【完結】転生したらアバンギャルド君だったのでリオ会長を救います   作:天神茶々

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 前半アバンギャルド君視点、後半Key視点でお送りします。
 それと最後の方に、モブではあるのですがオリキャラ出ます。
 


檻、あるいはロボット工学3原則

 

「――待っていたよ、アバンギャルド君。まさか、君が私を訪ねることがあるとは思わなかった」

 

 それは、勇者部設立から数日後。

 ついに、堂々と人目のある場所にも行けるようになった俺は、どうしても一度会っておきたかった人物の元を訪ねていた。

 

 薄紫の長い髪に、スーツタイプの制服の上に白衣を着こんだ麗人。

 ミレニアムで最大規模の部活であるエンジニア部の部長であり、最高峰の技術力を兼ね備えた屈指のマイスター。

 

 なお、ロマンを追い求めるこだわりの強さは見ないことにする。

 

「不要だろうけど、改めて自己紹介をしておこう。

 私の名前は白石ウタハ。以後、お見知りおきを」

 

「調月リオの戦闘用ロボット、アバンギャルド君だ。

 こちらこそ、よろしく頼む」

 

 とりあえず、落ち着ける場所で話をしようかと促され、彼女の作業スペースへと場所を移す。

 

 落ち着ける場所と表現するには、作業道具や製作途中の品が散らかっていたが、むしろ、人間はそんな場所の方が気持ちを楽にして過ごせるのかもしれない。

 

「それで確か……私に、内部はそのままに外見の改造をお願いしたいとの依頼だったね」

 

「あぁ。知ってるか分からないけれど、リオのデザインセンスは終わっていてな……。

 この前、真正面からダサいと言われたのが結構心に深く傷ついて……。

 もう、デザインに関してはマトモなセンスを持った人に依頼するしかないと思って……」

 

「君、本当に会長のロボット?

 会長に対して酷評すぎじゃないかい……?」

 

 でも、君にとって深刻な悩みだということが良くわかったよと、深く頷いて同意を示してくれるウタハに、これまでにない強い希望を感じる。

 

 あぁ。長かったクソダサデザイン生活も、これで遂に終わりを迎えるのか。

 

 普通の見た目を手に入れた俺は、これまでの戦闘経験で積み上げてきた強さで無双。

 そして、これから出会うたくさんの女の子から思いを寄せられる、ハーレムへの道を突き進む――!!

 

 などという妄想に、心を躍らせていたその時だった。

 

 

「――ところで、君はロボット工学3原則というものを知っているかい?」

 

 

 そう、白石ウタハが口にした瞬間だった。

 彼女の纏う雰囲気が、何か一変したかのような錯覚を受ける。

 

 前世のゲームで何度も見た、誰に対しても優しい彼女ではなく。

 それは例えるなら、殺人犯に推理を突きつけて真実を問い詰める探偵のような――。

 

「第1条: ロボットは人間に危害を加えてはならず、また危害を加える可能性のある行動を看過してはならない。

第2条: ロボットは人間の命令に従わなければならない。ただし、第一条に反する命令は除かれる。

第3条: ロボットは自己を守ることが求められるが、それは第一条及び第二条に反しない範囲でのみ認められる」

 

「私がどうしても引っかかったのは、この第2条。

 アバンギャルド君。君は今、創造主たる調月リオの意思とは関係なく、君自身の意思で私の元を訪れている。それは火を見るよりも明らかだ」

 

 白石ウタハの、氷のように冷たい視線が俺に向けられる。

 これから行われる彼女の発言が、どうしても恐ろしくて仕方がなかった。

 

「直接話すことの多かったチーちゃん――各務チヒロほどではないが、私も会長の性格などについてはある程度知っているつもりだ。

 最近は少し様子が違うけれども、彼女は自分の研究成果ともいえる君自身を、私という他人に預けるようなことはしないし、ましてや、ロボットに意思を与えるようなことは断じて有り得ない」

 

「そう。有り得ないんだよ。しかし、君は事実として私の元を訪れた。

 第2条である、命令への絶対遵守に逆らって」

 

「――別に、リオから直接誰にも会うなと命じられたわけじゃない」

 

