【完結】転生したらアバンギャルド君だったのでリオ会長を救います 作:天神茶々
お待たせしました!! 再開します!!
(パンパカパーン! まずはお家デートです!!)
(待ってください、王女。ここは王女の家ではないのでは……?)
「ゲーム開発部へようこそ、Keyちゃん!!」
「今日は楽しんでいってね」
扉を開けるとパーン!と2つ、クラッカーが破裂するような軽い音が耳に入る。
場所は、王女の映像記憶の中にもあった、ゲーム開発部の部室。
映像にあった光景と少し違うのは、整理整頓がされていることと、「Keyちゃん歓迎会!!」と書かれた横断幕が用意されてあること。
(デートとは、男女が2人きりで出かけることを指す言葉。……2人きりと、期待していたのですが)
(Keyの歓迎会を、アリスがゲーム開発部のみんなと一緒に用意しました!!
今日は、Keyにゲームをして思いっきり遊んでもらいます!!)
私は今、王女に譲られる形で体の制御権を手にしており、逆に王女は、心象世界の比較的表に近いところで外の様子を観測しながら、時々私に話しかけてきていた。
鏡を前にすれば、王女の空色の瞳ではなく、私の怪しげな紫の瞳が確認できるだろう。
(監視がいるとはいえ、いくら何でもこれは無警戒が過ぎるのではないでしょうか……)
「ささ! Keyちゃんはこっち! 特等席を用意してあるから!!」
「といっても、ソファの上にクッション集めただけなんだけど」
不意に、記録の中で王女と仲良くしていた、非常によく似た容姿を持つ2人、才羽モモイと才羽ミドリにそれぞれの手を引っ張られ、私はその特等席へと座らされる。
体が沈んでいくような、それでいて身を預けていたくなるような不思議な感覚。
その感覚を全身で吟味していると、不意に手の中から硬い感触が伝わってくるのに気が付いた。
「……これは?」
「これはゲーム機! そこにいくつかボタンがあるでしょ? そのボタンを使ってゲームを進めていくの!!」
両手にすっぽりと収まる機械は、これもまた王女の記録の中にあったもののはず。
どうやら、王女とゲーム開発部の人たちは、本気で私にゲームをプレイしてもらいたいらしい。
「正気ですか……?」
「まぁまぁ、Keyちゃんだっけ? みんな、君に楽しんでもらうために、色々たくさん考えて準備してきたからさ」
そう言って、クッションを挟んで隣に座ってきたのは、キヴォトスでは珍しい大人の男性。
すなわち、私の監視役も兼ねている、シャーレの先生がニコニコと笑顔でこちらを見ていた。
「Keyちゃん呼び!? いえ、そうではなく……。
あなたたちは無警戒にも程があると言いたいのです。
私が世界に終末をもたらす兵器であることを、忘れたとは言わせませんよ」
特に才羽姉妹は、私が何をしたのか忘れてしまったのだろうか。
自身の命か、或いは大切な姉の命か。
それぞれ2人にとって、私は双子の片割れの命を奪おうとした憎悪の対象であってしかるべきなのに、こうして歓迎会なんて開く始末。
もう1人のゲーム開発部のメンバー、花岡ユズのようにロッカーにでも引きこもって関わろうとしないのが、比較的正しい反応だろうというのに。
「それに、私の監視役がC&Cなどではなく、貴方というのも解せません」
「それはどうして?」
「貴方の脅威度は、何となくですが理解できます。貴方の持つ2つのオーパーツは恐らく、それぞれが単独で世界の法則を捻じ曲げられるほどの代物なのでしょう」
ですがと続けて、私は右手の親指と人差し指で銃を作り、指先を先生の心臓に当てる。
「先生自身の肉体は、銃弾1つで容易く命を落としてしまうほど脆いではないですか。
どうするのですか? 今、私が本物の銃を向けていたら」
「……大丈夫だよ。その時はKeyちゃんの言うオーパーツ、シッテムの箱が私を守ってくれるから」
「なるほど、1つはそれですか。そのオーパーツに、所有者を守る無敵の防壁を張る機能があることは、無名の司祭から与えられた知識の中にあります。同時に、その防壁には限りがあることも」
「…………」
「私の背中には、王女のレールガンがあります。シッテムの箱で、何度レールガンを防ぐことが出来ますか? 防壁が尽きるまでに、別の任務にあたっているらしいC&Cはこちらに戻って来れるのですか?」
「……Keyちゃん」
「今、試してみてもいいんですよ?」
バンと口に出して、銃を撃つフリをする。
本物の銃であれば、その腹部からは血が流れ、命の保証はなかったというのに。
それでも表情1つ崩さなかった先生に、私は深くため息を吐いた。
「冗談ですよ。シッテムの箱が貴方を守る盾なのなら、もう1つのオーパーツは、王女に危害を与えることなく、私だけを殺せる矛のような役割でもあるのでしょう?」
「Keyちゃんにそれを使うつもりはないよ。君も、私の生徒だから」
「冗談も休み休みにしてください。私は、王女と共に世界を滅びに導く
……なぜ、そのような穏やかな笑みを浮かべているのです?
