スキル『ゴッドハンド』の転生拷問官。気がつけば、捕虜でハーレムを作っていた。   作:沙悟寺 綾太郎

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第一話 女騎士、陥落

 帝国領のとある町。 

 

 暗い地下牢。石の壁の隙間から漏れた水は壁をつたい、浅い溝に緩く流れていた。

 壁際に取り付けられた松明の赤が水面に滲む。

 

「くっ! 殺せ!」

 

 鈴の音のような美しい声が響いたのは、組み石の地下牢、その最奥。

 捕虜用の拷問部屋だった。

 

 中にいたのは、見目麗しい女。

 金色の長髪を赤い布で一筋に結び、荘厳な鎧に身を包みながらも、その両手を天井から垂れた鎖によって拘束された女騎士。

 

 対して、その正面に立っていたのは、腰に剣を携えた二人の衛兵。

 

「さっさと吐きな? げへへへ」

 

 男達の下卑た笑み。騎士は醜悪なものをみるような目で睨みつける。

 

「母国を売ってなるものかっ! さあ、殺せ! 貴様らも兵士の一端であれば、将の首は欲しかろうっ!」

 

 金色の髪が激しく揺れ、その度にその細腕に取り付けられた手錠が軋んだ。

 

「けっけっけっ。強情な女だ。情報を吐こうが吐くまいが、俺たちは正直どうだっていいのさ。何せ……」

 

 衛兵の一人は一歩また一歩と騎士へと迫り、その胸当てに手を掛けた。

 

「その体を楽しめるってんだからな!」

 

「きゃっ!?」

 

 強引に鎧を取り去る。同時に、薄いインナーに包まれた体が顕になった。

 

「けっ、随分といい体してるじゃねぇか」

 

「へっ、王国随一の騎士様は随分と乙女だなぁ。聞いたか? きゃ、だってよ」

 

「くっ! この体を好きにできようともっ! この心は決してっ!」

 

「はっ! その気丈さが! いつまで続くかなっ!」

 

 男の手が騎士の下腹部へと伸びる。

 しかし、その刹那。

 

「──やめておきなさい」

 

 男たちの背後から、若い女の声が響いた。

 銀色の髪に、紫色のニヒルな瞳。その纏った黒のドレスは誰の目にも上質に見えるだろう。

 

「レ、レイズ様っ!?」

 

 帝国軍参謀幹部。レイズ・バランタイン。

 

 レイズは鉄格子を開き、ハイヒールがかつんかつんと鳴らしながら、男を睨む。

 その後で、美術品のように端正な顔立ちが嗜虐的な笑みに歪む。

 

「その必要はないわ。既に、彼が来ているもの」

 

「「なっ!? あのお方がっ!?」」

 

 男達はおぉっと派手な感嘆を漏らし、その目を輝かせた。

 

「ええ。この国、最強の拷問官にして、その仕事に一度として失敗はないとされる男」

 

「ま、まさかっ!?」

 

 騎士もその肩書きに聞き覚えがあった。

 そのせいか、真っ直ぐに立てていたはずの足は、子鹿のように震え始める。

 

「終わりだなぁ! 騎士様よぉ? あの人が拷問をした相手に、正気を保てた奴はいねぇ。大抵は廃人になるか、我らが帝国の従順な犬になるってわけさ」

 

「そう言うことよ。さ、入りなさい。コードネーム──『ルーク』」

 

 げらげらと男達は楽しそうに笑った後で、牢を出ていく。そして、すれ違いざまに一人の青年が入ってきた。

 

 帝国では……否、世界を巡っても十二分に珍しい黒い髪と同色の瞳。

 

 体躯は細身でとても兵士には見えない。

 しかしながら女騎士が着目したのは、その雰囲気と服装だった。

 

(あの服。確か異世界からの召喚者が来ていたと言う衣装。確か名前は、『スーツ』だったか)

 

 滑らかな黒いのジャケットと白いYシャツ。

 腰にはベルト、足には艶やかな革製の靴。

 

(即ち、奴は帝国の召喚した勇者の一人ということか。ならば、武器を持たぬのも頷ける)

 

 スキル。女騎士は異世界へと召喚された者達が所持するその才覚を見知っていた。

 人によって、特異性を変えるその力は、強力なものが多いとも。

 

(とはいえ、私は王国随一の騎士。何をされようと祖国は裏切らぬっ!)

