D.N.E.   作:Minus-4

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【Tips!!】
 芥川タバネは正義実現委員会内において、基本的には理知的な人物であるとされている。






#12 正義実現委員会の副委員長

 

 

 

 

 私が気絶状態から回復してすぐ。私とコハル、そして先生は()()()の成人向け図書物を正実の押収品管理室に戻しに行くことになった。

 

 先生が付いて行く理由は単純に補習授業部の顧問であるため。そして私がついて行く理由は()()()()()が発生する確率をゼロに近づけるためである。

 

 コハルは現状補習授業部と正実の『兼部』という状態にあるため、押収品管理室に入ることは本来不可能なのである。が、しかし私が帯同しているのであれば、この問題はスルーできる。

 

 当然ながら不正に侵入するというわけではない。ツルギやハスミさん辺りに連絡を取った上で、しかしそれでも何らかの誤解が発生した場合。その時は、()()()()()()()

 

 まあ、要するに。

 責任は私が取るからな、ということだ。

 

 

「しかしまあ、コハルが真面目に仕事をしているのだと発覚したのだから、その点で言えば僥倖(ぎょうこう)だったな」

 

「……その点だけじゃないですか。危うく先輩にエッチな子だと思われるところだった……

 

「"まあまあ、気にしないでコハル。とりもなおさず、タバネはコハルのことを褒めているだけだからさ。でしょ?"」

 

「ああ、その認識で相違ない──いやしかしそれにしても本の内容が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとは思いもしなかったがな! ははははははははははは!」

 

「掘り返さないでください!!」

 

 

 いや本当、びっくりしすぎて意識を失ったからな。あり得なさすぎるし。

 

 そういうのをやるにしたってガチガチの百合じゃなくてもよかったろうに。私としては苦言を呈さざるを得ないぞ。

 

 もっとこう、シスターフッドくらい(トリニティの『シスターフッド』ではない)緩めの関係性でも……いや、あれも結構強めな女性同士の連帯だったか。

 

 あれは関係性としてどの程度の強度のものに当たるんだろうな。男性で言うところのブロマンスくらいのものなのか? それとももっと単純に女性同士の絆全般を指すのだろうか──

 

 と、そんな感じでいつものようにどうでもいいことを考えていたところで、先生から「"それじゃあタバネ、お願いできるかな?"」と声がかかった。

 

 眼前にはやはり正実の本部が聳え立っていた。いつ見ても惚れ惚れする建築物だな、まったく。

 

 

「正実への取り次ぎの件だな、任せておけ。それじゃあコハルと先生は押収品を返しに行ってきていいぞ。もしなんかあったら私の名前を出しておけば何とかなるから、そのつもりでな」

 

「"了解!"」

 

「はいっ! あの……ありがとうございます!」

 

「うむ、気にするな。むしろこういう取り次ぎみたいなのが、本来の私──〈梟〉の仕事だから……ま、次から気を付ければいい」

 

 

 私たち三人はそんな風に言葉を交わして、それぞれの行き先へと向かった。

 

 ……ふう。ちょっと気合い入れてくか。

 ここ最近、()()()()()()()()()からな。

 

 

 

◇ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 正実本部、その一室。

 

 私は一台のソファに腰掛けながら、イチカ・マシロ両名と久闊(きゅうかつ)(じょ)していた。

 

 

「それでマシロ、最近の調子はどうだ? あれから友人と呼べる子は増えたか?」

 

「ええ、はい。それこそコハルさんとはとても仲良くさせてもらっています。お陰様で──と言ってしまうと、タバネ先輩は謙遜されそうですが」

 

「おっ、マシロも中々タバネ先輩のことが分かってきたみたいっすね。そうなんすよ、この人は本当に(へりくだ)りがちなんすから」

 

「そりゃあそうだろうよ。『自分の意思で友人を作った』ってことまで私の功績にされてしまったらたまったもんじゃない、マシロ本人の努力が実っただけなんだからな」

 

 

 ……すっごい落ち着くぞ! やはり正実本部はいい、私を包み込む全てが快適だ。

 

 私の帰るべき巣はここを置いて他に存在しない。今回の()()でそれを再認識できた。

 

 ちなみにだが、たった今「帰還」ではなく「訪問」という表現を用いたのには、当然ながら意味がある。

 

 ほら、今の私は補習授業部の運営補佐を務めているだろう? そちらの業務に集中するため、茶会(ティーパーティー)の権限によって正実の業務からは外されている──早い話が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

