学マスの初星学園って実際、どんなとこなんだろうと妄想した結果生まれた転生者オリ主もの 作:ファムファタール
手癖で書いてるので荒いです。
念の為記載。
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。また、未成年の喫煙・飲酒は法律で固く禁じられています。
初星学園天川芸能特別キャンパス。
通称、特キャン……天特や天芸とも呼ばれている。
高等部アイドル科、普通科と共に大学の学科……プロデューサー科や一部の舞台演出科の連中が出入りするキャンパスであり、こと芸能・エンタメにおいて実践的な学習の場としてはこの学園の中で最も意義のある場所と言える。
まあ、俺が普段通っているキャンパスも十分以上の設備があるんだけども。あっちはミニシアターあるし。全国でも初星以外に映画館のある大学は、大芸と……あれ、日映大だっけ日大だっけ。それともそれ以外か? 忘れちまった。
ともかく、日本を面白くするためにすんごい金がかかってるわけだ。
それが良いことなのか悪いことなのか、少なくともそっち側にいる俺には、よくわからないが夢を見られる人間が増えるのは悪くないんじゃねえのとは思う。
とはいえ……
「喫煙所ねえじゃん……」
特キャンは、喫煙者に優しくなかった。
未成年。というか、高校生が多い都合、嫌煙の風潮もあって置いておくわけにはいかなかったんだろうが、もうちょいこう、手心とかさあ……
映像系は未だに喫煙者が多いんだぞ。
五十以上のおっさんからたちを教授に据えているということもあって、仲良くなって話を聞くためにはタバコミュニケーションを積極的に行う必要がある。
プロの現場にしても、吸う人は普通の環境よりはずっと多い。
未成年喫煙? こちとら、成人してから四とそろそろ十九年だぞ。
大学入ってるし、法律上成人してんだからいいだろ別に。自己責任自己責任。
「つっても、ガキの前で吸うわけにはいかねえよなぁ……」
暇ならそこに居ろと、創経由で割り当てられた空き教室から外を歩く、子供たちを眺めてそんなことを呟く。
やめようかな、煙草。
まあやめないんだけど。
喫煙者の煙草辞める発言を信用しちゃいけません。絶対やめないから。
「あ゛~、ひま゛~」
外を見るのにも飽きて、だらんと体を机に預ける。
時間潰しのお供にと持ってきていた小説はとっくに読み終えているし、暇だったら触ろうと持ってきたパソコンもカバンの中だった。
必要な作業は今のところないのも理由の一つだ。
新しいテキストアニメでも考えようかとか、効果アニメを考えようかとか、そんなことを思ったが素材として必要なものは凡そ作り終えている。
時間が余り過ぎているってのも困りものだ。
いっそのこと寝てしまおうかと、高校時代のように机に伏せようとしたところでノック音が聞こえた。
「どうぞ」
創が様子を見に来たのかと、思いつつ丁寧にそう答えると横開きの扉がゆっくりと開かれる。
そこから現れた人物に、俺は目を見開いた。
「久しぶりね、イツキさん」
ふわりと流れる柔らかな金とその隙間からのぞく紫のインナーカラー。
強気なその面持ちは自信の現れか、それとも……
と、それはいい。
「俺はお前と会ったことなんてないはずだが、一番星」
「ふふっ、そうね。
十王星南。この学園トップのアイドルからの含みのある言葉回しに少し考え込む。
どうも、俺の記憶にないだけでどこかで俺と彼女は会ったことがあるらしい。
一時期、テレビ取材なんかもされていたし、その時にでもすれ違ったのだろうか。いや、時期が合わんな。
どうでもいいか。考えるのめんどくさ。
「それで、何のようだ」
「単刀直入に言うわ、あなたに頼みたいことがあるの」
頼みたいこと、ねぇ?
「悪いが今は撮影関係なら受け付けてない。約三名ほど面倒を見ることになってる」
「あなたのお眼鏡にかなえばでしょう?」
「まあな」
「なら、私が頼んだとしても問題がないのではないかしら?」
「……自信があると?」
「あるわ」
ふーん?