それと、いい加減その”Keyちゃん”という呼び方を止めてもらえませんか!?」
「……ハハッ! それよりもゲームしようか、Keyちゃん」
「えぇ、喧嘩なら買いましょう!! 名も無き神々の王女の力を、その目に焼き付けなさい!!」
「うわぁ!? Keyちゃん落ち着いて!!」
「貴方もですよ、才羽モモイ!! あんな狭いゲーム機の中にデータを移された恨み、ここで晴らしてあげましょうか!!」
「そ、それは申し訳なかったけど、Keyちゃんも私に向けてレールガン放ったじゃん!?」
(Key!? アリスからもお願いです! 一度落ち着いて、銃を下ろしてください!?)
何をどれだけ言おうと、幼子を見守るような態度を止めようとしない先生。
そして、王女に様々な悪影響を与えた元凶でもある才羽モモイ。
後、姉の陰に隠れているがそれなりに悪影響を与えている才羽ミドリ。
この世には、無くなった方が王女のためになるものがたくさんある。
それらを、名も無き神々の王女の力で全て消し去ろうかと思ったが、王女から直々のお願いがあったので仕方なく止めることにした。
モモイから渡されたコントローラーを奪い、クッションに身を預けて、テレビに映るゲーム画面と向き合う。
そんな私を、ポカンと見つめる悪の元凶が1人。
「……どうしたのですか? 始めるのなら早くしてください」
「えっと、そうだね!! まず最初にKeyちゃんにプレイしてもらうのは、私たちゲーム開発部が初めて作った作品でもある、テイルズ・サガ・クロニクル!!」
「……ねぇお姉ちゃん、本当にKeyちゃんにこれプレイさせるの? せめて2の方が良いんじゃ」
「でも、アリスがこうしたいって言ってたし……」
「才羽ミドリ。あなたも私のことをちゃん付けで呼ばないでください……それにしても王女が?」
(はい! アリスにとって、テイルズ・サガ・クロニクルは初めてプレイしたゲームであり、ゲームの楽しさを知るきっかけになった思い出のゲームです!! だからこそ、Keyにも同じゲームをプレイしてみて欲しいのです!!)
深層意識に耳を傾けてみれば、返ってきたのは王女からの善意100%の答え。
その表情こそ確認することはできないが、きっと目を輝かせて、私がゲームをプレイするのを今か今かと待ちわびていることだろう。
(テイルズ・サガ・クロニクル……確か王女のメモリの一番奥にありましたね。
最新の映像記録から順に確認していたので閲覧を後回しにしていましたが、攻略に役立つのなら王女がプレイしてた時の記録を確認しますか)
(あーいけません! Keyがズルをしようとしています!!)
直後、ブブーと声に出しながら胸の前で両腕をクロスさせて×マークを作る王女。
いつの間にそんな技術を覚えたのか、王女の記憶へのアクセス権が制限されてしまい、テイルズ・サガ・クロニクルに関する記録が一切覗けなくなっている。
突然の事態に困惑していると、頬を膨らませたアリスが私に訴えかけてきた。
(アリスはKeyにゲームを遊んで欲しいのであって、ただ攻略してほしいのではありません!!
最初からネタバレなんてもっての外です!!)
(? ゲームは攻略して遊ぶものでは?)
(ちーがーいーまーす!! とにかく! ネタバレは禁止です!!)