 私が主要な業務から外されている分、その皺寄せはどうしても他の正実部員たちに流れてしまう──がしかし、押し付けるだけ押し付けてはいヨロシクでは申し訳ない。

 

 申し訳なかったので、補習授業部の運営補佐を拝命した時点で、私は正実本部の給湯室に我らがトリニティが誇る銘菓であるひよっ子を大量に設置させてもらった。

 

 休憩時間にでもパクついて貰えればいいな。そう思って置いてきたのだが……先ほど確認したところ、嬉しいことにほとんどなくなっていた。

 

 ちなみに現在私たちがお茶請けとして(ついば)んでいるのもひよっ子である。それもただのひよっ子ではない、通常の三倍サイズを誇る父ひよっ子である。

 

 父なのにひよこってどういうことなんだとか、そういうことは考えちゃダメだぞ。約束だぞ。

 

 

「しかしそれにしても、まさかこんなに早くひよっ子が無くなるとはな。ここまで盛況なのは流石に想定外だった」

 

「ああ、このひよっ子とかいうお菓子、昨日までは全然食べられてなかったんすよ」

 

えっ!? な、なんでだ? こんなに美味しいのに……

 

「それがですね、このひよっ子という銘菓……どうやらトリニティ内では逆に有名ではないようでして。あくまで観光客向けの商品ですから──」

 

「私らはタバネ先輩とちょくちょく関わりありましたから真っ先にいただきましたけどね。ん〜! この黄身餡がたまらないんすよ!」

 

「……なるほどなあ、私の情報網の広さが逆に仇となったのか。それじゃあつまり、二人が食べ始めてからみんなも食べ始めたと、そういうわけだな?」

 

「……いえ、そういうわけではなくてですね──あまりにも手を付けられないものですから、勝手ながらこちらの張り紙を貼った途端、なんと取り合いになりました」

 

 

 そう言ってマシロが取り出したのは、ダブルピースをしている私の画像が貼っ付けられた張り紙。こんなポーズしたことないんだけど。

 

 顔面の隣には「私からの差し入れだぞ! お一つと言わず好きなだけ持っていくといい!」という文章が差し込まれている。

 

 

「……えっと、純粋な疑問として聞かせてもらうんだが、何故?」

 

「いやー、タバネ先輩の影響力を舐めてたつもりはなかったんすけどね、私らも予想以上だったというか……『タバネ先輩がそこまで推しているなら信用できる!』と、まあそんな感じっすね」

 

「しかしまあ、今となれば納得はできます。タバネ先輩は皆に信用されていますから、先輩御用達の銘菓ともなれば、そりゃあ飛ぶように()けましたとも」

 

「さっきSNSを確認したんすけどね、どうやら今日一日で注文数が激増したらしく、店頭では品薄状態が続出しているそうっすよ。好かれてますねえ、タバネ先輩」

 

「………………そうか」

 

 

 正実のみんな、私のことを信頼しすぎだろう。そして好きすぎだろう。やば、だいぶ恥ずかしいな。耳があっつい。

 

 最近気がついたんだが、恥ずかしくなると私の羽は勝手に動き出して顔を隠そうとするらしい。

 

 だからつまりこの癖を知っている人から見れば、私が恥ずかしがっているのは一目瞭然になるらしく。

 

 

「……恥ずかしがることはないっすよ! それだけ先輩が実績を積み重ねてきたってだけのことなんですから」

 

「しかしなあ、そうは言ってもなあ……今でこそ〈梟〉だなんて仰々しい二つ名で呼ばれちゃあいるが、持ち上げられるのは苦手なんだよ。その、どんな顔をすればいいのか分からなくなる」

 

「普段通りでいてくれれば、私たちにとっては十分なんですけどね。タバネ先輩が()()()()()()()()ということに惹かれている者も多いはずですし」

 

「そうそう、マシロの言う通りっす。ですからほら、隠れてないで顔出してくださいよ。せっかく久しぶりに顔合わせたんですから、もっと顔見てお話しましょうって」

 

 

 私の頭を撫でながらそんなことを言うイチカ。声音や心音から察するに揶揄(からか)っているわけではないらしい──そういうことなら、まあ、しょうがない。

 

 私は顔の紅潮もそのままに、おずおずと顔を出した。死ぬほど恥ずかしいが、目に入れても痛くない後輩の頼みである。

 

 ()としては、応えるほかあるまいよ。

 

 

「……イチカ、撫でるな。私を撫でていいのはハスミさんとシャーレの先生だけだ」

 