「じゃあ聞くだけなら聞いてやるよ。なんだ、その頼み事ってのは」
道理の通らない下手くそな頼み方だが、その自信には興味を惹かれて促すと彼女はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの喜色満面の顔で、
「あなたに、撮影をして欲しい子たちがいるの」
そう言った彼女のその願いを、俺は……
「無理だな」
バッサリと切り捨てた。
「……ッ! こほん、どうしてか聞いてもいいかしら?」
期待を裏切られて叫びそうになったのを無理矢理抑えて平静を取り繕ったって感じか。おもんね。
「一番星がどんなかと思ってたが、なんだ、そんなこともわかんねえのか」
あー、気分が一気に萎えた。
つまんねー。
「どういうことかしら」
こめかみピクピクで草。
煽り耐性無さすぎだろ。
「誤解無きよう言っておくが、別にお前が嫌いだから断ったとかではねえよ」
「わたしはあなたを嫌いになりそうよ」
「怒んなよ、箱入りガール」
はあ、とため息を吐く。
老爺心でちょっとだけ具体的な話をしよう。
曖昧に誤魔化してしまってもいいが、迷子相手にそんなことをするなんて人として問題があるしな。
「お前の第一声が『私のことを撮って欲しい』だったら、俺は他のことを放置してでもお前のことを撮っていただろうよ」
「それは……いいえ、私が頼んでいるのは……」
「わかってる。目的は後進の育成。次世代の一番星を育て上げるためってところか」
大層なお題目だが、ちと足りんな。
「どうして、それを……?」
「自分に期待をしてないやつは目を見りゃわかる。が、その歳でそれは早過ぎるな。なんだ、伸び代でも悟ったか?」
「……」
図星か。
ああ、うん。そうか。つまらなさの根幹はそれだな。
「お前のそれは諦めの末の選択だからつまらん。当たり切った後、ボコボコになって末期を汚しに汚しまくった末の苦渋の決断だったなら、俺はお前の味方をしてやってもよかった」
「……」
返答は沈黙。
しかし、それは彼女が俺の弁に納得したが故ではない。
溢れ出さんばかりの激情を内に滾らせていることの証明であった。
その証拠に、彼女はきつく俺を睨みつけ大きく口を開いた。
「……じゃあ、どうしろと言うの?!」
それは小さな小さな絶叫だった。
「わたしの才じゃここまでで精一杯ッ! 出せるものなんて全部出し切ったわ。それでも
今にも泣き出してしまいそうな顔と怒りに震える声で、彼女は言葉を紡ぐ。
その様子に俺は満足する。
本音が引き出せた。
気分が高揚する。ああ、挫折してる人間ってのは良いな。
意思が砕かれた人間ってのは、綺麗だ。表現としてどれだけチープであっても、積み上げたものを前にして膝を折る人間は、皆等しく美しい。
「ハッ、その歳で全部出し切った? 生意気なこと言ってんじゃねえぞガキ」
だからこそ、立ち上がらねばならない。
「足りねえもんがあるなら掻き集めろ。出し切ったと思った搾りカスから無理矢理にでも搾り出せ。足掻けよ。本当に立てなくなるその時まで。夢ってのは人生全部ベットするからこそ面白いんだろうがッ」
なぜなら人生は短いのだから。
「欲張れよ。アレもしたいコレもしたい。後進の育成しながら、トップアイドルだって目指せるはずだろ」
「そんな、無茶ぶりよ……」
「無茶でもやんだよ。俺は昔、シナリオ書きながらプログラミング組んでアニメーションも自分で作ってゲーム売ったことあるぞ。映画撮りながらな」
イラストは書けなかったけど。
「過労で死ぬわよ……?」
死んだよ。実際。たぶん過労で。
他にも前世のガキの頃はサッカーと水泳とそろばんやってたり、スキーだの社交ダンスだのピアノだのをちょっと大きくなってからやってた時期はある。
だいたいの物が中途半端だったが、だからこそわかることがある。