何度かアクセスを試みるが、全て王女に弾かれて閲覧は不可能。
王女よりも私の方がこうした技術の扱いは長けているはずなのだが、眠っている間に調月リオがレクチャーしたのだろうか。
おのれ、許さんぞ陸八魔アル。
(……? 陸八魔アルとは一体誰なのでしょうか……?)
色々と疑問は尽きなかったが、頬を膨らませ、分かりやすく拗ねている王女が可愛かったので、事前情報を集めるのは素直に諦めることにした。
(……どちらにせよ、私に事前情報なしでプレイする以外の選択肢はありませんね)
一度溜息を吐いてから才羽モモイの方を睨みつけたが、怯えるだけで返答がなかったため、必要な情報を話すように促した。
「才羽モモイ。このゲームはどう進めるのですか?」
「う、うん!! 最初はノベルパートだから、基本的にAボタンで次に進めるよ!!」
テイルズ・サガ・クロニクル。
私が王女の心の中に隠れていた時に、そのメモリを途中まで確認した際、何度か出てきた単語。
なんとなく嫌な予感を抱いていると、軽快な音楽と共に、才羽モモイからゲームの説明が始まった。
「タイトルから分かると思うけど、テイルズ・サガ・クロニクルは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなんだよね!!」
「……開始0秒で世界観が崩壊していますが」
「えっと……そう! 王道といってもいろんな要素を混ぜてるの! トレンドそのままでもダメだだけど、王道にこだわりすぎても面白くなくなっちゃうからさ!」
まずはBボタンを押して、目の前の武器を装備してみてください。
「……とりあえず、今はゲームを進めましょうか。戦闘パートではAボタン以外も使うのですね」
「あっ!? Keyちゃんそのチュートリアルは……!!」
何やら才羽モモイが慌てふためき出したが、気にせずBボタンを押してチュートリアルを進めていく。
しかし、まだチュートリアルだというのに、何を慌てる必要があるというのか。
ぼんやりと画面を眺めていると、直後に爆発音が流れ、GAMEOVER画面へと移行した。
「――え? あ、はい!?!?!?」
「あの、そのぉ……プレイヤーの予想を裏切る展開を、作ってみたくて……」
脳内を埋め尽くす、大量のエラーの文字。
ゲーム画面には間違いなく、Bボタンを押して武器を装備しろという指示が書かれている。
しかし、実際にはBボタンを押した直後に、主人公は原因不明の爆発を起こして死亡した。
チュートリアルとは、初めて機械を操作する人たちに向けて作られた、実践的な動作説明書。
それに意図的な虚偽の情報が含まれているのなら、それは最早チュートリアルとは呼べず――。
(Key! 頑張ってください! アリスも理解に苦しみましたが、BボタンではなくAボタンを押せば装備が出来て、ゲームを進めることが出来ます!!)
(王女――!!)
王女の声によって、オーバーヒート直前だった思考を、現実へ戻すことに成功する。
装備は、BボタンではなくAボタン。
これ以上、このゲームの意味不明さについては考えないようにしながら、タイトル画面から再び同じ場面へと戻ってくる。
「Bボタンではなく、Aボタン……!!」
(第一関門突破ですね! ここから遂に戦闘開始です!!)
「……意味の分からない展開が続きましたが、ようやく普通のゲームが始まりそうですね」
モニターに表示されたのは戦闘用の画面。
たたかうコマンドを押して、主人公が唯一使える技「秘剣つばめ返し」を選択。
敵に対して2回攻撃をすると書かれたその技は、敵のプニプニのHPを容易く削り――。
モニターから流れてきたのは、剣で敵を切り裂く音とは程遠い、銃の弾丸が放たれる音。
操作キャラが攻撃を当てられるエリアの外から、一方的に放たれたプニプニの弾丸は、たった一撃でこちらのHPを削り切る。
私は、コントローラーを手放した。
(Key!? コントローラーを使わなければゲームをプレイできませんよ!?)