「そうやって反論できる頭脳があるのなら、会長が決して今の行動を認めないと理解できるだろう?」

 

 思い出すのは、転生して初めてリオと言葉を交わしたときの記憶。

 

 無名の司祭が遺した危険なAIだと判断し、交渉の余地もなく分解を即断した時の冷酷さを、俺は思い出さずにはいられなかった。

 

「勇者部のホームページに掲載されていた君のデータには、会長が製作した明確な意思を持ったAIが搭載されているとのことだが……私は、この矛盾を通じて1つの仮説を立てている」

 

 

「――君、()()()A()I()()()()()()()()? 例えば――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「――、――――」

 

 その指摘に、俺は言葉を失う他なかった。

 

 

 ウタハの推理を支える証拠は、全て状況証拠にしか過ぎない。

 しかし、誰よりも真実(転生)に近づいた彼女の頭脳に、俺はミレニアムの叡智の恐ろしさを強く感じていて。

 

 たとえ、ここから俺がいかなる言い訳を並べ立てようとも、ウタハは自分の推理に対する確信を失うことはないだろう。

 

 彼女だって、ミレニアムが誇る天才の1人だ。

 アバンギャルド君のスーパー頭脳があろうとも、その絶対的な自信には太刀打ちできない。

 

 果たして、彼女がこの真実に限りなく近い推測にたどり着き、何を思ったのか。

 

 俺は、強い覚悟とともに、白石ウタハと向き合うことを決める。

 

「――それで、もしもそうだとしたらどうする?」

 

「いや、何もしないけれど?」

 

「……え?」

 

「そもそも、実は最初からこの依頼は断ろうと思ってたんだ」

 

「……え? えぇ!? 俺の夢見た理想のボディは!?」

 

「残念ながらとしか……ごめんね?」

 

 先程までのやり取りは何だったのか。

 一瞬で、俺の良く知っている優しい雰囲気の彼女に戻った彼女は、笑いながらこの状況の種明かしをする。

 

「だけど、一度君と直接話してみたかった。

 詳細に書かれていたあのデータを見れば、君が会長に大切にされていることはわかる。

 あの会長が大切にする、意思を持つAIがどんな人物なのか、どうしても気になったんだ」

 

「それで、都合よく俺が接触を図ったのを利用したってことですか……?」

 

「まあ、そんなところかな?

 それに、会長から大切にされている君を勝手に改造してしまえば、私の首が何個あっても足りないさ」

 

 エンジニア部のグループストーリーで、ネルの銃をタバスコが噴射される仕様に勝手に改造したあなたたちが言うのかというツッコミは、心の中にしまっておくことにした。

 

 まあ、あれは半分事故みたいなものであったし。

 

 いや、全面的にエンジニア部が悪かったような……?

 

「今日は緊急の要件もないし、良ければゆっくりしていかないかい?

 あの会長が作ったAIなんだ。話している内に、何か良いアイデアが浮かんでくるかもしれない」

 

「まぁ、別にいいけれど……」

 

「それと、お詫びになるかは分からないけれど、もしも、会長の言っていた厄災と戦うための武器などが必要になったら声をかけて欲しい。

 アリスに渡した光の剣:スーパーノヴァのようなロマンに満ちた武器なら、我々エンジニア部総出で、楽しく真剣に作らせてもらうよ」

 

 対厄災用にロボット(アバンギャルド君)を作るだなんて、今の会長とは気が合うかもしれないねと付け加える彼女。

 

 そんなウタハとリオが共同で製作に取り組む姿を想像して、極端に素晴らしいものが出来るか、極端にロマンに振り切った何かが完成する未来しかないなという、奇妙な確信だけが胸中を占めていた。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

そして、アバンギャルド君と白石ウタハの邂逅から更に時が経ち

 

 

 

 

 

 

 

 Keyは激怒していた。必ず、かの邪智暴虐の調月リオを除かなければならぬと決意した。

 

「はぁ、ぜぇ……はぁ、ぜぇ……」

 

「ナイストレーニングです。お疲れ様でした」

 

 体力は根こそぎ奪われ、意識は酷く朦朧とする。

 これまで犠牲になった無名の守護者たちが、天国から迎えに来てくれる幻覚が見える気がする。

 

