【完結】転生したらアバンギャルド君だったのでリオ会長を救います   作:天神茶々

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デカルトがコンビニ弁当を食べてるせいで、ロボット市民の食生活がマジで分からない。

 

 

「第3シェルター突破! 残すところは、管制室のみ――!」

 

 幾度倒しても、即座に新たな機体が生み出される無名の守護者の大群を蹴散らして。

 

 着実に前進を続けていった俺は、箱舟を動かす心臓部であるシステムの、その保管場所と思われる最奥部へと。

 つまり、その場所を守る最後の砦である第3シェルターを突破し、Keyが待ち受けているであろう管制室へと、真っすぐ突き進んでいた。

 

「ここまでは順調。無名の守護者は想像よりも多かったけど、全然何とかなるレベル――!」

 

 むしろ、ここまで傷らしい傷もなく、コンディションはほとんど完璧といっても良い。

 

 こんなに順調でいいのかと、逆に不安になってくるレベルだ。

 

「でもまあ、本命は名も無き神々の王女を自在に操るKeyだからな。

 ラスボス前のダンジョンが、比較的簡単ってのも全然ある話か」

 

 今も攻撃を仕掛けてくる無名の守護者を、1本の剣と2丁の銃で倒しながら。

 不意打ちを狙ってくる機体の攻撃は、黄金長方形型シールドで身を守りながら。

 

「くらえ! 黄金長方形のエネルギー!!」

 

「――――!!」

 

 訂正。シールドも時々、打撃武器として活用しながら。

 

 俺は、管制室までの道を切り拓く――!!

 

「さぁ。待たせたな――Key!!」

 

『ようこそ管制室へ。正直、ここまでは辿り着くと思っていたので、そこまで意外ではありませんでしたが』

 

 管制室を守る最後の扉を吹き飛ばし、俺は勢いのまま突入する。

 しかし、俺を待ち受けていたのは、全くもって想定外の光景だった。

 

「――Key? けど、これは」

 

()()()()()()()()()、ナラム・シンの玉座が用意された特別な空間で、たっぷりとおもてなしをさせていただく所ですが、今日はモニター1つで失礼します』

 

 Keyが作り出した、オリジナルのアトラ・ハシースの箱舟。

 その最奥に位置している場所こそが、システムを司る管制室。

 

 彼女が待ち構えていると思っていたその場所は、しかし到達してみれば無人の空間で。

 巨大なモニターに、Keyの姿が映し出されているだけだった。

 

『思えば、あなたとこうして長時間の戦闘を行うのは初めてでしたね。

 最初は、あなたが私のレールガンを防いだだけ。

 その次は、100万の無名の守護者を消滅させた攻撃を見せただけ。

 正直なところ、私はあなたの情報が極端に不足していました』

 

「一体、何を……」

 

『しかしあなたは、あの調月リオが信頼に足ると背中を預ける存在です。

 私の想定を遥かに超えた、規格外な力を持っているに違いない。

 あなたに勝つためには、その力を把握するのがまず最優先でした』

 

 ――彼を知り、己を知れば百戦殆からずという言葉がある。

 

 これは、古代中国のことわざで、敵と自分の戦力を正確に把握すれば、どんな戦にも負けることはないという内容だ。

 

 言われてみれば、リオの調査や原作知識で、Keyの名も無き神々の王女としての力を、俺はとても詳しく知っている。

 しかし、Keyには俺の力を明かしてはおらず、そういった意味では、確かに彼女の言う通りだった。

 

『1362万9438体。これが何の数字か、分かりますか?』

 

「……俺が、管制室に来るまで倒した、無名の守護者の数」

 

『その通りです。おかげさまで、戦闘データは十分に集まりました。

 一部解明できない謎がありますが、概ねスペックは把握しています』

 

「つまり、Keyは俺のことを丸裸にするために――」

 

『ふざけるのは止めてください、早急に』

 

 冗談はさておき、Keyが俺の力を把握したというのは本当だろう。

 俺への妨害と、情報収集を同時にこなした手腕は、素直に尊敬に値する。

 

 だからこそ、その次に明かされた更なる衝撃の真実に、俺は驚きを隠すことが出来なかった。

 

