スキル『ゴッドハンド』の転生拷問官。気がつけば、捕虜でハーレムを作っていた。   作:沙悟寺 綾太郎

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第七話 初めてな共同作業

 

 ちゅんちゅんちゅん。

 耳を立てれば、小鳥達の些細な会話が聞こえてきそうな良い朝だ。

 しかし、実際のところはと言うと。

 

「……くっ。ん……あ」

 

 隣のベッドから聞こえてくる嬌声が全てを台無しにしている。

 毛布を被れば、周りに声が漏れないとでも思っているのだろうか。

 

「……ぺろぺろ」

 

 突如、胸板のあたりを柔らかいものでなぞられるような奇妙な感覚がして、ルークは布団を蹴り飛ばした。

 

「ひょっ!?」

 

 悲鳴のような声をルークが上がると同時。

 

「っっっっ!!??」

 

 隣のベッドからは息を呑むような音が聞こえたが……まあ、気にしても仕方ないだろう。

 というか、こちらが起きていることに気が付かないほど熱中していたのか?

 

「なんかもう……色々台無しだな」

 

 一瞬にして、冷静になったルークはベッドの中へ忍び込んだ賊へと目をやった。

 

「朝からうるさい。ジンパチ」

 

 掛け布団の中にいたのは、薄いネグリジェ一枚を纏ったミリーダ。なんとも不満そうな顔でこちらを見ている。

 

「……何してるんだ?」

 

「おはようのちゅー。……でも顔にしたら起きちゃうだろうから、体全身にしようと思って」

 

「いやいや、それは違うだろ」

 

 面と向かって、尋ねてみるとミリーダはきょとんと首を傾げた後で、はっと気が付いたように口を開けた。

 

「もしかして、△△△を舐めた方が良かった?」

 

「……うーん、まあそうかも知らんが、そうじゃないな」

 

 ある種、おはようのそれは男の夢ではあるが、今の質問はそう言った意味ではない。というか、ド下ネタを普通に口にできるこの少女が少し怖い。

 

「おい、女騎士様? 先程から何をしてるんで?」

 

 ルークがミリーダから視線を外し、声を掛けると。

 

「ひぅ!?」

 

 ぴくりと毛布を被った体が跳ねた。

 

「あれー? え? 何? まさかとは思うけど、発情して自分を慰めてたのかなー? いやーそんなわけないよなぁ。だって、曲がりなりにも騎士様だもんなぁ」

 

 まあ、昨日ひっそりと食事に混ぜた媚薬の効力は二十四時間はある。仕方ないと言えば、仕方ないのだが。

 

「くっ! そんなわけないだろっ!」

 

 アテナは怒りのあまりベッドの上に立ち上がった。ふっ、やはりかとそれを見ていたルークは鼻で笑った。

 

「なら、なんで服着てないんだ?」

 

「はっ!?」

 

 すぐさま、アテナは体を毛布で隠す。

 

「そらみろ。やっぱ、やってたんじゃ……いててて!」

 

 少し揶揄ってやろうと思ったのも束の間、ルークは頬をつねられる。

 

「……そんな女の醜い体なんて見ちゃだめ。ほら、私の見せてあげるから」

 

 肩にかかった紐を下ろして、裸になろうとするミリーダ。……彼女には羞恥という感情はないらしい。

 

「だ、誰の体が醜いだとっ!?」

 

「醜いからすぐ隠したんでしょ?」

 

 きゃいきゃいきゃいとなんだか子犬の喧嘩を見ているような気分になりながら、ルークはため息を吐いた。

 

「はぁ。二人とも、そろそろ準備しろ。今日は行くところがあんだから」

 

***

 

 その後、結局二人が外出の準備を終えたのは、昼前だった。そこから先日の酒場で食事を済ませ、街の商店が立ち並ぶストリートへと三人は向かった。

 

「何を買いに来たの?」

 

 先程から決して、腕を離してくれないミリーダが上目遣いに問うてくる。

 

「さあ、なんだろうな」

 

 布の屋根の安っぽい出店たちを巡れば、きっとほとんどのものは揃う。ルークが始めに求めていたのは、保存の効く食料だ。

 

「これとこれと……あとこれも頼む」

 

 選んだのは、帝国において、主食とされるジャガイモ。そして、逆にあまり人気のない米の二つ。最後に多少の調味料だ。

 

「ねぇ、ジンパチ」

 

「なんだ?」

 

「私、米嫌い」

 

 なんと。日本人の尊厳を破壊する一言だ。

 

「……実は、私もだ」

 

 続いて、アテナも言った。

 

『え? お前、自分の立場分かってんのか? 今お前は、捕虜で奴隷なんだぞ?』

 

 言ってやりたかったが、面倒くさくてやめた。

 

「なら、お前らは飯抜き。あーあ。今から行くとこは、最低でも往復一週間。食いもんなんてほとんどねぇってのに」

 

「「……」」

 

 途端に二人は目を見合わせた。

 

「私、米は嫌いだけど、ジンパチの○○○○や△△△ならいくらでも飲めるし、舐めれるよ?」

 

「はい、放送禁止ー」

 

 前世の世界にあったテレビの番組ならば『バキュンっ!』の効果音で隠されるに違いない。

 

 対して、アテナはと言うと。

 

「ふっ、甘く見るな。私とて、騎士の端くれ。空腹の我慢には慣れている。いや、寧ろ、我慢自体得意と言ってもいい」

 

「いや、お前……昨日、ぼろぼろだったじゃねぇか」

 

 酒場では、人の注文した品まで食い漁り、火照る体に我慢しきれず、一晩中自慰に耽っていた奴がどの口で言ってるんだ。

 

「ねえ、ジンパチ。そんな雌豚は置いといて、私と二人で行こ?」

 

「だ、誰が雌豚だと貴様っ!」

 

「貴女以外いないじゃない。無駄な贅肉をぶら下げた淫乱女」

 

「くぅぅ!! 貴様は骨と皮だけの体格ではないかっ!」

 

「あら、知らないの? ジンパチは私の○○○とか、***とか好きって言った。つまり、貴方よりはマシ」

 

 ヒートアップする二人の言動に、通りかかる人たちの目は次第にこちらはと向き始めた。

 

「お、おい。聞いたか?」

「あ、ああ。あんな可愛い子が大声で***だってよ。こりゃ、あの男にとんでもないことを強いられてるに違いないぞ」

 

 おいおい。確かに俺は拷問官ではあるが……。なんて、ルークは思いながら、手を叩いた。

 

「はーい。二人とも。次の店に行くぞー」

 

「待って。ジンパチ」

 

「そうだ。その前に一つだけ、教えてくれ」

 

 二人は揃って、こちらを見た。

 

「なんだよ、もう」

 

「私達はどこに行くんだ?」「私達はどこに向かうの?」

 

 一言一句に至るまで、同時に放たれた言葉。

 ルークはまたしてもため息混じりに言った。

 

「──近隣の遺跡にあるダンジョンだよ」

 

 そう。これはそのための買い物なのだ。

 

 




────

あとがき

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