スキル『ゴッドハンド』の転生拷問官。気がつけば、捕虜でハーレムを作っていた。   作:沙悟寺 綾太郎

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第二十九話  痴女侍さん、えっちな敗北を知る

 

 その少女は、これまで一度として敗北したことはなかった。

 幾度も幾度も、死地を潜り、戦った。

 しかし、その末に少女がたどり着いた感情。

 それは。

 

 ──退屈。たった一言の容易で簡易な感想だった。

 敗北を知らぬということは、つまり危機を知らぬということであり、刺激と言うスパイスの欠如を意味する。

 

 だからこそ、少女は足繁く賭場へと通った。

 そこでのみ、無敵の少女は敗北することが許されるからだった。

 時には、金を失い、服を失うこともあったが、それこそが少女の求めていたスリルだったのだ。

 

 ──しかし、それはもはや。

 

「ぉ、くぅ、んんっ」

 

 ギンの堪えるような吐息が馬車に響いた。

 艶かしいその喘ぎには、もはや無敵の少女の面影はない。

 

「もう降参か?」

 

「儂を、誰だと思って、おる……ひぅ!?」

 

 小さな振動する何かを胸に弱く押し当てられ、ギンは全身を震わせた。

 

 その感覚を形容するならば、敏感になった柔肌を焦らすように羽毛が撫でるようなもの。

 

 くすぐったさもありながら、その本質は……。

 

「気持ちいい、だろ?」

 

「ち、調子に、乗るなぁ。この程度で、この儂がっ」

 

「ほーん。そうかい。そんな雌の顔でよく言うぜ」

 

 煽るルークに顎を持ち上げられるなり、かぁっと体全身が熱くなるのが分かった。

 

 いまだ視界を覆う目隠しによって、自分の今の状況が分からず、その代わりに想像してしまっていたからだ。

 

(雌の顔……だと、この儂が?)

 

 頬は赤みを帯び、口角からは涎が流れ、恍惚とした瞳。

 それはギンがこれまで想像すら出来なかった快楽というものに堕ちた自分自身のイメージ。

 

「っ……じゃが」

 

 しかし、それを想起したことによって、ギンは冷静さを取り戻した。

 

(こんな風になっているはずがない。全ては奴の術中じゃ)

 

 だが、その冷静さも長くは続かなかった。

 

「それじゃ、そろそろ本気で行くぞ?」

 

「っ!? 何っ!?」

 

「ああ。こっちももう準備は出来てる頃合いだろう?」

 

 振動の音が止まる。

 

「何をするつもりだ。──くはっ……ぉん、うぅ」

 

 ぬちゃりと粘液が垂れるような音がした。それは紛れもなく、ギンの下腹部からだった。

 

「スキル行使──《ゴッドハンド》」

 

 嫌な予感がした。まるで、これまでの自分自身が塗り替えられて、他の何かに作り替えられてしまうような不安と恐怖。

 

「ま、待っ……お゛んんんっ!!??」

 

 もはや、ギンのあげた声は言葉ですらなかった。

 言うなれば、発情期を迎えた雌犬のような。

 

「ふぅ、とりあえずこれで一回。まだ続けるか?」

 

 ルークは言って、その頬を緩く撫でた。

 

「はぁ、はぁ、ま、まだ……儂は、降参して……」

 

 いない。ギンはそう言葉を続けようとした。

 

「なら、二回目と行くか」

 

「ひっ! ま、待つのじゃっ!」

 

「ダメだ」

 

 二度目は、一度目よりも早かった。

 もはや発情しきったその体には、ルークの手はあまりにも刺激が強かったからだ。

 

 しかし、二人の勝負はここからが本番だった。

 

「くっ……はぁ、はぁ、もう、時期に5分が経つはずじゃ」

 

 息も絶え絶えにギンは言った。

 この勝負を始める前に、魔法の掛けられた砂時計をひっくり返している。

 

 それは一度、起動すれば一切の不正が通じず、砂が全て落ちるまで巻き戻すこともリセットすることもできない代物だ。

 

「ん、まだ半分も経ってないぞ?」

 

「な、なん、じゃと?」

 

「一旦、目隠し取ってやるよ」

 

 そうして、ギンが確認すると。

 

「う、嘘……じゃ」

 

 ルークの言葉通り、その砂はまだ半分以上が上部に残っていた。

 

 ギンの背筋を冷たいものが通り抜けた。

 それは、唯一の希望を失った絶望感。

 

 たった2分足らずのうちに、二度も達し、心が折れ掛けてしまっていた。

 しかし、それよりもタチが悪いのは。

 

「二回もイったんだ。もうそろそろ……」

 

「な、何を……っ! な、なんだっ! この感覚っ!」

 

 それは異変。

 体力の限界によって、意識すらも朦朧としていたギンは急激に目が覚める。

 

「身体が……熱、い」

 

 それはまるで、数時間、下手をすれば数日にも渡って、焦らされたような感覚。

 頭の中は、快楽のこと以外を考えられず、少しの刺激でさえも絶頂のトリガーになり得る。

 

「──条件追加だ。もしも、お前が降参するって言うなら、入れて(・・・)満足させてやる」

 

「なっ!?」

 

 そんなもの、なんの判断材料にもならない。そのはずだった。

 

 しかし、ギンは否、ギンの発情し続ける身体は、そうしなければ体内で渦巻く熱は収まらないのだと、直感で理解していた。

 

「ほ、本当……なの、じゃろうな?」

 

「ああ。俺は嘘はつかねぇよ」

 

 ギンは生唾を飲み込んだ。

 恐らく、今それをしてしまえば、戻れなくなる。この男に一生逆らえなくなってしまう。

 そんな恐怖があったからだ。

 

「ふぅ、ちょっと熱いな」

 

 ギンの思考の最中、ルークはジャケットを脱ぐ。すると、途端にその思考は鈍る。

 

「雄……の匂い」

 

 汗と男のみが持つ独特の香り。それをギンの鼻腔が吸い込んだ瞬間。

 自制心が音を立てて崩れ落ちた。

 

「──こ、降参する……じゃ、じゃから」

 

 気づけば、そう口にしていた。

 

「ああ。分かった。よく、頑張ったな」

 

「っっ!! あっ!!」

 

 ルークに覆い被さられるなり、ギンは三度目の絶頂を迎えた。

 そうして、その心の中に一つの感情が芽生える。

 

(これが、雄に屈すると言うことか。なんと、なんと、甘美で──)

 

 その日、敗北を知らぬ少女は初めて、心の底からの屈服をしたのだった。




────

あとがき

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