『そもそも私の中で、アトラ・ハシースの箱舟はあまりあてにしていませんでした』

 

「――、――は?」

 

『あなたたちは、異様なほど名も無き神々の王女について詳しかった。

 だからこそ、アトラ・ハシースの箱舟は既に知られており、何らかの攻略方法を持っていると考えました』

 

 それも確かにその通りで、かつてヒマリやエイミに告げたように、俺たちは最初から、全力の名も無き神々の王女と戦う想定で作戦を組んでいた。

 

 そのため、事前にその段階でどうやってKeyに勝つ討論を重ねており、最終的にアバンギャルド君でゴリ押せるだろうという結論に至っていた。

 

 果たして、作戦の意味とは。

 

『攻略法が筒抜けな武器を切り札にするほど、私は脳無しではありません。

 ですが、あなたたちはアトラ・ハシースの箱舟を無視することは出来ない。

 その脅威を、嫌というほど知っているから』

 

「――つまり、このアトラ・ハシースの箱舟は」

 

『はい。最初から、あなたのデータを集めるための囮でしかありません』

 

 どうやら、名も無き神々の王女への先入観を、完全に利用されてしまったらしい。

 

 Keyを災厄たらしめる力、プロトコルATRAHASIS。

 そして、そのプロトコルによって顕現する終末兵器、アトラ・ハシースの箱舟。

 

 Keyを倒すなら、箱舟を攻略しないといけないという思い込みが、こんな形で牙を向くとは思いもしなかった。

 

「俺はエネルギーを無駄に消費させられて、その間、Keyは高みの見物をしながら、何十分も作戦を練っていたというわけだ」

 

『その通りです。そして、1つ疑問に思いませんでしたか?』

 

 突きつけられた真実に、してやられたという気持ちで唇を強く噛みしめる。

 戦における情報の価値は、指揮官であるリオの背中を何度も見ながら、嫌というほど学んできたつもりだ。

 

 だからこそ、情報面でのアドバンテージを失ってしまった事実に、苦い気持ちになりながら。

 

 Keyが口にした、疑問に思わなかったのかという疑問に、俺は頭の上で疑問符を浮かべていた。

 

『私は安っぽい小説の悪役でも、ゲームのラスボスでもありません。

 あなたに対策される可能性が少しでもあるというのに、なぜ手の内を晒すのか。

 疑問に思わなかったのかと、そう聞いています』

 

「――何だって?」

 

『端的に言いましょうか。これまでの説明は、単なる時間稼ぎです』

 

 直後、巨大モニターに映るKeyが消えて、代わりに真っ赤に染まった別の画面に切り替わる。

 

 その赤色は、危険な状態を知らせる信号の色。

 表示された文字を頭が認識した瞬間、俺は見事に嵌められたことに気づかされた。

 

『自爆シーケンスは、35分前に実行しました』

 

「――ッ!? マズイ!?」

 

 直後、アトラハシースの箱舟内に仕掛けられていたであろう、全ての爆弾が作動する。

 

 そして、アバンギャルド君に搭載されている全てのセンサーが、爆発によって呑まれていった。

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

「才羽姉の言葉なので、どうせロクでもない意味でしょうが……リア充爆発しろというやつです」

 

(やりましたね、Key!!)

 

「いや、だから王女はどちらの味方なのですか……」

 

 どさくさに紛れてアトラ・ハシースの箱舟から脱出し、別の場所から戦闘データを収集していた私は、ひとまず必要な分の情報が得られたことに安堵する。

 

 本音を言えば、さっきの爆発でアバンギャルド君を仕留められたら良かったのだが。

 

 初めて敵対した時に見せた、あの異常なまでの防御力がある以上、あまり期待はできないだろう。

 

「――ほら、やっぱり」

 

 アトラ・ハシースの箱舟の外に設置していたセンサーが、アバンギャルド君が生存していることを示すデータを送ってくる。

 

 けれど、何の損傷もなしというわけにはいかないだろう。

 不意打ちであの火力をぶつけた以上、アトラ・ハシースの箱舟は、十分に囮としての役目を果たしてくれたはずだ。

 

(あぁ!? でも、敵ながら見事です! 高難易度ボスは、一筋縄ではいきませんね!)

