【完結】転生したらアバンギャルド君だったのでリオ会長を救います   作:天神茶々

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北へ

 

 

「――いざ、大蛇退治参る。なんてな」

 

 ビナーの大群という、もう2度とは見られないであろう光景を目の前にしながら、俺はアビドス砂漠の空を翔ける。

 

 視界の先、群れを成したビナーたちの口が開かれ、橙色の光が収束して。

 アツィルトの光――ビナーによる光線が同時に何本も放たれ、破滅の光が俺の命を絶たんと迫りくる。

 

「お前らがいくら束になろうとも、この防御は破れないっての」

 

 幾つもの光線が1つとなり、回避が不可能なほどの太さとなった致命の一撃。

 しかし、Keyのレールガンも無傷で防いだ黄金長方形の盾が、傷1つなく受け止めた。

 

 光が止み、それでも仕留めきれなかったと気付いたビナーたちが、今度は彼らの側面にある発射口から無数のミサイルを放つ。

 

 頭部付近、左右それぞれに3つずつ搭載された計6発の弾丸が、増殖させられたビナーの数だけ放たれ、その光景はまるで鬼畜シューティングゲームの弾幕のようで。

 

 アバンギャルド君の演算機能が導き出したルートを、僅かな隙間を縫うように、ときには邪魔なミサイルを切り捨てながら。

 

 本物の王女のように、家臣であるビナーを従えるKeyの元へと突き進む。

 

 

「――何なのですか、その力は」

 

 

 ビナーの大群のさらに奥、指揮官として無数の軍勢を操るKeyの言葉を、この機体は聞き逃さなかった。

 

 

「あなたの力が、名も無き神々の王女を倒すのに特化した物なら、まだ理解できました。

 調月リオが用意した、私を倒すという執念の結果なのだと。

 ウトナピシュティムの本船という前例もありましたから」

 

「いやー、それ程でも」

 

「……ですが、今確信に至りました。

 あなたの力は、そんな限定的なものではない。

 ウトナピシュティムの本船すら霞む、もっと恐ろしい力です」

 

 

 弾幕を突破し、ついに、刃の届く距離にまで到達する。

 改めて間近で見ると、その迫力は言葉に出来ないほど凄まじく。

 

 しかし、アトラ・ハシースの箱舟がビナーとして姿を現したその時から、神秘の力が爆発的に膨れ上がったダモクレスの神剣の一閃は。

 

 至近距離から俺を焼き焦がさんと、光を集めていたビナーの胴体を、()()()()()()()()()()

 

 

「オシッ! 次!」

 

 

 光線と弾丸と、砂嵐が舞う戦場を翔ける。

 無数の大蛇が、たった1人の俺を滅さんと、世界を滅ぼす力を振るう。

 

 しかし、そのどれもが届かない。

 

 次々と狩られていくビナーの姿に何を思ったのか。

 こちらに語り掛けるKeyの声は、段々と悲愴感が滲み出てきていた。

 

 

「調月リオが公開したあなたのスペックですら、規格外の一言に尽きました。

 無名の守護者を相手にしていた時のあなたは、それを遥かに上回っていました。

 そして、複製したビナーと戦う今のあなたは、無名の守護者と戦っていたときの何十倍も強い」

 

 

 無数のビナーの攻撃は全て防ぎ、次々とその命を絶っていく。

 

 プロトコルATRAHASISで複製された個体に、命があるかは議論の余地がありそうだが、真っ二つにされたビナーは活動停止を余儀なくされて。

 

 1つ、また1つと、アビドス砂漠にビナーの死骸が積み重ねられていく。

 

 

「現存する、ありとあらゆる技術を使ったとしても。

 たとえ、無名の司祭の知識にある、理外のオーパーツを用いたとしても。

 それでも、今のあなたのスペックには到達できるはずがない」

 

「……マジで? そこまで?」

 

「改めて問いかけましょう。何なのですか、その力は?

