学マスの初星学園って実際、どんなとこなんだろうと妄想した結果生まれた転生者オリ主もの   作:ファムファタール

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感想は読んでたり読んでなかったりするので、好きに書いてください。
嬉しく思ったりはしています。

返信はしません。読ませる前提じゃない作品だし、めんどくせえから。




学びを止めるな

 ひたすらに藤田の前で格好つけた翌日の午後。

 キャンパス近くの河川敷で俺は煙草を吸っていた。

 

「うめぇ……」

 

 プロデューサー科じゃないから、昼休憩の時間に抜け出せることに気がついたのは大発見だった。

 何で昨日の俺は律儀にあそこで待ってたんだろう。

 結果として尋人がいたからよかったが、アレなかったら虚無だったわ。

 コンビニもあったからシュークリームも買えたし、栄養補給も十分。

 これならもう朝早起きしてコンビニに寄って、すっかり温くなった不味いシュークリームを泣く泣く食うハメにはならなさそうだ。

 タバコの火を消し、携帯灰皿に入れ、シュークリームの包装を破く。

 午後も暇つぶしに勤しむための活力を補給するべく、口を開けた時だった。

 

「見つけたぁーーーーー!」

「んあ?」

 

 聞き覚えのある声がして、振り返る。

 口を開けたままだったから、相当な馬鹿面を晒してしまっていたが、気にする暇もなく声の主が近づいて来た。

 

「こんなところで何してるかしら、雨馬市家」

 

 腰に手を当て、表情を険しくしてこちらを睨みそう言ったのは誰あろうはなみ……メッセージアプリの表示名通りなら、花海咲季、その人だった。

 

「……何って昼飯食ってんだけど」

「……?」

 

 頭にクエスチョンマークを乗っけて、彼女は俺が手に持つシュークリームと俺とで視線を往復させた後、納得したように頷いて、

 

「今はデザートってところかしら?」

「や、これが昼飯」

「……?」

 

 また固まった。

 何だろう。この感じ。

 前世で、三食シュークリーム生活をしていると友人に話した時と同じような空気を感じる。

 

「……お昼なの? それ」

「お昼だぞ、これ」

「……」

 

 なんか真剣な顔になったんだけど。

 

「足りないんじゃないかしら、それじゃ」

「いや?」

 

 まあ腹一杯ってことは流石にないが……油そばはいつもトリプル盛りだしな。

 これでも燃費は良い方なので、何か口に入れておけば一日活動出来るように体がなっている。

 特にシュークリームが好きなわけではないが、糖分補給出来るし、二口で食い切れるし、片手塞がらないしで、これが最適解だ。

 

「毎食それってことはないわよね?」

「……チガウヨ」

 

 面倒なので、とりあえず否定しておくことにした。

 実際、制作物が特にない時はちゃんと食うようにしてるしな。嘘は言ってない。

 のだが……

 

「嘘臭いわね……昨日の食事は?」

「えーっ、と……」

 

 不味い。昨日は朝昼食ってないし、夜はちゃんとシュークリームを食べている。つーか、どうしてそんなに詳しく聞いてくんだよ、こいつ。

 

「答えられないのが、答えね。そのうち倒れるわよ?」

「その時はその時だな」

 

 なんとかなるのは、経験済みなので知っている。

 

「……で、お前はどうして俺を探してたんだ?」

「どうしてって、今日はわたしの番だからよ。昨日ことねから聞かなかったかしら?」

「……あー、当番制みたいになってんのね。理解理解」

 

 ってことは、明日が月村か。

 その後はどうなんだろ。このままローテーションするつもりなんだろうか。

 

「ま、それならそれでいいが……昼休みにわざわざここまで来て、時間大丈夫か?」

「問題ないわ! 活動の一環として、公休にしてくれるみたいよ」

 

 それはダメだろ。

 

「俺と会ったって、話すぐらいしかやることねえぞ」

「なら、走りましょう」

「まって?」

 

 なんでそうなる。

 

「だって、あなた運動が出来ないわけじゃないんでしょう?」

「……どうしてそう思う?」

「立ち方が綺麗、っていうのもそれだけれど、この前、手毬を見ただけで体質を見抜いて、アドバイスをしていたでしょう? それであなたにはバレエか社交ダンスの経験があるんじゃないかと思っていたの」

「なるほどな」

 

 人の話は結構聞くタイプらしい。

 