 

 女騎士の並々ならぬ覚悟を感じたのか、青年はふっと鼻を鳴らした。

 

「王国の女騎士とは聞いていたが……良かったぜ。筋肉ゴリラみたいなバケモノじゃなくて」

 

「仕事は分かっているわね? 王国についての情報を引き出して。間違っても殺してはダメ。ただ、それさえ守れるならどんな手段も許可するわ」

 

「あいあいさー。お任せあれ」

 

 青年は懐から革製の布巻きを取り出す。結ばれていた紐を解くと、中からは銀色のナイフ数本がきらりと光った。

 

「な、何をするつもりだっ!」

 

 足の震えはさらに酷くなり、その声すらも弱々しく震え始めた。

 

「では、あとは任せるから。終わったら呼んでくれる?」

 

「勿論……さてさて、べっぴんさんよ」

 

 青年の両腕が光を帯びる。

 それはまるで。

 

「……神の、手?」

 

「お? 偶然にも正解だ。

    ──スキル《ゴッドハンド》。

 俺の手によって繰り出す現象は、ありとあらゆる耐性、防御、硬度、加護を貫通する」

 

 青年は包みから細いナイフを一本取り出す。騎士には、これまでの経験からそのナイフが使い物にならないほどに刃こぼれしていることがすぐに分かった。

 

「ま、まさかそれで……」

 

 女騎士の脳裏に嫌なものが過ぎる。

 しかして。

 

「まあ、見てな? スキル《ゴッドハンド》」

 

 青年は刃先を下に向けたまま、手を放す。

 すると。

 

「何をやって……」

 

「ナイフじゃ石は貫けないって、思ってるだろ?」

 

 その刃は、あまりにも容易くするりと石畳へと刺さる。否、沈んだ。

 

「なっ!?」

 

「言ったろ? つまりスキルを使えば、こんなナイフでさえも、岩を貫ける。何が言いたいのか、分かってきたな? さてさてさて」

 

(つまりは、奴の手には鎧や盾などあらゆる防具は役に立たない。 ということかっ!)

 

 その光景に、騎士がぞくりとしたのも束の間、青年はナイフを持ち上げると皮の包みに戻した。

 

「さて、それじゃあ、お仕事の時間だ。悪く思うなよ?」

 

 青年は何も持たぬまま、指先を蠢く無数の蛇のように、ぐにゃぐにゃと動かしながら歩いてくる。

 

「きっ! 貴様っ! まさかっ!」

 

 何故、青年がナイフをしまったのか、女騎士は即座に理解した。

 

(硬度や耐性を無視すると言うのなら、その指先で人体を貫くのも容易なはず……)

 

 途端に恐怖が這い上がり、女騎士は鎖に繋がれた腕を大きく捩る。

 

「くっ! 来るなっ!」

 

「ま、落ち着きなって。痛くはしないから」

 

 その指は、騎士の脇腹と鼠蹊部へと。

 

「やっ! やめっ……」

 

 内臓を貫かれる。女騎士はそう覚悟した。

 しかし。

 

「──奥義 《フェザータッチ》」

 

「お゛っ!?」

 

 その指が触れた瞬間。騎士の口から飛び出したのは、紛れもない喘ぎ。

 同時に、体全身に電流のような衝撃と形容のしようもない快感の嵐が訪れる。

 

「あっ!? んっ!? だめぇ!!!

 

「ほら、まだまだ」

 

「ひっ! おっ!? ま、待ってっ!! これ以上はっ!!」

 

 足は既に騎士の体を支えることを放棄し始め、腰はもう震えを通り越して、ほとんど力を込められない。

 

 しかして、青年はというと。

 

「もう終わりか? まだ、三十秒も経ってないぞ?」

 

 騎士の耳元で青年はそう呟く。

 ぞくり。何故だか分からないが、ずきんと心臓がとびきり跳ねる。

 

「ぐっ!!! こ、こんなことをしてもっ! 私の心まではっ!!」

 

「本当に、そうかな?」

 

「ひんっ!?」

 

 その顔を、青年と目があった瞬間。

 またしても、心臓が高く飛び跳ね、頬が急激に熱を持ち始める。

 

「……なん、で?」

 

 騎士自身でも一瞬疑問に思う。けれど、その懐疑心すらも、すぐに蕩け落ちるように何処かに消えた。

 

「言っただろ? 俺の手の行う行為は、あらゆる耐性、防御、加護すらも貫通するって」

 

「はぁ……はぁ……んっ! それと……何の関係が……」

 

 青年の指先は、騎士の顎を優しく持ち上げた。

 

「──つまりは、心の壁。防御機能すらも貫通するのさ」

 

「っ!?」

 

「さて、最後の仕上げだ。今からは──もっと激しくするから覚悟しろよ?」

 

「ま、待って!! ほんとに! これ以上はっ!!!」

 

 

「奥義──《ストロングフィンガー》」

 

 その後、拷問部屋からは激しい喘ぎ。

 

「むりぃ! もうむりっ!!」

 

 途絶え途絶えの吐息。

 

「はぁ……はぁ……ま、待って、分かったから……話す、話すから」

 

「おお、それは良かった。なら、報酬の前払いといこうか。もうこんなに濡れてるなら何も問題ないだろ?」

 

「おっ!!?? おお゛っ!!」

 

 そして、淫猥な水音のみが響いたのだった。

 

 




 
────

あとがき

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