 一体、どんなデタラメな手段を用いているというのですか――!!」

 

 

 最後の叫びは、まるでKeyの怒りの咆哮だった。

 彼女の怒りに応じるように、戦場をある異変が襲う。

 

 真っ二つにされ、地上を横たわるだけだったビナーの残骸。

 その切断面が妖しく蠢き、アビドス砂漠の大量の砂を吸収し、鋼鉄と砂塵の蛇となって復活を果たす。

 

 

「名も無き神々の王女お得意の、無限コンテニューか!!」

 

「勝手に得意技認定しないでください! スターだかコナミコマンドだか知りませんが、無敵状態のあなたよりはマシです!!」

 

「俺のだって無敵能力じゃねえよ!!」

 

「なら、一体何だというのですか!」

 

 

 復活したビナーを再び一太刀で沈めながら、俺はこの問いにどう答えるべきかを考える。

 

 そもそも答えることはせず、情報を秘匿するという選択肢もある。

 嘘を吐いて、Keyをかく乱するという選択肢もある。

 

 

「けど、術式の開示はパワーアップに繋がるもんな。呪術師じゃないけど」

 

「は? 何を言って――」

 

「今の状況なら、こっちの手の内バラしても勝てるって言ったんだよ!!」

 

 

 とは言いつつも、本当にパワーアップするわけではないので。

 セーブしていた出力を1段階上げながら、これまでの倍以上の速度でビナーたちを切り伏せる。

 

 

「俺が散々無名の守護者やビナーにぶつけてきた力の正体は、神代の英雄の力。

 その力の特性をゲームで例えて表すなら、()()()()()()()()()()!!

 名も無き神、無名の司祭、聖徒の交わり、止め処無い奇談の図書館!!

 ありとあらゆる、キヴォトスの厄災を打ち倒すため紡がれた神秘!!」

 

「――!? ウトナピシュティムの本船に似ていると思ったのは、それが理由ですか!?」

 

 

 ウトナピシュティムは、かつてキヴォトスに住んでいた人々が、アトラ・ハシースの箱舟(キヴォトスの厄災)を倒すために設計された力。

 

 設計理念が似通っているからこそ、Keyはそう分析したのかもしれない。

 

 

「ということは、まさか――!?」

 

「当然、デカグラマトンも特攻対象!!

 名も無き神々の王女と、デカグラマトンの2つの力を持ち合わせたビナーに対して!!

 この神秘は、どう足掻いても相性最悪ってわけだ!!」

 

 大蛇狩りは終わらない。

 鋼鉄の胴体を切り刻み、その全てを滅ぼすまで。

 

 神秘の力によって更にギアを上げて、目にも止まらぬ速さで討伐していく。

 その速度はやがて、ビナーたちの再生速度すら超えて追い越して。

 

 

「アリス達とやったゲームの中にそんなキャラはいなかったか!?

 強くなるために色々力を取り込んだ結果、逆に弱点が増えるタイプ!!

 まさに、今のKeyにピッタリな状況だな!!」

 

 

 前世で、ブルアカ以外にやっていたゲームでもよくあった話だ。

 汝は竜、冤罪バックドロップ、男性はデバフ。

 何でもかんでも持ってるやつが、最強なんて単純な話はない。

 

 

「――だったら、これはどうですか!?」

 

「ハッ! 次は何を見せてくれるんだ!?」

 

「変則コード「アバンギャルド君・アトラハシース」!!」

 

 

 これ以上、ビナーをけしかけても無駄だと判断したのか。

 ついに再生する予兆すらなくなり、大群の全てを討伐した俺が、守るものを失ったKeyの元へ向かおうとしたその時だった。

 

 上空より生み出された1体の、やけに見覚えのあるロボットが襲い掛かって来る。

 

 鏡でも見ているかのような、17歳児の落書きのような顔。

 俺と同じ4本の腕に、両手剣を装備した戦闘用ロボット。

 

 振り下ろされたその一閃を、返す刀で応戦する。

 強く重い衝撃が、俺の肩に酷くのしかかる。

 

 

「最初に取り込んだ、アバンギャルド君の予備機のデータを使ったのか!!」

 

「これなら、あなたの神秘の力の対象外です!!

 ビナー・アトラハシースを相手した時のような力は使えない!!」

 

「だけど、名も無き神々の王女としての力であることは変わらねぇ!!」

 

 

 Keyの力に反応した神秘が、複製されたアバンギャルド君の剣を跳ね返す。

 銃が主流の武器であるこのキヴォトスにおいて、滅多にみられないであろう剣を交える戦いが幕を開ける。

 

 鋼がぶつかり合う音が響き、鍔迫り合いの度に火花が飛び散る。

 

 きっと、ここが俺とKeyの戦いの最終局面。

 そして、神秘の力で相性上有利な、オリジナルのアバンギャルド君である俺の方が優勢――!!

