スキル『ゴッドハンド』の転生拷問官。気がつけば、捕虜でハーレムを作っていた。   作:沙悟寺 綾太郎

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第二十七話  大魔法使いVS痴女侍

 

 屋敷の食堂。

 長い机の上には、豪華な料理の数々が並んでいる。

 

「……むぅ」

 

「そろそろ機嫌直したら?」

 

 向かい合う形で、座った不機嫌なミリーダと呆れたレイズ。そして、その斜め前には、ナタリア。

 

「ジンパチ……今頃、何してるんだろう」

 

 ミリーダは大きなため息を吐いて、机に突っ伏した。

 

「私もついて行きたかった」

 

「それは無理でしょう? 今、貴方はスキルを使えないんだから。足を引っ張るつもり?」

 

「でも……」

 

「ふふっ、ミリーダさんは本当に彼のことが好きなのですね」

 

「うん、好き」

 

 即答したミリーダは、小さく笑っていた。

 

「ナタリア様。少しお尋ねしたいことがあるのですが」

 

 レイズはワイングラスを傾けて、唇を濡らすように一口飲んでから、ナタリアへと切り出した。

 

「どうぞ。私が答えられることでしたら、お答えします」

 

「ありがとうございます。では」

 

 こほんと、レイズは咳払いを打ってから口を開く。

 

「エルフの森。数年前から奴隷商に目をつけられていると聞き及びました」

 

 無論、その目的はエルフの誘拐だろう。

 

「ええ。事実です。そのせいで、エルフは今この時も数を減らし続けている。性奴隷、戦闘奴隷、皮肉なことにエルフという種族はどちらにもされてしまうのです」

 

 エルフという種族は、皆美しい。そして、人間よりも魔法の適性が高いとされる。

 

「嫌な話」

 

「ええ、そうね。ミリーダ」

 

「私も王族として、対策を打ち出したいところですが、今の私にそんな力がないのも事実です」

 

 ナタリアは視線を下に向け、拳を硬く閉じた。その態度からは悔しさが滲み出ている。

 

「──ナタリア様、私に策がございます」

 

「策、ですか?」

 

「ええ。そうです。そして、その策は既にルークに預けておきました」

 

 レイズはにやりと口角を緩める。

 

「彼ならば、きっとエルフという種族を救うことが出来る」

 

 その言葉には、不思議な説得力があった。

 

***

 

 

「私の首を……? というか、服着たら?」

 

 シズクは心底驚いたようだった。そりゃあ突然、全裸の少女にその首を貰い受けるなどと言われて驚かない訳もないが。

 

「ちょっと待て、どういう話の流れだ?」

 

「旦那様は知らぬのか? 大魔法使いシズクには、懸賞金が掛かってあるのじゃよ」

 

 少女は懐から、皺の寄った紙を取り出した。

 そこには、シズクの写真とデッドオアアライブと言う文字列が並んでいる。

 

「金額にして、三千金貨。小娘一人でその金額とは、なんとも良い仕事じゃろう?」

 

 かっかっか、と笑う少女を見て、ルークは一気に警戒を強める。

 

 ──強い。しかも相当に。

 これまでの経験と勘がそう告げていたからだ。

 

「へぇ、私を倒せると思ってるんだ」

 

「くふふ、無論じゃな。そもそも、儂に倒せん相手なぞ、勇者くらいしかおらん」

 

「へぇー、それじゃ、試してみよっか」

 

 苛立ちをシズクは杖を構えた。

 

「──《フローズン・ブルーム》」

 

 現れたのは、無数の氷花だった。光を反射し、薄く光るそれらはシズクの周囲にて浮遊する。

 

「行けっ!」

 

 シズクの号令で花弁は回転しながら、機関銃の如く、少女へと撃ち出される。……その隣にいるルークに目もくれず、だ。

 

「ちょ! 待っっ!」

 

「くふふ、面白い。旦那様は儂の後ろに隠れておくが良い」

 

 少女の刀が踊る。その軌跡は時に花弁を切り落とし、時に受け流す。

 

 側から見れば、そのすべてが一本の刀によって行われているとは到底思えない。

 互いに譲らず、数十秒が経過した頃。

 

「さてさて、次はこちらの番じゃな」

 

 少女は居合の構えを取った。

 幾重にも培われた研鑽の末に作り上げられたであろうそれは、微塵の隙も存在しない。

 

「見せてやろう、儂の技を」

 

 とはいえ、ここでシズクを失う訳にもいかない。

 

「いや、そこまでだ」

 

 ルークは少女の腕を掴む。

 

「むっ、なんじゃ? 今は夫婦といえど、無礼であるぞ?」

 

「悪いが、そいつの首はやれないんでな」

 

「ほう? ならば、どうするつもりじゃ? よもや儂を倒せると?」

 

「ああ。俺がお前に触れた時点で、勝負は付いてる」

 

 ルークの手が金色の光を帯びる。そして、それと同時に。

 

「う、うひっ!?」

 

 少女の白い頬は急速に赤い色を帯び始めた。

 

「な、何を、した」

 

 少女は体を悶えさせ、手からは刀を溢れ落とす。

 

「──エッチなことさ」

 

「なん、じゃと?」

 

「こことか、どうだ?」

 

 ルークの指先がその首筋を撫でる。

 

「んっ!? な、なんじゃ!? こ、の感覚はぁ!」

 

 しなしなと少女は腰砕けになり、その場にへたり込むとそのまま、意識を失った。

 どうやら、勝負ありの様子だ。

 

「……この変態」

 

「おいおい、助けてもらった相手にそれはないだろ」

 

「別に私一人でも負けなかったわよ」

 

 シズクはため息混じりに、ルークを見ると続いて、少女へと目をやる。

 

「それで、あんたその子と結婚したの?」

 

「いや、してないが」

 

「でも、旦那様って呼ばれてるじゃない」

 

「どうやら、酔った勢いで……したらしいのだが、俺には記憶がなくてな」

 

「……最低」

 

「っ! 大丈夫かっ!」

 

 話の途中で再び、ドアが開く。

 入ってきたのは、アテナだった。

 

「先程、すごい音が……おい、貴様。なんだ、この状況は」

 

「え、えーと。その、ですね?」

 

 結局、ルークが状況をシズクとアテナに弁解するのには、三時間ほどかかったのだった。

 

 




────

あとがき

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