「えっいやちょっと待ってくださいよなんで私を差し置いて先生がそこに名を連ねてるんですかというかなんでそこでハスミ先輩だけじゃなく先生の名前が出てくるんですか」

 

「顔近い顔近い顔近い!!」

 

「ちょっ、イチカ先輩! 流石に顔近すぎますほぼゼロ距離になってます! こんなところ他の正実の子に見られでもしたらあんな妄想やこんな妄想をされて大変なことになりますよ!」

 

「なんすかあんな妄想やこんな妄想って! そんな妄想やどんな妄想だろうが関係ない、今重要なのはどうして先生の名前がタバネ先輩の口から出てきたのかってことの方っすよ!!」

 

「それにしたって近すぎます落ち着いてください! この距離は言い訳つきませんよ、お二人の仲が捏造されて過大化されて百合百合な関係性ってことにされちゃいますよ!!」

 

「マシロお前、絶対なんかコハルに影響受けてるだろ、なあ!?」

 

 

 何してんだ、なーにしてんだコハル! お前やったな、()()()()()()()()!!

 

 イチカも離れろ……なんだこいつ普段より力が強いせいで押し返せないんだけど! ふざけんな離せこら、マシロの言う通り、こんなところを他の誰かにでも見られようもんなら──!!

 

 

 

「えっ」

 

 

 

 ──絶対に、勘違い、されるだろうが……!!

 

 声の主である正実部員(恐らくはこの時間まで自主トレーニングに励んでいた1年生ちゃん)の立ち位置は、私から見てイチカを挟んで向こう側。

 

 だからまあ、こんな風に顔面がゼロ距離になっているところを見た時、想像される行為は一つしかないだろう。

 

 

「まさか、いやでも、そんな大胆なこと……」

 

「あー、だから言ったのに……」

 

「……なあ、1年生ちゃん、ちょっと待て、話を聞いてくれ」

 

「えっ!? あっ、ひゃい、えっと、えっと……!」

 

「まずは落ち着け、落ち着いてくれ。深呼吸だ、深呼吸。多分きみは何か勘違いしているぞ」

 

「タバネ先輩、質問に答えてください! どうして先生の名前が今ここで出てきたのか、教えてもらえるまで離さないっすよ!!」

 

「イチカぁあ!! お願いだから誤解を招くような表現は慎んでくれないか!?」

 

「あのっ、これってアレですよね、その、いわゆる、()()()──! 見ちゃった、初めて見ちゃった……!

 

「違うから、本当に違うから! ちょっとさ、一回こっち来てお話しよう、な? 勘違いだから、弁明させてくれ!」

 

「タバネ先輩、その言い方もかえって誤解を招くと思いますよ……」

 

 

 つったってどうすりゃいいんだこの状況。あの子をどうにかしないことにはおちおち安心して眠ることだってできやしない──

 

 だなんて、私らしくもなく打開策の一つも思い浮かばないくらいに焦ってはいたのだが。

 

 しかし、しかし。別に()()()()()()()()()()()()()()()()のだということに、私はここでようやく気が付いたのだった。

 

 

「……マシロ、マシロ。ちょっと一つ、お使いを頼まれちゃくれないか」

 

「お使い、ですか……ああ、なるほど、()()()()()()ですね?」

 

「うむ、()()()()()()だ。頼めるか?」

 

「ええ、他でもないタバネ先輩の頼みですから。任されました」

 

 

 今もなお「ちょっと、無視しないで答えてくださいよ!」と喚き続けるイチカをガン無視(フルしかと)し、私とマシロは同時に頷いた。

 

 いやあ、冷静な奴が場に一人いてくれて良かった。マシロがいなければ、今頃私とイチカはありもしない濃厚な関係性を捏造されてしまうところだったな──

 

 

「今さっきシャーレの先生がタバネ先輩の頭を撫で回してたってことが発覚したんですけど、ちょっと詳しく話を聞いていくつもりってないですか?」

 

「えっ!? 何それ気になる……聞きます聞いていきます聞かせてください!」

 

「よし、やりましたよタバネ先輩。戦略勝ちです」

 

 

どこが戦略勝ちだぁあ!!