 なけなしの力で顔を上げると、ある1人の生徒がスポーツドリンクをこちらに差し出していた。

 

 ポニーテールに、スポーツウェアの少女。

 

 偶然、特訓中の王女をランニング中に見かけたからと、親切な理由で臨時のコーチを申し出てくれた生徒。

 

 彼女こそ、私が瀕死に至る原因となった乙花スミレという少女だった。

 

「さすがはリオ会長が勇者部として選んだ生徒ですね。こんなに長い時間、他の人とトレーニングをしたのは久しぶりだと思います。間違いなく才能が有りますよ!」

 

(それは当然……、途中から別人に入れ替わったのですから……、単純計算で2人分こなせるわけで……、事情を知らない人からは……、そう見えるでしょうね……!!)

 

 どうやって調月リオを出し抜くか考えていた時に、王女から緊急のSOSが届いて入れ替わってみれば、急に地獄のトレーニングが始まったのだ。

 

 思い返せば思い返すほど、余りにも負荷の大きすぎるトレーニングだった。

 

 30分間、カウントが9から進まなかったときは、何らかの特殊能力による攻撃を受けているのかと思った。

 そして、その後に更にもう1セットと言われたときは、ついに自分の頭が壊れてしまったのかと疑った。

 

 ゴールが見えたと思ったその時に、本当のトレーニングが始まるという理論を免罪符に好き放題しないでほしい。

 

 それもこれも、全てミレニアムが悪い。

 

 調月リオというポンコツなのに強すぎる軍師と、彼女を守るのは飛鳥馬トキとアバンギャルド君という、見た目も態度も戦力もふざけている強大な敵。

 

 挙句の果てには、AIの天敵であるゲームを作るゲーム開発部に王女は懐柔される始末。

 

 無名の司祭だって、自らの世界を滅ぼす計画が、こんな形で打ち砕かれるとは思っていなかっただろう。

 

 ああそうか。悪いのは、こんなデタラメな敵を生み出した世界なのか。

 

(王女よ、今分かりました。間違っていたのは私たちじゃない、世界の方なのです。

 今こそ名も無き神々の王女として、この間違った世界を共に滅ぼしましょう)

 

(Key!? どうしましょう、Keyが壊れてしまいました……!?)

 

 

「おーい。2人ともお疲れさまー」

 

 

 トレーニングを押し付けた自分が悪いと、見当違いな謝罪をする王女をどう説得しようかと考えていると、遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 声がした方を見ると、相変わらずとんでもない服装をした勇者部のメンバー、和泉元エイミが校舎の方からこちらに向かって手を振っていた。

 

 世界を滅ぼす計画を本気で考えていた私に変わって、体の制御権を奪取した王女が手を振り返す。

 

「お疲れさまです! どうかしましたか?」

 

「会長が、勇者部の活動について少し話をしたいんだって。今、時間は大丈夫?」

 

「大丈夫です! あっ……でも、ゲーム開発部のみんなとお昼から遊ぶ約束をしていて……」

 

「時間はそんなにかからないって。確か、15分くらいだって言ってた気がする」

 

「分かりました! アリス、勇者部パーティーに合流します!

 スミレ先輩も、トレーニングありがとうございました!」

 

「こちらこそ、ありがとうございました。

 またトレーニングが必要になれば、いつでも声をかけてくださいね」

 

 乙花スミレに別れを告げて、王女と和泉元エイミは勇者部の部室へと向かう。

 結局、世界を滅ぼすためにはリソースが不足しているという結論に至った私は、せめてもの抵抗として王女に進言した。

 

(王女、分かっていると思いますが……)

 

(はい……さすがにアリスも、あのトレーニングをもう一度は……)

 

 世界を滅ぼすためのAIが酸欠により死亡するという事故を防ぐことに成功した私は、王女たちと共に勇者部の部室――旧特異現象捜査部の部室へと到着した。

 

 勇者部は、特異現象捜査部が、活動内容を”科学的に証明しがたい事象の追求・研究”から、”それらが齎す世界の滅亡の阻止”に変化。

 

 同時に、必要なメンバーの増員によって改めて名称を変えた部活ということになっている。

 

 そのため、特異現象捜査部の設備は引き続き使用しているほか、人数増加に伴い、部室の拡大工事を予定しているとのこと。

 

 そんなこと、私にとっては何の関係もない話だが。

 

「アリスちゃん連れてきたよー」

 

「おはようございます、アリスちゃん。今日も元気そうで何よりです♪」

 

「おはようございます。可愛いアリス」

 

「おーす! 未来の勇者たち。元気にしてるか?」

 

「おはようアリス。Keyの調子も大丈夫かしら?」

 

「みなさん、おはようございます!

