【完結】転生したらアバンギャルド君だったのでリオ会長を救います 作:天神茶々
「本日は、多くのメディアのみなさまにお集まりいただきありがとうございます。まずは、本日の出席者を紹介いたします」
「ミレニアム生徒会長、調月リオ」
「ミレニアムゲーム開発部、天童アリス」
「ミレニアムC&C、飛鳥馬トキ」
「調月リオ生徒会長が所有する戦闘用ロボット、アバンギャルド君」
「そして進行は私、セミナーの黒崎コユキが務めさせていただきます」
ドーモ。キシャ=サン。アバンギャルド君です。
諸事情あって、セミナーに復帰させられた上で、突然記者会見に呼ばれた黒崎コユキの進行の元、ついにアバンギャルド君をキヴォトスに
「なお、事前の説明資料にはもう1人、特異現象捜査部とヴェリタスの部長を務める明星ヒマリも出席と記載しておりましたが、
当人から『こんな会見に参加すれば、頭がどうにかなってしまいます!』と伝言を承ったので、大変申し訳ございませんが、本日は欠席という形になります」
まぁ、そう思いますよねぇというコユキの小さな呟きは、秘匿通信の方では聞こえてきたものの、記者たちに向けたマイクに拾われることはなかった。
なお、この場にいるほとんどの人が、同じ感想を抱きそうになっていると思われる。
また、俺自身もまったく同じ感想である。
しかし、この会見自体は、これからの作戦のためにどうしても開く必要があったため、完全に止めることは出来なかった。
なおトキの方は、これから主人であるリオがキヴォトス中に向けて、そのポンコツぶりを披露する様子を、感情を殺しながら見守っている。
「それではまず、調月リオ会長から、先日からキヴォトス内で様々な憶測が飛び交っている、正体不明の巨人が出現した日の経緯について、お伝えさせていただきます」
多少――否、報道側のかなりの動揺がありながらも、彼女らのカメラがリオ1人に対して向けられられる。
コユキと違って、一切緊張する様子のないリオは、マイクに向かって淡々と話を進めていった。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。
生徒会長の調月リオです。
先程、黒崎コユキからお話があった通り、先日の巨人の件につきまして、私の方から説明させていただきます」
ようやく、真面目な記者会見が始まるのだと。
「きっかけは、廃墟内で今も稼働し続けている、無名の守護者と呼ばれる戦闘用ロボットを生産するシステムが、第三者による介入を受けたことで暴走、そしてミレニアムを狙い襲撃をかけてきたことでした」
「その手段として、無名の守護者は延べ100万の機体を1つに集結させ、皆さんも良く知るあの巨人の姿を取ることを選択。私たちミレニアム側に、あの巨人を倒す手段は1つだけ――持ちうる最大火力を以て、100万を一度に殲滅する方法しかありませんでした」
リオから明かされていく真実を、記者たちはそれぞれのメモや電子機器に記録していく。
一部の報道機関は、これを生放送で中継していたりもするのだろう。
ここで、アリスの心の中にいるKeyから、私が敗北した経緯を赤裸々に明かして恥ずかしめるつもりかと通信が届く。
決してそんな意図はなかったが、それに関しては誠に申し訳ないと謝ることしかできなかった。
「しかし、あの規模の敵を消滅させるには、埒外の火力が必要でした。
手段こそありましたが、無闇に放てば攻撃の余波による影響が他学区にまで生じ、外交問題にまで発展していたでしょう。
そのため、C&Cの協力を得て無名の守護者を誘導し、被害の生じることのない上空へと打ち上げてもらったのが、巨人の姿が皆様の目に留まるまでの経緯です」
ミレニアム側で唯一、当事者でなかった黒崎コユキから秘匿通信で、これって本当の話なんですか?と質問を投げかけられる。
まぁ、それが普通の反応なのだろう。
実際に目の当たりにしていない以上、ミレニアムを巨人が襲おうとしていたとか、その巨人を空に打ち上げて、極太レーザー砲で消滅させたとか、夢でも見ていたのか言いたくなる気持ちはわかる。
心なしか、先程から報道側の困惑の声が聞こえてくる気がしていた。
「そして次に、100万の無名の守護者を消滅させた光についてですが……その前に。