 

 

 今日は何でこんなに変な事件ばっかり起こるんだ。

 

 ああ、もう。

 早くハスミさんに会いたい。

 

 どうか哀れな私を慰めてくれ。

 

 

 

◇ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「とまあそういうわけで、全員まとめてお仕置きしてやったのだ。こう、両のほっぺたをぐにぃーっと伸ばしてな」

 

「"ああ、道理で……それならまあ、私から言うことは何もないかな"」

 

 

 押収品管理室から私たちのいる部屋へと移動してきた先生は、私からの説明を聞くなりそんなことを言った。

 

 ちなみにコハルはといえば、どうやら押収品管理室にて偶然居合わせたハスミ先輩と話をしている最中らしく。一応は部外者であるところの先生はさっさと退散してきたというわけである。

 

 そして現在、私たちの眼前には両頬を思い切りつねられて真っ赤にしているイチカ・マシロ・1年生ちゃんの三人がいた。当然の報いである。

 

 

「……私は聞き出すのを諦めてないっすよ。というか普通に心配なんです。どうしていつの間にか先生はタバネ先輩の頭を撫でる権利(ライセンス)を手に入れてるんすか」

 

「イチカ先輩に同じくです。シャーレの超法規的な権限とやらを使ってタバネ先輩を手篭めにしているとか、そういう可能性も考えられますし」

 

「あっ、私もイチカ先輩とマシロちゃんに同じくです。なんかこう、先生が女子高生の頭を撫でるだなんて、大人な関係とかにあったりするのかなって気になっちゃって」

 

 

 三人はいそいそとソファに腰掛けながら、三者三様に好き勝手なことを言いやがる。

 

 だがしかしまあ、三人の心配もごもっともといった感じだよなあ。仮に私の後輩が先生に撫でられてたら、私は──問い詰めに問い詰めまくるだろうし。

 

 

「1年生ちゃん、ちょっとそれは考え込みすぎだぞ。私と先生はあくまでも『部活動の顧問』とそれを補佐するもの──分かりやすく例えるのならば『副顧問』という、ごくありふれた関係性でしかないからな」

 

「ごめんなさい、私って恋愛脳なんです」

 

 

 恋愛脳とか自分で言うなよ。

 つーか、自覚してるなら今だけでもいいから治してくれ。

 

 ……今ふと思ったんだが、なんかこう、うちの1年生ちゃんってクセが強い子しかいなくないか?

 

 コハルだろ、マシロだろ、数週間前に私の頭を撫でてきた撫子(なでこ)ちゃん(仮称)だろ、そして目の前の恋愛脳ちゃんだろ……いや揃いも揃ってクセ強いな。

 

 まあ、別にクセが強いのなんて1年生ちゃんに限った話でもないが……それにしたってどうなんだ。二年後の正実はどうなってしまうんだ。

 

 

「はあ……まあいい、よくはないけど、まあいい。私が先生に頭を撫でられることを咎めなかったのは、補習授業部の顧問を務めてくれている先生への正当な報酬として許可したからだ」

 

「タバネ先輩、質問というかシンプルに疑問なんですが、頭を撫でさせることって報酬として認めていいものなんでしょうか?」

 

「え、別にいいんじゃないか? 成人男性からしたら、うら若き女子高生の頭を撫でるチャンスなどそうあったものではないだろう」

 

「"つまりタバネは『頭を撫でる機会』という()()()()を、私への報酬として提供してくれたんだよ"」

 

「いや、私らとしてはそんなこと言われても『あ〜なるほどそうっすね〜』とはなりませんからね? ほら見てくださいよマシロの顔を。目が点になってます」

 

「はい、目が点です。鱗落ちまくりです」

 

 

 どういう表情だよそれは。

 

 というかあれだからな、何か勘違いしているみたいだが、私だって本気で頭を撫でさせることを是としているわけではないからな。

 

 私はあくまでも補習授業部の運営を円滑にするため、先生との距離を近付けることを目論んでいるだけなのだ。

 

 

「ちぇーっ、何なんすかね本当に先生は。私は未だに先輩から許可を貰えていないせいで違法撫でしかできないのに、ものの一ヶ月ちょいで合法撫でリストに名を連ねるなんて。ずるいっすよ、抗議も辞さない構えっす」

 

「というかタバネ先輩の頭ってそんなに撫で心地いいんですか? 正実1年生の間で密かに噂されていますけど……」

 

「何でそんな噂が広まって……いや何でもない、心当たりがあるぞ」

 

 

 十中八九、撫子ちゃん(仮称)のせいだろ。

 

 まあこれで私に親しみを持ってくれる子が増えてくれりゃあ、それはそれでありがたい話なんだけどさ。

 

 どうする? 今後は私の頭を元手に後輩ちゃんや同級生たちの信頼を稼いでいくことも視野に入れるべきだろうか。

 

 ……何を真面目に考えてんだろうな、私。

 

 