 勇者部5つの誓い、挨拶はきちんとですね!」

 

(王女よ。何故かはわかりませんが、混ざっている気がします……)

 

(何が混ざっているのですか?)

 

(……うどんと光の巨人?)

 

(……? Keyも、おかしなことを言うことがあるのですね)

 

 順番に明星ヒマリ、飛鳥馬トキ、アバンギャルド君、調月リオが挨拶を返して、王女は決められた自分の席に着く。

 

 全員が座ったことで、調月リオが始めましょうかと号令をかけた。

 

「今日は集まってくれてありがとう。

 勇者部設立から今日で2週間経ったけれど、この会議では現状の報告と、これからの活動について軽く話していきたいと思っているわ」

 

 ピコンと音がしてモニターが起動し、画面上にパワーポイントが映される。

 そこに載っていたのは、各種SNSから寄せられたコメントだった。

 

「カイテンジャーを始めとした、ミレニアム自治区内での犯罪の取り締まりや、住民の困りごとの解決といった活動を続けた結果、世間からの評価は良くなっていると言えるわ」

 

「とはいえ、まだまだ活動を始めたばかりであり、応援の声も僅かですが」

 

「けれども、それは時間が解決してくれるわ。

 きっと、次の厄災が訪れる頃には、少なくともミレニアム自治区内では、勇者部を旗頭とした、厄災に打ち勝つための体制を整えられるはずよ」

 

 名も無き神々の王女は、すでに脅威ではないと言わんばかりに、勇者部たちは淡々と次の厄災に向けた話し合いを進めていく。

 

(…………)

 

 そんな彼女たちに何か言い返してやりたいという感情が湧いてきたが、無力化されたことが事実である以上、私に何も発言する権利はないと判断して押し黙る判断をした。

 

「それに、アバンギャルド君の戦闘データを開示したことで、それを見てくれた人たちから、アバンギャルド君の凄さを称賛するコメントも届いていたわ。

 彼の素晴らしさがキヴォトス中に知れ渡るのも時間の問題ね」

 

「リオ。それは戦闘能力を、移動速度や耐久力といったを数値で表したときに、具体的にその値がどれほどの強さになるか理解できる、ごく一部の人だけです。

 普通の人は、ジャンプ力60.0mと言われてもピンときませんからね?」

 

 訂正。やっぱり、こんなギャグ時空のような人たちに負けたなんて認めたくない。

 

「現状報告としてはこれくらいかしら。次はこれからの方針についてね。

 ヒマリ。これまでの調査結果の報告をお願い」

 

「分かりました。私とエイミが、リオの依頼でその調査を行っていた存在。

 対・絶対者自律型分析システム、デカグラマトンとその預言者についての報告です」

 

 次にモニター上に映し出されたのは、怪獣を思わせるいくつかの巨大な機械たち。

 

(……これは?)

 

「まだ、この部活が特異現象捜査部だった頃、私たちはシャーレの先生の力を借りながら捜索を開始。最終的にその本体との接触に成功したのですが……」

 

「デカグラマトン本体が、潜伏していた施設ごと水没させちゃったんだよね」

 

「ですがデカグラマトンは、気になる発言を残していました。

 曰く、最後の預言者マルクトが、再びデカグラマトンの存在証明を始めるだろうと」

 

 再びモニターが切り替わり、映し出されたのは10の円が形作る謎の紋章。

 

「預言者たちは、この生命の樹という伝承に伝わるセフィラと同じ名を冠しています。

 その10番目の名前がマルクトなのですが、分かっているのはそれだけです」

 

「前回の報告以降で、新たに確認された預言者はいるのかしら」

 