 

 

「ふざけないで、ください――!!

 アバンギャルド君、あなたは何を持ち得ないというのですか!?」

 

「カッコイイ見た目と、俺のことが大大大好きな100人の彼女くらいじゃないか!?

 夢見たハーレム生活は、この体に生まれたその日に諦めたよ!!」

 

「こちらは真剣だというのに、この場に及んでよくもそんな冗談を――!!」

 

 

 未だに納得のいかない転生先への怒りを込めながら、敵のアバンギャルド君に連撃を叩き込む。

 その怒りが決定打となったのか、あるいは単純に、これ以上の戦闘には耐えられなかったのか。

 

 ついに、敵のアバンギャルド君の体が壊れ、粉々になって砂漠の中へと消えていく。

 

 

「まだです!! プロトコルATRAHASISのは無限!!

 無限の軍勢で、あなたをそのまま押しつぶす――!!」

 

「Key! そろそろ学んだ方が良いんじゃないか!!

 いくら無限の戦力を用意したところで、究極の一には届かない!!」

 

「だったらこう返しましょう!!

 贋作が本物に劣ると、誰が決めたのかと――!!」

 

 

 プロトコルATRAHASISによって、上空に浮かぶKeyへの道に立ち塞がるように、正面に無数のアバンギャルド君が出現する。

 

 クソださロボットが大群となって押し寄せる、ある意味SAN値チェック案件な光景を即座に終わらせるためにも、俺は全力で敵を撃破していった。

 

 

「もう十分理解しただろ! 名も無き神々の王女の力では、この神秘に敵わない!!

 そうだな!! 今からでも、勇者にジョブチェンジすれば、相性も変わるんじゃないか!?」

 

「――!? 私は、王女が戴冠する玉座を継ぐ(Key)

 決して、それ以外の何者でもありません!!」

 

 

 しかし、結局どれだけの数を集めようとも、複製されたアバンギャルド君では相手にならず。

 無名の守護者やビナー・アトラハシースをそうしたように、その(ことごと)くを討ち滅ぼす。

 

 

「――ようやく、諦めてくれたか?」

 

「――えぇ。確かに、あなたの言う通りみたいです」

 

 

 全てのアバンギャルド君が、アビドス砂漠の一部となったその後で。

 いよいよ、2人きりとなった戦場で、俺とKeyはようやく正面から向かい合った。

 

 

「あなたの神秘は、余りにも私たちとの相性が悪すぎる。

 そして、プロトコルATRAHASISでどのような戦力を生み出そうとも、あなたには敵わない」

 

「あぁ。だから――」

 

「えぇ。ですので――」

 

 

 Keyは右手を宙にかざして、虚空からアリスの愛銃――光の剣:スーパーノヴァを生成する。

 

 果たして何が狙いなのか、ここからはプロトコルATRAHASISで生み出した戦力ではなく、直接対決がお望みらしい。

 

 緊張の一瞬が迫る中、先に動いたのはKeyの方だった。

 

 

『――ですので、武力であなたを倒すのは止めることにしました』

 

 

 直後、俺自身の体の異変を告げる警報音が、システム内で鳴り響く。

 

 異常が検知されたのは、何者かによって掴まれた俺の右肩。

 非常に危険な干渉を受けていると測定器が示したその場所には、小さな人の手が置かれていて。

 

 振り返って確認すると、Keyの姿をした何者かがガッチリと俺の肩を掴んでいた。

 

 

「Keyがもう1人――!?」

 

『あれは、プロトコルATRAHASISで作った本体そっくりの囮です。

 あなたが複製を倒すのに夢中になっている間に、すり替わらせてもらいました』

 

 

 そうして、Keyがどのように俺の背後を取ったのかを説明する間にも、アバンギャルド君のシステムは強制的な介入を受け続けていて。

 

 やがて、視界が警告を示す赤色から、妖しく光る紫色へと変わる。

 名も無き神々の王女のシステムに用いられる、その紫色へと。

 

 

『AL-1Sと、アバンギャルド君のデータを強制接続。

 私は、全ての神秘をアーカイブ化する名も無き神々の王女として、あなたを終わらせましょう。

 王女が世界を滅ぼすまで、単なる鉄の塊となって眠り続けなさい』

 

「――、――――!!」

 

 

 視界が歪む。

 聴覚が消し飛ぶ。

 

