個性『幻想体収容所』:RETAKE 作:T.T小説ううぅぅ…
前回のあらすじ
空巣くん覚醒したよ。
〜雄英試験まで9ヶ月〜
キーンコーンカーンコーン…
季節は蝉が鳴き、太陽が照りつける夏の日のこと。ここ、
「……………」
彼、
『よーしお前ら座れ!出席取るぞー!』
ガラガラと教室の扉を開けて教師が入ってくる。もう少し喋りたかったな、皆んながそう思いながらも各々の席に着いた。
〜中略〜
『おーし皆んな元気でなによりだ!今日伝えるのは二つ。一つは進路だ。大体はヒーロー科志望だろうがしっかり勉強と鍛錬を積むように!』
『『『はーい!』』』
(ヒーロー科…)
皆んなが個性を出してアピールする中、切島はそんなことはしなかった。彼の個性は
『はいはい、個性は閉まってな。そして二つ目だ、なんとこの夏この学校に…』
『『『………?』』』
『編入生がやって来ます!』
『『『常夏のレアケースキタコレーー!!』』』
何だろうと耳を傾ければ、なんとこの夏に新しい子がクラスにやってくるという情報が。それを聞いて皆んな期待を瞬時に大きく膨らませて騒ぎ始めた。
『んなわけで早速来てもらおうか!入っていいぞー!』
(編入生…どんなヤツだ?)
すぐに先生のコールが掛かるとクラスの皆んなが待ってましたかの如く静かになる。鋭児郎も気になって頭を少し上げるとドアがガラッと開いた。そして早足で教壇の上に立ち、チョーク黒板に名前を書いて皆んなの方を向いた。
「えー…多分知ってる子が何名かいるだろうけど、初めまして。今日からこのクラスで共に過ごすことになります。空巣 幻です。」
『空巣?…あ、確かにいたかも。』
『久しぶりに見た。小3の時以来か?』
『あのイケメン顔が不登校って…何があったのかな?』
「諸事情で学校休んでたせいで勉強が遅れてます。どうか勉強教えてくれると幸いです。よろしくお願いしまヴォア?!」
『『『急に吐血したー?!』』』
さてどんな奴かと皆んな静聴していると突然その編入生、空巣が吐血した。いきなりの出来事にクラスの皆んながどよめき始めた。
『お、おい大丈夫か空巣くん?!』
「いや大丈夫です…心配かけてすいません。別に病弱なわけじゃなく、個性の反動みたいなモノなので問題ありません。心臓に悪いですが慣れてね。」
(((すごい心配だ…)))
(…なんだコイツ?)
口を拭って余裕を見せつける空巣。クラスメイトの皆んなは心配した。
♢
『ねえねえ空巣くん!好きな食べ物は何!?』
「食べたことあまりないけどサンドウィッチ?さっぱりしてて美味しいんだよね。」
『なるなる!』
『好きなヒーローは!』
「ホークスかな。彼に助けられたこともあるし。」
『マジで!?』
『趣味とかある?』
「うーん趣味かー…忙しかったからないんだよね。」
『あー…』
『てかそのぎゅうぎゅうに詰められたお肉は一体…?』
「美味しいよ。一つどうぞ。」
『あ、どうも……いや松坂牛?!』
昼休憩の最中、手作りの弁当を持って来た空巣はクラスメイトに囲まれていた。一つ一つ丁寧に対話しているその姿はまるで聖徳太子である。
『空巣くんはどんな個性持ってるの?』
「うーん、正直俺も把握しきれてないけど…例えばこんなのとか。」
そう言って空巣は小鳥を出した。
『うわ〜!鳥さん!!可愛い!!』
『鳥に関する個性とか?』
「ていうわけでもない。こんな武器も出せたりする。」
『うわなんだその厨二心くすぐる大剣!?』
「危ないので仕舞います。」
『ちょっと欲しかった…』
萌え袖ツインテール少女が小鳥を掻っ攫う中、空巣は整理がてらに自分の個性を開示した。
『…なんかはっきりしない個性だな。』
「まあ言われたらそうだな。出来れば雄英行く前に判明させたいが…」
『雄英!?お前雄英のヒーロー科に行くのか?!』
「ああ、そこなら俺の個性もじっくり研究出来るし。」
『そうか…これでうちで雄英に行くのは2人か?』
空巣が雄英の話を持ちかけると周りがギョッと驚いた。忘れてはならないが雄英のヒーロー科は最難関である。
「そうなのか。そのもう1人は?」
「私だよ!」
「ん?」
声があらぬ方向から来たので振り返ると、黒い強膜に黄色の目、髪と肌共に桃色で、頭に触角の生えた女子が空巣に明るい笑顔を見せていた。
「幻想体じゃないよな…?」
「何か言った?」
「いや別に気にせず…それであなたは?」
「私は
「あっはい、よろしく、ね…?」
『やっほー芦戸ちゃーん!見て見てこの子凄いよ!めっちゃ変形してる!』
「「ん?」」
女子との対話がなかったのでぎこちなく会話していた空巣の元に、先ほどの女子が何かを見せてきた。それは、無惨にも形状が縦長にされた小鳥だった。
