ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ   作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン

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Ep.13 知らない機能

「それじゃあ、キョウカちゃんも始めたんだ。GBN」

 

 私の部屋にゲーミングチェアを運び込みながら、背が高い、優男風の外見をした男の人がどことなく嬉しそうに言う。

 リラちゃんとの「場所」探しに付き合った翌日、私は土日でも気兼ねなくGBNにログインするために、とうとう貯蓄を叩いてゲーミングチェアや家庭用のダイバーギア周辺機器を買い揃えていた。

 そして、それらを義足の私に代わって今、部屋に運んでくれているのが、親戚のエノモトさんだった。

 

「あはは、友達に誘われて……」

「友達!? キョウカちゃん、ついに友達ができたんだね! 僕は嬉しいよ! ココロに報告してお赤飯炊いてもらわないと!」

「現代だとセクハラですよそれ」

「これは失敬。でも、そっか。キョウカちゃんにGBNを一緒にやってくれる友達ができたのかぁ……感慨深いなあ」

 

 エノモトさんは、ゲーミングチェアを慣れた手つきで組み立てながらうんうん、と涙ぐむ。

 私のことなのに、なんだか自分のことみたいに喜んでくれているのは嬉しいけど、少し気恥ずかしかった。

 元々、怪我をして片脚を失った私にGBNを勧めてくれたのはお医者さんだけじゃなくエノモトさんもだったけど、あのときは全部に絶望してたから、ひどい断り方をしちゃったなあ。

 

「……えっと、エノモトさん」

「なんだい、キョウカちゃん?」

「あのときはごめんなさい。私、全然周り見えてなくて」

 

 ぺこり、と腰を折って頭を下げる。

 なによりも大好きだったサッカーができなくなった事実と自分の右足がなくなってしまったという事実を受け入れられなくて、随分といろんな人に迷惑をかけてしまったように思う。

 それを仕方ないと言ってくれた人は、エノモトさんを含めて結構な数いたけれど、それに甘えていちゃダメなことは、わかっていた。

 

「いいんだよ、キョウカちゃん」

「でも、私は……」

「もし、自分が許せないなら……自分を許してあげることを、今を楽しむことを贖罪にする、って言い方は変かもしれないけど、キョウカちゃんにはきちんと人生を楽しんでほしいんだ。それが僕たち大人の望んでいることだから」

 

 エノモトさんは大して気にした様子もなく、ただ、例えるのなら大事なお皿を間違えて割ってしまった子供へ諭すような口調でそう言ってくれた。

 正直、泣きそうだ。

 なんでこんなに優しくしてくれるんだろう。私はいろんな人に迷惑をかけて、今だってかけ続けているのに。

 

「GBNは楽しいかい、キョウカちゃん?」

「……ぐすっ。はい」

「それだけで僕は救われた気分だよ。はい、ゲーミングチェア完成したよ」

 

 さっきから組み立ててもらっていたゲーミングチェアのシートをぽん、と叩くと、エノモトさんは私へ座るように促してくる。

 GBNが楽しいことが、エノモトさんにとってどう救いになるのかは、少し考えてみたけどよくわからなかった。

 それは、私が子供だからなんだろうか。大人になれば、見えてくるものも変わるんだろうか。

 

 そんなことをぼんやり頭の片隅に浮かべながら背中を預けたゲーミングチェアの感触は、私の悩みすら包み込んでくれそうなほど快適だった。

 

「お、おお……これが……」

「うちの会社で扱ってるやつだから、座り心地は一級品だよね?」

「す、すごいです。これ、学校の椅子に座れなくなるやつ」

「ははは、それは困るなあ。でも、これなら家からでも快適にGBNができるはずさ」

 

 ダンボールやら工具を片付けながら、エノモトさんは爽やかに苦笑する。

 人をダメにするソファとかなんか昔流行ってた記憶があるけど、このゲーミングチェアは快適すぎて確かにダメになりそうだった。

 だって、飲まず食わずで二十四時間耐久GBNをやっても普通に翌朝快適に過ごせそうなぐらいだもん。

 