「ハスミさん曰く、私の撫で心地はそれこそシルクのようらしいぞ。日がな一日訓練や仕事に明け暮れている割には、まあそれなりらしいな」

 

「へぇ〜……! それじゃあアレですか、ヘアケアにはやっぱり気を遣ってるんですか?」

 

「私は〈梟〉だからな。外交の際にはトリニティの代表として場に立つのだし、見窄らしい姿で表に出るわけにはいかないのだ」

 

 

 ただでさえ可愛げのない性格をしているのだから、せめて見た目くらいは気を遣っておかないとな。

 

 それに、トリニティの品格(ブランド)傷を付けてしまってからでは遅い。故に私は、万事手を抜かないことにしている。

 

 

「そのせいで髪や肌のケアにはとんでもない時間がかかるが──まあ女子として生まれたからには綺麗でいたいものな」

 

「タバネ先輩、今度使っているもの全部教えてもらっていいですか? ちょっと試してみたくなりました」

 

「……まあ、マシロの頼みなら別に構わんが──」

 

「……? 何か気掛かりなことでも?」

 

「ああいや、別にそういうわけではない。気にしないでくれ」

 

「はあ……何にせよ、楽しみにしていますね。ありがとうございます」

 

 

 いやな、私が言い淀んだのには当然のことながら理由(というか邪推に近い)があってな。

 

 マシロの言い分からすれば、恐らくはシャンプーやリンス、ボディソープや洗顔用品、化粧水やら保湿液やら──何から何まで私と同じものを試そうとしているみたいだが。

 

 ……()()()()()()()って、そりゃああれだろ。

 

 ほら、妄想逞しい子たちからしたらさ?それって()()()()()()じゃん。

 

 とか、そんなしょうもないことに気を回していたところで。扉を隔てた向こう側──つまりはハスミさんとコハルが話している部屋から、ほんの少しだけ、音が漏れた。

 

 

「……コハル…………てください。本来の……を……ないで…………」

 

「でも…………には……無理……。……なんて…………あまりにも……ことで……」

 

 

「それではダメなんです!」

 

 

「"えっと……これ、大丈夫かな……?"」

 

「ん? 何がですか?」

 

 

 壁を隔てても聞こえるほどの声量で、ハスミさんが怒鳴り声を上げる。

 

 ──と、()()()()()()()()()()()()のだろうな。

 

 

「……なさい…………ずっと……ために…………。……先生…………を……です…………」

 

「……はい………………ます」

 

「"何だかコハル、怒られちゃってるような気がするんだけど──"」

 

「……さーて。その辺は私たちには分かりませんよ。壁を隔てた向こう側の会話なんて──それこそ、()()()()()()()()()()()()()()でもなければ」

 

 

 イチカは隣に座らせている恋愛脳ちゃんを撫で回しながら、そんな風に言い放ち視線をこちらへ向けた。

 

 心配するな。そんなにお膳立てされなくとも、ハスミさんが誤解されそうな状況を、この私が放っておくわけがあるまいよ。

 

 何故なら、ハスミさんは()の親友で。

 

 そして、()()()の恩人だからさ。

 

 

「あの人以上に後輩に優しい人を、私は知らないよ」

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()

 

 ハスミさんの善良(やさし)さは、皆知っているから。

 

 

「"──タバネがそう言うのなら、安心かな"」

 

「先生も分かってきましたね。ただでさえ『正義』を重視するタバネ先輩が全幅の信頼を置いているハスミ先輩が、まさか悪辣なはずもありません」

 

「シャンプーやリンスがどうとか言ってますけど、実はあの想いがタバネ先輩の美の秘訣なんすよ」

 

「……なるほど。つまりタバネ先輩とハスミ先輩の関係性は──」

 

「イチカ、恋愛脳ちゃん。何を勘違いしているのか知らないが、それ以上言ったらタイマンで訓練だからな」

 

「……っす」

 

 

 ひそひそとあることないこと吹き込みやがって。私は実力行使をチラつかせ、二人を黙らせた。

 

 まったくもう、困っちゃうぜ。

 私なんかとハスミさんが釣り合うはずないだろうに。

 

 

 

 








 強欲なのでファンアートとか欲しい。
 あと10評価とか9評価も欲しい。
 あとあと感想も欲しい。

 貰えるように頑張ります。

 それから評価を入れてくださった方を紹介します。
(敬称略)

りゅう_ツチホシ 兵隊 爆弾ボール 焼き鳥提督 お祈りメール 天野創夜 青い蝉

 上記の方々にはこの場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 お気に入り登録感想評価等もよろしくね。

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