ミレニアムの生徒会長として、この場をかりて、皆様にお伝えしなければならないことがあります」
リオの言葉に、俺はこの時が来たのかと息を呑む。
今日、時間を取って記者会見を開いたのは、わざわざKeyの死体蹴りをするためなどではない。
「我々ミレニアムサイエンススクールは、今の形となる前の、千年難題へと挑む研究者たちの集まりでしかなかった頃から、知識を武器とし、世界の抱える秘密を科学によって解明してきました」
「知識は歴史と共に積み重ねられ、今では高度な科学技術が人々の生活を支え、先程述べた千年難題も、その内の1つが約22年前に解決されるなど、今もなお進歩を続けています」
「そして、ミレニアムが……人類が積み重ねてきた叡智は、ついにここまでたどり着いたのです」
刹那、会場の電源が一斉に消え、背後にあったプロジェクター上に、幾つものイメージ画像が浮かび上がっては消えていく。
世界を吸収していくアトラハシースの箱舟、集う
照明が戻った後、静まり返った会場内で、調月リオは宣言する。
「そう遠くない未来、キヴォトスに滅亡をもたらす厄災が、これから幾度と訪れます。
これは、私が狂った果ての陰謀論ではなく、ミレニアムで綿々と紡がれていった叡智が証明した、いずれ必ず訪れる未来です」
SNSで話題になったゴシップについての記者会見から一転。
ミレニアムのトップが、世界を揺るがす発言を行ったことで、報道側も動揺の声を一切隠せず、ざわめきの声が会場を支配する。
もちろん、事前に報道側に渡していた資料にそんな情報はない。
進行役のコユキが、質疑応答は後ほど行うので、一度静かにお願いしますと声を張ってくれたおかげで、すんなり記者会見を進められた。
「先日出現した巨人を出現させた第三者の正体。
それは、キヴォトスを滅ぼす厄災の内の1つ――名も無き神々の王女」
「他にも様々な厄災が、キヴォトスを滅ぼそうと間もなく牙を向くでしょう。
予測された世界の危機。その解決のため、私は新たなる組織の立ち上げを決定しました」
「メンバーは、セミナー直属の特務組織、特異現象部の明星ヒマリ、和泉元エイミ。
そして私と、この場に同席している飛鳥馬トキと天童アリス」
それは、皆で話し合った、未来のキヴォトスに間違いなく現れる厄災を超えるための手段。
或いは、天才たるリオでも未だ突き止められていない、未知の厄災がいつ現れても対抗できるようにするための鬼札。
そう、その組織の名前は――!!
「最後のメンバーに、先日の巨人討伐者である、アバンギャルド君を部長として。
対厄災治安組織『勇者部』を設立します。
世界の危機であろうと、怯える必要はありません。
アバンギャルド君が全て吹き飛ばしてくれるわ!!」
「もちろん、他の勇者部のみんなもね」
ミレニアムサイエンススクール勇者部。
これから俺は、我らが調月リオを部長として新設された組織の主戦力として、ついにブルーアーカイブの世界と本格的に関わっていくことに――!!
――待って、今何かおかしくなかった?
「リオ!? 部長はリオがやるって話だっただろ!?」
「やっぱりあなたが適任だと思ったから、任せることにしたわ♪」
「任せることにしたわ♪ じゃねえよ!? そもそも俺、生徒ですらないし!」
「大丈夫よ。エデン条約の黒幕だった大人は、アリウス分校の生徒会長も務めていたらしいから」
「最悪な例を理由として挙げるなよ!?」
嘘だ。俺とトキが必死の思いで用意した台本通りに進めば、少なくとも質疑応答までは大丈夫だったはずなのに。(記者会見名は、リオが直前に独断で変更した模様)
そして、何とか2人でフォローすれば、もしかしたらリオのクールな生徒会長像を守り切れるかもしれないと僅かな希望を抱いていたのに。
あ、トキが無言で一雫の涙を流してる……。
「えーっと、では続きまして質疑応答の時間に移ります。質問のある方は挙手の上、お名前と媒体名をお願いします」
ある意味でいつものように台無しになった空気の中、何とか場を持ちなおそうとするコユキのファインプレーで、ギリギリ記者会見としての体裁を保ったまま進行していく。
真っ先に手を上げたのは、やはりというかあの学校だった。
「クロノススクール報道部の川流です!