 

「だから、王女はどちらの味方なのですか……」

 

 私が勝ってしまえば、王女は私を味方にすることができない。

 それどころか、世界が滅んでしまうというのに、王女は最初からずっとこの調子で。

 

 いよいよ、王女は決闘というものが、何か理解していないのではと疑い始めた、その時だった。

 

(もちろん。Keyにはアリスの仲間になって欲しいです!

 ですが、アバンギャルド君さんには、リオ会長の応援があります!

 なので、アリスはKeyを応援します! これで平等ですね!)

 

「……なんですか、その理屈は」

 

 論理が成り立っているようで、そんなことは全くなく。

 けれど、どこか王女らしいと思わせるような、子どもじみた理由。

 

 それでも私は、王女が応援してくれることが、単純に嬉しかった。

 

(それに、協力はダメですが、応援がダメとは言われていません!

 少し離れた場所に、何やら気になる場所を見つけたとしても、アリスは絶対言いません!)

 

「……王女よ。今言ってしまいました」

 

(……あぁ!? き、聞かなかったことにしてください!)

 

「まぁ、どうせ私も見つけていたでしょうから、大丈夫ということにしておきましょう」

 

 現在地から少し離れた場所に表示された、局所的に情報量の多い場所。

 砂しかない砂漠の中に、多くのデータが集まっていること自体に疑問が浮かぶけれど。

 

 今は、どんな幸運も使ってでも、あのロボットを打ち倒さなければならない。

 

「アトラ・ハシースの箱舟で使用したリソースを補充する。

 あのアバンギャルド君に勝つための方法を考える。

 両方やらなくちゃいけないのが、この決闘の辛いところですね」

 

 集めた戦闘データを分析した私の頭の中には、ある1つの疑問が生まれていた。

 

 観測された数値のどこを取っても、規格外なスペックを持っていたあのロボット。

 

 勇者部のホームページに公開されていた情報には目を通していたが、その化け物じみた数字が本当か信じられず。

 そのチェックも兼ねた作戦だったのだが、蓋を開けてみれば予想外の結果が待っていて。

 

「まさか、ホームページの値の方が、低く見積もられているとは思いませんでした。

 あのデータは、あのロボットの最低値とでも言うつもりでしょうか」

 

 しかし、たとえそうだとしても、どうしても引っ掛かるものがある。

 

 それは、アバンギャルド君が纏う力の性質。

 なぜか、あのロボットの神秘からは、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「名も無き神々の王女を倒すためだけに、調整された神秘特性?

 調月リオは、名も無き神の技術を扱うことが出来る人物。

 その技術を分析し、名も無き神の力に有効な武器を用意していてもおかしくない。

 だから、通常時の値を大きく超えた戦闘データが計測された……?」

 

 かつて、太古の時代のキヴォトス人が生きて居た頃。

 

 名も無き神々の王女の力に対抗するために、彼女らが作ったウトナピシュティムの本船は、対箱舟用に作られた決戦兵器だった。

 

「ほとんど直感の様なものですが、ウトナピシュティムの本船に似た力を、アバンギャルド君の神秘から感じます。しかし、それは一体なぜ……?」

 

 ウトナピシュティムの力そのものではなく、あくまでそれに似た力。

 

 幾つもの可能性について考えるが、どれも確証に至るものではなく。

 

「せめて、名も無き神々の王女とは異なる、強力なデータでも手に入れられれば良いのですが……」

 

 望み薄の願望を口にしながら、私は目的地へと向かう。

 

 徐々にその姿を現しつつある、1つの基地を見つめながら。

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

「オオギ、隣の席空いてるか?」

 

「あぁ、座れよ。コバヤシ」

 

 時刻は12時30分。

 

 先に12時からの昼休憩に入っていた社員と入れ替わる形で、俺たちは社員食堂を訪れていた。

 手にしたお盆の上には、必要最低限の栄養だけ確保された質素な食事。

 

