学マスの初星学園って実際、どんなとこなんだろうと妄想した結果生まれた転生者オリ主もの   作:ファムファタール

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間話:未来になれなかったあなたのいつか

 寮への道すがら、あたしは今日あったことを反芻する。

 プロデューサーを交えて行った作戦会議。その会議で決まったこと。

 作戦といっても、あたしたち三人が一人一人、三日間日替わりで東雲さんに会いに行って、四日目以降はその時のスケジュール次第でみんなで会いに行くようにする、というだけのシンプルなものだ。

 わかりやすくて、あたし的には悪くないなって感じだった。

 けど、雨馬市家籠絡作戦ってネーミングはどうかと思う。

 直接的過ぎるし、なんか悪いことをしているような感じがする。

 

 プロデューサー曰く、彼をその気にさせるには、惚れさせるぐらいの気概が必要です、ってことみたい。

 

 その時はちょっと引いたし、それに改めて今日話をしてみて、プロデューサーの言うことは少しだけ違う気もしていた。

 

 たぶん、あの人はあたしたちに期待してくれている。

 

 気がつけると、本当の自分に向き合えると本気で思って、それで手助けまでしようとしてくれている。

 

 渡された一冊のノートをカバンから取り出して、確認してみる。

 粗雑な口調とは裏腹に丁寧に書かれた『自己分析ノート』の表題に少し、心を惹かれるような気がして、道端だというのについつい中身を開いてしまう。

 

 読まなくていいって、東雲さんは言ってたけど、別にちゃんと読んだっていいよね。

 そんな軽い気持ちで開いた1ページ目は、やっぱり綺麗な字で、東雲さんの良いところがいっぱい書いてあって、なんだ、ナルシストかよ、とちょっと思った。

 

 けど……

 

「あれ……?」

 

 いいところばかりじゃなかった。

 そのページには一つだけ、彼自身が悪いと思っていることについてが書いてあった。

 特に気になることもなかったし、逆にそれが興味をひいてもう1ページ捲った。

 

「え……」

 

 次に書いてあったのは普通のこと。

 生活習慣や心掛けていること、どんなことが好きなのかそして……

 

 何が嫌いなのか。

 

「自分が嫌い……? うっそだあ」

 

 だって、あんなに自信満々な感じだし……

 あたしは、あの人のことを全然知らないから絶対にない、なんて言えないけど……

 少なくとも見た目の印象でそう感じたことはない。

 

 なんて思いながら開いた3ページ目。

 そこは前の2ページとは明らかに様子が違っていた。

 

「なにこれ……」

 

 殴り書きのように書かれているのは、あの人自身が自分をどう思っているのか、周囲に対して何を思っているのか。

 これを本当にあたしが話していたあの人が書いたのかと疑うほどに、煮詰まった黒い感情とそれに対する謝罪の文章。

 慌ててページを捲ったけど、それ以降もずっとそんな風に殴り書きされていて、そこにはいい思いも悪い思いも全部全部書かれていた。

 

 普通なら言葉で表すことなんて到底出来ないようなものを必死に表現しようとした痕跡。

 目を背けたくなるような苦悩の痕が、そこにあって、あたしはどうしてそこを読まなくていいと言われたのかがわかった。

 

 読ませたくなかったはずだ。誰にも知られたくなかったはずだ。

 あたしなら読まないと思ったのか、ううん、きっと違う。

 わかっていたのに、読ませてくれたんだ。

 

 もちろん、読まないなら読まないで良い、というかその方がよかったんだと思う。

 だって、これってとんでもない弱味なんだから。

 

 でもよかった。

 読んで、よかった。

 

 あの年齢で有名になるような人でも、苦労がないわけじゃない。苦悩がないわけじゃない。

 どれだけすごい人でも、こうして苦しんで、人によってはきっと足を止めて動けなくなっちゃうんだ。

 

 そして、その事を彼は責めないんだろう。

 立ち止まることもきっと心がぽっきり折れて、辞めちゃう人のことも彼は理解して、それを許すんだと思う。頑張ったな、なんて言うのかもしれない。

 

 その分、未練を引き摺ってたり、明後日の方向に進んだりしたらきっと怒るんだろうけれど。

 

「……だから、読ませてくれたんだ」

 

 立ち止まったことがあるあたしに、それでも良いんだよって。

 

「……えと、最後のページは?」

 

 気がついたら、すっかりノートの残りページは少なくなっていて、というか字が汚なさ過ぎて読めないところがあったからだけど、ともかくあたしは最後のページを捲った。

 

 そこには……

 

「……え、ふ、あはは。なにそれぇ」

 

 何というか、あの人らしくない言葉が書かれていてあたしはおかしくて、笑った。

 

 ああ、だから彼は言ったんだ。

 答えは以外と近いところにある、なんて。

 確かに言い方とか内容ちょっと変えたり、人物を特定したりしたらあたしらしくなるかも……?

 近いけど遠いから本当にヒントって感じだ。

 けど、

 

「物理的な話だとはおもわなかったつーのぉっ!」

 

 そんな不満をあたしは空にぶちまけた。

 

 




「誰かが明日を楽しみに生きて、待ち望んでいられるような作品を俺は作りたい」
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