幼馴染のよろず屋   作:某なにがし

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よろず屋、心配する

「あら、水が出ないはね?」

 

季節は冬。吐く息は白く、布団から出るといやでも目が覚める。

そんな時期によくあるトラブル。水道管の凍結だ。

 

「ほんとだ」

 

母親である女性、咲とその娘の志摩リンは言う。

 

「どうしましょう?」

 

「大丈夫だよ、お母さん。こんなときはアイツに・・・」

 

そういうとリンはおもむろにスマホを取り出し、文字を打ち込み始める。

 

『お~い、風(フウ)。起きてる?』

 

『うきみそーちー』(沖縄弁)

 

『すいません、間違えました』

 

『待て待て待て、合ってます、合ってます』

 

『まったく』

 

『すまん、で?何か用?』

 

『それがさ、ウチの水道から水が出ないんだ。私はこれから本栖湖にキャンプに出掛けるんだけど、お母さんが困ってるから来てくれない?』

 

『了解、すぐに行く』

 

『ありがとう』

 

『気にすんな、こっちは便利屋なんだ。使ってなんぼだ。』

 

よく知る幼馴染の言葉に思わずね笑みを浮かべるリンであった。

 

「お母さん、フウが来てくれることになったよ」

 

「あら、フウ君が来てくれるの?助かるわ~。」

 

咲もフウは昔から知っている子なので安心している。

しかも便利屋としてもこのあたりの地域では結構評判もいいらしい。

 

「じゃあ、お母さん。フウによろしく。私は行くね」

 

「わかったわ。フウ君には私から伝えておくわ」

 

そういってリンは咲とわかれ外に出て、自転車に積んだキャンプ道具とともにオフシーズンに行うキャンプが幕を開ける

 

 

数十分後の志摩家

 

ピンポーン

「はーい」

「おはようございます、依頼をもらった便利屋フウでーす。」

 

そこには作業着と道具類をしまっている箱を片手に持ちたたずんでいるリンと同じぐらいの背丈の少年がたたずんでいた。

 

「いらっしゃい、フウ君」

 

「お久しぶりです!咲さん」

 

「ごめんなさいね、こんな朝早くから」

 

「いえいえ、朝早くから起きてたんで大丈夫です。それより凍結があるってリンに聞いたんですけど」

 

「そうなの。水道からまったく水が出ないのよ」

 

「あ~あ、冬は多いですからね。」

 

「そうなのよ。困っちゃうわ」

 

「でも、今日の気温ならそれほど深刻な凍結ではないと思います。

 ちょっと水道の配管部分を見させていただきますね」

 

「わかったわ」

 

そういって咲に導かれたのは水が出なくなった台所である。

 

「多分、この下の配管にもあるはず・・・あった!」

 

フウが目当てにしていたのは解氷パイプである。

 

「咲さん、すいませんがコンロ借りてもいいですか?」

 

「ええ」

 

了承をもらうとフウはヤカンと水の入ったペットボトルを持ってきて湯を沸かし始めた

「これぐらいで問題ないかな」

 

数分あっためたぬるめのお湯をパイプを持ち上げてその下に注いだ。

 

そして数分待つ

 

「水が出たわ!」

 

「軽い凍結でよかったです」

 

「ありがとう、フウ君」

 

「いえ、これが仕事の一部ですから」

 

咲が満足してくれたようでよかったと思うフウであった。

 

「では、自分はこれで」

 

「本当にありがとうね。

今度、リンと一緒にウチでご飯食べましょう」

 

「はい。そのときはぜひとも」

 

今日も依頼をこなしていく

 

 

夜になり――――

「今日も依頼はすべて達成。う~ん充実」

 

ピコン

メッセージが来たようなのでスマホを見る

 

『フウヘルプ!』

『dこhふぃあw』

 

「え、なんだこれ!」

なにやらただならないと思い、急ぎ乗ってきたバイクにまたがり、飛ばしていく

たしか場所は本栖湖だったな。

 

「待ってろよ~!リ―――ン!!!」(ウィリーで発進)

 

―――――本栖湖

「つまり、今日山梨に引っ越してきたばかりで」

 

「うん・・・・」

 

「それで、自転車に乗って富士山を見に来た」

 

「で、来たはいいけど、疲れて横になったら、そのまま寝過ごして」

 

「うんうん・・」

 

「気が付いたら真っ暗だったと」

 

「へぶぅ……」

 