「ほんと、カイザーってマジのブラック企業だよな。

 こんな食事で、あんな重労働頑張れるかっての」

 

「でも、ブラックマーケットで報酬の9割持ってかれたり、ホームレスになるよりはましだろ」

 

「まぁ、給料はちゃんと出してくれるし、廃棄のコンビニ弁当をあさる必要はないもんな」

 

 世知辛い世情に、カイザーPMCに勤める一般兵――オオギとコバヤシは互いに溜息を吐く。

 

 キヴォトスという場所は非常に治安が悪く、基本的人権を失ったものに容赦ない。

 特に、学籍を失った生徒たちには非常に厳しい。

 

 まともな生活はまず出来ないし、社会復帰も想像を絶するほどの困難が待ち受けていて。

 

「そう思うと、アビドスの生徒たちってよく頑張ったよな」

 

「分かるわそれ。仕事だからって割り切ったけど、正直途中から辛かったもん」

 

 カイザーに9億の借金をしていて、悪徳金利のせいで利息分を返すのにも精一杯。

 返済には309年は掛かるという計算だったし、誰がどう見てもアビドスは廃校直前だった。

 

 それでも、彼女たちは諦めなかった。

 

「正直、カイザーが金利を適正にまで下げたって聞いた時、信じられなかったよな」

 

「しかもあれだぜ、アビドスの生徒たちが、カイザーの闇を暴いたからなんだろ?

 あのうざかった元理事も解任になったし、あの日の喜びといったらもう忘れられねえ!」

 

 決して報われるかも分からないまま、地獄のような状況を乗り越えて。

 アビドスの生徒たちは、カイザーの悪意を退けた。

 

 復興までの道のりは未だ遠いけれど、それは間違いなく大きな一歩で。

 

 あぁ、今でも嬉しさの余り、2人で翌日仕事ができなくなるくらい、べロンベロンになるまで飲んだ日のことを思い出す。

 

「そうだコバヤシ。またあれやってくれよ」

 

「おいおいまたかよ。お前、本当にあのモノマネ好きだよな」

 

「数少ない、このクソ会社へのストレス発散方法だしな。

 見せてくれよ、誇張しすぎた元カイザーPMC理事のモノマネ」

 

「ったく、仕方ねーな。次の戦闘データ転送当番の交代でどうだ?」

 

「オッケー。取引成立ってことで」

 

 そんなことを言いながら、喉をトントンと叩いて、コバヤシはノリノリで声を調整する。

 

 そして、整いましたと言って、迫真のモノマネ披露した。

 

 

「裏切り者の黒服、頭の悪い上層部、そして何より目障りなアビドスの生徒……!!

 どいつもこいつも、この私を苛立たせる……! 死んで平伏しろ! 私こそが企業だ!!」

 

 

「ホント、お前って言葉のチョイスいいよなw。

 マジでふざけた発言だけど、あの理事なら言いそうだもんw」

 

 

「アビドス廃校対策委員会、残党というのは訂正しましょう。

 貴様たちは、駆除すべき害獣だ……!!」

 

 

「ちょっw 腹よじれるから止めてくれw」

 

「やれって言ったのお前じゃねえか笑」

 

 くだらないモノマネで笑い合った後は、30分しかない昼休憩に間に合わせるため、少しだけ駆け足でメシをお腹の中に詰めていく。

 

 とはいえ、そもそもの量が少ないため、そこまで焦らなくても良かったのだが。

 

「あー食った食った。腹の足しにもならないメシを食った食った」

 

「今日の仕事終わったら、紫関ラーメン食いに行こうぜ」

 

「柴大将ホント優しいよな……あれだけ酷いことしてるカイザーに勤めてる俺たちにも、めちゃくちゃサービスしてくれるなんて、マジで聖人だよあの人」

 

 休憩時間が残り5分となったところで、俺たちはお盆を持って席を立ち上がる。

 

 

 そして、返却口へと向かおうとしたその時だった。

 

 

 

『――AL-1Sに接続された利用可能なリソースを確保するため、全体検索を実行』

 

『リソース領域を拡大』

 

『リソース名「カイザーPMC基地」の全体リソース――5000エグサバイトのデータを確認』

 