「本当に成したいことは、やれるかどうかじゃねえ。やるんだよ」
「根性論じゃない……」
「知らなかったか? こと芸術だの表現だのの世界は基本根性論だぜ」
「知っているわ……もう何年もやっていることだもの」
そりゃそうか。
「……まあ、なんだ。つまり本気で負けてからサブプランに行っても良いんじゃねえのって、俺は思うわけよ」
「結果が見えていても?」
「本気で挑む時ってのはいつだってそういう時だ」
「……簡単に言うわね」
「馬鹿言え。本気でやって負けるなんてことは、人間早々経験出来ねえよ」
実際、俺は負けたことは多いが本気で膝を折ったことは数えるほどしかない。
「ともかく、今のお前の頼みは聞いてやるつもりがない。わかったら出て行きな」
「やっぱり厳しいわね、あなたは……」
ちょっと寂しそうに微笑んで、また来るわと言い残して去っていく彼女を見送って呟く。
「優しいと思うんだけど、だいぶ」
*
パソコンをだらだらといじっていると、放課を告げるチャイムが鳴った。
グッと体を伸ばして息を吐く。
十王を見送ってから二時間近く経っている事実に目が死ぬ。
俺、このキャンパスに何しに来たんだっけ。
そんなことを考えながら、席を立って教室から出る。
別に、何か用があったわけではない。
暇過ぎるので、学園内を放浪することにしたのだ。
いつ来るとか言っておいてくれりゃ、俺だって待つが時間指定ないならもう知らんもんね。
……にしても、顔面偏差値たっけえな。
教室から次々と出て来る生徒たちに面食らいつつ、仏頂面をそのままに廊下を歩く。
チラチラと見られるが、別に気にすることでもないだろ。
プロデューサー科にだって男ぐらいいるわけで、見知らぬ男がいるからちょっと物珍しく扱われているだけだ。
「ちょっと通るぞ。すまんなありがとう」
廊下にたむろする女子高生の間をするすると抜けていく。
男の立場が弱い現代で上手く生きていくのに大切な女性との付き合いにおける三つのノーがある。ノータッチノールック、ノーインタラクションだ。
ノーインタラクションだけで良くね? タッチとルック含まれるだろ。
「あっ……」
くだらんことを考えていたからだろうか、それとも人の流れに反して進んでいたからだろうか、そんな声を認識した時にはもう遅かった。
誰かと体がぶつかる。
こちらへの衝撃はそれほどなく、ちょっと押されただけの感じだったが、向こうはそうではない。ふらっとよろめいて……
「やっべ!」
まずい転び方をしそうだったので、慌てて彼女の手を取り引き起こす。
異様な軽さに目を剥いた。
どっかで見た記憶があるな、とか腕とかその他諸々細すぎだろ、ガガンボかよ、こいつとか、あと色々白過ぎるからあまりアウトドアな感じではなさそうだとか瞬時に色々と思うところはあるが、ひとまず今はなかったことにする。
彼女の体に軽さのおかげで、すんなりと立ち直らせることが出来た。
「篠澤さん、大丈夫ですの!?」
ほっと安堵の息を吐くと、とてちてと慌てた様子のちっこいのが近づいてくる。所作が落ち着いているところを見るに、育ちが良いのだろう。
可愛らしい擬音が似合う様子で、仮称:ガガンボに彼女が近づき体をさすっている。
「うん……この人が助けてくれた」
「そうなんですの。篠澤さんがおせわになりましたわ。ありがとうございました」
「いや、礼とか良いからぶつかったの俺だからな。むしろ謝らせてくれ」
「ううん、わたしも不注意だったから。ごめんなさい。それと、助けてくれて、ありがとう」
いらねえって言ってんのに、礼を言うやつがあるか。
ったく、最近の若者は……
「あー、うん。まあ、急にどっか痛み出したりしたら連絡してくれ。基本、あっちの奥にある教室にいるから」
「うん、わかった。ありがとう」
「えっと、あの、あなたはもしかして、なのですが……」
おっと、もしかして俺のこと知ってる子か?
