個性『幻想体収容所』:RETAKE   作:T.T小説ううぅぅ…

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前回のあらすじ

ヒーローになる意志を確認する為に試練が始まった。

2025/04/22加筆

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夜明けへの第一歩

〜小鳥・大鳥side〜

 

跳ねるように走る大鳥と、羽ばたき素早く移動する小鳥を狙っている影は見えなかった。だが大鳥には見えている。地中を掘り進み自分たちを奇襲しようと躍起になっている芋虫の姿が。

 

『回り込まれた!』

『充分距離は離した。ここで迎え撃つぞ。』

 

ズザザッと急ブレーキをかけて二人は停止した。そして周りから無数の芋虫が現れた。ギラリと目が輝き、早く獲物を食べたいと言わんばかりに涎を垂らしている。

 

『僕らは食べ物じゃないんだけどね…』

『悠長に言ってる場合ではない。来るぞ!』

 

小鳥が警鐘を鳴らした瞬間、芋虫が一斉に飛びかかって来た。大鳥は芋虫の山に埋もれたが、それほど芋虫の噛む力がないので身体を震わせるだけでそのほとんどを振り落とした。

 

そして体勢を立て直そうとした芋虫を大鳥は踏み潰す。これは大鳥の蹄が重いのではなく、全体重を掛けて圧死させてるに他ならない*1芋虫も負けじと大鳥を食い破ろうとするが、大鳥を援護するように小鳥が突いて倒している。

 

その援護している小鳥はと言うと、飛び交う芋虫達を綺麗に躱し好きがあれば突くを繰り返していた。形勢は小鳥大鳥が有利かと思われたが…

 

ドゴォッ!

 

『!』

『同志小鳥!!』

 

突如、小鳥の前に芋虫が地面から現れた。それも小鳥の何倍も大きい、他の芋虫より一回り成長した大きい芋虫だった。小鳥急に止まることができず、その芋虫に飲み込まれてしまった。

 

『……よくも同志を!』

 

行手を塞ぐ小さな芋虫を気にかけることもなく、大鳥は目を赤くさせてその芋虫に体当たりした。芋虫が怯んで横になったところを、大鳥はその嘴で噛み付いた。ミシミシと嫌な音を響くのを聞いた芋虫はその体をばたつかせる。小さい芋虫もそれを助けんと言わんばかりに大鳥のあちこちに噛み付いた。

 

『………ッ』

 

流石にその痛みに大鳥は我慢出来ず、やむを得ず大きな芋虫を解放した。

形勢は大鳥が不利である。一対一なら、ランプがあるので有利になるが、複数となると難しい。ランプは一体しか魅力することが出来ないからだ。

 

『これはマズイな…』

 

大鳥は覚悟した。今やれることは、仲間を食べた大きな芋虫を屠ることのみ。さすれば他の芋虫もボスを失って後ずさる…

 

ザクリッ!

 

『!』

 

ムシャァッ!

 

大鳥が行動へ出ようとした瞬間、大きな芋虫の体を鋭い赤い何かが4つ内側から貫通した。そしてその物体は芋虫を押し込むように仕舞い込まれ、芋虫は絶命した。その芋虫の亡骸の後には、大鳥のよく知る姿があった。

 

『同志小鳥!』

『やれやれ、これほどまでに食に貪欲とはな。これは重い「懲罰」が必要だな…』

 

小鳥の体は赤く染まっていた。芋虫の返り血を浴びたわけではなく、小鳥の持つ()()()()を使うと赤く染まるのだ。

 

『さあ、他の奴らも仕留めるぞ。』

『了解!』

 

そこからほとんど小鳥と大鳥の蹂躙劇だった。大鳥に飛び掛かろうとしたものは更に速くなった小鳥に食べられ、後退りするものは大鳥に踏み潰される。大鳥の推測通り、大きな芋虫が消えたため芋虫達は動揺しているようだった。

 

数分間後、ギュルルルル…と鳴き声をあげて芋虫は逃げていった。

 

『反省したようだな。』

『わーい!これで懲りたらもう来ないでよー!』

『喜んでる場合じゃない。長鳥は問題ないが、空巣達が危うい。狙われてるのは彼らだからな。お前の目で探してくれ。』

『!分かった!』

 

