スキル『ゴッドハンド』の転生拷問官。気がつけば、捕虜でハーレムを作っていた。   作:沙悟寺 綾太郎

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第二十三話  女幹部さんの秘密。

「ただいま」

 

 少女の治療を終えて、ルーク達が屋敷に戻った頃にはすでに日を跨ぎ、街が眠った後だった。

 

「おかえり」

 

「ひょ!?」

 

 玄関のドアを開いたはずが、何故だか真横から声が聞こえた。

 

「み、ミリーダ。脅かすなよ」

 

 真横……というか、ほぼ斜め後ろに立っていたミリーダに言った。

 

「あばばばばば……」

 

 アテナは余程、驚いたようで遠い何処かを見て、泡を吹いていた。どうやら幽霊とでも勘違いしたらしい。今度、ドッキリしてやろう。

 

「体は? 大丈夫か?」

 

「もう平気。それより……」

 

 ミリーダはわざわざ、ルークの正面に戻ってきて、上目遣いに見上げてきた。

 

「おかえり、貴方。お風呂にする? ご飯にする? それとも、わ・た・し?」

 

「あー、全部外で済ましてきたよ」

 

「……だから、女の子を背負ってるの? しかも、エルフの」

 

 その目はまるで、絶対零度。エーリカが起きていたら、震え上がっていただろう。何せ、ルークも恐怖を感じたから。

 

「あら、おかえりなさい。帰ってきたのね」

 

 階段から降りてきたのは、バスローブを纏ったレイズ。湯に濡れたその髪は、なんとも艶かしく、石鹸の香りを放っていた。

 

「ああ、今戻った。それより……」

 

「ええ。分かった。そのままこっちに連れてきて貰えるかしら」

 

 言葉などなくとも、レイズはルークの背負う少女を一眼見て事態を察したようだった。

 

「おい、アテナ。いつまで泡吹いてんだ。お前は蟹か?」

 

「あばばば……はっ! 私としたことが」

 

 そのまま、レイズにも案内されたのは、二階奥の部屋。来客用の寝室だ。

 

「よっと」

 

 ルークはすぐさまベッドにエーリカを下ろすと、肩を何度か回す。ここ最近でゴッドハンドを酷使しているからか、妙に凝る。

 

「傷は……貴方が治したの?」

 

「ああ。傷跡、打撲痕、火傷の痕、足の腱、欠けた耳。合わせて、三時間と少々掛かったがな」

 

「ふ、それで三時間は凄腕よ。拷問官なんてやめて、医者になれば?」

 

「ならねぇよ。お前を、この国のトップに据えるまではな」

 

 そう言う契約だ。

 

「……ん、まさか」

 

 アテナは何かに勘づいたようだった。

 

「ルーク、先ほど貴様が言っていた。奴隷制度を嫌う聡明な人物というのは……」

 

「ん、ああ。それなら……」

 

「ええ。私よ」

 

 答えようとしたルークを遮り、レイズが答えた。

 

「本当か? 貴女が幾ら姫様と友好な関係を築いているとはいえ、まだ私は貴方を信じられてはいない」

 

「へぇ。なら、どうすれば信じてくれるのかしら?」

 

「まず、何故貴方は奴隷制度を嫌っているのか、答えてもらおう。そして、貴方の目的はなんなのか、それも聞きたい」

 

 確かに。ルークも気になった。

 レイズとは七年弱の付き合いだが、レイズ自身の話は聞いたことがない。

 

「──雌豚」

 

 ミリーダが声を上げた。しかも。

 

「なんだ? ミリーダ?」

 

「それ以上レイズを追求するのは、私が許さない」

 

 怒っていたのだ。マイペースで、感情が見えにくい少女が、激しく燃えるような怒りの目をしていた。

 

「ミリー、ダ?」

 

「ジンパチもこれ以上はやめて」

 

 ミリーダとレイズは、十年以上の付き合いだとは昔、聞いた。

 現に今、二人の間にはルークでさえも踏み込めない何かがあった。

 

「ミリー。いいのよ。隠していても、いつか話すのだから、早いか遅いの違いしかない」

 

「レイズ……でも」

 

 不安そうな顔をするミリーダの頭を撫でてから、レイズはバスローブの紐を解いた。

 

「なっ、急に何を……っ!?」

 

 もはや芸術のようなレイズの肢体は、光の下に曝け出され、そして。

 

「ここよ、左の腰。これが何かは、分かるわね?」

 

 左のくびれに、それはあった。

 

「奴隷、印……」

 

「そう。私は、幼い頃──奴隷だったのよ」

 

 その一言に、その場の誰もが言葉を持ち合わせなかった。

 

***

 

「それで、なんであたしも巻き込まれてんの?」

 

 一夜が明けた早朝。

 エルフの森へと向かうこととなったルークは、少女エーリカの護衛として、アテナともう一人に頼んでいた。

 それこそが。

 

「あたし、あんたらの仲間になった覚えはないんだけど」

 

「ま、そう言うなよ。俺たちの仲だろ? ──シズク」

 

 元勇者御一行に数えられ、魔王を倒したパーティの一人に数えられる女。

 

 大魔法使い シズクだった。

 

「あんたと深い仲になった記憶はないんだけど?」

 

「またまたぁ。あの夜は、随分と積極的だったが?」

 

「っ! やめなさいよっ!」

 

 シズクも思い出したのか、顔を赤く染めて、睨んでくる。

 

「真面目な話。協力してくれるなら、お前にもメリットはあるぞ?」

 

「へー」

 

 興味なさそうなシズク。というより、なんだか呆れたような表情だ。

 

「──エルフの魔法は、お前も興味があるだろ?」

 

 魔法とは、才能と知識の塊のようなものだ。幾ら強大な魔法使いとはいえ、その存在を知らないのならば、行使のしようがない。

 

「……あんたに付いていけば、それを知れるってわけ?」

 

「ああ。そうさ。つまりは、仕方ない(・・・・)だろ?」

 

 先日の件で、シズクの性格をルークは理解していた。

 メリットがあり、その理由があるなら、シズクはこちら側に引き込める。

 

「ふーん。悪くはない。でも、まだ足りないわね」

 

「なら、その体をまた満足させてやる。この二日は、自分じゃイけなかったんじゃないか?」

 

「は、はぁ!? あんた、なんで知って……」

 

 シズクは焦ったような顔をした。ぎゅっと杖を握り込み、弱々しい雰囲気。

 

「──俺は、ゴッドハンド。だからな」

 

 そうして、交渉は終わり、旅は始まるのだった。

 

 

 

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