いやあ、まあそこそこ有名だからな俺。
「プロデューサー科の人ではありませんの?」
「違うが」
違うが。どうしてそう思った。
スーツを着ていないどころか、ここまでTシャツだぞ俺。
「え、あ、申し訳ありませんわ! えっと……」
「東雲イツキだ」
「東雲さま! 東雲さまはどちらの学科からこられたのでしょうか」
「映像科って言ってわかるか?」
「! ええっ! もちろんですわっ! 星南お姉さまに今年の映像科にはすごい人が入学したと聞いていますものっ!」
「へぇ、そうだったんだ」
目をキラキラと輝かせるお嬢様と、今知ったかのような反応を示すガガンボに妙な息遣いの合い方を感じて、少し笑う。
つーか、十王の知人かこいつ。名前なんて言うんだろ。
「わ、笑われてしまいましたわー! 篠澤さん、わたくし何か粗相をしてしまったでしょうかっ!」
「ううん、多分、だけど違うと思う」
うん、違う。
「ね、どうして笑ったの?」
「面白かったからだが?」
「ほら、ね?」
「よ、よかった、でいいんですわよね?」
「褒め言葉のつもりだ。仲良いんだな」
「ええっ! それはもうっ!」
嬉しそうにする千奈さんとやらにほっこりする。
令嬢言葉過ぎて怖いけど。
そんな彼女の横で傍で楽しそうに揺れるガガンボに、俺は視線を向ける。
目が合った。ので、口を開いた。
「お前らってひょっとしてアイドル科か?」
「そうですわっ!」
「ふーん?」
嘘って感じじゃなさそうだ。
この子は嘘をつけるような感じじゃなさそうだし、やわそうな腕をしてはいるがまあなんとかなりそうではあるし……
だが、この細っこいのは……
「ふふ……どう思った? わたし、アイドルやれると思う?」
「……そうだなぁ、やれはすんだろ」
「じゃあ、才能は?」
「ないんじゃねえの」
「な、き、急に何を言い出しているんですのこのお方ーっ!?」
本日二度目の絶叫。つーか、悲鳴だった。
それを無視して、篠澤は口を開く。
「ふふ……普通ならあるんじゃねえの、って、返すところじゃないの?」
「ないもんあるって言って何になんだよ」
「正直だ、ね?」
「お世辞であるって言って喜ぶタイプじゃなさそうだからな」
「本当に、プロデューサーじゃ、ないの?」
「違う」
少なくとも今のところはなる予定もない。
「……残念、もしそうなら、お願いしようと思ったのに」
「仮に俺がプロデューサーだったとしても、お前は嫌だな」
「ふふ、そっ、か……ね、たまに教室、遊びに行ってもいい?」
「好きにしろ」
「うん、そうする」
「なんで仲良くなっているんですの!?」
わからん。
俺も才能ないって言った相手に気に入られたの初めてだから、正直困惑してる。それはそれとして、おもろいから普通に関わるけれども。
「じゃあ、また、ね?」
「ああ、またな。デコ助も」
「で、デコ助ってわたくしのことですの!?」
そうしてプンスコする幼めのお嬢様と共に、ふらふらと去っていく篠澤を見送って今度こそ、と再び歩き始めようとした時、スマホが鳴った。
『どこに居ます? 空き教室で待っています』
などというメッセージが、見覚えのない連絡先から入っていた。
誰かと勘違いしてんのかな、と思いながら表示名を確認すると『KOTONE♡』と書いてある。
覚えがあるな、と思いながら記憶を掘り起こすとそういえば、藤田がはなみにそう呼ばれていたことを思い出す。
「創のやつ勝手に連絡先教えやがったのか」
別に困らないから良いが……
もうちょっと散策しようと思っていたんだが、仕方ない。
丁度近くに自販機も見つけたから、なんか飲み物買っていってやろう。
*
「で、今日はお前だけなのか?」
「い、いきなりみんなで押しかけるのもどうかと思いまして……その、一先ずあたしから、ってことに……プロデューサーは、協力しない方針ってことだったし……」
「ああ、うん」
どうせ月村辺りが渋ったんだろうな。
はなみが渋る画はあまり思いつかない。
しかしな……
「お前も俺のこと苦手そうにしてなかったか?」
「えと、まあ、はい……」
「まあそんな緊張すんなよ、ほれ、お茶で良かったか?」
「あ、ありがとうございます」
かってえな……