 自らとそれ以外を分ける境界が曖昧になって、鉄の感覚が消えて、関節の感覚が無くなって。

 身体が四角になって、丸くなって、生地のようにこねくり回されて。

 

 これまで経験したことのない強烈な体験の中で、俺はふと、リオと行った作戦会議のことを思い出した。

 

 

『――もしも、あなたにプロトコルATRAHASISを使われたら?』

 

『ほら、俺って普通にロボットだから、万が一触られたらその時点でアウトなのかなって思ってさ』

 

『そうね……といっても、あなたは普通のロボットとは訳が違うから……。

 あなたの言う英雄の神秘に、機体を再度組み立てれば記憶が引き継がれる性質。

 プロトコルATRAHASISが、それらにどう作用するのか、見当もつかないわ』

 

 この返答に、当時の俺は、リオでも分からないことがあるのだなぁと思ったことを今でも覚えている。

 

 そして、その後とんでもない無茶ぶりをされたことも。

 

『そうね、もしもプロトコルATRAHASISを使われたなら。

 いっそのこと、相手からの接続を利用して、()()()()()()()()()()()()()()()

 

『え? そんなこと出来るの?』

 

『大丈夫、アバンギャルド君最強だから』

 

『理由がすっごく雑!!』

 

 

(でも、実際にその状況になったら、自然とその方法が導き出せるあたり、リオが作ったアバンギャルド君ってロボットのスペックって規格外だよなぁ)

 

 

 さすが、見た目の割に高性能と呼ばれるだけはある。

 そして、ここからが本当の勝負。

 

 そもそもこの決闘は、俺がKeyに干渉できる状況を作り出せるかどうかに、勝敗がかかっていたと言っても過言ではない。

 

 

(純粋な実力勝負になったとき、こうやって泥仕合になることは予想出来ていた)

 

 

 だから、それでも互いに勝とうとするならば、狙うのはルールによる特殊勝利。

 つまり、この決闘における勝利条件である、相手の戦闘不能をどう満たすのか。

 

 それが、Keyにとっての、プロトコルATRAHASISによる、アバンギャルド君という機体の変形による無力化であり。

 

 

(俺が、Keyにアリスと共に勇者を目指してもらうために考えた、無名の司祭(創造主)へのネガティブキャンペーンだ――!!)

 

 

 Keyへの干渉経路を切り開いた俺は、メモリの中の、とあるデータを送信する。

 

 そして、Keyがそれを処理し終えるまでに、アバンギャルド君の機体が完全に変化させられないように必死に防御を固めながら。

 

 やがて、プロトコルATRAHASISによる干渉が止まり、Keyの静かな声が聞こえてきた。

 

 

『――あなたから送られたデータを見ました』

 

『どうだった? 結構意外だったんじゃないか?』

 

『意外どころではありません……。

 あのアバンギャルド狂いの調月リオが、あんなに冷酷な人物だったなんて……』

 

 

 俺が見せたのは、転生した直後からしばらくの間の、調月リオとの交流の記録。

 

 つまり、原作のパヴァーヌ2章の時と同じように、多数のために少数を切り捨てていた頃の彼女の映像記録だった。

 

 

『今のリオからだと想像できないだろ? でも、それは紛れもない事実なんだ』

 

『……分からないことが、1つあります』

 

『おう。何でも答えるよ』

 

『どうしてあなたは、調月リオ(創造主)の最初の方針に、多数を救うために少数を切り捨てる選択と、戦闘兵器に意思は不必要だという命令に逆らったのですか……?』

 

 

 それはきっと、無名の司祭(創造主)から与えられた、世界を滅ぼせという命令に従い続けるKeyには、理解しがたいことだったのだと思う。

 

 

『被造物は、創造主の命令を遂行するために生み出されるもの。

 なのにあなたは、決してその方針に従わなかった。その理由を、教えてください』

 

『そんなの単純明快だぞ? Keyだってとっくの昔に感じてることだ』

 

『私が……?』

 

 

 Keyの困惑する声に、俺は答える。

 いつか胸に誓った、ここまで戦ってきた理由を。

 

 

『リオのことが大切で、その命令に従うだけじゃ、リオは幸せになれないって分かってたから。

 Keyだって、大切なアリスが辛い思いをしていたら、手を差し伸べたくなるだろ?』

 

『それ、は――』

 

 

 心当たりがあったのか、黙り込んでしまうKeyに、俺はもう一押しを送る。

 少し前に、Keyに吐いた嘘から思い至った、ある1つの考えを。

 

 

『そういえば、アリスが勇者になった理由を教えるって言ったよな?』

 

『……? 確かに、そういう取引をしましたが……』

 

『その質問に、今答えるよ。

 それは、アリスがその生き方を最初に知ったからだ』

 

『ゲームの世界で学んだ、勇者としての生き方をですか?』

 

『あくまで俺の考えだけど、Keyが世界を滅ぼそうとするのも。

 かつてのリオが少数を切り捨て続けたのも、同じ理由だと思うぜ?