「私、この椅子と結婚する……」

「椅子とは結婚できないよキョウカちゃん」

「ちぇー」

「ははは。ところでキョウカちゃんは普段、GBNでなにしてるの?」

 

 ゲーミングチェアに全力でダメにされながら、私はエノモトさんからの問いかけにぼんやりとした口調で答える。

 

「んー……友達とクランバトルしたり、場所探したり……?」

「場所探し?」

「なんか……いっつもセントラル・ロビーにいる子なんですけど、どこか特定の場所を探してるみたいでぇ……」

「不思議な子だなあ、ところでその子とフレンド申請したりフォース組んだりはしてないの?」

 

 片付けを手際よく終わらせたエノモトさんが、工具箱を片手に尋ねてくる。

 リラちゃんとフレンド申請は済ませてたはずだけど、フォースってなんだろう。

 暗黒面とかがあったりするアレの話だろうか。コラボかなんかでGBNにも実装されてたのかな。

 

「えっと……フォース?」

「VRMMOでいうところのクランかな。組んでおくと、フォースネストっていう専用の拠点がもらえて、いちいちロビーでフレンドを探し回らなくて済むから組んでおいて損はないと思うよ」

 

 どうやら私は非常に重要な事実を見落としていたらしい。

 そうだよ、ネトゲだったら確かにクラン機能がないのは不自然だと思ってたけど。

 そんなの説明書に書いてな……説明書ってそもそもあったっけ?

 

「……」

「その顔だと組んでなかったみたいだね……全員ダイバーランクがD以上じゃないといけないけど、早めに組んでおくといいかもね」

 

 相変わらず爽やかさ百パーセントな苦笑と共に、エノモトさんは私の部屋を後にした。

 

「えええええええ!?!?!?!?」

 

 私の絶叫が、一人になった部屋に響き渡る。

 どうしよう。

 なんにも知らないし、知らなかった。

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけでフォースを組もうと思うんだけど」

「今の今まで忘れていたんですね」

「う、うぅ……」

 

 GBNに速攻でログインした私は、ロビーをかけずり回ってアズミとリラちゃんを見つけるなり、声をかけていた。

 そして返ってきたものはリラちゃんからの正論パンチだ。

 確かに悪いのは今の今まで完全にフォースの存在を忘れていた私だけど。

 

「あはぁ〜、まぁまぁ、今思い出したんだからいいじゃん〜」

「呑気ですねアズミは、というかです、わざわざわたしを探して歩き回っていた時点でなにかがおかしいと気づくべきだったんです」

「あはぁ、正論〜、でも、リラちゃんも『フォース組もう』って言わなかったよねぇ?」

「そ、それは……! うっ……は、恥ずかしいじゃないですか!」

「じゃあお互い様だねぇ〜、あはぁ♡」

 

 頬を膨らませるリラちゃんを豊かな胸元に抱き寄せてわしゃわしゃと髪の毛を撫で回しながら、アズミは相変わらず全部盛りパフェみたいに甘ったるい声で囁きかける。

 

「えっと……それじゃ、アズミ、リラちゃん。フォース組むってことでいいんだよね?」

「アズミは全然問題ないよぉ〜」

「わたしも特に異存はないです」

「オッケー、じゃあ組みに行こっか」

 

 私は二人を連れて受付に向かって、フォースの結成を申請する。

 一番の不安要素はリラちゃんのダイバーランクだったけど、それもなんとかDに到達していたらしく、問題なくフォースは結成された。

 

【congratulations!】

 

 という表示と共に、フォース名を入力する画面がポップアップしてきたけど、どうしたものか。

 

「えっと……無難に『ヤタガラス』でいい?」

「あはぁ〜、アズミはなんでもいいよぉ♡」

「わたしも特に名前にこだわりはないです」

「淡々としてるね……じゃあ、私たちは今日からフォース『ヤタガラス』ってことで!」

 

 名前の入力を終わらせて、苦笑混じりに笑い合う。

 教えてくれたエノモトさんには後で感謝しておかないと。

 そんなことを頭の片隅に浮かべながら、私たちはがやがやと他愛もないことを話しながら、初期支給の手狭なフォースネストに転送されていった。




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