なんと言うか、話を聞けば聞くほど、この子はアホなんじゃないかと思えてきた。

しかも家族には何も告げずに来てしまったという悪いニュースもセットだ

目の前で悲しんでる顔をしている子は各務原なでしこ、本栖湖の近くにあるベンチで寝ていた子だ。

 

「あっちは下り坂だから、トンネル使えばすぐに下まで行けると思うけど・・・」

 

「むりむりむりぃっ!超こわい!」

 

「家に連絡して迎えに来てもらうのは?」

 

「あ!そっか!スマホスマホ、最近買ったスマホ。スマホスマホスマホスマホスマホス~マホス!」

 

そう言って、彼女が取り出したのはトランプのケースだった。

 

ぐうぅぅ~

どうやらなでしこはお腹がすいているらしい

 

それと同時に・・・ん・・・り・・リ―――ン

 

「あれ、この声ってまさか」

 

「知ってる人?」

 

なでしこは当然知らないので聞いてくる。

 

リンは先ほどなでしこに追いかけられたときにフウに連絡したことを思い出した。

メッセージを見返すと既読になってはいるが、その後がない。

とても嫌な予感がした。

 

「リ―――ン」 ヴォぉォン

 

「うわ―――!」

 

突然のバイクの登場になでしこは驚く。

そしてバイクは砂地に着地する。

 

「リン!大丈夫か!!!」

 

フウは怖めの顔でリンに聞く

 

「ひぃう!」

 

なでしこからすれば知らない人が怖い顔してるので悲鳴が上がる

 

「落ち着てフウ。私は大丈夫だよ。ごめんね。変なメッセージ送っちゃって」

 

リンは素直に謝る。

 

「無事ならモーマンタイだぜ」

 

「ごめんね。でもなんで広東語」

 

「俺とリンの仲だ!気にすんな!」

 

「うん」

 

リンは短い返答ながらも自分を心配してくれた幼馴染に対して微笑む

 

「ところでお姉さんは?」

 

「あっ、私は各務原なでしこっていいます!」

 

「これはご丁寧に。俺は神威 風(かむい ふう)っていいます。よろしく」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「それでリン、あのメッセージは一体何だったんだ?」

 

「あ~それはね・・・」

 

説明中―――

 

「なるほど、てことは今はどうやって家族に連絡するかを考えてんだな」

 

「うん。フウ、なんとかなりそう?」

 

さすがにほとんど家族の情報がない人を、こんな夜中に届けるのは難しい。

しかもパトカーに見つかったら職質されてジ・エンドだ。

 

「なでしこさんはどこに引っ越してきたの?」

 

「ず~っと下のほうの南部町ってとこ」

 

「こっから40キロ以上離れてんじゃん」

 

フウはなでしこの回答にフィジカルがえげつないなと思った。

 

そこで不意に・・ぐうぅぅぅっと音が鳴った。

発生源はなでしこであった。

 

その光景にリンがカップ麺を取り出す

 

「ラーメン食べる?」

「俺も菓子パンならあるぞ」

 

「え!くれるの!?」

 

するとリンが左手を出して

「1500円」

 

なでしこは涙を流しながら100円を取り出した

 

「じゅ、じゅうごかいばらいでお願いします。」

 

「冗談だよ」

 

「俺も何もいらないからな」

 

何か言われる前に言っておく

 

カップ麺の湯が沸く間になでしこさんが帰れる方法を模索する

 

「なでしこさん、電話番号とかわかる?スマホ貸すからさ」

 

一応、模範解答のような解決策を提示する・・・が

 

「引っ越したばかりで分かりません!!」

 

1つ目の候補の灯が消えそうだ

するとリンが助け船をくれる

 

「じゃあ、自分のスマホの番号は?」

 

「記憶にございません!!!」

 

元気いっぱいで言われてしまった。

あと1回で風前の灯も消えそうだ

 

ぐうぅぅぅ

 

再度、なでしこさんのお腹が鳴り、湯も沸いた

 

「お湯が沸いたよ!」

 

リンがカップ麺に湯を注ぐ

すると、なでしこがくしゃみをする。

そこで俺は焚火の火が弱くなってるのに気づく

 

「リン、焚火に薪を追加していいか?」

 

「うん、私も寒くなってきたしお願い」

 

了承も得たので薪をくべて空気の通り道を気にしつつ、段ボールで風を送る

 

「おお~

 ありがとう!あったまる~」

 