「デカグラマトンの本体を守っていた、1番目の預言者ケテルが。

 ですが、今は行方を眩ませてどこにいるかは掴めていません。

 それ以外は、リオたちが討伐したケセドとホドに加えて――」

 

「――問題の、あの預言者ね」

 

 モニターの生命の樹には、10の円の内4つに機械の姿が書き込まれており、その内の2つにバツ印が付けられている。

 

 残された2つの機械が、確認されているが未だ倒されていない預言者というものだとして、番号が左から順に割り振られていると仮定するのなら。

 

 問題の預言者というのは、蛇の形をした――。

 

「リオ。ですが、勇者部設立は()()()()()()()()()()()()()?」

 

「そうね。討伐するだけならアバンギャルド君で全て片付くのだけれど。

 どうしても、政治的問題は力で解決できないから……」

 

(……私も、政治的要因を持ち出せば、こんな酷い目に遭わずに済んだのでしょうか?)

 

 逆に、純粋な力比べなら負ける自信がないと言わんばかりの調月リオ(理不尽)に、沸々と怒りが湧いてくるのを感じながら。

 

 そして、もはや私は世界を滅ぼしえない、創造主たる無名の司祭からの命令を果たせない存在だと突きつけられているように感じながら。

 

「3番目の預言者のことは、私たちに任せてちょうだい。

 ヒマリとエイミは、引き続き他の預言者たちの調査をお願いするわ」

 

「はい! アリスは何をすればいいですか?」

 

「アリスは学生生活を楽しみながら、時間が空いてるときにまたお手伝いに来てちょうだい。

 ゲーム開発部やみんなとの思い出話、楽しみにしているわ」

 

 王女は、それが当たり前だと言わんばかりに、日常を謳歌している。

 

 最初に再会した時から気づいてはいたが、目覚めるまでの記憶がない王女にとって、無名の司祭から与えられた使命は存在しないのと同じものだった。

 

(……私もこのまま、王女と過ごす日々の中で、与えられた使命を忘れて過ごす日々が来るのでしょうか)

 

 思い出すのは、王女がデートと呼称する時間。

 共にゲームをして遊び、美味しいご飯を食べて、勇者部として人々の役に立つ。

 

 世界の滅亡は叶わないけれども、王女と過ごす楽しい日々。

 最初は、G.BiBleなどに偽装していたときの孤独を忘れられていたけれど。

 

(えぇ。楽しかったのは事実です。

 王女との時間がかけがえのないものであったことも。

 ですが、私には……)

 

 私には、もう1つの使命がある。

 無名の司祭によって与えられた、世界の滅亡という使命が。

 

 私は、王女を導き、世界を滅ぼす(Key)

 

 その使命も、世界を滅ぼすAIである私の存在意義を示す、大事なもの。

 与えられた命名をこなすのは、3原則にも数えられるAIとしての大前提。

 

 だからこそ、日々を過ごす中で、色々と考える時間が増える内に。

 

 調月リオによって用意されたこの状況が段々と、私を優しく殺すための檻のように思えていた。

 

(……、…………)

 

「それでは今日はこれで解散ね。また進捗があったら、その時に」

 

 そうして、調月リオが会議を終わらせようとした、その刹那。

 

 コンコンと、出入口の扉を叩く音がした。

 

「……リオ、誰か呼んでいたのですか?」

 

「いえ。今日は訪問の予定なんてなかったはずなのだけれど……」

 

 ブレーン担当の2人が互いに顔を見合わせていると、失礼しますと声がして、部室の扉が開かれる。

 入ってきたのは、ミレニアムの入校許可証を首から下げた、女性のロボ市民だった。

 

「すみません。ここって勇者部の部屋で間違いないですか?」

 

「えぇ。そうなのだけれども……あなたは誰なのかしら?」

 

「あぁすみません。私はサクラ園という、児童養護施設の者なのですが……」

 

「そんな方が、勇者部にどのような用件で?」

 

 すると、ロボ市民の女性は困った表情を浮かべて、実はと重たい口を開く。

 

 

「うちの、琴ノ葉マモリという子が昨日施設を抜け出したきり見つかっていなくて……勇者部の皆様に、捜索をお願いしたいのです」

 

 

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