俺は転生者である。
いや言わせてくれ、ありきたりだと思うだろ?前世の俺は高校を卒業し大学の入学式を控え新しい新生活に慣れようとしていたんだ。でもさすがに信号無視の暴走車は避けられん。
そして、最後に見えた景色は悲鳴と鈍い衝突音、とても綺麗に舗装されたアスファルトだった。
創作の導入としてはありきたりだろうが、それでも俺にとっては間違いなく人生最大の悲劇だったのだ。
その後、赤ん坊に生まれ直した。
親は前世の両親に似た良い人達だった。流石に記憶ありの中で母乳とオムツは恥ずかしくて泣きかけたけど。赤ん坊ならしょうがないと割り切った。当時はこれはもしや転生者特権の幼少天才ムーブができるかもと俺は考えていた。
そしてその後スクスクと成長した俺は、ある存在を認知した瞬間に齢一歳未満で悟ったのだ。 この世界が、俺の生きた令和の時代とは全く異なる世界だと。
そう、ここは俺の知る日本じゃない。
見た瞬間からこれは…と俺の脳裏には強烈な既視感の波が押し寄せていた。そして現実逃避から戻り、異形であり呪霊である蝿頭を見ながら暗い未来を予期し思う、呪術廻戦でしたかぁ。と絶望を抱きながら。
------『呪術廻戦』は、芥見下々による漫画作品で某ジャンプにて2018年から2024年まで連載され、人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いたダークファンタジーであり、俺の前世でも人気を博した作品の世界である。そこにまさか自分が転生するとは…。
さてこの呪術廻戦、主要キャラもモブキャラもわりと容赦なく死ぬ、そんな世界で俺が生き残れる確率は半分どころか底辺だ。呪霊や呪詛師との戦いが日常茶飯事の世界で、か弱い人間が長生きできるわけがないだろいい加減にしろ。
さらば俺の新しい人生!2度目の来世に期待!あぁ神よどうしてこんな残酷な仕打ちを…次はもう少しマシな世界に転生させてください。なんて冗談は置いといて。死にたくねぇ!いやほんとにもう一度あの思いは味わいたくない。天寿を全うしたいですぅ!
と思いながら過ごしていたがどうやら俺の知っている呪術廻戦とは少し違うようだ。
鏡に映る姿は少し茶色が混じった黒髪、長いまつ毛と大きい二重の目の下にはチャームポイントな涙ボクロ。将来はもてること間違い無しの抜群の容姿。誰が見ても可愛い。そんな子供。
だが俺が鏡を見た時の衝撃はそれに関してでは無い。
明らかに見たことある顔。あの女性の幼少期を考えるとこんな子供だったのだろうなと思う顔。
そしてそれは呪術廻戦に出てた女性、そう家入硝子に俺は転生していた。だがしかしここである問題が生じる。
生えているのだ。普通に。息子が。
俺は家入硝子に男として生まれ変わっていた。
★★★
そして時は流れ---
今俺の目の前で喧嘩している人達は誰なのだろう。
「おい、私の前を歩いてんじゃねぇよ」と美しい白銀の髪を靡かせ青い宝石をそのまま埋め込んだような瞳を瞬かせ手足が尋常じゃなく長く出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいるとんでもない美女。
「入学初日からなんだいきみは?」と腰まで届く長い艶やかな黒髪をポニーテルし繊細な輪郭に、切れ長の目を持っているこれまたとんでもないグラマラスな美女。
おおよそふたりとも10代で出してはいけない程の優美で耽美な魅力を醸し出している。
その2人は額をくっつけながらお互いにがんを飛ばし口論を続ける。
それを見ながら俺は気付かないふりを止める。
「そっちもかぁ」とこれからの未来に不安を覚えながら。