それを確認した小鳥は元の色戻った。大鳥は敵の撃退に歓喜していたが、小鳥がすぐさまに切り替えるように、空巣達を探すように命じた。

 

『……………』

『見つけたか?』

『………いた!』

 

〜ホークス・空巣side〜

 

「うわ危ねぇ!?」

 

そこは激戦と化していた。ロボットがその身体を貫こうと、芋虫がその身体を貪ろうと、赤い小さなピエロが嘲笑おうと、石碑の生物が理解を深めようと、空巣 幻を一心不乱に追いかけていた。

 

「フッ!!」

 

そんな丸腰の空巣を援護するホークスは個性『剛翼』で戦い続けていた。羽一枚ではロボットや石碑を一撃で破壊できず、羽を収束させて作った剣で羽を減らしながらなんとか凌いでいる。しかし羽が消費され続ければ、自身の翼が減りスピードを出せなくなってしまう。

 

「いやー?!走るの疲れて来たんですけど!後どんぐらい続くのー?!」

「君が何したか知らないけど、相手は君狙いだ!足を止めないで!」

「ひえー了解!」

(こんなん死ぬに決まってんだろ!なんなんだアイツらとコイツら!?どうして俺にあんな態度を?一体俺は、いやL社はどんな恨み買ったらこんなことに…)

 

パンッ

 

「へっ……?」

「!?空巣くん!!」

 

突如として空巣に痛みが襲った。小鳥に突かれたような痛みでも、もう少し優しかった。まるでそこが本来空気と接触は許されてないような……

 

「ぐっ、わああぁぁーー!?」

 

空巣の膝が撃ち抜かれていた。貫通した穴では弾丸との摩擦で内部が焼かれていた。

 

(飛び道具だと…!)

 

ホークスはすぐさまに空巣を打った下手人を探して、そして見つけた。

その視線の先には、箱型のボディに、鋭く尖った返り血付きの丸鋸、鉄格子を彷彿とさせる部分に赤く光るモノアイ、そして煙を吐き出しているレーザーポインター付きの機銃を備えた、ゴーレムを思わすロボットが待ち構えていた。

 

「チッ!」

 

流石のホークスも舌打ちを鳴らし、そのロボットへと刃を立てる。

 

ギャリリリリリッ

 

対してロボットはその丸鋸を対抗馬にした。目にも止まらぬ速さで回る丸鋸はホークスの剣を徐々に抉り取っていき、その刃を断ち切った。

 

「くそっ!空巣く…!?」

 

やむを得ないと空巣の護衛に回ったが、その行手を阻むように槍ロボットがホークスを睨みつける。

 

(しまった…!)

 

完全に囲まれてしまったホークス。残り少ない羽で苦手な敵を撃破できるのか、そんな不安がホークスを襲う。

 

(やるんだよ…やるしかねぇんだよ鷹見 啓悟!)

 

しかしヒーローは諦めない。ホークスは自分自身を鼓舞に敵へと突っ込んだ。

 

 

 

そして空巣もまた囲まれていた。ただでさえ膝を撃たれて自己防衛もままならないというのに大軍で囲うのは無慈悲と言えよう。

赤いピエロが5体、空巣の前に躍り出た。その悪魔的笑顔を更に歪ませて空巣の周りを舞う。

 

(何を……?)

 

膝を抑えながらその奇行を見ていた空巣の疑問はすぐに晴れた。

 

ドックンッ!

 

「ヴォエァッ?!」

 

瞬間、空巣の身体が宙を舞った。全身を駆け巡った痛み、全身から飛び出した血飛沫、そして吐血。それらが一度に起きたため身体が反射的に真っ直ぐ伸びて硬直したのだ。

 

(……これ、って…!)

 

だがその最中でも空巣はこの痛みに既視感を覚えた。彼を躊躇なく襲っていた吐血と似ているのだ。恐らく赤いピエロ達が何らかの手段で発生させたのだろう。

 

(それに……この、感覚は……まさか!)