「いえ、どう考えてもおかしいでしょうこのゲームは!? 誰がこの意味不明な仕様を設定したのですか!? あなたですか、才羽ピンク!!」
「私、才羽ピンクじゃなくてモモイって名前が――ひぇ!? いえ、何でもありません!?」
「うわぁ……Keyちゃんが、アリスなら絶対しないような顔してる……」
こんなものやってられないと判断した私は、全てを投げ捨ててゲーム開発部の部室を後にする。
行き先なんて決めていなかったが、今はとにかくこの場所から離れたい一心で。
乱暴に扉を開けて廊下へと踏み出したその瞬間、私は再びクッションに身を預け、ゲームのコントローラーを握りしめていた。
「――――え?」
(パンパカパーン! Keyの真似をして、アリスも体の主導権を取り戻してみました!
これで、テイルズ・サガ・クロニクルを再開できますね!!
さぁ、クリアまで一緒に頑張りましょう!!)
因果応報とはこのことかと、私は無言で天井を見上げた。
王女は、この世界一ふざけたゲームをクリアするまで、決して開放する気はないらしい。
いつの間にか、AIに対する最適な拷問技術を習得していた王女の成長に、私は色んな意味で涙が止まらなかった。
――そして、約2時間の拷問が続く。
「……電算処理系統、および意思表示システムに、致命的なエラーが、発生」
「……アリスちゃんも、ここで植物人間が喋ってる意味が理解できなくて、意識を失いかけるほど困惑してたのが、どこか懐かしい気持ちになるね」
女性に対して気軽に声をかけることはできません
才羽ピンクによると、どうしても草食系という言葉が思い出せず、植物人間という言葉で代用したとのことらしい。
しかし、それはれっきとした誤植であり、2つの言葉の意味は全く別物である。
ここまで来ると、G.Bibleのフリをしていた私の方が、よっぽど凄いゲームを作れるような気がしてきていて。
「そもそも、母親がヒロインかつ前世の妻で、さらに前世の妻の元に、子どもの頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきていて――いや、腹違いの友人とは何なのですか!?」
(アリスはKeyのプレイを見ながら、1周目では見落とす伏線などを探していたのですが、やっぱりその設定はよく分かりませんでした!!)
そんな作品が許されていいのかと嘆きながら、この地獄のような時間が1秒でも早く終わることを願う。
この拷問器具を作った
「頑張ってKeyちゃん! ここさえ乗り切れば待望のクライマックスなんだから!」
「……次回、Key死す」
「デュエルスタンバイ! って、先生!?!?」
…………さらに、拷問は続く。
「あ、……あぁ、…………」
「Keyちゃん凄い! アリスと同じ3時間でトゥルーエンドまでクリアしちゃった!」
「しかも、Keyちゃんは私たち開発陣のアドバイスなしだよね……?」
「さすがは高性能AI……ってことなのかな?」
(はい! Keyはとっても凄いです!!)
死屍累々になりながら、何度もリブートを繰り返しながら、ようやく表示されたクリア画面に安堵のため息をこぼす。
気の遠くなるような苦悶の時間は終わりを告げ、解放されたことへの喜びが全身を駆け巡る。
思考を放棄して、柔らかくて心地のよいクッションに全身を委ねていると、やがて部屋の奥からガチャリと何かが開く音がした。
「「「……ユズ!?」」」
「はなおか、ゆず……です、か……?」
ここまでずっとロッカーに引きこもっていた、ゲーム開発部の部長にして最後のメンバー。
私がこの場に居続ける限り、決して表に出てくることはないだろうと思っていた彼女は、決して臆することなくこちらにやって来ると、目の焦点の合わない私の頭を優しく撫で始めた。
「…………?」
「ありがとうKeyちゃん。テイルズ・サガ・クロニクルを最後までプレイしてくれて」
抵抗する気力の残っていなかった私は、花岡ユズのなされるがまま何度も撫でられ続ける。
その様子に、才羽姉妹と先生が何やら温かい視線を向けていたが、それに反抗する気力も同じく存在しなかった。
「テイルズ・サガ・クロニクルは私たちが初めて作ったゲームで、でもたくさん批判されちゃってね。そんな中、アリスちゃんはクリアした後に、もう一度ゲームを遊びたいって言ってくれたの」
(……王女よ、正気ですか?)
「アリスはきっと、その時の気持ちをKeyにも知って欲しかったんじゃないかな?