「その二択だと、社交ダンスはやってたな」

 

 つっても、二年そこらだけど。

 バレエに関しては前世の大学で縁があった奴のおかげで、知識が多少あるぐらいだ。

 

「二択、ってことは他にも運動は出来るってこと?」

「そこはノーコメント。ただ、体を動かすのは嫌いじゃねえよ」

 

 座り過ぎで死ぬ創作者とか多いし、物作りすんなら何にせよ体力がないと話にならんからな。

 

「なのに食事はおざなりなのね」

「ほっとけ」

 

 もう本当にほっとけ。

 面倒いんだよ、一人で飯食うのって。

 

「今はいいかもしれないけれど、数年後後悔するわよ」

「お前は俺のオカンか」

 

 オカン。今生のオカンは、あら〜とか言ってくれそうだが、前世は不摂生でめちゃくちゃ叱られたからな。

 ……かーちゃん元気してっかな。

 

「……んで、マジで走るの?」

 

 食に関する話題では負ける気しかしないので、話を逸らすことにした。

 

「お前、制服だけど流石にそれで走るわけにはいかんだろ」

「それもそうね……」

「放課後でよけりゃ付き合うが」

「あら、いいの?」

「運動不足だからな。丁度いいと思ったんだよ」

 

 そう言ってから少し考える。

 

「どうかしたの?」

「いや、放課後の予定は決まったが、わざわざ会いに来たやつに出来ることはないかな、と」

「変なところ律儀なのね」

「こんな性格だからな。関わってくれようとするやつには、極力そうするようにしてんだよ」

 

 つっても、今の俺が彼女に出せるものは金と情報、あとはなんだ?

 撮る気にはまだなっていないからそれはなしとして、そうだな……

 

「一枚、写真だけ撮ってやるよ」

「え……?」

「ちょっと待ってろ、スタジオに連絡すっから。宣材はもうあるだろうが、何かに使えんだろ。写真の撮り方も一緒に教えてやるよ。写りの良い画角とか知識増えたら出来ることも増える」

「ちょ、ちょっと!? どうしてもう撮る方向で進んでいるの!?」

「あん?」

 

 なんだ、嫌なのか……?

 

「んじゃ、知り合いの照明と舞台演出屋……あとはそうだな、ジャズとバレエ、あとは競技ダンスとフラメンコの先生は紹介できる。日本舞踊はちょっと当てがないが、神楽舞なら俺が教えられるのが一つあるな」

「そういうことでもないわよッ!!」

「金の心配はすんなよ、俺が出してやるから」

「そういう話でもないんだけどっ!」

 

 えぇ……?

 

「何がダメなんだ……?」

「ダメに決まってるじゃない。言っておくけれどね、わたしは施しを受けて喜ぶような、浅い女じゃないわ」

「あー……」

 

 そういうつもりはなかったんだけどな。

 

「悪い、お前見てるとなんかほっとけなくてな」

「……どういうこと?」

「んにゃ、大したことじゃねえよ」

 

 勝手に自己投影してただけだ。

 

「お前は一番、答えに近い。お前だけの唯一無二の面白さにな」

「わたしが……?」

「ああ……だってお前はわかってるだろ、自分の強さも弱さも」

 

 なら、後必要なのは一歩だ。

 

「……驚いた、それもわかるのね」

「ああ、お前みたいなやつには覚えがあるからな」

 

 覚えがあるなんてもんじゃねえけどな。

 

「早熟の秀才は大器晩成の天才よりも壁にぶち当たるのが早い。そして今、お前は自分が頭打ちになっていると感じている。違うか?」

「……そうね。

「けどな、それは壁でしかないことを誰も理解していない」

 

 能力の成長限界。

 スポーツの世界や特定の分野を突き詰めた先では、才能の頭打ちを意味する残酷な言葉。

 それに悩まされる人は多いと知っているし、俺だってそういった挫折は何度となく経験した。でも、それでもな。

 

「頭打ちィ? んなもんが、表現の世界にあってたまるかよ。早熟だァ? 結構なことじゃねえか、お前には他よりも多くのことを吸収する時間があるってこったろ」

「……ッ!」

 

 創ならファンは外付けの筋肉とか、言うんだろう。

 それは正しいが、生憎、自分と直接の関わりがない誰かに対して興味を向けられない俺にはこんなことしか教えてやれない。

 それにきっと創はそれが目的で俺と彼女たちを引き合わせたのだろう。

 