 

もう一つ、空巣が感じたことがあった。例えるならウジが全身から這い出ようとする感覚だろうか。ここから出せと言わんばかりに吐き気が止まらなかった。

自分にも奇妙に思えるほど、空巣冷静に考えた。間違いない、幻想体だ、と。今自分が持っているすべての幻想体がそこから抜け出そうと躍起になっているのを理解した。

 

(意識、が……)

 

理解したところでもう後の祭り。出血多量で脳に酸素がたどり着かず、空巣の意識が朦朧とし始めた。

 

……死ぬのか?ここで?こんなところで?

 

……いや、当然だったんだ。やっぱり俺には生きる資格なんてなかったんだ。

 

……ここまで来れたのが奇跡のような、夢のようなものだった。

 

……ごめんなさい、ホークス、叔父さん、そして父さんに母さん。

 

…僕は何も……

 

……………

 

……………

 

……………

 

……………?

 

……諦めるのか?ここで?

 

……死ぬことを望んでいたのに、何故のこのこと生きてきた?

 

……何故そこで奇跡や夢を、自らの手で断ち切ろうとしてるんだ?

 

……故人や友人を何故思うんだ?

 

ヒーローになるために、ここまで来たんだろ。

 

過去に囚われ続けて何になるんだ。寧ろそれの方が死より酷い。

 

……立ち上がれ。立ち上がるんだ、空巣 幻

 

『力の源』を見つけて、抗うんだ。

 

パァー…!

 

試練達が空巣に近づこうとした瞬間、空巣の周りが若緑色に光り始めた。そして仰向けに倒れていた空巣の手が、地面の土に爪痕を残し、ゆっくりと上半身が起き上がった。更に不思議なことに空巣の身体に着いた血が、傷が、痛みが、心の陰りがみるみるうちに消えていった。

 

空巣は感じていた。心のどこか奥底で、力の灯火が溢れ出る感覚が。どんな壁だって乗り越えてやるという勇気が今、彼を強くさせていること。

 

『…………!』

 

唖然とその光景を見ていた試練達は次々と襲いかかる。空巣も足に力を入れて彼らに真っ直ぐ突っ込んだ。地中から出てきた芋虫を蹴り飛ばし、赤いピエロに激突させる。ロボットの槍を難なく避け、紫の石碑を持ち上げロボットにめがけ投げて破壊する。その隙を突かんと芋虫が前に出た。

 

エネルギー抽出. E.G.O武器製造...

 

製造完了. E.G.O武器『くちばし』装着.

 

バン バン!

 

しかし空巣がいつの間にか右手持っていた拳銃で撃ち落とされる。死角ロボットがまた近づこうとするので振り返って左アッパー、更に頭に拳銃を乱射。ロボットは動かなくなった。

 

すぐさま周りを見渡す空巣。すると箱型ロボがホークスを追い詰めているのを発見する。

 

(間に合わ…せる!)

 

エネルギー抽出. E.G.O装備製造...

 

製造完了. E.G.O装備『ジャスティティア』装着.

 

ザザザンッ!

 

若緑色の光りが空巣の身体を包み込み、()()()()()()()()()()()()()()()。包帯が巻かれたコートに、包帯の巻かれた漆黒の大剣が空巣に装備された。ブンッと勢いよく左手で握りしめた大剣を円状に回した瞬間、周りにいた試練達は一瞬にしてバラバラの骸と化した。

 

すぐに箱型ロボットに駆けつける。そのロボットも急接近に気付き、恐怖の丸鋸を空巣に突き出す。

 

エネルギー抽出. E.G.O武器製造...

 

製造完了. E.G.O武器『ランプ』装着.

 

バチュンッ!!

 

振り上げた空巣の右手にあったのはランプの形をしたハンマー。上に登ったそれはそれは丸鋸を貪ったかの如く削り取った。ロボットは機銃を突きつけようとするも下振り大剣が銃身を切り裂き、そして横払いでロボットの足を刈り取る。

 

「じゃあな。」

 

倒れ伏したロボットに空巣はそう告げ、大剣がロボットの胴体を貫いた。ビリリと機械音を鳴らしてロボットの歯車は動かなくなった。

 

何処からともなく終了のホルンが鳴り響いた。

 

「おお…」

 

