ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ   作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン

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Ep.17 紫電清霜

 果たしてアトミラールさんの予想は現実のものとなってしまった。

 前線を任された私たちが敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していると、いつの間にかジオン軍側の損耗率が五十パーセントを超えていたらしい。

 ここからが本気だぞ、とばかりにブチギレたマさんが繰り出してきたのは。

 

『ははははは! ビグ・ザム三個中隊を各フィールドに派遣させてもらった! 突破できるものならばしてみたまえよ!』

「なにそのハンバーグカレー大盛りラーメン付きみたいなヤケクソ攻勢!?」

 

 ビグ・ザムって量産されたらなんかすごいことになるモビルアーマーじゃなかったっけ。

 それが現実の光景として、ジオン側の旗艦から派遣された巨体が戦場に姿を現す。

 五体のビグ・ザムが宇宙空間にひしめいている威圧感は、NPDが操作しているにしてもかなりのものだった。

 

「見かけ倒しって可能性は……」

『さあ、焼き払いたまえ!』

「なさそう!」

 

 ご丁寧にIフィールドも完全再現されているらしく、ドッズアックスライフルをライフルモードにして放った一撃は効果を表さない。

 これ、ビーム持ちがほとんどなダイバー側は結構な割合で詰んでるんじゃなかろうか。

 アズミのGサイフォスも大物狩りには向かない武装構成だし、こうなったらヤケクソで特攻する以外に道は残されてなさそうだ。

 

「あはぁ〜、ビグ・ザムの弱点はぁ」

「確か股間だったよね!」

「……ラスはえっちですね」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょリラちゃん!」

 

 スレッガーさん? がアレの股間に特攻してIフィールドをなんとかしたのは覚えてるから、近接戦ならまだこっちにも勝ち目があるって話なのだろう。

 

「問題はこの弾幕を潜り抜けられるかってことだけど……!」

 

 ぐるっと胴体を一周するように配置されている二十八門のメガ粒子砲が五体分、弾幕として絶え間なく展開している中に突っ込んでいけというのは中々無茶を言ってくれる。

 しかも、敵はビグ・ザムだけじゃない。

 怖気付いて距離を取ろうとしたダイバーを、さらなる増援として現れたゲルググメナースとジェガンが死角から撃ち抜いていく。

 

 最前線はまさに、地獄の熱風が吹き抜ける鉄火場だった。

 

「やれるかどうかじゃないです、やるしかないんです、ラス」

「わかってる! あとは接敵するだけだけど……!」

 

 この分厚い弾幕を掻い潜れというのは至難の業だ。

 護衛のドムっぽい敵とザクウォーリアを排除して、少しずつ前線を押し上げてはいるけどまだ決め手が足りない。

 ハーフアルティメスはよくも悪くも汎用機だから、こういう状況をひっくり返せるだけの武装が──

 

「しまっ……!?」

『はははは、宇宙の塵と消えたまえよ! 連邦のガンダム!』

「危ないです!」

 

 一瞬、足を止めてしまったところを狙ったメガ粒子砲の一撃が直撃するかと思った刹那、割り込んできた機影が盾になって防いでくれた。

 肩部装甲を前面に向けていたとはいえ、レイドボスの一撃を防ぎ切って無事でいる辺り、あのガンプラ──ディランザをベースにした機体を作ったダイバーは、かなりの腕前らしい。

 ……と、感心してる場合じゃないか。

 

「大丈夫ですか、お姉さん!?」

「あ、ありがとう……私はラス。あなたは?」

「僕はユウです! この弾幕は今、マリモさんがなんとかしますから、もう少しだけ耐えてください!」

 

 ユウ、と名乗った年下っぽい男の子は、知らない名前を呼ぶ。

 そのマリモさんとやらがどんな人なのかはわからないけど、少なくともビグ・ザム五体が展開する地獄の弾幕をなんとかしてくれるらしい。

 そんなことできるんだろうかと思う反面、やってくれるのならそれに賭けるしかないとも直感が告げている。

 

