俺は学校の廊下を急ぎ足で進む、、手に大量のペットボトルと菓子パンを抱えながら。
「あ、すいません、、通してください、。」
俺は学生や職員に体をぶつかりそうになるたびに謝罪の言葉を口にして、そろそろと進む。人間余裕がなくなる時にはバランス感覚というのがホント無くなるのだ。すれ違う人は大量の飲食物を抱え込んでいる俺をちらりと見つめ、数秒後には何も見なかったかのように友達や恋人との会話に戻る。俺は彼らのそんな様子を見て自分の今の立場との違いに肩身が狭くなる思いだった。
(くそ、、なんで俺がこんな目に、、。)
命令されて抱えきれない程のパンやペットボトルを運んでいるという今の状況に俺の胸が重くなった。道行く人の突き刺さるような視線が痛い。精神的に。ぶつかりそうになった人の中には侮蔑や憤りを感じさせる視線を向けてきた人もいた。いや、正直視線を浴びせてくるだけだったらまだ良い。今の俺の立場からしてみたら絡まれて手を出してくる輩もいるかもしれないからな。
「誰でもいいから手伝って欲しかったんだけどな、、。」
そう愚痴ってみるがただただ虚しくなるばかりで俺は思わずため息をつく。仕方ないことだ。俺なんかに意識を向けてくれて、尚且つ手助けしてくれる人なんてあそこでは誰一人としていないだろう。俺は時折パンやペットボトルを落としそうになりーそれは断固として阻止してーながらも目的の教室へとたどり着いた。中からはあいつらの賑やかな声が聞こえてくる。俺は体全体で手荷物を抱えて何とかフリーになった片手で教室のドアを開けた。
(やれやれ、今回は何とかいじられずに済みそうだ。)
何とか課せられたクエストを問題なく終わらせそうだと俺は安堵のため息をついた。
「お、パシリくんが無事、クエストを完了させましたよっと!」
「おー、パシリくん!無事に帰ってこれまちゅたねーwww。偉かったでしゅねーww」
「あはは!その愛想笑いの顔受けるんですけど!」
教室に入るなり、中にいた連中から爆笑の渦が沸き起こった。俺は連中に向かって空いている片手を後頭部に当ててニコニコと愛想笑いをする。
、、大丈夫だ。耐えろ俺。
「おいパシリ。さっさと買ってきたものを並べろや。こっちは腹が減ってるんだよ。」
ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながら俺に命令してくるのはこのグループの中心的人物である高橋 翔太(たかはし しょうた)。大柄なイケメンで家は金持ち、、さらにはバスケットボール部のエースというあまりにも恵まれた立場にいる。当然のように彼女もち、さらには複数の女子とも交流を持っている。うちの学年、、いや学校でもトップクラスの陽キャだ。
「そうそう。パシリくんなんだから翔くんを煩わらせないでよね~。ほら早く早く。」
そうケラケラと笑いながら翔太の彼女である倉木 美咲(くらき みさき)も翔太に便乗して俺をせかしてくる。彼女はチアリーディング部のエースで翔太と付き合うまでは男子生徒中の憧れだった。かくゆう俺も憧れていた。
「は、はい。ただいま!」
俺は愛想笑いを絶やさずにグループのやつらに自分のお金で買ってきたパンやペットボトルの飲み物を配り始める。周りの奴らはニヤニヤと笑うだけで俺に感謝の言葉一つくれようともしない。
(ふざけんなよ、、俺がどれだけ苦労して買ってきたと思っているんだ、、!)
タールが滴るように心の中に黒い気持ちが溜まっていく感触を感じたが、俺はただニヤニヤと愛想笑いをすることしかできない。このグループの機嫌を損ねたらその瞬間、学校生活の終焉を意味するのだから。
「でさ~!!そいつの彼女見たらめっちゃブスだったわけよ!!」
「うえー、マジかよ!!」
「きゃはは!!めっちゃウケるんですけど!!」
「マジでご愁傷さまってかんじwwww」
たわいのない会話で盛り上がる翔太グループ。周りがゲラゲラと笑いながら転げまわっている間、俺はニコニコと我ながら気持ち悪い笑みを浮かべて周りを見渡していた。
(大丈夫だ、、今度こそウケるツッコミをいれて、パシリから脱却してみせる!)