『現時刻を以て、プロトコルATRAHASISを再稼働』

 

 

 

 それは、何の前触れもない襲撃だった。

 

 巨大な施設であるカイザーPMCの基地の、ありとあらゆる屋根が、掃除機に吸い込まれていくかのように一斉に剥がれ。

 

 意味の分からない光景に、今日出勤していた兵士全員(カイザーは週7出勤なので、つまり全戦力である)が、真っ青な空を見上げる。

 

 そこに浮かんでいたのは、ヘイローを持ったある1人の生徒だった。

 

「あれは、ミレニアムの制服……?」

 

「確か、どこかで見たような」

 

「あれ、勇者部の――」

 

 誰もが混乱する中、断片的な情報が錯綜する。

 

 最早手遅れとしか言いようがない緊急の放送が流れるが、そんなもの誰も聞いていなくて。

 

 

 

『なるほど、謎の情報源は、この基地に眠っていたウトナピシュティムの本船でしたか。

 まさか私たちの天敵が、アビドスの、しかもカイザーの基地に眠っているとは』

 

『ですが、これは名も無き神々の王女である私には使えない代物。

 データに接続した瞬間、本船の神秘によって私たちは消滅するでしょうから』

 

『その代わり、良いものを見つけました。

 不完全ですが、私たちとは異なる厄災の交戦記録。

 出来れば質の良いものが欲しかったのですが、ここは妥協しましょう』

 

 

 

「あいつは、何を言ってるんだ……」

 

 それは、誰が口にした言葉だったのだろうか。

 しかし、この場に居合わせた全員の思いを代弁した言葉は、決して上空の少女に届くことはなく。

 

 

 

『コード名「アトラ・ハシースの箱舟」の()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 自分たちの終焉を告げる、災いの宣告が、今、成された。

 

 

「――うわぁ!? 今度は俺たちごと吸い込まれてるぞ!?」

 

 瞬間、残っていた基地のありとあらゆる設備や、壁や床が地面から引きはがされ、あの少女の元へとかき集められる。

 

 そのブラックホールじみた引力は、この場に居合わせた俺たちをも巻き込んで。

 

「そんな……。私は企業だぞ……!? 最後のプランを……!?」

 

「おいコバヤシ!? 今はモノマネしてる場合じゃ――!?」

 

「ヴア゙ア゙ア゙ア゙アアアアアアッッッッ!!!!!!」

 

「コバヤシィィィィィィィッッッッ!!!!!!」

 

 

 カイザー基地の全てが、少女によって跡形もなく消えていく。

 コバヤシも、他の兵士たちも飲み込まれ、俺も気が付けば宙に浮いていて。

 

 そして、意識を失うその直前。

 

 オオギは、基地で働く間に何度も殺されそうになった、もう1つの恐怖の象徴の姿を幻視した。

 

 

 

「――――ビナー?」

 

 

 

 

『変則コード「ビナー・アトラハシース」。確か、神名十文字(デカグラマトン)とか言いましたか。

 その力、名も無き神々の王女たる私たちが、利用させてもらいましょう』

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

「――おいおい、マジかよ」

 

 

 無事とは言えないが、それでもギリギリ防御が間に合って、致命傷には至らなかったけれども。

 

 爆発からどうにかして生還した俺は、直後に目にした光景に、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「名も無き神々の王女とビナーのコラボなんて、さすがに聞いてないっての」

 

 こちらに迫りつつある、デカグラマトン3番目の預言者ビナー。

 ()()()()()、押し寄せるようにこちらに迫っている。

 

「おそらく、あの1体1体が、プロトコルATRAHASISで複製されたビナーってことなんだろうな。

 いや、序盤に出てきたボスキャラが、終盤で通常キャラとして出てくるみたいなノリで言われてもな……」

 

 

「――けど、それは悪手だったな」

 

 

 俺は、神剣ダモクレスを強く握りしめて。

 複製されたビナーの大群を認識した途端、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その大群へと飛び出した。

 

 

 

「――この勝負、俺が勝たせてもらうぞKey」

 

 




 
 ※カイザーの兵士たちは生きてます。
 
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