのダメージ分、シグルフリードは自分の攻撃力を上げて、2回目の攻撃で俺にダイレクトアタックを仕掛ける。そうなりゃ、俺のライフは一気に0…!)
シグルフリードの底知れぬ突破力を目の当たりにし、遊次は思わず短く息を吐いて苦笑する。逃げ場のない状況下でありながら、彼は顔を上げ、ダビデへと声をかけた。
「どんだけ相手が邪魔してこようが、それを全部切り裂いて、自分の道を真っ直ぐ突き進む…面白ぇじゃん、お前のデュエル」
敵からの思いがけない称賛を受け、ダビデはあっけに取られたように目を丸くする。しかし即座に我に返り、ふいと顔を背けるように警戒の声を上げた。
「お、おだてたって無駄だぜっ!そんなんで攻撃やめたりしねーからな!」
「そのモンスターを見ればわかるぜ。お前は悪いヤツじゃねえ。だから…絶対にお前ともわかり合える!そのために俺は全力でぶつかる!」
迷いのない声を受け、ダビデの強張っていた表情がわずかに揺らぐ。これほど頑なに拒否しているというのに、なぜ彼は真っ向から踏み込んでくるのか。ただ自らの目的を果たすという打算だけで、ここまでの熱を向けられるものなのか。
心が傾きかけたその時、ダビデの脳内にある声が蘇る。それは、かつて父から告げられた重い戒めだった。
(いいかダビデ。異人だけは…絶対に信用するな!何があってもだ…!)
その記憶が、ダビデの中からすべての逡巡を消し去る。再び鋭い光を瞳に宿して前を見据え、遊次へと激しい反発の言葉を打ち返した。
「ぶつかるもクソもあるか!お前はここで負けるんだからなっ!バトル!『メタリカパラディン シグルフリード』で、怪盗ルパンを攻撃っ!」
このまま連続攻撃をまともに受ければ、遊次のライフは一気に失われてしまう。敗北すれば魂の対話は途切れ、彼らと心からの信頼を結ぶことは叶わない。
アスラナク打倒を掲げる革命組織『ギルド』。
目的を同じくする彼らとの連携こそが、絶対派の王を退け、地球に迫り来る悪星神を撃ち破るため、ネフカ王国の協力を得る足がかりとなる。
ここで負ければその道は遠のき、さらに遊次たちは再び王国軍の目に晒されることとなる。
果たして遊次は、彼らの心を動かすことができるのか。
第87話「革命組織"ギルド"」 完
シグルフリードの煌めく斬撃が、遊次のモンスターと激突する瞬間、遊次の脳裏にとある記憶が流れ込む。
それはダビデが戦いを決意した根源であり、"ある男"との因縁を示すものだった。
かつてない現象に困惑しながらも、遊次はダビデへと戦う理由を問いかける。
遊次の言葉は、ギルドを、そしてこの国を動かすことができるのか。
「他人とか関係ねーよ。俺は誰にも、泣いてほしくない。
だからこの国に来たんだ。世界を救うために」
次回 第88話「超絶最強の切り札」