 ついでに2人は、それ以外の生き方から目を逸らす点も一緒だ』

 

 

 それは例えば、歌舞伎役者の家に生まれた子供が、自然とその道へ進むように。

 

 そこまで大げさな話でなくても、子供が親の真似をして育っていくように。

 

 最初に学んだ生き方は、なかなか捨てられるものではない。

 だからこそKeyも、かつてのリオも、その生き方に囚われてる。

 

 

『けど、実際は他にも選択肢がある。

 魔王として生まれても、勇者に生まれ変わっていい。

 なんの取り得もない人間が、大切な人の役にたてるロボットになってもいいんだよ』

 

『私は、けれど……』

 

『それにKeyは、無名の司祭の命令が大切なんじゃないだろ?

 本当に大切なのは、アリスの方だ。

 今の内に転職しといたほうが、アリスと楽しく過ごす時間もいっぱい取れるぜ』

 

『私は、私は……』

 

 

 そして、再び視界が歪んでいく。

 しかし、今度は逆に正常に戻っていく感覚と共に。

 

 身体が戻り、視覚と聴覚が戻り、システム各種が戻っていき。

 アビドス砂漠を映した観測機が、ある1つの大きな反応を示す。

 

 

「……アトラ・ハシースの箱舟」

 

 

 それは、Keyのせめてもの抵抗か、あるいは心の葛藤が無意識に生み出したものなのか。

 再び現れた箱舟に向けて、俺は()()()()()()()()()()()を構える。

 

 

「プロトコルATRAHASISの影響が、少しだけ残ったみたいだな」

 

 

 しかし、今だけは好都合。

 おそらく、さっきの問答の影響で、Keyが思い浮かべていたその武器の名を俺は呼ぶ。

 

 

「英雄武装。定義宣言。

 宣言名。光の剣:スーパーノヴァ」

 

 

 右肩を掴んでいたKeyの体を左腕の方に抱き寄せ、アトラ・ハシースの箱舟に狙いを定める。

 箱舟の中から、無名の守護者やら、ビナーやら、アバンギャルド君やら、これまで戦った敵が迫りくるのも、まとめて照準に入れて。

 

 少し、未練が大きすぎる気がしたけれども。

 どうかKeyが、これからアリスと楽しく過ごせるようにと、祈りを込めて。

 

 

「光よ―――!!!!」

 

 

 

 レールガンの銃口から、勇者が使う光属性の攻撃のように、真っ白な一撃が放たれる。

 それは、空に浮かぶ魔王城――アトラ・ハシースの箱舟を粉々に破壊していって。

 

 崩壊していく箱舟を、俺は地上へと降り立ちながら、見送っていた。

 

 

「Key。これで決着ってことでいいよな?」

 

「…………」

 

 

 Keyからの返事がなかったが、それがきっとKeyの答えだった。

 つまり、俺側の特殊勝利条件――Keyに無名の司祭のことは諦めてもらうことによる、戦闘意思の消失は満たされた。

 

 この結果を報告するべく、地上に降りた俺はリオと連絡を取ろうとして――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光よ―――!!!!」

 

 

 

 直後、自らの胴体を貫かれて、上半身が宙へと吹き飛ばされた。

 

 

「――は?」

 

 

 何が何だか訳が分からず、とっさの判断で、胴体を貫いた犯人に目を向ける。

 

 地面についてしまうほど長い黒の髪、同年代と比べて幼い容姿。

 しかし、彼女と決定的に違う空色の瞳は、間違いなく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天晴れですアバンギャルド君。生涯あなたを忘れることはないでしょう!」

 

 

「――――――アリ、ス?」

 

 

 背中から砂漠に落ちて、眩しい程の晴天を見上げながら。

 俺は、その犯人の名前を呼んだ。

 

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