「えー!何その鳥、変なのー!」
『でしょー!空巣くんの個性の鳥なんだけどさー!撫で続けてたらなんか形が変わったの!』
『そんな粘土みたいな鳥いる?』
「あっははー!面白い個性持ってるね、空巣くん…?」
それを見て豪快に笑って空巣に話しかけた芦戸だったが、当の空巣は机にうずくまってプルプル震えている。
『まさかまた吐血するか?』
『それともマジの痛み?』
「もしや…ちょっとその鳥貸して。」
また来たか*1、と身構えるクラスメイト達を他所に芦戸は小鳥を受け取ると、
「空巣くーん?」
「……はいなんで_」
「三角鳥」
「ブッ?!」
「V字鳥」
「フハッ!」
「鳩サブレー鳥」
「カッハハハハ!!」
いきなり見せられた小鳥の三変化に空巣は高らかに笑った。
「アハハハハ!ちょっ…ちょっと待っ…アハハハハ!!」
『案外物凄いゲラ…!』
『クールな見た目に反してゲラ…ありか?』
「それ四角…あっ逃げた!待て〜!」
ズガガガガガガガガン
「アダダダダダダダダダッ?!」
『『『三奈ちゃーん?!!』』』
無理矢理変形させられるのに嫌気がさしたのか、小鳥は芦戸の手から逃げると、怒涛の突きを芦戸にお見舞いした。芦戸はぶっ倒れた。
『カオスカオス!?』
『誰かー!メディッーク!!』
『保健室運べ保健室!』
♢
「…昼間の騒ぎ、なんだったんだ?」
時は空が赤く染まる夕方、切島はただ一人廊下を歩いていた。
彼もまたヒーローを目指している。憧れのヒーロー、
「やっぱ雄英なんて…」
「ここは…こう!そしてこうやる!」
「ふむふむふむふむ…」
「お?」
独り言を呟いていると、ちょうど勉強しようと入ろうとしていた図書室から声がしていた。なんだろう、そう思って切島はお構いなしに扉を開けた。
「ここでこいつを使う!あとはこーやってそーやってポウ!」
「ナルホドナルホドナルホド…」プシュー
「いやなんだこりゃぁ?!」
切島が見た光景、それはクラスの人気者が身体を動かしながら知恵を授け、それを蒸気を吐き出す編入生が納得するようにノートに書きながら、メモ帳で小鳥を撫でていた。
「何やってんだお前ら!?えげつねぇ事してんのはわかるけども!?」
「あ、確か…切島くんだっけ?こんばんは。」
「やっほ〜切島くん!今空巣くんに勉強教えてたところなの!」
「にしては異様すぎねぇか?どんな教え方してんだ…」
ツッコミ不在のこの場に勢いよく飛び出してしまった、と後悔する切島はとりあえず空巣と芦戸から事情を聞くことにした。
〜しばらくして〜
「芦戸さん、これはどうすれば良いんですか?」
「えーとそれはね、円周率使えば良いはず!」
「円周率がえ〜と…3.41?」
「惜しい!3.14!」
「う〜むマジか…これ使えると思ったんだが、そこまででもないのか?」
「そのメモ帳か?何なんだそれ?」
なんとか打ち解けた三人は一緒に勉強をしていた。分からないところがあったら教えてもらったり、忘れてしまったところはしっかりと覚えなおしたり。そんなことを繰り返していると、話題は空巣のメモ帳のような物に移った。
そのメモ帳を切島はよく見ると何かが書かれている。何が書かれているのか、殆どわからない。読み取れる単語から導き出されるのは何らかの実験に関しているようだ。
「これか?俺の個性だな。」
「え?そのメモ帳がか?てっきりその乗っている鳥が個性かと…」
「あーうん、この鳥、ピー助も俺も個性だな。」
「いやそれもかい?!そういや聞いてねぇけど、一体どういう個性なんだ?」
「…『幻想体収容所』。それが俺の個性の名だ。」
「げんそうたい…っていうのは何?」
切島や芦戸が質問してくると、空巣は書くのをやめて丸まった背を伸ばした。
「俺も最近調べていてて…なんだろう、日常生活に馴染めない存在かな?」
「敵と同じ感じ?」
「そんな感じじゃない。なんかこう…
一般的に現れる敵よりも凶悪な存在を閉じこめる個性。それが切島と芦戸が空巣の話を聞いた感想だった。
「バァファ?!…その捕らえた奴らが抵抗してる結果、俺の吐血は起きているんだと思う。」
「吐血するほどの数ってどんくらいだ…?」
「そりゃまあ沢山いるのは確定。」
「苦労しそうだね〜…で、結局それってどういうげんそうたい?なの?」
少し話がずれていたので芦戸が話題をメモ帳に戻した。
「これはえーと…」
すると空巣が軽く手を振ると同時に一つのタブレットが現れた。黒い外殻を持ったそれは年代を感じさせるような傷が何箇所かあった。
システム起動中.....
システム起動完了.データ更新完了.