「……わかった! 信じるよ、ユウくんのこと!」

「ありがとうございます、お姉さん! 多分、もうすぐですから!」

「はい、その通りですわ」

 

 凛と透き通った声が、期待に応えてみせるとばかりに私の耳朶に触れた。

 瞬間、ビグ・ザム五体の弾幕をものともせずに、複雑なマニューバで巧みに砲火を掻い潜った紫色の影が、ビグ・ザムの一体に急接近するのを機体のカメラが捉える。

 さながらそれは、妖艶なる舞のように。

 

「呼ばれて飛び出て馳せ参じましたわ、さて──」

 

 ガンダム・マルコシアスをベースにしたのであろうその薄紫色のガンプラが、マリモさんと呼ばれていた同じ色の髪の女性の艶っぽい溜息と共に双眸を輝かせる。

 ふぅ、と紫煙を燻らせるように息を吐いたマリモさんは、紫電のように素早く、泡沫のように繊細なマニューバでビグ・ザムの直上を取った。

 なにをするつもりなんだろう。まさか。

 

「ユウくんがご所望とあればこのマリモ、いかなる艱難辛苦も斬り伏せてみせましょう……存分にご覧くださいな」

 

 一瞬だった。

 ゆらり、と薄紫の影がゆらめいたと思えば、決着は既に果たされていた。

 なにをしたのか、全くわからないほどに素早いけど、かろうじて捉えることができた太刀筋が、綺麗にビグ・ザムの一体を縦に両断する。

 

「は……?」

「あはぁ〜、見事に真っ二つぅ……」

「マリモさんはすごいんです、僕の……尊敬する人なんです!」

 

 キラキラと目を輝かせながらユウくんは言ったけど、確かにあの腕前なら尊敬の一つもして当然といったところだろう。

 レイドボスを文字通り一刀両断するだけのガンプラの完成度と、腕前を両立したあのマリモさんって人は相当だ。

 今の私がアズミと二人で挑みかかっても、多分十秒もしないうちにあのビグ・ザムと同じ末路を辿るのは目に見えていた。

 

「すごい人がいるんだなぁ、GBNって……」

「アズミも、びっくりしちゃったぁ……」

「滅茶苦茶ですね……法外の強さという感じです」

「ふふっ、何事も日々研鑽ですわ。そうすればいつかは高みに至れますわ」

 

 ビグ・ザムの一体と大量の敵NPDの首級を手土産に、ユウくんの元に戻ってきたマリモさんが楚々と微笑む。

 これでもまだこの人は本気の一割ぐらいしか出してないんだろうな、という確信がぞくり、と背筋を伝う。

 でも、いつかは。いつかはその影を踏むことが私にもできるだろうか、いや、やってみせると、心が奮い立つのを感じていた。

 

 マリモさんは、キラキラだ。

 とても眩しい、だからこそ手を伸ばす景色。

 にっ、と笑って親指を立てて、私もその真似をするように、弾幕砲火の中へと飛び込んでいく。

 

「いい目をしていますわね……ふふっ、将来が楽しみですわ」

「ラスさん、気をつけて!」

「ありがとう! 怖気付かない……飛び込んでいく!」

 

 マリモさんとユウくんに見守られながら、私はアズミとMAVを組んで、残ったビグ・ザムのうち一体を仕留めるために肉薄していった。




宇宙に閃く紫電清霜──

Tips:

【ユウ(「真莉藻」様作「ガンダムビルドダイバーズ〜お狐メイド長のGBNライフ〜より)】
・初心者狩りの憂き目に遭っていたところをマリモに助けられた少年。第二次有志連合戦から一年後の本作では逞しくダイバーとして活動しているようだ。


【マリモ(「真莉藻」様作「ガンダムビルドダイバーズ〜お狐メイド長のGBNライフ〜より)】
・年齢不詳の凄腕ダイバーにして、ユウくんを助けたGBNの先導者的存在。極めて高い実力を誇るが、個人ランキング戦には不参加を貫いているためその真の実力を知る者は少ない。第二次有志連合戦から一年後の本作でも変わらずGBNライフをエンジョイしているようだ。
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