ホークスは先ほどの切羽詰まった感情を忘れ、ただ目の前の光景を見続けていた。ロボット、芋虫、ピエロ、石碑…その骸山の中に自分が引き留めた空巣 幻がいる。その目は恍惚と目を水色に輝いていて、顔に必ず倒さんと血管を浮かせている。

 

(パワーは見つけた、か…次は使い方を学ばないとだね。)

 

ホークスがそう考察すると、もう敵はいないと考えた空巣が力を抜くように息を吐く。防具と武器は若緑色の光とかし、空へと向かうように消えていった。

 

『…どうやら一人で片付けたみたいだな。』

 

そこへ鳥達がやって来た。どの鳥も何事もなかったかの如く歩み寄っている。

 

「まぁ何とか…」

『途中で戦闘を見てたよ!君凄かったよ!同志長鳥みたいな姿で悪いやつどんどんやっつけていくのかっこよかったよ!』

「ワプッ……うん、褒めてくれてありがとうな。」

 

大鳥は空巣に我1番に駆け寄って来た。持ってる全ての目をキラキラさせていて、まるで子供のようだ。褒めてくれたお礼に空巣も試しに撫でた。*2

 

『それはもしや…いや、今は良いか。疲れただろうしな。』

「?うわほんとだ。太陽登りかけじゃん。」

 

試練の影響だろうか、時は既に太陽の昇る時間になっていたようだ。

 

『お前の体調にも関わる、我々は戻ることにしよう。』

『うーん、一旦お別れか…』

 

小鳥が何か言いたそうだったが、これ以上情報を渡しても混乱してしまうのでやめたらしい。そして長鳥も空巣の負担を考えて戻ろうとすると、大鳥が寂しそうに鳴いていた。

 

『…心配するな大鳥。お前も来い。』

『え?でも僕はこの子の個性じゃないから…』

『空巣、後は任せるぞ。』

「…ああ、お前も休んでな。」

 

それを見兼ねた長鳥は軽く大鳥を安心させると、空巣に後を託して光へとなって消えた。空巣は心当たりがあるようで、すぐに大鳥の元に行き彼に手を当てる。

 

『わっ!わぁ〜…』

 

大鳥が疑問に思ったその時、空巣の手から光が流れて、その光に大鳥が包まれ、そして消えていった。その光景を見届けた小鳥も空巣の肩に戻って来た。

 

「それでホークスさん、次は何やるんです?」

 

いつもと同じような、けれどそれでいて目に光を灯した空巣がホークスに問いた。

 

「……慣れてきたみたいで安心したよ。それじゃあ次は………休憩!!

「うんまぁ知ってた。」

「だってそうでしょ!あんだけ不慣れな連中と戦い続けたんだからさ!あのロボットほんと硬かったし!こりゃ暫くヒーロー活動もお休みだね…」

「いやーあのロボット厄介っすね。近距離も丸鋸であれなのに遠距離あるとか…」

「ほんとそう!ズルすぎだよあれ…」

 

ホークスの口から出たのはドクターストップ。かなり厳しい戦いだったので無理もないだろう。空巣はそんなボロボロホークスを支えつつ、森を出ていく。

 

森はどこか生き生きしていた。12時間振りに太陽を拝めたのもそうだが、その場にいた誰かの、新たなる旅立ちに歓喜しているのかもしれない。

*1
太っているという意味ではない。

*2
なんか気持ち良かったらしい。




〜幻想体紹介のコーナー〜

・『小鳥』
 識別番号:O-02-56
 危険度:???

スーパーアイドルバットリくん。黒い森の守護者の一羽。罪も重ね続ける人間に自慢の嘴で突く突く突く。歯向かう奴は『第二の嘴』で極刑に処す。空巣に関してはすまないと思っていた。

・大鳥
 識別番号:O-02-40
 危険度:???

黒い森の守護者の一羽。
Q.怪物に殺されないためにはどうするか?
A.殺せば怪物に殺されずに済む!(←???)
『救済』の名の元に↑の問題を解決した(?)倫理観ゆるゆる鳥。尚怪物はいなかった模様。三鳥の中だと末っ子気質。

〜リメイク前の小話〜

空巣くんの倫理観がプロムン寄りだった。あと多重人格。
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