まあいいけど。
「藤田は、俺の作品……『春と喪失』は観たことあんのか?」
「えと、話題になってたんで、借りて見たことはありますケド……」
「どうだった?」
「え、と……まじか、そういうの求めるタイプの人だったんだ」
「いや、お前の感想とか死ぬほどどうでも良いが」
「じゃあなんで聞いてんのっ!?」
「会話の糸口になるかなって」
「えぇ……」
なんか引かれているが、極論だが世に出て自分の手を離れたものに対してどんな評価をされたって、正直どうだって良い。
こちらの意図を汲み取ってくれる人が居ればそりゃ嬉しいが、頓珍漢な事を我が物顔で言うやつがいてもそれはそれで良い。
評論家の批評も、嫌いだと声高に叫ぶ人間の声も興味はなかった。アレ、酷評する人はそりゃもうすげえこき下ろしてきたからな。
俺は表現をしたいだけで、それが実際の方法論として間違っていても、俺の感性で正解なら俺の世界ではそれが全てだ。
声高には言わないが、テメエらの意見とか心底どーでもええねん、で、終わり。
インタビューとかで色々聴かれたりもしたが、テキトーに流して終わらせた。
「だから、安心して好き放題言え」
「え、えぇ……むしろ言いたくないんですけどそれ」
「まあ、それならそれでも良い。俺もあるからな、映画見ても特に何も思わないこと」
「や、そういうのじゃないんですけど……ああもう、本当にどうしてわっかんないかなぁっ」
そう言って、心底納得いかないという様子で彼女は口を開く。
「あたしこれでも、東雲さんの作品のファンなんですけどっ!」
「へー」
「ほら! どうでも良さそうな反応するっ! 好きな作品の監督に感想言うのってめっっっちゃ緊張するんですよ!?」
「俺、普通に感想言っちゃえるタイプだからわからんわ」
「人の心ッ!! ちょっとは共感しようとしろーっ!」
えぇ……?
「まあ、言い分はわかった。悪かったな」
「ほんとにダメですからね、それ」
「はいはい……んじゃ何する? 飯でも食いに行くか?」
言ってから気がついたが、なんかおっさん臭いなこの困ったら飯に逃げる感じ。まあおっさんなんだけど。
「や、ご飯はその……たぶん、寮帰ったら用意してあるんで」
「あー、悪い。体型管理とかもあるもんな、下手に食わせるわけにもいかんかったか。失礼した」
「だいじょぶですけど、そういう気遣えるんですね」
「なんだと思われてるんだ、俺は」
アイドルというか、体型に注意しなくちゃいけない相手にカロリー面で気を遣わないわけないだろ。
「自由人?」
「否定はせんけどな」
別にそこまで自由って訳じゃねえんだけど。ここいる間、煙草吸えないし。
「俺から言わせりゃ、お前らの方が自由だぞ」
「そうですかね……?」
「ああ、頼れる大人が身近に居て、夢に向かって全力で打ち込むための環境がある。そして何より……」
それが許されるだけの才能がある。
望む世界への切符を生まれ持っているってのは、それだけですごいことだ。
俺は違ったからな。羨ましいとは思わないけれども。
「……お前のライブ映像を昨日、創に送られて観たんだが、ありゃすごかった。先を感じさせるだけの力があった」
「え、あ、きゅ、あ、あたし、急に褒められてる!? なんでぇっ!?」
「感想だ感想。お前が言わないから俺が言っただけのこったよ」
「あ、な、なんだ。そーゆーことですか」
「おう、そうだ。世界一可愛いことねちゃん」
「やーっぱり、からかってますよねぇっ!?」
はは、百面相だ。
可愛い。
「表情変化と反応が良いのもお前のいいところだな」
「その、分析した感のある言い回しやめてもらえます~?」
「わりと率直に褒めたつもりなんだが……」
「……ズルくないですか、それ」
「何がだよ」
ズルくはねえだろ。
「言っておくが、俺は思ってもいないことを口に出すような人間じゃないぞ」
「いや、思ってもないことでも、丸く収まるなら言うのが普通だと思うんですケド……」
「それが出来たら表現なんてやってねえ」
言葉にならない胸のうちすらも誰かに伝えたい、あるいは口下手だからこそというのもある。
芸術……表現ってのは、自分の心に正直すぎる奴らのためにこそある、と、俺は思っている。