なでしこさんは珍しいのか焚火の火が強くなり温かさが増すとテンションが上がっていた

寒さも和らいだようでなによりだ。

そして、お待ちかねのカップ麺ができた

 

「いただきま~す」

そういうとなでしこさんはとてもおいしそうに食べていった。

カップ麺をここまでおいしそうに食えるのも珍しい。

 

「フウは菓子パンでよかったの?私の少し食べる?」

 

リンはどうやら俺の分のカップ麺が無いことに罪悪感があるらしい

 

「平気だよ。二人のほうが食べたほうがいい。

 腹が減ってはなんとやらっていうだろ?」

 

「いや、戦にはいかねぇーよ」

 

突っ込まれてしまった

さて話題を変えよう

 

「なでしこさんは何で南部町から本栖湖に来たの?」

 

「本栖湖の富士山はお札にも書かれてるってお姉ちゃんが言ってたからながーい坂を上ってきたんだよ」

 

「おお、結構芸術が好きな人みたいな理由だった・・・」

 

「それで40キロってすげぇーな」

 

俺もリンも軽くひいていた

 

「でも曇ってて全然見えないんだよ!」

 

なでしこさんは可愛く怒っていた。なんか和む

でも曇ってるのはここまでだったようだ

 

「なでしこさん、うしろうしろ」

 

俺はなでしこさんに後ろを見るように促す

 

「え?」

「おお」

 

対面に座っていたリンは先にその光景を見て感嘆の声をあげた

 

雲がかかっていた富士山ではない全体が月明かりに照らされた富士山

 

なでしこさんも振り返り、立ち上がった

 

「あ!!!」

 

「どうしたんですか?」

 

「あ、えへへへ、お姉ちゃんの電話番号知ってたよ私・・・」

 

「「・・・・」」

 

なんとも言えない空気になったことは心の中にしまっておく

 

夜も遅いので善は急げでさっそくなでしこさんのお姉さんに電話したら幸いにもすぐに迎えに来れそうだ。よかった

 

1時間とかからずになでしこさんのお姉さんと思われる美人な方が来てくれた

 

「ウチのバカ妹が、ほんとーにお世話になりました。これお詫びです。」

 

お姉さんがそう言うとキウイを袋いっぱい渡してきた

 

「あ・・いや別に大したことは」

リンは戸惑うように返答した

 

「俺もただ来ただけなんで特に力になれたわけでもないですし」

 

そしてこの状況を作り出したなでしこ本人は・・・

「お―――――、あ・・ははは」涙目

 

そう涙目で拳骨をもらってしまった頭を押さえていた

 

「アンタ、持ち歩かないと携帯電話と言わないのよ!

 ほら!さっさと乗れ!ブタ野郎!!」

 

「ぶへぇ!いて!いててて!やめっ、カレー麺でるぅ~ぅぅ、いて」

 

お姉さんはかなりご立腹のようでかなり雑に扱われていた。

 

そしてお姉さんも車に乗り、エンジンがかかる

 

「それじゃあお休みなさい。

 風邪ひかないでね」

 

「おやすみなさい」

 

「おやすみです!」

 

リンも俺もお姉さんに返事を返す

 

「リン、ラーメンがキュウイに錬成されたな」

 

「等価交換になってないな。」

 

「ちょっと待って!!!」

 

二人で軽口をたたいていたら、なでしこが戻ってきた

 

「はぁ、はぁ・・・はい!これ!私の番号、お姉ちゃんに聞いたんだ!

 カレー麺ありがとう!」

 

「・・!」

 

(おや、これはもしや)

 

「今度はちゃんとキャンプやろうね!」

 

そういうとなでしこさんは車のほうに戻っていった。

 

「リンもとうとうソロキャン卒業かな?」

 

「なにいってんだ。」

 

素直でない幼馴染だ。さて俺も帰りますかね

 

「じゃあ、リン。俺も帰るよ」

 

「わかった。その・・・ありがとう。来てくれて」

「さっきも言っただろ、気にすんな」

そういって頭をなでる

 

「あたま撫でんな」

 

 

そしてすべてが1件落着し夜はふけていった

 

余談~

 

帰りはパトカーが遠目から見えたので職質されないように細心の注意を払いながら帰ることになったフウであった。

 

「こんなことならリンのテントで止まらせてもらうんだったぜ・・クッシュン!」

 

あわれフウ!されどがんばれ!

 

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