「かの芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチは多様な分野で活躍し万能の天才と呼ばれた。が、もっとも世間に知られているのは彼の芸術家としての側面だ」

 

 何故か。

 

「それは彼の人が万のことに通じていたからだ」

 

 知るということは、己の世界を広げる。

 知識や技術を学ぶのは、内的世界で現実に影響を及ぼそうとする表現者として絶対に欠かせない要素の一つ。

 だからこそダヴィンチは、絵画という表現で何より鮮烈に人の心に残ったのだろう……と、俺は思っている。

 

「学べ、吸収しろ。この世にあるありとあらゆる知識と技術を。それがお前を輝かせる」

 

 お前が目指すべき方向は、そこだ。

 

「この世に存在するありとあらゆる面白いものを自分に集約させて、自分だけの解答を見つけるんだ。楽しそうだろ?」

「……あなた、無茶苦茶よ」

 

 よく言われる。

 俺が目で笑っていると、花海の方は呆れたように笑って「けど」と言った。

 

「やってやろうじゃない! ふふっ、まだ発展途上。未完の大器、花海咲季の底力見せてやるわッ!」

 

 以前よりもはっきりと意志のこもった瞳。

 揺れるように燃えていた魂の炎が、熱を増し、燃え盛っている。

 ああ、そうだ。

 薪ならいくらでも焚べてやる。だからもっと、面白くなれ。

 観客全員をお前の表現で焼き殺せるような、炎の華を咲かせてみせろ。

 

「んで、じゃあどうする。写真、撮りに行くか?」

 

 切り替えるようにそう言うと、彼女はジト目で言った。

 

「……目的はわかったけれど、そういうのはプロデューサーを通してくれるかしら?」

 

 正論過ぎてぐぅの音も出なかった。

 まあ良かろう。俺は彼女のプロデューサーではない。

 目指す方向はわかっただろうし、何を学び何を糧とするかは彼女の自由だ。

 

「わーったよ。真面目ちゃんめ」

「これでも学年主席の優等生ですもの」

 

 お前みたいな優等生が居てたまるかよ。

 

「というか、気になったんだけど、あなたお金をポンポン出しすぎよ。金銭感覚どうなってるのかしら」

「金の稼ぎ方なんていくらでもあんだよ」

 

 つっても、作った作品を売って金稼いだだけだが。

 節制して暮らすなら二十年はダラダラいけるんじゃねえかな。

 世の中にはそういうことを考えられないから、自分の尺度だけで物を言うやつもいる。

 映画撮った時にも言われたな。一億なんてどっから出たんだ、とかな。

 色々取り沙汰されて面倒だった。私的な作品だから、クラファンも使ってなかったから自分で賄うしかなかったんだよな。

 融資なんてもっての外だ。そんなんしたら他人の意思が混ざるだろうが。俺の表現が濁る。

 

「良くないわよ、そういうの」

「俺が唯一、お前にしてやれるアドバイスだったんだよ。あとはテメーで解答出すしかないからな。当たり前だが、誰にでもやるわけじゃねえよ」

「……待ってちょうだい」

 

 何を?

 

「それってどういう意味かしら?」

 

 どういう意味も何もないだろ。

 

「俺なんか変なこと言ったか?」

「その感じ出されると腹が立つけれど、安心するわね……」

「それこそどういう意味だ」

 

 いや待てよ。前後の話の行間をコイツが取り違えたのだとしたら……

 ははーん、わかったぞ。

 こいつ、もしかしてだが。

 

「お前が特別って意味じゃねえから安心しろ」

「はァッ!?」

 

 お、顔真っ赤じゃねえか。

 なんだよ、ちゃんと乙女じゃん。

 

「だ、だだっ、誰が! いつ! そんなこと言ったのかしらッ!?」

「や、勘違いしてないならいいんだわ。すまんすまん」

「こ、このッ!」

 

 怒り出した花海をどうどうと宥めながら、ふと空を見上げる。

 晴れ渡るような空模様に、きっと彼女は大丈夫だ、とそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、放課後になって付き合わされたランニングで、俺は死に目を見ることになったのだが……美少女を揶揄った代償だと思うことにした。

 

 

 笑った月村は後日、泣かすことにする。

 

 

 

 

 




いいよね、行間を読むって言葉。作者の言い訳にもなるし、読者の言い訳にもなって両得なので好きです。
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