それが伝わっても伝わらなくても、どうだっていい。普段の生活で発散し切れないどうしようもねえ感情を表現した、という事実が大事なんだ。
「少なくとも、俺は相手を褒める時に世辞は言わねえよ。可愛いやつにしか可愛いとは言わねえ」
「ふ、ふーん? ま、べつになんでもいいですけどー」
「何でもいいなら言うんじゃねえよ」
「そういうところはどうかと思うんですけど……」
どういうところだよ。
「お前、どんなイメージを俺に対して抱いてんだ」
「んーと、変人?」
てへっ、みたいなニュアンスで言うな。
許しちゃうだろ、可愛いから。
「ま、何でもいいけどな」
「……何でもいいなら言わないでくださーい」
べっ、と舌を出してこちらを煽る姿すら愛らしい。
天性のものだな、こりゃ。
「お前はそのままやってりゃ大丈夫だろ。そのうち掴めるだろうぜ、お前なりの面白さが」
「だから何なんです? その、面白さって」
「言ったろうが、お前を支えるお前の全部だ。お前も成り立てとはいえ表現者の一人なんだ、自覚がなくとももっと自分に向き合え、悩め、考え抜け」
そんで、
「その曖昧なものを自分の中で形にしろ。誰にも言わなくていい。ただ一つ、確固たるものとして持ち続けるんだ」
「……確固たるものとして」
「ああ。それがあれば、泥の中だって這いずって行ける。どこまでも進める」
例え向かう先が、彼方先の夢であっても、一度折れたとしても、また一歩踏み出す原動力になる。
「案外、思ってるよりも身近で簡単なもんだぜ? その答えは」
なんて、ヒントを出してやると彼女はグッと目を瞑ってから、もう一度開き、ジッとこちらを見つめた。
何かを決心したかのような顔だな、とそう感じた。
「……東雲さんは、そのどうなんですか?」
「俺?」
「はい、だってそんなに言うってことはあるんですよね。確固たるもの……」
「教えろってか。今言ったろ、言わなくてもいいって」
「聞きたいんです。何か、掴めそうだから」
「……仕方ねえな」
こんなことになる気はしていた。
彼女は理屈を求めているんじゃない。解答例を求めているのだ。
なら、と俺は一度席をたち、自分のカバンを手に取ってその中から一冊のノートを取り出し、彼女へと手渡した。
「それ、貸してやるよ」
「えと……『自己分析ノート』……? なんですか、これ?」
「読めばわかる。が、まあ、あんまり内容を覚えようとすんな。内容はかなり私的なものだから、興味もないだろうし、最後だけ読むといい」
「読んでいいんですか」
「わかりやすく伝えるのにそれしかないからな。でも、他のやつには読まれるなよ。それはお前だから、貸すんだ」
直面している問題の解決について、彼女に対してはこれが一番の特効薬だろう。
正直、色々な意味で読まれるのも読ませてしまうのもしんどいんだが、二冊目だからまだ良い。前世で書いた一冊目はとても人に読ませられる内容じゃねえからな。
「あたし、だから……」
「ああ、そうだ」
グッと彼女の持つノートに少しだけ皺が寄る。
元々、大したものでもないから別に構わんのだが、そんなに力入れるようなもんじゃないと思うんだけど。
空気が妙だ。こう、やりにくい。
そんなことを思いながら、時計を見ると時刻は五時半を指していた。
「……と、もういい時間だな。キリもいいし、日が暮れる前に帰りな」
「え、あ……はい、えと、じゃあその……また」
去っていく藤田にひらひらと手を振って見送ってから、俺も荷物をまとめて教室を出て、ため息を吐いた。
「なーに偉そうなこと言ってんだろうな、俺は」
余計な世話焼き根性発揮して色々言っちまったが、まあきっと意味などなかったろうな、とそんなことを思う。
彼女には、いや、彼女たちには俺などきっと必要ないのだから。
なんか続いた。
一日で書くの無理あるので、書くにしても不定期でええよな……
三話目更新できたら、話のタイトル変えます。
本編で補完するの怠くてやるかわからないので、補足
「なんだと思われてるんだ、俺は」に対することねの返答は、普遍的な印象で、
「お前、どんなイメージを俺に対して抱いてんだ」に対することねの返答は、ことね個人のイメージ。