お帰りなさい、管理人.
ジジジッと音を鳴らしながらもタブレットは動く。そして新たな画面が表示される。そこには何かのロゴと名前らしき文字があった。ロゴはまるで人の脳が入った容器にLを突き刺したようなマークをしていた。
そして軽く空巣がタブレットを操作する。
「…見つけた。『狂研究者のノート』だってさ。」
「物騒な名だな。」
「なんでもとある実験に参加してた研究者のノートらしい。その研究者は途中で狂って失踪したらしいが。」
「急な怪談話!私恋バナ以外は専門外!」
「いやそれは知りませんて。…でこいつは装備すると知的好奇心が向上するらしい。」
すらすらとタブレットに表示される文章を音読する空巣。芦戸は内容に冗談と思いつつ恐怖した。
「知的好奇心…あ、勉強意欲が増すってことか?」
「そう、学習に使えるかなと思ってね。…但し。」
「…但し?」
「30分以上使用、幻想体への作業なしの返却、又は攻撃を受け過ぎると全身が破裂して死亡。」
「破裂?!」
「そして近くにいる人に巻き込み、重大な物理ダメージをもたらす。」
「巻き込み?!」
突如として不謹慎なワードに切島と芦戸は思わず声を上げた。
「いや危なすぎだろ?!よく余裕で使えるな?!死ぬかもしれないんだぞ!?」
「…まあ、確かに危険だけどね。」
「ならどうして…「でも」」…!」
空巣は切島の方を向いた。その目は力強く輝いている。
「もう俺は怖気ついてはいられない。勉強もしないといけないし幻想体も扱えるようにならないといけない。俺はそう誓ったんだ。例えそれが地獄すらマシに思える場所だとしても俺は雄英に行くよ。」
「…空巣、お前は…」
「うひょー!かっこいいねー!」
その固い決意に覆われは言葉に、切島は動揺した。自分のよりも無謀と思える挑戦をしているはずなのに、それでも彼は何が何でも乗り越えようとしている。そう、それはまるで…
「…さて、俺の個性について話したんだ。お二人も話さなきゃフェアじゃないよな?」
「そうかも!私のは『酸』!酸を出して物を溶かしたりできるの!」
「なるほど?障害物撤去とか、敵の凶器無効化とかに使えそうだね。切島のはどんなのだ?」
「あ……俺のは、その
キヤァァーー!!
「?!何今の?」
「叫び声か、どっからだ?」
「………!?おい見ろあれ!」
突如として聞こえてきた悲鳴。それを聞いた切島が窓から外を見るように空巣と芦戸に促した。
「うわ!?何アレ?!」
「アイツら……!」
そこで見えた光景に彼らは絶句した。通常ではあり得ない大きさの芋虫のような化け物が、下校しようとしていた生徒を襲っていた。
「なんだアイツら…人を、襲ってんのか?」
切島は目の前の光景に恐怖した。テレビ越しで事件を見ていたときは何も思わなかったのに、いざ居合わせるとなるとそう思わざるを得ないのだ。
「皆んな!早く校舎に逃げて!」
芦戸が窓から乗り出してそう伝えている。しかしそれは正しい判断なのか?と切島は悩む。それでは逃げた生徒を追いにきた芋虫が校舎に入ってくるのでは?教師や他の生徒を巻き込んでしまうのでは?
なら、自分に出来ることは?
「…俺、行って「アイツら止めに行く。先生達に知らせて。」……?」
自分が助けに行く。そう言い切る前に今日来た編入生は窓から飛び降りた。
「か、空巣ーー?!」
呆気に取られた切島は叫ぶ。死にに行くのか?あの数とあの凶暴性、どう考えても無謀……
「また来た挙句に他の皆んなも襲いやがって…させてたまるかってんだ。」
「………!」
切島は幻視した。銀色に光る槌と髑髏の着いた十字架を手にした空巣の背中に、HEROの文字が浮かんでいたことに。
〜空巣が中学校来れた理由〜
「え!?そのタブレットで全部確認できんの!?」
「昨日現れてなんだと思って調べて見たんですけど…これでどうやら幻想体の内容を把握できるみたいです。」
「マジで〜…まぁ、これなら訓練の時間は短縮出来るかな。パパッと確認するだけで済むし。」
「そうですか…ならやることは勉強「学校に行くこと」すること…はい?」
「いや〜良いじゃん?勉強に行くついでに会話とか練習するきっかけにもなるし。ヒーローならチームアップとかもあるから連携できるようにしとかないとね!」
「え?あ〜…まぁ、確かに?」
「てなわけで!手続きはこっちでやるから、すぐにでも最寄りの中学校に行ってもらうよ!」
「…はーい了解です。」
果たしてそんなぽんぽん決めて良いのか、空巣は訝しんだ。
いつもご愛読ありがとうございます♪
さて少し提案したいです。また書き溜めしてもよろしいでしょうか?再開は7月の始まり、一月分投稿予定です。とはいえ生存報告がてらにおまけ話、または別小説投稿かも知れません。しばらく見なくなるでしょうが辛抱強く待ってくれると幸いです。