初めて見る世界を、次は何が待っているんだろうってワクワクしながら進んでいく気持ち。
だから、私からもKeyちゃんに聞いてみたいの。
テイルズ・サガ・クロニクルは、私たちの作ったゲームはどうだった?」
そういえば、最初に王女がそんなことを言っていたなと思い出す。
今思えば、余りにも鬼畜過ぎる王女の所業に、涙を禁じ得なかった。
「!? Keyちゃんが泣いてる!! アリスと一緒で、このゲームに感動してくれたんだ!!」
「え? いや、さすがにそれはないんじゃ……」
「……自己言及のパラドックス。
私は嘘つきであるという言葉の矛盾について、知っていますか……?」
「自己言及の……」
「パラドックス……?」
聞きなれない言葉だったのか、才羽姉妹は頭の上に疑問符を浮かべている。
花岡ユズも知らなかったのか困惑しており、先生はどちらか分からなかったが、曖昧な表情で私の言葉を待っている。
「私が正直者である場合、私は嘘つきだと嘘の発言をしたことになる。
私が嘘つきである場合、私は嘘つきだと正直な発言をしたことになる。
どちらの場合でも矛盾が生じ、AIは発言者が正直者か嘘つきか判断することが出来ず、答えのない問いを永遠に考え続けたAIは、やがて負荷に耐えられず自己崩壊を起こします」
「えっと、つまり……?」
私の発言の意図を何となく察したのか、花岡ユズは顔面蒼白になって私の表情を見つめていて。
「意味の分からない仕様。無秩序な設定によって紡がれる、AIには理解不能なストーリー。
なるほど。ゲームとは自我を崩壊させうるAIの天敵であり、ゲーム開発部に王女を回収させた時点で、あなたの勝ちだったのですね、調月リオ……」
「違うよ!? 全然違うから!?」
「私も、もう限界です…………」
「うわぁ!? 頭から湯気出てる!? Keyちゃんが気絶しちゃった!?」
才羽姉妹の叫び声を最後に、私は意識を手放した。
「『あなたの勝ちだったのですね、調月リオ……』だってさ。
Keyの中で、リオはどれだけすごい軍師になってるんだろうな」
「笑わないで、ちょうだい……アバンギャルド君」
モニターに映るのは、事前にゲーム開発部から許可をとって設置させてもらったカメラの映像。
Keyがテイルズ・サガ・クロニクルをプレイする様子を、リオの私室から見ていた俺たちは、何度もお腹を抱えながら皆の様子を見守っていた。
「……なあ、リオ」
「……何かしら?」
「『……自己言及のパラドックス。
私は嘘つきであるという言葉の矛盾について、知っていますか……?』」
「ケホッ! わ、笑わせるのも止めてちょうだい……!!」
アバンギャルド君の機能でKeyの声を再現したセリフは、笑いのツボにクリーンヒット。
リオにはどちらかというと、こういった理系ネタの方が刺さることが多い。
いつか、ヨ〇ノリたくみの大喜利を見せてあげたい。
逆に、モモイのデュエルスタンバイ!みたいなアニメネタは伝わらないことが多い。
面白かったのに、残念だ。
「おっと。ゲーム開発部のみんなは、お昼ご飯を食べに外に行くらしい。
さすがにそこまで見守ることは出来ないし、俺たちもお昼休憩にしよう」
「えぇ。そうね……」
「? どうかしたか?」
キッチンへ移動し、料理モードアバンギャルド君(エプロンを着るだけ)にでもなろうかと考えていると、リオはどこか考える様子で、しばらくこちらの方を見つめていて。
やがて、どこか意を決したかのように、その口を開く。
「その、Keyはしばらく攻撃を仕掛けてこないだろうし、もしかしたらゲーム開発部のみんなはしばらく部室に帰ってこないかもしれないし、映像の確認は後でもできるし……。
それに……そう。丁度買い足したいものがあるの」
「……? 買い出しに行きたいのか?」
「えっと、そうじゃなくて……」
少し頬を赤らめて、もじもじとする我らがリオ会長。
こっそり写真に撮って、後でトキにも見せてあげようなんて考えていると、上目遣いというベストショットが撮影出来て。
「その、私たちも一緒に……デート、しましょう?」
リオの最高に可愛いセリフを最後に、俺は意識を手放した。
今日の20時に、もう1話投稿します!!