そう心の中で燃えながらその機会を今か今かと伺っていると、翔太が笑いながらグループの一人を指差す。
「マジでそれはやべえって!俺だったら速攻別れるべ!」
(今だ!)
俺は漫才師のツッコミのポーズのように右手を突き出しながら、この瞬間に考えていた台詞を口にする。勝算はある。行けるはずだ!
「い、いやそれめっちゃクズじゃないかーい!!」
その瞬間教室の空気が凍った。さっきまで騒いでいたのがまるで噓のようにグループが静まり返る。周りのメンバーは全員俺に向けて凍り付くように冷たい視線を浴びせてくる。俺は右手を突き出したポーズのまま固まるしかなかった。
「なんなん?お前、調子に乗ってないか?」
「ホントなんなのあんた。キモすぎ。」
翔太と美咲は心底イラついたような顔で俺に罵声を飛ばしてきた。周りのメンバーも似たような表情で、「馬鹿じゃねぇの」「キモい」などの悪口を口々に呟いた。
「あ、、その、、すいません、、。」
俺は凍った笑顔で絞り出すように謝罪した。それから俺は下校時間になるまで翔太たちからの冷たい視線に晒されながら、ただじっと縮こまることになった。
「はあ、、。」
俺はため息をつきながらとぼとぼと校門へと向かっていた。翔太たちはというとグループでカラオケに行くらしい。俺?誘われるどころか集まりからたたき出されましたけど?
「こんなはずじゃなかったんだけどな、、。」
つい思わず口から弱々しい本音が漏れる。今までの人生でいつも一人ぼっちだった俺は高校生活は絶対にリア充になってやるんだと精いっぱい努力した。入学してから頭角を現してきた翔太たちのグループに嫌な顔をされながらもついていき、なんとかグループの一員になることが出来たのだ、、使い走りとして。
(俺、このままでいいんだろうか、、?)
仲のいい友達も出来ず、翔太たちの使いっぱしりに使われる日々。正直うんざりだがだからといって彼らと縁を切るわけにはいかなかった。学校でもトップクラスのリア充グループの末席という立場が俺のかけがえのないアイデンティティなのだから。今一度大きなため息をつきながら校門をくぐろうとした時だった。
「おーーい!!」
ふと元気な可愛い声が聞こえたので振り向くと、一人の女子生徒が手を大きく振りながら笑顔でこちらに向かってくるではないか。確かあの子は学園でも噂の美少女だったはず。ま、まさか、、俺にも春が来たのか!
「あ、あの、こんに」
「は?なんなのあんた。きもっ。」
俺が声をかけたとたん女子生徒が笑顔から一転、キツい目つきでこちらを睨みつけてきた。小さく手を挙げたポーズのまま、俺は硬直した。
「お待たせ、きらり。待ったかい?」
校門の方からアイドルみたいなイケメンがやってきた。服装からして他校の生徒だろう。
「ううんかいくん!あたしも今来たところ!」
「それは良かった。その彼は友達かい?」
「ううんなんか絡まれたんだよねー。こんなのほっといていこいこ!」
女子生徒はイケメンと手を組みながらどっかに行ってしまった。
「、、、帰るか。」
それを見送った俺は重い足取りで帰路についた。
友達なし、彼女いない歴イコール年齢のキョロ充高校生。それが俺、「虹三条(にじさんじ)」という男だった。
この小説を書き始めたきっかけなのですが、自分は実は「デュエルマスターズ」というカードゲームを嗜んでいて、そのゲームが「にじさんじ」とコラボ致しまして、見てみると自分がずっと組んでみたかった十王編のような文明2色のデッキが10個作れるらしいとのこと。「これは書くしかねえ!!」ということでつい筆を取ってしまいました。
「にじさんじ」は全くの初心者ですが、これを機会に触れてみたいと思います。前々から興味がありましたし。
長々となってしまいましたが、皆さんの日々の少しばかりの暇つぶしになれば幸いです。