世界の滅亡なんて到底信じられませんが、一体どのような証拠があるのでしょうか?」
「詳しく説明すると非常に難解な話になるので要点だけまとめると、厄災に関して記述のあった古い資料や、廃墟などで見つかった遺物などの分析によるものです。
具体的なデータについては、後日開設される勇者部のホームページに掲載予定の資料をご確認ください」
「カイザースクープのパスカルです。
その奇怪なロボットには、ミレニアムの学籍が発行されるのでしょうか?」
「アバンギャルド君です。二度とそのように呼ばないでください。
彼の勇者部部長就任につきましては、あくまで勇者部の活動が厄災に向けた特殊なものであるための特例措置であり、ミレニアムの規則等に記載されている在籍資格を満たさない者への学籍は、今後ともに発行するつもりはありません」
「ゲヘナニュースのミナです。
その厄災が訪れるという予測は、どれほど正確なのでしょうか」
「具体的な日時までは予測できませんが、到来するかどうかなら確実に判断できます。
また、全ての厄災に対応できるわけではなく、あくまで痕跡が確認されたものに限られます」
「トリニティ情報のラナです。
先程発言のあった、エデン条約の黒幕とは……?」
「とある筋からの情報です。提供者からの希望で匿名とさせていただきますが、怪しいものではないということは、これから行動でも信じていただけるようにしたいと考えています」
「ミレニアム新聞のカコです。
その……、そもそも、アバンギャルド君って何ですか……?」
「良い質問ね。
アバンギャルド君は私が作ったロボットなのだけれど、これは廃墟から発掘されたとあるロボットのデータを基礎としていて、私はそれを原初のアバンギャルド君と呼んでいるのだけれど、その構造や仕組みは古くに設計されたとは思えない程合理的で洗練されていて、私のロボットはあの設計図を見る前と後では日を見るより明らかに違いがあると断言できるわ。まずCPUからなのだけど。いや、もう本当に凄いの。どれくらい凄いかというと、今から約400年前の現代では最も優れた発明と呼ばれている」
「他に! 他に質問のある方はいませんか!?」
順に質問が投げかけられ、その全てに丁寧に対応していくリオ。
様子をうかがっている感じ、報道陣はリオが時々暴走モードに入っていたこともあって、これは本気で言っているのか、とっくに過ぎ去ったエイプリルフールの企画なのか、判断しかねている様子だった。
まあ、そもそも世界の滅亡なんて信じてもらえるかどうか怪しい話ではあるし、これくらいの温度感でいいのだと思う。
なお、リオのクールな生徒会長という幻想は完全に剥がれた模様。
この後、ひっそりトキと2人でお疲れ様会を開く予定である。
「以上、質問がなければこれで記者会見を終了させていただきます。なお、最後に今後の勇者部の活動方針として――」
「回り続けるレールはやがて……正義の未来へと繋がる!
無限回転寿司戦隊・カイテンジャー! 参上!」
『対厄災治安組織といっても、毎日災いが襲ってくるわけではないから。
自治区の治安維持活動を積み重ねて行って、世間からの信頼を得るところからスタートよ』
俺たちが情報を聞きつけ駆けつけた先には、ニチアサを思わせる服装を身に纏った5人組。
レッド、ブラック、グリーン、イエロー、ピンクの戦隊服を身に纏い、それぞれの色に合ったお寿司のヘルメットを被る正義の味方――に見える指名手配犯。
「はっはっはっはっはっはっ! カイテンロボに更なる力をもたらすため、ミレニアムの素晴らしい技術を根こそぎ奪わせてもらおう!!」
「いいえ! ミレニアムのみんなが頑張って作った技術を、悪い人たちに利用させたりはしません! Key! 力を貸してください!!」
『うぅ……どうして私が、こんな正義の味方みたいなことを……』
リオとヒマリの2人のおかげで、通信越しにこちらへと話せるようになったKeyの声に同情しつつ、俺は盾を構えてカイテンジャーと相対する。
戦闘担当のトキとエイミがそれぞれ臨戦態勢に入り、アリスの号令と共に戦闘が開始される。
「さぁ、アリス達の世界を守る戦いはこれからです!!」
アリスの勇気が、世界を救うと信じて――!!
※まだ続きます。